今回は、2017年の最新版としてガス燃料業界の動向と転職・就職に役立つアドバイスを紹介していきたいと思います。
2016年版も併せてお読みいただくと、ここ1年での業界の変化も読み取れると思います。
昨年もお伝えしていたとおり、ガス燃料業界の企業は、各エリアを独占的に抑えていることが多く、企業数は他業界に比べ少なめで、経営基盤が安定しているといえ、年収も序列的に上がる傾向で人気があります。
ガス燃料業界の基本情報
これまで、ガス燃料企業は、家庭や企業に向け都市ガス・液化石油ガス(LPG)を各エリアで供給してきました。
しかし、2017年4月1日から都市ガス小売り全面自由化がスタートし、新たなる小売事業者が参入を果たしています。
昨年の電力自由化後の動向を見るかぎり※ガス自由化も既存企業が勢力を保ち業界地図の大きな変動は起こらないのでは? と考えております。
ただし、新規参入企業を含め各社、どこまで家庭や企業に対して魅力的な料金プランやサービスを打ち立てられるかによって明暗が分かれる、そんな余地は残されていそうです。
既存企業
- 北海道・東北・関東エリア…東京ガス、京葉瓦斯、北海道ガスなど
- 中部エリア…東邦ガス、静岡ガス、北陸ガスなど
- 関西・中国・四国エリア…大阪ガス、広島ガスなど
- 九州・沖縄エリア…西部ガス、沖縄ガスなど
【参考】電力自由化後の動向
経済産業省の資料、電力小売全面自由化に関する進捗状況(2016年10月18日付 資源エネルギー庁)によると、昨年4月の小売全面自由化後、
- 9月末時点での新電力への契約先切替申込件数は約188万件で全体の約3%
- 8月末時点での自社内契約切替件数(規制→自由)は約176万件で全体の約2.8%
つまり、電力自由化後、半年間で、9割強の消費者は、旧態依然のまま様子を見ている。そんな姿が浮き彫りとなったのです。
そういえば、私も電力会社の見直しや変更などは行わないまま、1年が過ぎました。
また、家庭用燃料電池「エネファーム」も見逃せません。
都市ガスやLPガスなどから燃料となる水素を取り出し、酸素と反応させて発電するエネファームは、国だけではなく一部自治体も助成金などの支援策を制度化させ導入を後押ししており、今後ますます家庭・企業単位の省エネ化、一般普及の方向へと流れていくものと思われます。
ガス燃料業界の市場売上高は、会社四季報に掲載されている企業9社の有価証券報告書を参考に集計した結果、およそ4兆円の規模で、社員の状況は、平均年齢42.6歳、平均勤続年数19.4年、平均年収は約613.5万円という結果となりました。
ガス燃料業界 ~今後の展望~
ガス燃料業界各社においては、原料高、昨年夏の猛暑で苦戦を強いられたものの、冬季の需要増で挽回した企業もありました。
今後、ガス自由化による顧客離脱の影響をまったく受けないとはいいがたく、各企業、これまではほとんどなかったと思われる競合企業との顧客獲得・慰留合戦に注力していくことになりそうです。
ガス燃料業界の主要企業と年収一覧及び新規参入事業者
各社の年収一覧
- 東京ガス 649万円
- 大阪ガス 650万円
- 東邦ガス 602万円
- 北海道ガス 587万円
- 広島ガス 579万円
- 西部ガス 610万円
- 京華瓦斯 593万円
- 北陸ガス 543万円
- 静岡ガス 709万円
ガス燃料業界主要企業(上記)の平均年収 およそ613.5万円
参考文献
会社四季報2017年2集春号 東洋経済新報社
新規参入小売事業者(2017年3月31日現在 経済産業省本省登録事業者)
- 関西電力株式会社
- 東京電力エナジーパートナー株式会社
- 中部電力株式会社
- 九州電力株式会社
- 国際石油開発帝石株式会社
- 三愛石油株式会社
- JXエネルギー株式会社
- 岩谷産業株式会社
- エネクスエルエヌジー販売株式会社
- 石油資源開発株式会社ほか
ガス燃料業界を代表する企業の基本情報
【東京ガス】
都市ガス最大手。
電力と合わせて総合エネルギー企業に進化した同社のプレスリリースによると、2016年度のガス販売量は、前年比1.9%増、家庭用は、関係会社統合による顧客件数増加などにより前年比4.6%増、業務用(商業用、公用及び医療用)も、関係会社統合による顧客件数増加などにより前年比4.8%増に。
また、工業用も既存設備の稼働増で1.8%増となりました。
ただし、2016年度3Q実績 経常利益分析によると、都市ガスなど軒並み前年比マイナスとなっており、唯一、賃貸料収入の増加などにより不動産部門が好調だという結果が数値として現れています。
- 売上高:1兆8846億5600万円
- 経常利益:1888億900万円
- 社員数:連16537名 単8295名※
- 平均年齢:44.3歳
- 平均勤続年数:17.2年
- 平均年収:6,492,160円
【大阪ガス】
京阪神を地盤に持つ都市ガス2位の大阪ガス。
同社プレスリリースによると、大阪ガスの2016年度のガス販売量は、家庭用は前年比0.9%増、工業用は13.5%増、商業用も1.3%増、公用・医療用は7.1%増という結果でした。
他のガス事業者向け販売量も4.3%増となり、全体的に見て前年比8.0%の販売増となりました。
また、大阪ガスのキャリア採用における職種は、海外事業開発、国際法務、国際会計・税務・投資評価、電力エンジニアとなっており、本社は大阪市中央区ですが、職種・開発案件によっては、泉北発電所ほか全国各所での勤務、そのほか、将来的に異動、出向、海外赴任の可能性もあります。
- 売上高:1兆3220億1200万円
- 経常利益:1349億8600万円
- 社員数:連21014名※ 単5824名
- 平均年齢:43.3歳
- 平均勤続年数:19.6年
- 平均年収:6,502,008円
【東邦ガス】
東邦ガスはガス業界3位で、愛知、岐阜、三重の東海地方にて天然ガスを供給。
2016年版でもお伝えしているとおり、コージェネ(熱電併給)事業を推進中です。
東邦ガスの2016年度ガス販売量は、顧客増及び冬季の気温低下で家庭用が1.7%増、商業用5.2%、工業用1.8%、公用・医療用も8.9%で全体的には2.5%と微増しています。
同社のキャリア採用においては、
- 事務系職種…経営企画、事業企画、マーケティング、原料調達、財務、法務など
- 技術系職種…プラント設計、施設管理、技術開発、情報システム、技術営業など
はじめは企画系部署を中心に配属され、経験を積むことで将来的には経営を担う人材としての活躍をと考えているようです。
- 売上高:4798億7000万円
- 経常利益:611億3200万円
- 社員数:連5966名※ 単2859名
- 平均年齢:42.8歳
- 平均勤続年数:20.5年
- 平均年収:6,023,765円
参考文献
東京瓦斯株式会社第216期有価証券報告書(2016年3月31日まで)
大阪瓦斯株式会社第198期有価証券報告書(2016年3月31日まで)
東邦瓦斯株式会社第145期有価証券報告書(2016年3月31日まで)
会社四季報2017年2集春号 東洋経済新報社
転職・就職へのアドバイス
2017年4月1日からガス自由化が始まりました。
電力の自由化と比べ、ガスの調達やその取り扱いがむずかしいことなどから、資本や設備が豊富な大手の新規参入が目立ちます。
これはあくまでも憶測なのですが、新規参入側においてはガス燃料業界経験者を優先的に採用・募集する可能性も高くなり、スカウトやヘッドハンティングを行う転職エージェントに登録することで、新規参入とはいえガス燃料業界で、しかも大手企業への転職のチャンスが増えるかもしれません。
また、逆に、これまでガス燃料業界に貢献してきた大手企業でも、不動産関係が好調であったり、電力自由化の波に乗り新規参入を果たしたりしていますし、エネファーム・コージェネといったガス販売以外での事業展開にも注力しているところです。
したがって、これまで不動産業界・電力業界などで働いてきた方、エコや資源エネルギーについて研究・開発を行うプロジェクトなどに従事されてきた方などは、ガス燃料業界大手で活躍できるフィールドが拡充・創出される可能性もあり、その瞬間を見逃さないようにしたいところです。
大手になると、職種によっては、全国各地での勤務・海外赴任の可能性も十分あり得ます。
これまでビジネスで通用する英会話などのスキルを習得してこられた方や、アジア、ヨーロッパなど海外をフィールドに活躍をされてきた方にもオススメの業界ではあります。
しかし、基本的に各社、ガス供給エリアは固定されていますので、引き続き、自分が希望する勤務地で営業しているガス燃料企業を選択し応募していくとよいでしょう。
2016年版でもお伝えしていたとおり、ガス燃料業界で求められている人材は、電力、海外など多様なフィールドで事業をけん引していくことができる方です。
また、新技術が開発されていけば、新技術・システムの知識を積極的に取り入れ斬新なアイデアを発案でき世に送り出せる発信力のある方が重宝されていくでしょう。
今回の都市ガス小売り全面自由化を境に、競争の波が急に押し寄せてきた感があるガス燃料業界。
どちらかといえばチャレンジ精神が旺盛な人のほうが、引き続き楽しめる業界なのかもしれません。