英語を学習している方から、「英語のリーディングが全然出来るようになっている気がしない…。」なんて悩んでいる声を聞くことがあります。同じように思っている方、一度考えてみてください。「自分に合った適切な方法で学習していますか?」と。
よく聞くリーディングの勉強法で「とにかくたくさん読む」というアドバイスを見かけますが、ただ闇雲に大量の英語を読むだけでは効果はありません。どういうことでしょうか?
今回は、効果的なリーディングの勉強法を「精読」と「多読」をキーワードにご紹介します。
リーディングの基本
リーディングの基本、それは「精読」と「多読」を織り交ぜながら学習を進めることで、どちらかでは効果は薄いのです。さらに多読は精読があってこそ成り立つということを知っておくと良いでしょう。この理由を以下に詳しく説明します。
まずは精読で英文を解読する訓練を
精読は「質」を重視する読み方です。分からないところをじっくりと分析し、その部分を少しずつ潰しながら「分かる」へと変えていく作業です。
英語と日本語の語順が違うということを聞いたことがある人は多いと思います。そのため、特に英語を学習し始めたばかりの方には、まとまった英文を読むためには、まずは英語を頭から読んで理解できるようになる訓練が必要です。
例えば、
Although we were supposed to have an exam yesterday, I didn’t go to school because I was sick.
という英文を返り読みせずに(頭から読んで)スッと理解できるようになる必要があるということです。
ここでつまずく場合は、その原因を探りましょう。
文法が分からないからか?知らない単語があるからか?といったところが考えられる主な原因です。背景知識がなかったからといった理由もあるかもしれません。(アメリカの文化についての記事であれは、その文化についてなじみがなかったといった場合)英語自体が原因ではない場合は、インターネットでリサーチする必要があるでしょう。
単語や文法など、英語自体が原因になるときは、まずは中学レベルまたは高校レベルの英語読解用テキストから取り掛かってみるといいと思います。そのテキストにじっくり取り組み、繰り返し解きましょう。何周かしたころには次のステップに移れるレベルになっているでしょう。
初学者ではなくとも、ひとつの記事をじっくりと読むことが大事です。分からない単語にはチェックをつけ、集中して覚えます。ひとつひとつの記事は長いものである必要はありません。むしろ、自分のやりやすい長さ・トピックの方が楽しんで学習を進められるでしょう。
多読の最大の目的は「慣れること」
上記のように、精読は「分からない」箇所を「分かる」にするために、集中して特定の箇所に注目することです。
しかし精読だけでは訓練できないスキルがあるのです。それは「理解までのプロセスの自動化」。テキストを読み、頭の中でそれを理解する自動化という過程がスムーズに行われるようにすることで、初めて文章をスラスラと読めるようになるのです。
もう少し噛み砕いて説明すると、リーディングをしている時には、
「1. テキストを認識する」→「2. 自分の持っている知識(単語や文法)、背景知識を総動員してそのテキストを理解する」といったことが頭の中で起こっています。
テキストを目で見てから、2点目でいわれているような、「自分の持っている知識・情報を取り出す時の作業」をスムーズに行えれば行えるほど自動化されていることになります。
Aluminum
という単語があったとしましょう。これは「アルミニウム」という単語です。
日本語にすると誰でも知っていそうな単語ですし、スペルも日本語と似ていますが、英語でこの単語を見る機会が少ないので、アルミニウムと認識できるまで少し時間がかかった方もいるのではないでしょうか?
これは、自分の持っている知識や情報を取り出すスピードがまだ十分に早くできていない状態なのです。
Aluminum→アルミニウムとすぐ分かる、I have never been to New Zealand.をパッと見ただけで理解ができる、これが自動化されているという意味です。
たくさん英文を読むことで、だんだんと情報を取り出すことがスムーズにできるようになり、自動化されていきます。これは英語の知識を増やすということとは少し違います。精読で英語の知識を増やし、それをベースとして多読へ移るということです。
TOEICなどの試験の対策をする際によく聞く速読と言われるものにもこの自動化スキルは必須です。自動化を促すには英文をたくさん読んで慣れること。これが多読の最大の目的です。
多読をするときには、もちろん精読で使った素材と同じくらいのレベルのものを使うことが大切です。そして長めの記事も積極的に取り入れましょう。
「精読→多読→レベルを上げて精読&多読」この繰り返しを
以上に述べた精読&多読を行い、少しレベルアップしたら次のレベルの素材でまた精読と多読をする…これの繰り返しがリーディング力を鍛えるカギとなるのです。
これらを踏まえて、次にリーディング学習についての注意点を紹介していきます。
英語リーディング学習において知っておいてほしいこと
レベルにあった素材を使う
英語に限らずどのような学習にも言えることですが、自分に合った素材を使うことは最も大切なことの一つです。特に多読の訓練をするときについては、少し簡単かなと感じる程度のレベルの記事からはじめてみましょう。
リーディングの際にどれくらいの単語を知っている必要があるかという点においては、第二言語リーディングの学術の世界では「自力で十分な理解を得るためには90〜95パーセントの単語を知っている必要があり、それを下回ると(辞書等の)サポートが必要になってくる」なんていう認識もあったりします…。「とにかく大量に読む」ことだけを考えてハリーポッターや海外の英語ニュースなどをよく分からないと思いながら読むことが、「慣れる」という点においていかに非効率かが分かると思います。精読の場合はもう少し難しいレベルであっても大丈夫と思われますが、多読の際は、90パーセントくらいは知っている単語で書かれている素材がベストでしょう。
英語の語順で理解する→スラッシュリーディングを活用
前述の内容と関連しますが、英語を英語の語順で理解するための訓練として、スラッシュリーディングは効果的な練習方法の一つです。スラッシュリーディングとは、英語のかたまり(チャンク)ごとにスラッシュ(/)を入れながら読む手法。先ほどと同じ英文「Although we were supposed to have an exam yesterday, I didn’t go to school because I was sick.」で考えてみましょう。
Although / we / were supposed to / have an exam / yesterday, / I didn’t go / to school /because / I / was sick.
〜けれども/ 私たちは / 〜することになっていた / 試験を受ける / 昨日 / 私は / 行かなかった / 学校に / なぜなら/ 気分が悪かった
日本語で頭から読むと違和感がありますが、言っていることは分かるのではないでしょうか。これをスラッシュなしで読めるようになることがまずひとつめの目標となります。
辞書の使い方
英語のリーディング学習をするにあたって、どの程度辞書を使うべきかを迷ってしまう学習者の方は多いと思います。結論から言うと、これは読む目的により変わります。
精読であれば、辞書を使いながら読み進めてもいいでしょう。いずれにせよわからなかった単語にはチェックをつけることになるので、自分の好みに合わせて使用してもいいところだと思います。
ただ、例えば「1回目は辞書なしで読んでみて(=単語の意味を推測しながら読む)、2回目は辞書ありで読んでみる」といった手法だと、自分がどれくらいの単語がわからないか・どの程度理解できているか・そして何よりも推測した単語の意味の再確認ができるので、こちらの方がおすすめです。単語の推測については、以下に詳しく説明します。
単語の「推測」について
まず、単語の推測とは「リーディングにおけるひとつの攻略法」です。間違っても「単語学習の目的」ではありません。
精読であればいずれ分からない単語は後に調べることになるので特に問題にはなりませんが、注意すべきは多読の時。もちろん1語や2語くらいは見知らぬ単語に出会うことになるでしょう。ただ、コンテクストから意味を推測してその単語を覚えた気分にならない方がいいということです。
なぜなら、「推測が正しくできている確率は50パーセント以下であるし、推測した単語はほぼすぐ忘却される」と学術論文で言われているから…。
なので、単語をきっちりと覚えたいのであれば、戻って辞書を使って意味を確認するという作業をするようにしましょう。ただし、そもそも先ほど述べた多読の目的を考えると、単語を逐一チェックする必要はないともいえます。ここは個人の好みですが、注意点としてこのことを知っておいて損はないと思います。
リーディングで語彙力も上がる?
こちらは前項の、単語の推測とつながりますが、リーディングを通して語彙力もあげたいと考えている学習者の皆さんは、必ず読んだ後に振り返り、辞書を使って意味・どのような文脈で使われるか・発音を必ずチェックして意識して覚えることを心がけましょう。
最後に、筆者おすすめのリーディング学習用のサイトやアプリを、レベル別に以下に紹介します。
リーディング学習におすすめのサイト・アプリ
初級〜中級の方は英語学習者用の素材を
中級レベルになるまでは、無理にネイティブも使うようなCNNなどのニュースサイトなどを使ってしまうと、難しすぎてやる気が削がれてしまう可能性があります。(もちろん好きであれば少しずつ取り入れていくのはとても良いことですが)。
そのため、主に学習の中心とする素材は英語学習者用のものを使っていく方がおすすめです。
The Japan Times Alpha (旧Japan Times ST)
英語学習者なら耳にしたこともあるかもしれませんが、これはThe Japan Timesという英字新聞の英語学習者バージョンのウェブサイト・紙面です。2018年7月まではThe Japan Times ST (Student Times)と呼ばれていた歴史ある英字新聞です。政治・ビジネス・環境・科学・芸能といった国内外の様々な時事ニュース記事が、わかりやすい英語を使って長すぎず短すぎない適度なボリュームで掲載されています。
英語学習者にとって嬉しいのが、記事上に難しいと思われる英単語に日本語の注釈・単語の訳がついていることです。
読むときに辞書を使わずとも効率性を重視して読み進めることができますよ。もし注釈のついていない単語で分からないものがあれば、それは必須単語のひとつであるため、このような単語もしっかりとチェックしましょう。
記事の終わりには全文の和訳もついているため、意味を捉えられているかどうかのチェックや、分からない部分の意味もここで確認することが可能です。
会員登録をして購読者になると(月々1132円から)、無制限で記事が読めるようになったり、映画の台本を読める映画コーナー・英語クロスワードパズルといった多彩なコンテンツも楽しめたりできるようになっています。
課金はちょっと…と思っている方も、毎月数千円〜1万円程度の月謝を支払ってスクールに通うことと比べれば、これくらいの値段なら安いと言えるのではないでしょうか。
Polyglots (ポリグロッツ)
こちらはスマートフォン・タブレット用のアプリです。The Japan Times Alphaに負けないくらいの多彩なジャンルの記事を読むことができます。グルメやライフスタイルといったトピックの記事まで幅広くカバーされていますよ。全て日本語で操作できるので、英語のみの(ネイティブ向けの)サイトやアプリを使うのがまだ不安…という方にもおすすめ。
また、アプリということもあり、何と言っても手軽さではナンバーワンです。通学中・通勤中などのちょっとした隙間時間にいつでも・どこでもリーディングの練習を積むことができます。
このアプリの特徴は、理解度チェック問題・読み上げ機能・そしてもちろん日本語訳付きであること。そして珍しいのが、読むスピードをWPM(1分間に何ワード読めるか)という目に見える形で表示してくれること。自分の読む速さがはっきりと分かるので目標も立てやすいでしょう。
このようにPolyglotsは読むだけでなく、きちんと「学習」という点に注目して作られたアプリです。無料版もありますが、月々490円を躊躇せずに払うことで最大限機能を楽しむことができるので断然有料版がおすすめですよ。
中上級からはニュースなど本格的な英語にも触れ始めよう
英語に慣れてきた中上級レベルからは、少しずつBBC(イギリス)、ABC/CNN(アメリカ)などの、ネイティブ向けのニュース記事にも触れ始めましょう。
ネイティブレベルのものは語彙がかなり広く、覚えてしまえばどんどん幅広いテーマでリーディングができるようになるので、同時にボキャブラリー学習も行うことをお勧めします。
自分に合った素材で楽しくリーディング学習をしよう
リーディング力をアップさせるには、毎日少しずつでも根気よく続けることがカギです。自分が気に入った、レベルの合った素材を見つけて楽しみながら英語力を向上させましょう。
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