アパレル業界の動向や魅力・大手企業の年収比較を就職・転職経験者のアドバイスを交え解説

業界研究

2016年にはアパレル業界について次のように、ご紹介していたのですが…。

“ユニクロやしまむらといったSPA企業が、市場を牽引しているアパレル業界。世界的に見ても、ファストファッションが時代の潮流になってきています”

 

あれから3年、2019年にアメリカの大手ファストファッションブランドのFOREVER21が日本から撤退した際は、大きな話題となりました。

日本経済新聞 フォーエバー21、10月末で日本撤退

 

 

お手頃で、私もよく買う洋服ブランドだっただけに残念でした。

また2020年に入ってレナウンの破綻、ZARAの大量閉店など、大きなニュースも飛び込んできています。

今回はそんなアパレル業界の基本情報、市場規模、主要企業と年収、動向、展望、就職・転職のアドバイスを、アパレルショップ副店長から聞いたお話も交えお伝えしていきます。

 

業界全体図から見たアパレル業界

セイジさん、アパレル業界は全体図から見るとどういう立ち位置なのです?

日経業界地図では「専門店」に分類されています。

主にショップ、テナントを指しているのでしょうね。

はい。詳細は次章、説明しますが…。実に多くの会社、職業がアパレル業界に関わっています。

 

アパレル業界の基本情報

衣食住の衣、私たちの生活になくてはならない洋服。おしゃれ、機能的などいろいろな洋服を次々と生み出し、世に送り出しているのがアパレル業界です。

アパレル英語でapparel。既製服の意です。衣服、衣料品、ウェアなど呼び方はさまざまですが、ここでは私たちが最も使っているであろう言葉「洋服」に統一して説明していきます。

アパレル業界の主力3業態

・アパレルメーカー

・アパレルショップ

・SPA

が主な業態で、アパレルメーカーは洋服製造を行う企業。またアパレルショップは仕入れた洋服を店舗で販売します。さらにSPAは洋服の企画、デザイン、製造、販売を一貫して手がける製造小売業です。そのほか洋服卸問屋もあります。

アパレル業界の川上、川中、川下

洋服を1枚完成させるのにどのような業界や職業が関わっているか、川上から順に見ていきます。取扱商品に関わらずメーカーを目指す方は、川上~川中~川下という表現があることを覚えておくといいです。

山(川上)から平野(川中)そして海(川下)へと流れゆく大きな川をイメージしてくださいね^^

 

川上(素材)

・繊維(天然繊維・合成繊維)メーカー

・総合商社、専門商社

 

川中(製造)

・アパレルメーカー

・デザイン事務所(デザイナー)

・縫製工場

 

川下(小売)

・アパレルショップ

・商業施設(百貨店、デパート、ショッピングモールなど)

・通信販売会社

 

※SPA=川上から川下まで

川上、川中、川下の間には物流企業(運送会社)が入り、素材または商品を工場や店舗に運搬します。

ちなみに洋服のプロモーションには編集者、モデル、タレント、YouTuber、インフルエンサー、スタイリスト、メイクアップアーティスト、カメラマンなど実に多彩な職業の方が関わっています。

 

アパレル業界の市場規模(変遷)

日経業界地図によると次のとおり推移しています。

日経業界地図年度(実年度)小売金額(矢野経済研究所)
2017(2014)9兆3784億円
2018(2015)9兆3609億円
2019(2016)9兆2202億円
2020(2017)9兆2168億円

 

年々、額が減っていますね…。

 

アパレル業界の主要企業及び年収一覧(各社有価証券報告書より抜粋)

ファーストリテイリング9,004,000円
しまむら5,985,000円
ワールド6,352,358円
青山商事(洋服の青山)4,901,000円
オンワードホールディングス(23区・組曲)7,882,000円
アダストリア(GLOBAL WORK)4,230,598円
ワコールホールディングス5,850,266円
AOKIホールディングス6,971,000円
TSIホールディングス(BOSCH・JILLSTUART)5,990,000円
グンゼ5,946,980円

 

アパレル業界の動向

外資ファストファッションブランドの日本進出と撤退

ファストファッションブランドはハイブランドがシーズンごとに発表するトレンドや流行を即座に取り入れ、お手頃な値段で提供する業態で、流行に敏感な中高生、若者に大きく支持されてきました。

しかしOld NavyFOREVER21アメリカン・イーグルといったブランドが次々と日本市場から撤退しました。

日本アパレル企業の海外進出

外資ファストファッションブランドが日本に入ってくることもあれば、日本SPAが海外に出ていくことも当然あります。

日本を代表するSPA企業といえば、新しいベーシック衣料を提案し着々と勢力を拡大してきた「ユニクロ」「GU」を展開するファーストリテイリングです。同社は現在、世界3位に。世界のアパレル業界地図を見事に塗りかえました。

 

その他しまむらアダストリアなどが中国など海外に進出しています。

スマート衣料の登場

日本経済新聞によるとスマート衣料は、

“電機を通す繊維などを使い、心拍数や姿勢、位置、心電図といった生体情報を収集できる衣料”

となっています。繊維業界、化学業界から東レ、東洋紡、クラボウ、旭化成が参入しています。

新型コロナウイルス

COVID-19の影響で日本、世界の経済がほぼストップしました。特に店舗での販売ができず、消費は大きく落ち込んだといえます。今後、第2波、第3波が来ることも予想され、予断を許しません。

また冒頭でお伝えしたように上場企業だったあのレナウンが破綻、民事再生手続きを開始しました。

日本経済新聞 レナウン、民事再生手続き開始 コロナで上場企業初 負債138億円

 

これから新型コロナウイルスの直接的、間接的影響問わず、さらなる倒産や破綻、閉店、業務縮小などが起こるかもしれません。

 

アパレル業界の展望(予測)

通信販売強化

同じく冒頭部でお伝えしたZARAの大量閉店。しかしZARAは戦略的に店舗を1200店も閉鎖するようです。代わりにデジタル化を進め2022年、オンライン販売で売上の4分の1の確保を狙います。

日本経済新聞 ZARA1200店閉鎖、世界の2割弱 EC比率を25%に

日本ではamazonのほかZOZOTOWNLOCONDOがさまざまなメーカーの洋服、靴を販売するほかSPA、アパレルメーカー各社も自社オンラインストアを構え展開しています。

 

インターネット、スマートフォン、電子マネー、新しい生活様式の普及も相まって、これからしばらくはオンラインでの販売、消費が主流となりそうです。ZARAに追随し通信販売に力を入れる企業は確実に増えると予測します。

 

アパレル業界を代表する大手企業3社を比較

ファーストリテイリング

日本を代表するアパレル企業、ファーストリテイリング

UNIQLO(ユニクロ)
GU(ジーユー)
Theory(セオリー)

などのブランド展開によって日本のカジュアルファッションを牽引しています。基幹ブランド「ユニクロ」では合成繊維業界トップの東レと提携し「エアリズム」「ヒートテック」「ウルトラライトダウン」といった高機能衣料をこれまで展開してきています。

 

最近ですと「エアリズムマスク」が話題になりましたよね^^

 

基本情報

売上収益:2兆2905億4800万円

営業利益:2576億3600万円

社員数:1389名 連結56523名

平均年齢:38歳4カ月

平均勤続年数:4年7カ月

しまむら

ファッションセンターしまむら
Avail(アベイル)
Birthday(バースデイ)

などを展開しています。

2020年2月20日現在、全国にてしまむら1432店、アベイル319店、バースデイ297店など、2000を超えるしまむらグループの店舗が営業中です。

 

基本情報

売上高:5219億8200万円

経常利益:238億5500万円

社員数:2680名

平均年齢:41.1歳

平均勤続年数:15年

ワールド

UNTITLED(アンタイトル)
HUSHUSH(ハッシュアッシュ)

など多数のブランドを展開しています。婦人服に強みを持つ同社ですが、

TAKEO KIKUCHI(タケオキクチ)

などメンズブランドも展開、販売しています。百貨店はもちろん駅ビルやショッピングモールなどにも数多く出店しています。

 

基本情報

売上収益:2362億6500万円

営業利益:123億1400万円

社員数:239名 連結9683名

平均年齢:46.9歳

平均勤続年数:20.2年

 

参考文献

株式会社ファーストリテイリング第58期有価証券報告書

株式会社しまむら第67期有価証券報告書

株式会社ワールド第62期有価証券報告書

 

現役店員が語るアパレル業界

今回、アパレルショップで副店長をされている方から、実情をうかがえましたので、この章でお伝えしていきます。

 

現役店員が語るアパレル業界のお仕事、転職のしやすさ

アパレル業界への転職難易度は今現在、どのようなスキルをお持ちかで変わります。アパレル業界で特に必要なスキルは商品提案力とコミュニケーションスキルの2つです。

まず商品提案力です。お客様のニーズに合った商品を選び出し、どのような購入メリットがあるかをうまく伝え販売します。アパレルショップは結果至上主義で、売り上げてナンボですから販売につなげることが、とても大切です。

そして高いコミュニケーションスキルです。販売業務では「また会いたいな^^」と思っていただけるように自分のファンを増やすつもりで接していくのが大事です。そのためお客様から見て親近感が湧く、信頼していただけるような接客が重要なのです。

 

この2つのスキルが兼ね備わってはじめて、アパレルショップ店員として必要な販売力が形成されます。

アパレル業界における命令系統

アパレル企業(ここではSPA)の勤務地は(ざっくりとですが)本社か店舗になります。本社にはブランド統括部長がいます。その部長の指示の下、デザイナーらが洋服を作り、マネジャー(営業職)らが店舗に情報を伝達していきます。

アパレルショップ店長は責任者として店舗運営を担いますが、本社マネジャーの指示下にあり、シーズンごとに商品をどう売るか決め、売り上げ戦略を立てます。その指示に従い販売員、スタッフらが商品を販売します。

 

ただ洋服はオシャレでカッコよければいいのではなく、必ず制作に至った背景や意図があり、お客様のことを考え、ニーズも踏まえた仕様となっているはずです。素材から製品になるまでに多くの人の思いや手間暇が、かかっていることを販売時に理解できていないといけません。

私たち店舗スタッフは洋服を売るだけと思われがちですが、そこまで深く考えられる方がもし面接に来たら、私は「一緒に働きませんか?」とほぼ100%お声かけすると思います。そんな私が今、担当しているお仕事についても記しておきます。

アパレルショップ副店長のお仕事

販売が主ですが、そのほか店長補佐、スタッフの育成も担当しています。

 

販売

店舗に立つ以上、お客様にお声かけし洋服を販売していかなければならないのですが、いちばん大切なことは、来店者を顧客にしていくことです。先ほどもチラッと述べましたが継続的にお店に来てくださるファンづくりが重要です。

店長補佐

店長は「会議」などで本社に呼び出されることも多々あり、常にお店にいるとはかぎりません。そのため店長の本社出勤日は責任者という認識でお店に立ちます。そのような姿勢が認められると私のように店長のほうから「方針を一緒に考えてくれる?」と頼られたりします。

スタッフの育成

忙しい店長に代わりスタッフ教育をOJTで行います。具体的には接客中の様子などを観察しそのコンディションを気にかけ、行き詰まっている様子なら実際に声かけ、相談に応じアドバイスします。ときにサポートに回って、販売がうまく進むよう手助けしたりします。

アパレルショップで出世していく方法

出世したいのであれば販売力だけではなく分析力も必要です。商品・お客様の動向を分析する力が求められます。

 

まず販売力を磨くには、自分が実際に買い物に出向き人気のある他店の接客を受けてみて、そのスタッフの一挙手一投足を観察することが大切です。そこで必ず “もっとこうしてほしい”“こうしてもらったことがうれしかった”など感じるものがあるはずです。

それを職場で自分が接客するときに実際に反映させ、売るという成功体験を繰り返し、スキルを磨き上げていくのです。

そして分析力を磨くには、データを収集し客観的に見て予測を立てるクセをつけるのです。例えば今週はどのようなニーズが多かったかを振り返り、来週はどのような商品が売れそうかを常に考えていくのです。

以上がアパレル業界の実情と私の所感でした。転職活動を始める前に業界研究をされると思いますが、私のお話がアパレル志望の方のご参考になれば、うれしいです^^

 

ありがとうございました!

これより管理人セイジが就職、転職のアドバイスをお伝えしていきます。

 

アパレル業界への就職のアドバイス

ここまでお伝えしてきたとおりアパレル業界はさまざまな会社、職業が関わっています。そのため自分がやりたいことは何か、できることは何かを最初に考えます。

特にデザイナーは大学、専門学校、高校に入る前から進路を決め、自ら専門課程に飛び込んでいく方も多いため、一線で活躍したいのであれば「何をどこで学ぶか?」そこのところからしっかりと進路設計を立て、ブレずに歩みたいところです。

また海外を舞台にグローバルな活躍をしたい方は、語学堪能になりましょう。ビジネス英語はもちろん中国語、フランス語など第二外国語を習得し自身の強みにしたいものです。

そして接客、販売でアパレル業界を志す方はアルバイトとして学生でも採用してくれる店舗も少なくありませんから、できれば働きながら学び、適性を見極めるのも一手です。

 

経験(職歴)として面接でPRできるかも。

またファーストリテイリングの採用情報(募集要項)を参考にお伝えしますと、

・グローバルリーダー社員
・地域正社員

に分かれています。グローバルリーダー社員“世界に通用する実力を身につけグローバルで活躍したい人”向けで(海外含む)全国勤務社員。地域正社員“働く仲間とともに地域のお客様に貢献しながら長期的に活躍したい人”向けです。

繰り返しになりますが海外で活躍したい方は、語学を磨きましょう。地域正社員についてはキャリアプランと照らし合わせ、どの地域で働くのが適切か慎重に考えるようにしたいものです。

 

アパレル業界への転職のアドバイス

これはどの業界でもいえますが、どの企業も即戦力からの応募を期待し中途採用活動を行っています。これまでどれほどの専門的知識を得たか、技術教育を受けてきたか、そしてどうアウトプットできそうかが語れないと採用時、評価されにくいかもしれません。

今一度、自分の経験やスキルを棚卸しして、アパレル業界においてどう経験を活かし、どう貢献していくのかに加え、なぜアパレルか、なぜ御社かを明確に語れるようにしておきたいものです。

 

最後にアパレル業界は、ポジティブシンキング笑顔が自然にできる方が正直、強いです。そしてなによりも洋服が好きでたまらない方が最強です。これら3要素を満たしている方は、採用されやすいでしょう。

たとえ未経験でも、即戦力には程遠いと感じている方でもあきらめず、自ら積極的に応募するほか、転職エージェントに登録し、非公開求人を紹介いただける瞬間も待ってみましょう。

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まとめ

アパレル業界、洋服を1枚作るにも川上から川下まで実に多くの会社、職業の方が関わっていましたね!

そんなアパレル業界で、内定を勝ち取っていただきたいです!

就職と転職、共通していえることは人生の目的と就こうとしている仕事の方向性が合致していることが重要です。それがミスマッチを防ぐカギで、長続きできるかその明暗を分けます。

人生の目的についてその意味を、これまで考えたことがない方は関連記事で説明していますのでぜひ、併せてお読みいただけますと幸いです。

 

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