
サイト管理人のセイジは社会人になってから、ずっと社内SEをしてきました(2018年現在で10年)。
2度転職しているため、経験した会社は3つになりますが、同じ社内SEでも、驚くべきことに会社や所属する部署によって仕事内容は大きく異なっていました。
ここでは、普通のSEとは少し違う社内SEの生態や転職方法を、自身の経験や見聞きした内容を基にご紹介しています。
ここでは、私の経験を中心に社内SEの実態について詳しく説明していきたいと思います。
(このページの下部にドンドン更新していますので是非ともご覧下さい!)
知られているようで知られていない社内SEの仕事
- 社内SEってやっぱり楽なの?
- 毎日定時で帰れるの?
- 新しいことはほとんどせずルーチンワーク?
このように社内SEは楽でおいしい仕事という印象が強いですが、実際のところは入社する会社・配属される部署によって全く状況は違ってきます。
常に大きいプロジェクトを任されITベンダーより忙しくプレッシャーの大きい会社もあれば、同じ仕事を適当にやっていても高給が貰える会社もあります。
仕事内容もPMとして多数のユーザ部門に罵られながらも仕切っていく、コーディングをバリバリやらされる会社もあれば、ベンダーに全て丸投げして定時で帰っていれば良い会社もあります。
プロジェクトマネージャー型の仕事
RFPを作りベンダーに発注し、以後はプロジェクトマネージャーとしてプロジェクトを仕切っていく仕事です。
実作業は全てベンダーに任せれますが、プロジェクトのリードと責任は負うため、想像以上にストレスが溜まり残業時間も長くなります。
イメージ的にはSIerの一次受けに近いのですが、SIerよりは遥かに楽。と言った感じでしょうか。プロジェクトの初期はユーザ部門とベンダーの仲介をしていればよいのですが、後工程になると大体要件漏れやトラブル、予算オーバーの事態に陥り、社内調整に走り回ることになります。
- ベンダーから:「無理です、できません」「前提にありません」「勘弁して下さい」
- ユーザから:「しっかりしきって下さい」「できるって言ってたじゃないか」
と、板挟みにあいます。
社内SEの仕事の中でははっきり言って精神的に一番きつくこなすことが大変ですが、最近の企業が求めているのはこの人物です。大変な一方で、キャリア形成上は最も強力な経験であり、他社への転職時も有利に働きます。管理人セイジもこのポジションを強くおすすめします。
「しんどいと言ってもSIerに比べたら遥かにマシ」ですので、ベンダー側や二次受けで苦しんでいる人は、ぜひともこのポジションを狙ってみて下さい。
丸投げ運用型の仕事
これはベンダーや先のプロジェクトマネージャー型が導入したシステムを運用していく立場の人です。
運用と言っても自分がコーディングをすることはなく、問い合わせ対応やマスタ更新作業などをするに留まり、必要に応じてベンダーに指示を出すだけです。
従来の社内SEはほとんどがこの役割でした。楽なため「これぞ社内SE」と言えるポジションですが、会社側からすると重要ではないため、アウトソーシングなどのリストラに巻き込まれやすいです。
現状が辛すぎてとにかく社内SEになって楽をしたい人にはおすすめですが、将来性はないため注意が必要です。
自社開発・管理型の仕事
自社システムを自らコーディングし開発したり、ネットワークの運用保守、パソコンの手配やアフターサービス、果てはヘルプデスク対応までを自分達で行う型です。
ベンダーの立ち位置に近いですが、ベンダーを雇う予算のない小さな会社がこのパターンを取っていることが多いです。もしくは、一部のシステムはベンダー任せにしており、特定の領域は自社で開発しているケースもあります。大手企業でも工場や特定の部門でこの形態を取ることがあります。
自分で新しいことを調べて手を動かすことが好きな人にはうってつけの職場で、規模が小さいこともあり業務上のプレッシャーは少ないです。
ただ、マネジメントのスキルが身につきにくいため、高齢になるまで仕事を続けてしまうと次の転職が厳しくなります。会社と心中する気がない人以外は長く居てはいけません。
所属している会社が細々でも良いのでずっと継続できると感じた際には狙ってみても良いと思います。上昇志向の人には間違っても向いていません。
また、このポジションは会社によって扱われ方が大分異なる点も特徴です。
「社内のシステムのことができる素敵な人」と慕われる夢のような職場もあれば「ガキの使いや便利屋のような扱いで雑用を含めてコキ使われる」ような立場の低い会社もあります。前者はノビノビと暮らしていく分には魅力的ですが、後者の場合は肩身がせまく出世も望めないので、あまりよろしくありません。
社内SEの年収は高い? 低い?
- 広告に出てた社内SE 年収700万ってあり得るの?
- 社内SEになるとベンダーの時より年収は下がるの?
給料の高低は社内SEという職種にはあまり依らず、どの業界・会社に入るかによって変わり、同じ仕事内容でも会社によって年収に2倍以上の差が付きます。
社内SEはその会社の総合職(スタッフ職)という扱いになるため、総合職の給与水準と同じになります。金融や製薬系の社内SEは当然給与が高くなり、アパレルなどの一般的に薄給とされる業種では当然給与が低くなります。
私の場合は水準が低い会社から高い会社に転職した際に、年収が1.5倍に達しました(その際に利用した転職エージェントや活用法・ノウハウは以下の記事に纏めています)。
よって、ただ給与だけを上げたい場合は、とにかく水準の高い業界を狙うことが近道になります。
給与水準が高い業界
- 商社
- 金融
- 保険
- 製薬
- 化学
ただ、社内SEに転職する場合は目先の年収ではなく、後々のキャリアを良く考えて転職先を選ぶことが大切です。
何となく良さそうな求人に飛びついてしまうと「こんなはずじゃなかった…」という状況によく陥ります。
私は2回転職していますが、1回目はパっと見て良さそうな会社に転職したのですが、業績がすぐに悪化してリストラされるという悲劇を体験しました。
そのような事態を避けるためには、現場や将来性を踏まえたアドバイスを受ける必要があります。具体的な転職法やおすすめの転職エージェントについては以下の記事で纏めています。
新卒向けの会社案内なんかによくある1日のタイムスケジュールを書いてみたいと思います。もちろん、会社によって社内SEの仕事は変わるのですが、私のような企画・運用系の社内SEのケースについて以下に示してみます。
社内SEの存在意義と立ちまわり方
社内SEの存在意義
社内SEをやっていて、時々存在意義に疑問を感じることがあります。
どういったときに感じると言うと、以下のような場合です。
- ユーザ部門がシステムに詳しい場合
- ITベンダーが優秀な場合
1. についてですが、
システムを使っている業務ユーザは、使っていくうちに社内SE以上にシステムの中身に詳しくなっていくことがあります。
一方、社内SEはシステムが一度動いてしまえば、基本的にはシステムを利用しませんし、中身については忘れていきます。ユーザにマスタ管理などの作業を任せていると、自分たちでマクロを組んだりしてどんどん腕を上げていきます。ついには、ベンダーに対して自ら指示を出すようになることもあります。
そういった状況になると、ユーザからあてにされなくなってしまいます。また、担当しているシステムが変わった場合などはゼロスタートとなりますが、ユーザからするとそんな事情は関係なく、知らないことを責められたろ、見放されたりしかねません。
次に、2. のパターンですが、
ユーザ部門とITベンダーの間に信頼関係ができている時に生じます。
ITベンダーはシステム納品後も保守を担当していくため、長い付き合いとなります。問合せを受けて不具合修正や機能変更を行うのはベンダーなので、当然システムの中身に詳しく、ユーザ側から頼りにされます。
ひどいときは、社内システム部門に全く連絡がなく、両者で勝手に話が進む可能性があります。そのような関係ができていると、社内SEの存在価値というものがぼけてしまいます。
社内SEとしての立ち回り方
この事は何度も経験し悩んできましたが、結論としてやることは、
- できるだけ早くシステムと業務を理解する。
- 予算などシステム関係上の管理業務をサポートする。
あたりに落ち着きました。
もちろん、ベンダーのレベルがあまり高くない場合は、全体の調整や、引っ張り役として活躍する機会はたくさんあります。
社内SEはタスクは楽ですが、それにかまけて自主的にポジション取りをしないと社内での立場が厳しくなります。リストラ候補者としての烙印を押されないよう、存在意義を構築していくことが必要です。
やり方だけ見ていると、社内SEと言うよりは、社内政治屋ですね。まあ、サラリーマンの一般的な姿ではありますが。
新卒で社内SEになるメリット・デメリット
社内SEの新卒募集はどの程度?
私は新卒時に社内SEになりましたが、一般的にそのパターンは少ないです。
企業の募集要項によく、「システム職」などど書かれていますが、配属されるのは極々少数で、配属を行わない年も多々あります。狙って入りにくい職種です。
IT部門はプロフィットセンターではないので、最低限の配置しか行わない、というのが一般的ですね。
私が最初に勤めた会社はかなり大きかったので、社内システム部門に配属された人数は何と20名程いました。それでも、例年は5名程度で、私の入社した年がたまたま多かったというだけでした。
マンモス企業でこの程度なのですが、一般的なところですと、ゼロかせいぜい1、2程度でしょう。
以上の理由から、新卒から社内SEになれること自体が稀なのですが、仮になれたとしたら、その選択はキャリア的にどうなのでしょうか?
新卒で社内SEを選ぶとどうなる?
個人意見ですが、ビジネスマンとしてキャリアを積み上げていくためにはあまり良い選択とは思えません。
文系出身ならば、やはり花形の企画や人事、ハードですが営業で力をつけのし上がっていく方が出世が早いです。また、これらの能力は転職市場で評価され、色々と幅が広がります。ひどい話ですが、社内システム部門は評価が低く、「配属されたら負け組み」、と言われた時代もあります。
理系出身で、情報科学などをやっていれば多少は趣味とマッチングすると思いますが、それでも製品開発などに行く方が良いです。大変さはつきものですが、市場評価も高くなり、転職候補も広がります。
社内SEはSE意外の選択肢がほとんどありませんし、一般のSEと比べて力もつきません。ベンダーなどで修羅場を経験しているSEと比べると力量差は天と地ほど開きますし、恐らくついていけないでしょう。
加えて、基本的に立場が弱いです。
お客様である業務部門はパソコンについては素人の方も多いですから、誰でも扱えるインターフェイスを設計し、サルでも分かるマニュアルを懇切丁寧に作る必要がありますが、それでもボロクソに言われます。気がつくと、同期入社の人事や営業の人と、出世に大きく差が付いていたりもします。プライドが果てしなく高い人は絶対にできない仕事です。
と嫌なことばかり書いてしまいましたが、直接顧客との折衝に立たされないので、外で戦っている社員と比べると精神的にはかなり楽です。転職には困りますが、会社と一生を共にするつもりならおいしい職種と言えるでしょう。
個人的には、ベンダーなどで一般のSEをしばらくやって、十分にSEの苦しさを知った後に転職して社内SEになる方が、色々とありがたみが分かって良いかと思います。
事実、SIerを脱出してくる人が多いので、社内SEとは心が折れた一般SEの人生の波止場みたいなものではないでしょうか。
ちなみに、私は最初は「楽そうだ」、という理由で選びました。
その後、エリヤフ・ゴールドラットの制約条件の理論(TOC)やドラッカーの書籍に触れ、業務改革を進めることに楽しみに覚え、今ではそちらの動機で社内SEをやっています。
管理人セイジの社内SEの1日
私の場合は大体以下のような形で1日を過ごしています。
9:00~9:30 出社し勤怠処理を行い、メーラー・スケジューラーを立ち上げる。
9:30~10:00 業務部門やベンダーとの打ち合わせの調整を行う。
10:00~11:30 打ち合わせを行う。
11:30~12:00 システムがトラブっているのでベンダーに対策を依頼
12:00~13:00 お昼休み。きちんと食事を取る。
13:00~14:00 打ち合わせを行う。
14:00~15:00 ユーザからの依頼対応
15:00~16:00 議事録を作り展開する。
16:00~17:30 提案・管理資料の作成
17:30 定時退社
打ち合わせが少ない日はひたすら提案資料の作成や、ユーザの要望を満たすための調査をしています。
はっきり言って楽です。「社内SEで時間リッチになる!」という触れ込みがありましたが、まさに時間には恵まれています。
何かの作業や電話対応に常に追われることは少なく、思考しながら提案を考えたり纏めたりする仕事が中心なので、緊迫感は低めです。ちょこちょこネットサーフィンをしたり、プレゼンテーション資料用の素材を探したりと、かなり余裕を持ったこともできています。
それもこれも、社内SEは工数管理されていない故の特徴であり、ベンダーにいると工数管理が徹底しているので常にフル稼働、22:00以降の退社が普通なので、比較すると1日6時間以上の自由時間を得られることになります。
ただ、プロジェクトを動かしている際は、ベンダーと交渉したり、ユーザに我慢してもらったりと色々と調整しながら方法を模索していくのですが、双方から責められ常に頭を下げる立場ですので、気苦労はけっこう大きいです。
システム費用を落とそうとするとベンダーさんに抵抗されますし、保守費用に見合ったサービスレベルに落とそうとするとユーザに難色を示されます。とはいえ、納期を詰められて徹夜を連発していた頃に比べると天と地の差があります。いわゆる瑕疵責任というものがひじょうに軽いです。
もちろん、会社によって仕事内容は変わるので一概には言えませんが(私は1社目でも社内SEでしたが帰宅は大体終電。鬱病続出、休日出勤は基本、休みなしの連続勤務60日何てこともありました)、世に言う社内SEはこんなものです。ただ、管理職などになるとやはり22:00くらいが普通になりますし、休日出勤も当たり前です。
一般的なホワイトカラーの職種は、夜遅くまで仕事に追われることが普通だと思いますので、それに比べるといかに恵まれているのかが分かります。