前回は、店舗サーバの大規模入札をやむなく断念するところで終わりました。今回は、その挫折から次の注文に入っていく経過を説明していきたいと思います。

先輩からの丸投げ引き継ぎ

店舗サーバの受注を断念した後、当時の上司だったFさんがそれまで抱えていた管理システム案件を、「おう、おまえやれよ」と丸投げしてきました。

早速、仕様招請が始まったので、資料を入手しお客様のところにヒアリングをしに伺います。そもそも気難しい方が担当していた案件らしく、F社のSWalker以外は必要ないとばかりの態度です。
それは「官製談合なのでは?」と思うのですが、この万魔殿では、ついこの間までこのような忖度が本当に許されていたのです。それがこの国のガンであることも十分に分かっていました。

どうしたものかと思案していると、次の打ち合わせから、民間企業から中途採用された若手二人が出てきてくれました。この二人には柵が全くありませんし、そもそもオープンにするために採用されているため、我々の積極採用を良いことのように思ってくれました。

「これは、いける!」と踏んだ私は、仕様を拡張してもらうための営業活動をし始めます。また、確実に勝つための社内調整も並行してはじめました。
私の扱う案件は常にトピック性が高く、ほとんどが、担当だけでなく、担当責任者、役職者としか話をしませんので、とにかく、チームが重要です。

このプロジェクトは22000箇所の支店に配備される10万台の端末を管理するための仕組みです。そのため、ソフトウェアは10万本必要でした。
また、センターで動かすサーバはWindowsサーバを用意する必要があるのですが、1Uのラックマウントサーバを用意せず、最新型のブレードサーバを導入することにしました。
売り出し中だったこともあり値引きをしやすかったのです。商用ではもはやブレードサーバは出荷されていませんが、現在ではGoogleのデータセンタで動くオリジナルサーバがその運用思想を引き継いでいます。
新のテクノロジーと枯れた技術の融合を考え、システム全体の設計を行いました。

 

入札大勝利!だけど、納期は3ヶ月!

提案書提出の時期がやってきました。開札が12月27日なので、ちょうど一ヶ月前です。
寝ずに資料を作ります。この時、私の手から外れた次世代会計システムも資料を提出していました。つまり、同日開札なのです。
私は営業として一人にもかかわらず他方は数人体制です。たしかに、規模と納期が違うためそれはそのとおりなのですが、営業側のチームが存在しないのが悔しいと思いました。

また、このチームにはSE側のリノベーションというテーマも私の中でありました。このプロジェクトのSEリーダーは、チーム組成をした時にはまだ評価が低い人でした。これは、別の若手SEのリーダー職から目の敵にされていたからですが、私から見るとどちらが口だけかは一目瞭然だったので、このプロジェクトを絶対に成功させて評価を上げてあげようと思いました。

話を戻すと、提案書を提出した2週間後に通知が来ました。

機能要件評価は可でした。また、通常と異なり他社の情報も載っていて、順位がまるわかりでした。合計4社が参加し、我々は2位。多分1位はSWalkerを持つF社です。点数差は殆ど無く、後は金の力でねじ伏せるだけというところまで来ました。

こうなると、もはや相手の出方の読み合いなので、何億円を下回ると赤字になり大損し回収できなくなるのかというのをシミュレートします。
自分たちに出来て相手にできないということは殆ど無いので、徹底して、自分たちがやられて嫌だなと思うことを考えて、どこを削るのかを考え抜きました。

そうすると、6億のラインが一つの山になるなと見えてきました。

6億を切るかどうか。確実に逆転するためには6億5000万以下を作らないといけないのは事前開示された点数のとおりなのですが、今度はお客様の思考も読む必要があります。入札には予定価格というものが設定されており、その予定価格がいくらなのかを読む必要がありました。
顧客がいくらで買いたいのかという話なのですが、そうすると過去の入札を比較するとやはり自分たちの予測ラインが大体あっていることもあり、やはり6億を基準とするだろうと予測しました。

6億から6億5000万の間にするのか、6億以下にするのか。1億円の幅の中で思考を深めます。
ギリギリまで、価格をどうするのか?利益をどう捻出するのか?模索して、ようやく価格を決めたのでした。

運命の12月27日、午後の開札のため霞が関に電車で向かいました。到着すると、先に開札が終わっていた同期Sが課長とともにニヤニヤしながら部屋の付近にいました。勝利したのでしょう。
「おめでとう」と伝えようとしたのですが、そそくさと足早に去ってしまいました。受注に浮かれていたのでしょう。もう、その余裕はなかったようです。

気を取り直して、早速入札室に入ります。席について時間になるのを待つと、入札官が4名入ってきました。左からチェック係が2名、開札係が1名、監査が1名です。
早速開票になります。封筒に入ったままなので、ハサミで封筒を切って取り出し、合計4枚の入札書を一つに重ねます。

そして、金額の安い順に順番を入れ替えるのですが、私はこの時にある仕掛けをしていました。
その仕掛けとは札の折り方を通常とは違う折り方をしていました。
通常は三つ折りで封筒に入れますが、私は二つ折りにしていました。4枚中3枚が3つ折りなので私の札がどの順位になるのかが、ひと目でわかります。そして、私が作った札が1番上になりました。
こうなるとここまでの勝利確率は9割を越えました。あとは、総合評価方式なので、機能点を価格点で割って100倍した値が最も小さい会社が勝ちます。静まった会場内に入札官達が叩く電卓の音だけがこだまします。

2度の検算を経てついに発表されます。
「只今の結果、◯◯点のため株式会社Hが落札とします。このご速やかな契約のため、経理部のカウンターまでお越し下さい」
飛び跳ねて喜びたいぐらいの会心の一撃でした。

ただ、これは終わりではなく始まりであり、気を引き締めました。

その後、私は契約書を受取り、すぐに会社に戻りました。12月27日は工場の最終営業日であり、この日までに予約していたブレードサーバをすべて確定発注しないと部材の確保が出来ず、ものが期日までに完成しないというギリギリのラインでした。
そのため、15時までに戻って予約伝票を売上伝票に変える必要があります。
当然、私だけではダメなので、決裁者も含めてネゴシエーションをしておく必要があったので、何時頃その日に上司がいるのかは確認済みでした。

そういう細かいことをすべてやりきった上で、この日を迎えたのです。そうして、その年の年末は過ぎていきました。
ここから、たった4ヶ月でものづくりをしなければいけないという短納期との勝負が始まったのです。

 

納期との勝負は顧客との勝負

私たちが制御できる所はすべて緻密な事前計画がありますから問題なく進んでいきます。問題は不確定要素である、顧客の心です。ここが上手く整理できないと先に進みません。
この顧客が厄介な人物だったのは分かっていたので、毎週の定例では徹底して事前レビューを完璧にしました。発言者は余計なことは言わないため一字一句その通りに説明して合意を得るためだけに話を進めます。
機械的かつ合理的にやることで穴を無くし、SWalkerを使わなくても、我々のプロダクトで完全に動かしそれ以上のことが出来ると証明する必要がありました。
そのため、チームメンバーには嫌われるかもしれませんが、レビュー前の木曜日の夜は夜通しレビューしていました。毎回PM8時に始まりAM2時までかかりました。そうすること約1.5ヶ月後、そのお客様がついに音を上げたのか、もう我々に任せると宣言してくださったので、そこからは我々のペースに切り替え作業効率は更に上がっていきました。

 

個人営業賞の受賞

しばらくすると、この年度から新たに設定された個人の営業成績に対しての表彰で、この案件が取り上げられました。重点強化6製品にブレードサーバが入っており、金融事業部の営業よりも50台多く売ったことで1位になったからでした。
会社の方針上、これまで個人で表彰されることは会社に入って無かったので素直に嬉しかったですが、結局チームのお陰なので入ってきた数万円はみんなに焼肉をごちそうすることで還元しました。
そうすることが一番良かったと思います。小さい幸せを噛みしめ、顧客サービスの向上を促すのが一番正しいのです。

 

順調に進む構築、上手く行かない契約

ここに来て、自分の事務処理能力のなさが露呈します。

国としては契約の中で日割り計算で出すのが一般的な慣習ですが、私はその慣習の意味を理解せず、一部保守契約を月額で提出していたため、ずっと説明を求められていました。説明というよりは、月額で求めていたところを日割りに戻し、既に支払っていた分を返金せよというところだと思います。
しかし、忖度出来ない私は説明をひたすら続けました。ここら辺は、もう人間力の問題なのでもっと頑張らねばいけないと思いますが、苦手なことはしないでもいいと思います。

 

次年度契約を待たず、次の部署へ

私はこの部署では受注という最高の結末を持って次の部署にいくことが出来ました。出来れば自分のシステムですから継続して育てて行きたかったのですが、中々辛いですね。

 

まとめ

この年は、これまでの苦労が実って一気に受注ができ個人的な営業賞も受賞することが出来ました。

最後の最後に、事務処理の決定的なミスが発覚してしまいましたが、馴れないことは得意な人に任せるという方針のほうが良いと思います。この後も私の事務処理力の弱さが露呈する瞬間が沢山あります。

営業詳細はここまでにして、次回はどうしてこの会社を転職する気になり、どのようなプロセスで転職し、企業側はどのような事情で転職を受け入れるのかを説明したいと思います。