前回はモバイルをメインで書きましたが、今回は私が大量に導入を行ったG社のSaaSの設計内容について説明していきます。
SaaSで設計なんてあるのか?と疑問に思う方も多い方と思いますが、実際にエンタープライズ向けに導入するとなると、様々な要素が複雑に絡むため事前のチェックポイントが沢山あり、そのようなポイントを説明していきたいと思います。

ブラウザは最新版か

今更、何を言っているのかと思われるかもしれませんが、国内にはインターネットエクスプローラー6を利用しているユーザーが未だにおります。当時は今の100倍はまだ使っていましたので、現在利用しているブラウザがインターネットエクスプローラーかどうかを先に確認し、それが最新かどうかをチェックする事から始めます。また、WindowsOSも最新版かどうかも重要ですし、ウィルス対策ソフトが邪魔する場合もあります。

端末側が問題なくても、ネットワーク側で問題が発生することも多いです。そのため、必ずプロキシサーバの影響を確認し、対象URLがブロックされていないかを確認します。

特に、G社は、特定URLにアクセスすると内部的にリダイレクトが掛かる設定になっています。ストレージドライブに動画をアップロードすると、内部的にはG社の動画サイトの機能をAPIで利用しているため、再生時にURLを一時的に動画サイトにしていますから、それが元でアクセスが出来ないということがおきます。

どうしてこのような設定になっているのかというと、思想的な問題で、同じような機能は作らないという暗黙の了解があります。そのために彼らは、API(アプリケーション・プログラム・インターフェース)を大量に整備していて、殻は社内で同様の機能を使って動画再生を行うようにサービスを作っています。

また、彼らは基本的にBto Cの検索エンジンの会社ですから、法人需要までを細かく考えることはありませんでした。

近年はIaaSを強化しているため、だいぶ法人利用を考慮した設計が出てきていますが、それにしても先行するAZ社やMS社と比較すると稚拙だと思う部分は非常に多いです。

 

平均年齢の高さを考慮する/男女比に着目する

平均年齢の高さは習熟度に影響していきます。

若い人のほうが良いというわけでもなく、パソコン業務にある程度慣れた世代かどうかのほうがずっと重要でした。20代後半から40代中盤が多い会社が比較的導入が楽でした。
男女比率が違うと説明するための言葉や説明ポイントを若干変えないといけないため、抑えておくべきポイントですが、働く女性は物覚えが良いので、難しいポイントだけマニュアルでカバーしきれば、後は中で覚えてくれます。

 

家庭で既に使っているかどうかの確認

G社のサービスはBtoCで既に展開しているサービスの法人版なので、家で使っている人がどれだけいるのかが普及の鍵となります。

使っている人がいるならば、その人をリーダーに任命して、布教活動をしていくなどの展開計画を練ることが重要です。
作ることより、使うことを重点に置くということはこういうことです。

従来のコンピュータサービスよりも圧倒的に使いやすいはずです。それはコンシューマーサービスと変わらないUIを持っているのですからどこにボタンがあるのかで悩む必要が殆ど無いわけです。

わからなければ知っている人に聞けばいいのですが、実は会社で使い方がわからなければ、家に帰って奥さんや子供に聞いても良い。そういうサービスがG社のサービスでした。

もう、コンピュータを使うのに家庭も職場もありません。垣根はもうなくなったのです。

 

認証基盤はどうするのか?

ちょっとコンピュータの専門的な話をしますと、中堅企業以降はSSO(SingleSign-On)という機能が必要とする傾向が強いです。というか、ほぼ必須ともいえます。
これは、従来起業ではMicrosoft ActiveDirectoryやLDAP等といった認証サーバによってIDとPasswordをそれぞれ管理しており、統合管理されたIDを元に様々なサービスにシームレスでログインしてきました。

ところが、クラウドサービスで専用アプリケーションを持たないG社のサービスでそういった統一IDでログインさせるためには、

  • クラウド型のSAML2.0で構築した認証基盤
  • 自社サーバにリダイレクトさせてSAML2.0認証させる

必要があり、OAuth2.0ベースのOpenIDで認証をするなど実装する必要があります。
こういうサービスを提供するベンダーのことを認証プロバイダーと言いますが、これもパートナーとして複数の企業と契約して、顧客要件に合わせ一番近い企業のものを導入するようにしていました。

 

 

便利機能はあくまでも顧客責任

便利機能はブラウザのプラグインのようなもので、運用回避しようとしがちですが、それは極力しないように誘導します。また、合わせて基本機能を使い込んで基本機能だけでも十分に運用可能であること、大きなロードマップを常に確認しつつ、導入予定なのかどうかを把握する必要があります。

とにかく、手を入れたところはSaaSのベンダーがサポートしてくれるわけでも、自社でサポート出来るわけでもなく、売った本人が行う必要があります。これでは属人的なサポートしか行われず、クラウドであるメリットは半減します。
ベンダーも顧客もロックインされないという所が最大の長所なのですから、素で極力使うことが大事です。

 

最初はメールとカレンダーから使う

様々な機能が付いていて、一番便利なのはMS Office的な共同編集機能ストレージ機能なのですが、全体が使いこなすまでには数カ月は必要としていますし、これまで使ってきていない機能をいきなり開放しては顧客の問い合わせ窓口もパンクしてしまいます。

そのため、段階リリースを行い、最初はメールとカレンダーだけ利用します。
慣れてきてから、機能を開放して徐々に使ってもらいます。筋トレと同じで、いきなりフルでやっては筋肉痛を起こしてしまいます。
この時にモバイルも同時にリリースします。こちらはアプリがありますからそれを使いこなしてもらいます。

また、MS OutlookなどのPCクライアントソフトを使いたいという要望があったとしても聞く耳を持ってはいけません。
否定しましょう。

結局そうやって、PCの中にデータを貯めることが性能劣化を早めることになる事を認識して貰う必要があります
ユーザーには、データを貯めてよいのはクラウドだけという認識を持ってもらい、個人でデータを溜め込むのはご法度にしていく事が重要です。

 

海外展開の方が楽だが、中国だけは別

大企業を担当していると顧客はグローバル企業化していることが多く、海外支社の展開で頭を悩ませますが、私は「多分外の方が日本よりも立ち上がりが圧倒的に早いですよ」と言っていました。
その理由は、このサービスがそもそも海外生まれであり、日本人よりもコンシューマ版を利用しているユーザーが圧倒的に多いからです。
実際に、ベトナムで展開したいとか、インドで展開したいとかは楽でした。もっと言えば、北米で展開したいという要望は、もう放置でいいでしょうと行ったぐらいです。

ですが、中国だけは全く別です。これは、中国人のリテラシーではなく、中国ではG社のサービスを全面的に使えなくすることが度々あり、VPNや専用線サービスを構築して日本経由で利用するしか無いというのが実情でした。
最近も金盾(グレート・ファイアウォール)問題で、海外サービスを締め出すというアナウンスが出たぐらいですが、香港経由で迂回路を作るのか、政府に断ってチャイナテレコムに専用回線を引かせて、日本経由でアクセスするのか等のオプションはあるものの、どれも一時しのぎでしかありません。

中国はAクラウド等に別途サービスを作り直して、国内とデータを同期して使うしか無いのかもしれません。

 

MSOfficeを捨てるのか、捨てないのか

G社のストレージサービスにはMS Officeに似た機能が付いていて、大体の情シスはここに期待します。その理由は、MS Officeのライセンスフィーが毎年かかっており、このコストをあわよくば0円にしたいというのが要望だからです。

ですが、そんなことは実質無理なのです。

MS Officeが持つ高度な機能の完全な移植は、MS社にしか出来ません。Officeが使いたければ、Officeのクラウド版を使うのがベストです。選択を間違えています。
それを除外しても、こちらのクラウドの思想や運用が自社にピッタリ合うという企業が利用すればよいのです。

 

自分の業界はクラウドに適しているのか?

金融はクラウドが使えない・・・、そのようにまかり通っていたのが、私が担当していた2011年〜2013年でした。

金融機関にはFISCという金融庁とその界隈が規定したルールブックに従わないと行けないという暗黙のルールがあります。ここでも忖度が重要になっております。
保険業界を皮切りに導入していったことで、最近では、クラウド利用を促進してきた金融業界ですが、適している業界とそうではない業界に別れ、何でもかんでもクラウド化すればよいわけではありません。

ただ、BCP対策でクラウド化を促進する場合はありです。
実際、日本では3.11を境に圧倒的にクラウド利用が増えたのですが、災害に強いのがクラウドであることは間違いありません。

現在では様々なSaaSが出てきたため、業務も含めて切り替えられそうですが、まだまだ完璧ではないため、IaaSが主流であることは間違いありません。
SaaSとIaaSの中間であるPaaSも一時期流行りましたが、やはり業務を移行するところまでは無理でした。

それよりも、自社の移行できそうな部分を洗い出し、段階的にクラウド化していくことのほうがずっと重要でしょう。
安定性が増したからこそ、流通や小売、飲食といったインダストリーだけでなく、物流、金融、医療などよりミッションクリティカルな分野にも波及できてきていると思います。

また、日本の大部分を占める製造、建築というものづくり企業もどんどんとクラウド化していくべきだと私は思います。
ユーザーリテラシーの問題をどう乗り越えていくのかは課題ですが、モバイルファーストの時代だからこそ、クラウドファーストにできるものだと思います。

 

まとめ

全10回にわたり、私の仕事について説明してきましたが、皆さん如何でしたでしょうか?

分かりづらいところもあったかと思いますが、みなさんの就職や転職サイトでの転職の一助になれば幸いです。