
私たちが昼夜問わずさまざまな活動ができるのは、照明があるおかげでしょう。

デジタルライフを楽しめるのもやはり、電気のおかげですよね。
実はここ数年で取り巻く環境が大きく変わってきた電力業界。今回はそんな電力業界の基本情報、市場規模、主要企業と年収、動向、展望、経験者談、就職・転職のアドバイスについてもお伝えしていきます。
業界全体図から見た電力業界

セイジさん、電力業界は全体図から見るとどういう立ち位置なのです?

日経業界地図では「エネルギー・資源」に分類されています。
私たちの生活に欠かせない電気、ガス、水道のほか、さまざまなシーンで必要とされている石油は、本当に貴重で大切なエネルギーです。
電力業界を志す以上、風力発電、太陽電池、地熱発電、スマートグリッド、燃料電池、リチウムイオン電池のほか、エネルギー、資源を取り扱う業界はもちろん隣接業界といえますからレアメタル、レアアース、シェールガス、LNGについてもよく理解し、覚えておくべきです。
また電気を使わない業界など、ほぼないと考えますので、電力業界はすべての業界と密接につながっているといえます。

電車、電気自動車、医療機器、電気を使わない業界は、ちょっと思いつきませんよね…。
電力業界の基本情報
日本は2016年3月いっぱいまで
関東エリア→「東京電力」
関西エリア→「関西電力」
九州エリア→「九州電力」
と各地域、原則1社の電力会社が存在し、エリア内で発電・送電・変電・配電・売電といった事業を地域独占的に展開していました。
また電力業界を志す方が把握しておくべきは、原子力発電所の現在の稼働状況と電力取引市場の存在です。
2017年5月24日現在、稼働している原子力発電所は、関西電力所有の高浜3号及び4号、四国電力所有の伊方3号、九州電力所有の川内原子力1号※及び2号のみでしたが、2019年8月末現在、関西電力所有の大飯3号及び4号、九州電力所有の玄海3号及び4号が加わり計9基となっています。※テロ対策施設建設遅延で2020年3月に停止
もちろん9基の原子力発電所だけで国内すべての電気はとてもとても賄えません。日本の電力が安定供給されているのは合計5000近い水力・火力・風力・太陽光・地熱発電所などがあるおかげです。

そんなにあるのですか!
原子力発電所の最大出力は3308万3000 kW、火力発電所の最大出力は1億6650万1913kWと火力は原子力の5倍以上のパワーを有しています(経済産業省資源エネルギー庁の発表数値、2019年11月)。
そして日本には日本卸電力取引所(JEPX)という、電力売買市場があります。
JEPXには東京電力エナジーパートナーをはじめ関西電力、九州電力などの大手電力会社、多くの電気事業会社も取引会員として名を連ねています。
電力業界の主要企業と売上高及び年収(有価証券報告書より抜粋)
社名 | 売上高 | 平均年収 |
東京電力ホールディングス | 6兆3384億9000万円 | 8,055,519円 |
関西電力 | 3兆3076億6100万円 | 7,916,200円 |
中部電力 | 3兆350億8200万円 | 7,703,676円 |
東北電力 | 2兆2443億1400万円 | 7,569,085円 |
九州電力 | 2兆171億8100万円 | 7,771,045円 |
北海道電力 | 7522億3800万円 | 7,059,421円 |
北陸電力 | 6229億3000万円 | 6,342,987円 |
中国電力 | 1兆3769億7900万円 | 7,725,777円 |
四国電力 | 7372億7400万円 | 7,716,020円 |
沖縄電力 | 2054億8100万円 | 7,634,709円 |
電力業界の動向

ここでは2011年から現在までの電力業界の主な動き(ニュース)をお伝えしていきます。
2011年、東日本大震災時、福島第一原子力発電所にて事故が発生しました。第一報は発電所自動停止という内容でしたが同日、政府は緊急事態宣言を出すに至っています。
2016年には電力小売全面自由化。鉄道や都市ガス企業が競争に参入しました。
そして2020年4月、発送電分離が実施されます。これも福島での事故をきっかけに議論が噴出。送配電部門中立性確保のため送配電、送電事業者が小売、発電することが禁止されます。そのため大手電力各社、分社化を進めてきました。
電力業界の展望(予測)
やはりここからしばらくは発送電分離の影響こそが、電力業界を注視していくうえで重要となります。
一方でシカゴ大学の伊藤公一朗准教授は、電柱、電線といった送配電網につき、これまで地域独占的に手掛けてきた大手電力会社が新規参入事業者から高い利用料金を取る、利用自体を制限する、そのような懸念もあると指摘しています。
発送電分離が電力業界をさらなる発展に導くのか、一波乱を巻き起こすのかどうか、今後の動向に注目したいところです。
また原子力発電所は原子力規制委員会からテロ対策施設設置を義務づけられており、期限に間に合わなければ完成まで稼働を停止しなければなりません。2020年に現在稼働中9基のおよそ半数にあたる4基の稼働停止が見込まれており、その影響もみる必要があります。
電力業界・大手企業の紹介
東京都をはじめ神奈川県、埼玉県、千葉県、栃木県、群馬県、茨城県、山梨県、静岡県(富士川以東)に電気を供給しているのが東京電力ホールディングスです。※離島は除く
福島への責任を果たすため、グループ全体の企業価値最大化を図るため、電力会社としていち早く、持株会社(ホールディングスカンパニー制)に移行していました。
燃料・火力発電事業は「東京電力フュエル&パワー」に、送配電事業は「東京電力パワーグリッド」に、小売電気事業は「東京電力エナジーパートナー」にそれぞれ分社、承継しています。
売上高:6兆3384億9000万円
経常利益:2765億4200万円
社員数:8309名
平均年齢:45.3歳
平均勤続年数:23.1年
平均年収:8,055,519円
業界2位の売上高を誇る関西電力は京都府、大阪府、滋賀県、兵庫県※、奈良県、和歌山県、福井県※、三重県※、岐阜県※に電気を供給しています。※一部エリアを除く
関西電力は電気だけではなくガス、通信、ホームセキュリティ、介護サービス、不動産開発事業も展開、注力しています。
また2020年4月より関西電力の送配電事業は分社した「関西電力送配電」が担います。
売上高:3兆3076億6100万円
経常利益:2036億3600万円
社員数:18884名
平均年齢:43.2歳
平均勤続年数:22.4年
平均年収:7,916,200円
業界第3位の中部電力。愛知県、三重県※、岐阜県※、静岡県(富士川以西)、そして国内で唯一50Hz・60Hzの送電周波数が混在している長野県を電気供給エリアに持っています。※一部エリアを除く
中部電力もまた分社化。中部電力を持株会社とし送配電事業は「中部電力パワーグリッド」が、販売事業は「中部電力ミライズ」が担います。
売上高:3兆350億8200万円
経常利益:1129億2900万円
社員数:16086名
平均年齢:42.8歳
平均勤続年数:22.3年
平均年収:7,703,676円
参考文献
関西電力株式会社第95期有価証券報告書
中部電力株式会社第95期有価証券報告書
業界経験者が語る電力業界

電力事業を担当する社員の方ではありませんでしたが、電力会社に9年勤務していた方にいろいろとお話を聞けましたので、ご紹介していきます!
経験者が語る電力業界の特徴
電力会社は「電気」というライフラインを取り扱う公共性高いインフラ企業です。それゆえ民間、上場企業ながらお役所のような雰囲気で、昔で云う公社、郵便局、国鉄感があります。
電力会社は実は戦時下、全国に点在していた多数の電力会社を統合しまとめた経緯があります。従業員数は万単位、組織は縦割りの巨大企業です。
もちろん労働組合も健在で他電力会社労働組合とも連携し「電力総連」なる合同労働組合も組織されているのが大きな特徴です。従業員のほとんどは出身地で地元採用され、遠隔地所在発電所勤務の技術系社員以外は、他地域への異動は基本ないと考えて大丈夫でしょう。事業は、
・送電
・販売、営業、カスタマーサービス
部門の三本柱です。顧客は個人、法人に分かれ、法人からの売上がメインです。電力会社には多くの関連企業が関わり、実質実働部隊=関連企業が実情です。

電力総連=全国電力関連産業労働組合総連合のことですね。
経験者が語る電力自由化
これまで地域寡占状態であった電力供給。越境して販売でき新規参入が可能になりました。そのことで(度々批判があった)総括原価方式も価格競争の影響を受け、経費削減、支社統廃合(組織スリム化)、リストラが行われています。
電力自由化の際、ガス会社が進出してきたことから電力会社もまた、ガス販売事業への参入を加速させました。
組織改革、社員教育が進められ、社員も競争、コストについて意識変革を迫られています。
経験者が語る電力業界への転職のしやすさ
原子力発電所事故や電力自由化による競争激化の影響で、50歳以上の社員の退職勧奨が行われています。同時に関連企業へ出向、転籍するケースも増えているようです。
また職場環境や給与の変化(年棒制に。ボーナス支給は廃止、ただし年度末業績に応じた報奨金支給あり)によって早期退職、依願退職事案も増えています。
経験者が語るとある電力会社の出世
電力会社は特別管理職と一般社員に二分されます。課長以上、部長などは特別管理職となり労働組合に属さず、三六協定にも縛られません。時間外労働や休日出勤に月次上限がありますが、時間外手当や休日出勤手当は支給されません。
対し係長までの一般社員は労働組合に所属し、三六協定の範囲で就業します。それぞれランク、階級があり、それに応じ役職や給与が決められます。命令系統も原則、特別管理職→一般社員、ランク上位者→下位者と決まっています。
電力会社は階級社会なのです。
また社員全員、定期的(1年、半年ごと)に行動目標設定申請が義務づけられ、直属直近の特別管理職もしくは自身が特別管理職なら自分よりランクが上の直属特別管理職が査定し評価します。その評価に応じ昇進が決まっていきます。
電力事業以外の部署もある
さまざまな雇用形態、身分の方がいるなかで仕事の特殊性や社風の影響か、みな協力し合い、チームやグループ間の親交、個人どうしの交流も盛んで、いい意味でどこか一体感がありました。
経験者が語る電力会社でキャリアを積む方法
基本、最終学歴、採用地域で配属が決まります。電力会社は高卒、高専卒、大学卒、大学院卒の新卒のほか随時、中途採用で入ってくる方、電力供給エリアや発電所があるエリアからの採用(地元採用枠、学校推薦枠)もあります。
しかし大企業にありがちな学閥は見られず、出身大学が出世に影響することはまずないと考えます。
しかし特に技術職、営業、法務、経理等は高い専門性と知識が問われます。そのためより専門性、知識に優れている高学歴人材が上に就く傾向があります。
特別管理職は地域をまたぎ配属されるケースがありますが、本社配属こそが経営上層部に就く道筋です。
これらを踏まえ電力会社でキャリアを積んでいく方法をお伝えしますが、
・組織内をうまく立ち回る
・直属上司の信頼を勝ち取る
・評価されるように動く
上記4点が重要です。

ありがとうございました!

お堅いとは知っていましたけど、ここまでとは。

これより転職とキャリアアップ管理人として、就職、転職のアドバイスをお伝えしていきます。
電力業界への就職・転職のアドバイス
電力業界に就職したい、転職したいと考えている方は機械、電気・電子、情報工学といった理系の知識、学術経験を持っていると評価対象になるでしょう。
電力会社には多数の子会社、関連会社が存在、また分社化の流れもあり、電力業界に就職・転職できるチャンスはたくさんあると考えます。
電力会社の要はやはり発電、送電、変電、配電といった技術分野であり、発電・流通設備を機能させるための土木建築部門も自社で擁しています。そのため理系出身者や技術職経験者が存分に活躍できるフィールドがあります。
もちろん営業、カスタマーサービス、広報、総務、法務といった文系出身者の活躍できるフィールドも魅力的です。各社、供給エリアは限られていますが、海外事業、国際業務にも取り組んでおり、グローバルな活躍の場も用意されているようです。
電力は日本では貴重なインフラ事業領域です。その手堅さから公開求人が出ると、応募者は殺到するでしょう。多くの求人は非公開もしくは限定公開とし、転職エージェントを通じた募集にとどめている可能性があります。
求人が出たら転職エージェントのキャリアアドバイザーから真っ先に案内いただけるように日頃から、良好な関係を保っておくのが理想です。
また希望エリアの電力業界企業が求めている人材像や職種について、できるかぎり多くの情報を収集していくよう努めましょう。
自分のスキルや経験、大学時代の研究内容が電力会社にとって役立つことを、実際の企業活動に照らし合わせ、人事担当者や面接官にわかりやすく伝えられるよう今のうちから準備しておきたいものです。
まとめ

電力業界は、大海原を航海する大きな船、そんなイメージです。

そんな電力業界で、内定を勝ち取っていただきたいです!
就職と転職、共通していえることは人生の目的と就こうとしている仕事の方向性が合致していることが重要です。それがミスマッチを防ぐカギで、長続きできるかその明暗を分けます。
人生の目的についてその意味を、これまで考えたことがない方は関連記事で説明していますのでぜひ、併せてお読みいただけますと幸いです。
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