百貨店(デパート)業界の動向や魅力・大手企業の年収比較を就職・転職経験者のアドバイスを交え解説

業界研究

繁華街や主要駅前にあるデパート、百貨店。おそらく多くの方にとって、そこは特別な空間ではないでしょうか。

私もそう思います^^

特別=非日常ということですよ^^

・大切な人に何かを贈るとき

・自分へのご褒美を買うとき

など少なくとも私たちはステータスを高めるために百貨店を利用しているはずです。

今回はそんな百貨店(デパート)業界の基本情報、主要企業と年収、動向、展望、経験者談、就職・転職のアドバイスについてもお伝えしていきます。

 

業界全体図から見た百貨店(デパート)業界

セイジさん、百貨店(デパート)業界は全体図から見るとどういう立ち位置なのです?

日経業界地図では「流通・小売」に分類されています。

衣・食・住を豊かにしてくれる各メーカー、物流関連企業が周辺業界として大きく関わっていますよね?

ですね。催事を裏で支えるイベント企画会社の存在も忘れてはなりません。

 

百貨店(デパート)業界の基本情報

百貨店は国内外の一流ブランド高級品から良質な日用品まで幅広く取り揃えており、デパートとも呼ばれます。

デパートは和製英語で、正式にはデパートメントストアなのですよ。

新築、改装などで建物自体は新しくてもその創業は江戸時代、明治時代などと古く、本当に長い歴史を持っています。

調べると三越は1673年、大丸は1717年、高島屋は1831年でした。

それで比較的いい場所に、お店を構えることができているのね…。

冒頭部でもお伝えしましたけど繁華街、主要駅前と立地は最高です。

そして販売員は消費者一人ひとりに丁寧に細やかに接客し、高価値商品やその情報を提供し、お買い上げへとつなげていきます。

そして百貨店の発祥についてですが、主な流れがあります。それは、

呉服店系
電鉄系

という呉服商から百貨店に発展したもの電気鉄道会社が(駅に隣接させるかたちで)設置したものの2つがあります。

呉服商から発展三越、伊勢丹、岩田屋、松坂屋、高島屋、大丸など
電鉄会社が設置東急、近鉄、西武、阪神、阪急など

今はジェイアール名古屋タカシマヤなど大手JRも運営に参画、またパルコ、マルイ、ルミネといったファッションビルも広義の百貨店に分類できます。そんな百貨店(デパート)ですが、

・ショッピングモール
・アウトレットモール
・ネットショッピング

の台頭で苦戦しているものの、これまで

富裕層

外国人訪日客

などの消費に支えられてきました。しかし新型コロナウイルスの影響で、さらなる苦戦を強いられている模様です。

 

百貨店(デパート)業界の市場規模の変遷

日経業界地図によると次のとおりです。

日経業界地図年度(実年度)売上高(日本百貨店協会)
2017(2015)6兆1742億円
2018(2016)5兆9780億円
2019(2017)5兆9532億円
2020(2018)5兆8870億円

 

年々、減少しているのですね…。

 

百貨店(デパート)業界の主要企業と平均年収

三越伊勢丹ホールディングス 8,689,834円
J.フロント リテイリング 8,037,047円
エイチ・ツー・オー リテイリング(阪急百貨店・阪神百貨店) 8,588,000円
高島屋 6,823,000円
セブン&アイ・ホールディングス 百貨店事業(そごう・西武) 7,439,465円

(各社有価証券報告書より抜粋)

 

百貨店(デパート)業界の動向

モノ消費からコト消費へ

2010年代中盤あたりから商品など「モノ」の消費だけではなく趣味や体験を通じて思い出をつくっていく「コト」消費が、トレンドとなりはじめました。

・ゆかた撮影会
・ドローン飛行操縦体験
・読み聞かせ

などのイベントを百貨店が催事場や広場などで積極的に実施するようになりました。

順位変動、高島屋が業界4位に

日経業界地図2017年版~2020年版を確認すると、

1.三越伊勢丹ホールディングス
2.J.フロント リテイリング
3.高島屋
4.エイチ・ツー・オー リテイリング

と不動だった売上順位が、2020年版では高島屋は4位、エイチ・ツー・オー リテイリングは3位となり、入れ替わっています。

百貨店のない県ができる

2020年1月に山形県唯一の百貨店大沼が自己破産申請し、県下の百貨店がゼロになったと報じられました。また2020年8月をもってそごう徳島店が閉店し、徳島県が2例目となる見込みです。

日本経済新聞 山形、大沼破綻で百貨店ゼロ県に 中心部の大型店消滅

 

百貨店(デパート)業界の展望(予測)

海外の百貨店が新型コロナウイルスで倒産

創業1907年の老舗百貨店、ニーマン・マーカス(アメリカ)が経営破綻しています。経営悪化により企業体力が落ちていたところにCOVID-19による休業が重なり、追い打ちをかけられたとしています。

日本経済新聞 米百貨店ニーマン・マーカスが経営破綻 新型コロナで

 

猛威を振るう新型コロナウイルスの抑え込みが早期にできれば、経済の早期回復も見込めたはずですが、(執筆時2020年7月現在)感染収束には至っていません。日本の百貨店、デパートもまた今の状況が長引けばさらなる経営悪化、破綻事案も出てくるかもと危惧しています。

 

百貨店(デパート)業界の大手企業4社を比較

三越伊勢丹ホールディングス

売上高業界1位の三越伊勢丹ホールディングスは、三越、伊勢丹、岩田屋、丸井今井という4つの百貨店ブランド(暖簾)を傘下に有しています。

国内では三越日本橋本店、三越銀座店、伊勢丹新宿本店、ジェイアール京都伊勢丹のほか、札幌三越、仙台三越、丸井今井札幌本店、岩田屋本店など21店舗。海外にはローマ三越、天津伊勢丹、バンコク伊勢丹など32店舗があります。

基本情報
売上高:1兆1191億9100万円
経常利益:197億7100万円
社員数:8739名(百貨店業)
平均年齢:47.5歳
平均勤続年数:24.0年

J.フロント リテイリング

大丸松坂屋が統合してできたJ.フロント リテイリングは、パルコなどを子会社として持っています。大丸、松坂屋は16店舗、パルコは18店舗を展開しています。

同社の百貨店は大丸東京店、松坂屋上野店、GINZA SIX、松坂屋名古屋店、大丸大阪・梅田店などで、そのほか池袋PARCO、渋谷ZERO GATEなどがあります。

基本情報
売上収益:4806億2100万円(国際会計基準)
税引前利益:371億6100万円(国際会計基準)
社員数:2226名(百貨店事業)
平均年齢:45.1歳
平均勤続年数:19.0年

エイチ・ツー・オー リテイリング

エイチ・ツー・オー リテイリングは関西を地盤に持つ阪急百貨店、阪神百貨店を運営しているほか、イズミヤ、阪急ベーカリーをグループ企業に有しています。

阪急うめだ本店、阪神梅田本店を中心に阪神・にしのみや、阪急メンズ東京、博多阪急などを展開しています。

基本情報
売上高:8972億8900万円
経常利益:118億3100万円
社員数:4195名(百貨店事業)
平均年齢:47.8歳
平均勤続年数:21.3年

高島屋

高島屋は国内18店舗、シンガポール、上海、ホーチミンなど海外にも4店舗を有しています。

国内では大阪高島屋(本店所在地)、日本橋高島屋S.C.、新宿高島屋タイムズスクエア、横浜高島屋、京都高島屋、博多リバレインモールなどを展開しています。

基本情報
売上高:8484億9400万円
経常利益:232億円
社員数:6211名(百貨店業)
平均年齢:47.0歳
平均勤続年数:23.8年
参考文献
株式会社三越伊勢丹ホールディングス第12期有価証券報告書
J.フロント リテイリング株式会社第13期有価証券報告書
エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社第101期有価証券報告書
株式会社髙島屋第154期有価証券報告書

 

百貨店元従業員(勤務歴10年)から聞いたお話

今回、百貨店(洋菓子売場)での勤務経験をお持ちの方に、その内情を詳しくお伺いすることができましたので、これよりご紹介していきます。

これは私のお話ではないんですけど、私も昔、実は少しだけアルバイトをしていました^^

百貨店、デパートのお仕事、転職のしやすさ

百貨店の花形はやはり売場に立つ販売員です。百貨店の社員であれば食品、婦人服、紳士服、日用品売場などに配属されます。

また稀とは思うのですが百貨店内に誘致された比較的大規模なテナントショップの売場責任者(管理職)などとして、百貨店社員が入り込み、お店を繁盛させていくこともあると聞きます。

また百貨店には正社員だけではなくパート、アルバイトで入社されている方も少なくありません。そして百貨店が系列人材派遣会社を有していて、そこを介して登録人材(ハケン)を受け入れている場合があるということも今は有名な話です。

そして百貨店に社員として入った方はマルチプレイヤーになることを求められます。入社後は売場で販売業務にあたることが多いですが、定期的に配置転換が行われ経営、企画、外商といったいわゆる裏方部署にも異動していきます。

過去、働いてきた経験から私はその印象が強いのですが、

・売上目標必達のプレッシャーで日々、数字に追われる
・上司や同僚、お客様との人間関係で悩む

ゆえに仕事上、ストレスが溜まりやすいです。そのためガマンできず、耐えきれず、離職される方も多いのです。

 

それにしても百貨店も特に今は、新型コロナウイルスの影響で売上もかなり落ち込んでいるようです。このご時世ですから中途入社人材の補充は見送っているのではないでしょうか。

ただし百貨店の運営に携わるのではなく、百貨店の売場で働くことが目標なら各テナントショップの販売職(正社員)の求人なら、見つかるかもしれません。

百貨店(デパート)における命令系統

私が在籍していた百貨店では食品、婦人服など売場ごとに部署が分かれており各部、部長がいました(今もそうだと思います)。そしてその次のポストがマネジャーでした。さらにその次にサブマネジャーがいました。

私たちはふつうにマネジャー、サブマネジャーと呼んでいましたが、一般的な会社ではいわゆる課長、係長にあたるのでしょう。

さらにそのほか例外的ポストとしての「店長付」がありました。これは館内で特に売上のいい部門所属の社員に与えられる役職で、私が知るかぎり食品部の社員が任命されていた記憶があります。

私が百貨店(デパート)で担当してきたお仕事

私は洋菓子売場に配属され、接客、販売をしていました。担当者としてお客様に商品説明、販売(金銭授受)、レジ、商品包装、手渡しを行います。ときに配送によるお届けなどを承ることもありました。

また百貨店にはメーカーから派遣されてくる販売員(メーカー社員)もいました。その方から百貨店として対応すべき問い合わせや業務を投げられるときがあり当然、百貨店社員が引き受けるべきで、その問題を解消しなければなりません。

図らずもメーカー社員とお客様がトラブルとなったときには、仲裁に入り解決しようと努めたこともあります。

 

このように百貨店ではトラブルはつきものです。(落ち度はなくとも)お客様に不快な思いをさせてしまったときは、ご自宅までお詫びに伺うこともありました。

重大なトラブルならマネジャー、部長が動くこともありますが、商品のお渡し忘れなど軽微なトラブルなら、一社員が担当し、足を運びます。

百貨店で産休、育休を取得した感想

なお私の勤務歴は10年ほどでその間、妊娠・出産による休暇も取らせていただきました。そして育児休暇明け「時短勤務」も可能でした。通常は閉店業務を終えての退店ですが、夕方には帰宅できていました。

百貨店は女性が多いため結婚、妊娠、出産、もちろん子育てについても寛大で温かく、制度もしっかりしていたため産後復帰して、再び活躍する社員もたくさんいました。女性から見ると百貨店は、一般企業よりも恵まれた職場であるといえます。

百貨店(デパート)で出世していくには

百貨店で出世していくカギはやはり数字です。担当部署で売上を叩き出し、お店にどれだけ貢献したかが大きく問われ、評価につながります。

意外に思われるかもしれませんが金額だけではなく人数もカウントされます。具体的には“友の会”への勧誘です。百貨店が独自に展開する友の会(ファンクラブのようなもの)にどれだけ新規でお客様を入会させたか、カードを発行させたかも評価されるのです。

百貨店は基本的に年功序列で、率直にいえば昔ながらの古い体質が根づいています。そのため出世は地道にステップアップしていく感じとなります。売場、店舗を異動しつつ、一つひとつ上のポジションを掴んでいくほかありません。

数字を叩き出し、お店に貢献した社員なら特に期待されて本社に異動することも。そこで頑張りを認められれば店長になって戻ってくることもあるでしょう。本社異動はチャンスで栄転の部類に入りますから、積極的に受けるべきです。

最後に出世の大前提にあるのは問題解決スキルを持っているかどうかだと思っています。

なぜなら日々、百貨店ではお客様と何かしらのトラブルが生じてしまうからです。そのときにお客様を不快にさせずに部下も守りつつ、問題の解決を図る必要があります。

それができなければお客様からも部下からも信頼を得られません。よって問題解決スキルに乏しいと出世するのは厳しいと考えます。

 

ありがとうございました!

 

百貨店(デパート)業界への就職のアドバイス

三越伊勢丹の採用情報を基にお伝えしますと、

総合職
メイト社員

に分かれています。メイト社員地域限定社員を指しています。

総合職の配属店舗や領域(婦人・紳士・食品・リビング)については、希望と適性を考慮し決定するようです。年一回は希望を申請する機会があるとのことで、キャリアプランを構築しやすい環境が用意されているといえます。

サービス業の宿命それは「人が休んでいるときが稼ぎ時のため土日は休めない」です。学生時代は休みで当たり前だった土日祝日が当たり前に休めなくなります。そのため多くの百貨店が週休2日制でかつシフト制を採用しています。

 

土日出勤も大丈夫、人が好き、接客が好き、買い物が好きな方は社会人としての進路として百貨店を視野に入れてもいいと考えます。

 

百貨店(デパート)業界への転職のアドバイス

転職活動は1人で行うよりも、転職エージェントの非公開求人紹介制度やキャリアアドバイザーの持つノウハウをうまく利用したほうが、早く転職先が見つかりやすくなります。

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しかし百貨店は2020年7月現在、来店者数、売上高など厳しい状況下にあるというのは間違いありません。

それでも百貨店の中途採用情報と出会い、第二のキャリアとして選択されようとするなら、これまでの経験やスキルをどう活かし百貨店の現状を打破、問題解決していけるかをまとめ、人事担当者及び面接官に伝えられるよう準備をしましょう。

 

まとめ

百貨店はこれまでもこれからも特別なモノ、特別なコト、特別な何かを探しに行く「とっておきの場所」であってほしいです。

そんな百貨店(デパート)業界を目指す方はぜひ、内定を勝ち取っていただきたいです!

就職と転職、共通していえることは人生の目的と就こうとしている仕事の方向性が合致していることが重要です。それがミスマッチを防ぐカギで、長続きできるかその明暗を分けます。

人生の目的についてその意味を、これまで考えたことがない方は関連記事で説明していますのでぜひ、併せてお読みいただけますと幸いです。

 

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