2011年の福島第一原子力発電所事故、2016年4月から始まった『電力の小売り全面自由化』と取り巻く環境が大きく変わってきた電力業界。

今回は、2017年の最新版として、その動向と転職・就職に役立つアドバイスを紹介していきたいと思います。

2016年版も併せてお読みいただくと、ここ1年での業界の変化も読み取れると思います。

電力業界の基本情報

日本の電力業界は2016年4月までは、

  • 関東エリア→「東京電力」
  • 関西エリア→「関西電力」
  • 九州エリア→「九州電力」

というように、各地域に原則1社の電力会社が存在し、エリア内で発電・送電・配電・売電といった事業を独占的に展開していました。

また、勤務先として日本の電力業界を志す方が把握しておくべきなのは、原子力発電所の現在の状況と電力取引市場の存在です。

2017年5月24日現在、稼働している原子力発電所は、関西電力所有の高浜3号及び4号、四国電力所有の伊方3号、九州電力所有の川内原子力1号及び2号のみで、多くの原子力発電所は新規制基準適合性に係る審査(設置許可)の審査中もしくは未申請状態となっています。

にもかかわらず、日本の電力が安定供給されているのは、6000を超える水力・火力・風力・太陽光・地熱発電所と1500を超える電気事業用発電所、4700を超える自家用発電所があるおかげです。

とくに火力発電所は、最大出力が1億9335万6000kW※と、16カ所ある原子力発電所の4倍以上のパワーを有しています。

※数値は総務省統計局の統計データ最新収録のもので平成26年度のものです。

 

そして、日本には唯一、日本卸電力取引所(JEPX)という電力取引市場があります。

“JEPXでは、一定の条件を満たす会員企業が市場で電力を調達したり、販売したりする仕組みを提供している。企業の株式売買を仲介する証券取引所をイメージすると分かりやすい。

株を売買したい人はその発行体(企業)と直接取引しなくても、取引所が開設している市場を通じて株を売ったり買ったりできる。電力取引所の仕組みも基本的には同じだ。”

引用:日経ビジネスオンライン 伸び悩む電力自由化に、電力卸取引所の「秘策」

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/092900319/

東京電力エナジーパートナーをはじめ、関西電力、九州電力などの大手電力会社、新電力会社も取引会員として名を連ねています。

電力業界の市場規模は、大手電力会社10社の売上高を合算した値が18兆599億7700万円で、10社(後述)の社員の状況ですが、平均年齢は42.4歳、平均勤続年数は21.5年、平均年収は743万円となっています。

 

電力業界 ~今後の展望~

ここでは、2016年4月から始まった『電力の小売り全面自由化』についての続報をお伝えいたします。

全面自由化を機に電力小売企業として新規参入してきた主要会社は、以下のとおりです。

【ガス会社】

東京ガス、大阪ガス、日本瓦斯、北海道ガス

【石油元売り】

JXエネルギー、東燃ゼネラル石油、昭和シェル石油

【通信会社】

ソフトバンクグループ、KDDI、ケイ・オプティコム

【その他】

東急パワーサプライ、イーレックス、H.I.S(旅行会社)

ガス会社はガスとのセット販売戦略を、石油元売りはガソリン代を値引く方法などで、通信会社はKDDIが電気使用量に応じて電子マネーを充当するなど各社、創意工夫を凝らして顧客獲得・奪取に取り組んでいます。

参考文献:日経業界地図 2017年版 日本経済新聞出版社 5 電力小売り自由化

しかしながら、経済産業省が公表している「電力小売全面自由化の進捗状況 2017年4月21日 資源エネルギー庁」という資料を見ると、

“これまでに登録を受けた小売電気事業者は計約390者。このうち、いまだ供給実績のない小売電気事業者は約2割となっている。”

“本年1月末時点での新電力への契約先の切替え(スイッチング)件数は約3.9%(約246万件※)、大手電力(旧一般電気事業者)の自社内の契約の切替件数(規制→自由)は約3.8% (約237万件)であり、合わせて約7.7%(約483万件)となっている。“

と、新規参入組が想像以上に苦戦しているとうかがえます。現在の業界勢力図を塗り替えるレベルには至っていないのが現状です。

なお、新しい料金体系が出てきた一方で、大多数は類似した既存の料金体系となっていると指摘されており、企業側はきちんと採算がとれ、契約者側はお得であると感じることができるような、いわばWin-Winの関係に持っていける新たなる料金体系を、いかに生み出せるかが今後の大きなカギとなりそうです。

 

電力業界の主要企業及び年収一覧(各社有価証券報告書より抜粋)

各社の年収一覧

  • 東京電力ホールディングス 822万円
  • 関西電力 681万円
  • 中部電力 765万円
  • 東北電力 736万円
  • 九州電力 757万円
  • 北海道電力 706万円
  • 北陸電力 696万円
  • 中国電力 777万円
  • 四国電力 743万円
  • 沖縄電力 750万円

大手電力会社10社の平均年収は743万円でした。詳細は、下図を参照ください。

 

電力業界を代表する企業の基本情報

東京電力ホールディングス

東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、栃木県、群馬県、茨城県、山梨県、静岡県(富士川以東)に電気を供給しているのが東京電力ホールディングスです。※離島は除く

同社は、福島への責任を果たすため、グループ全体の企業価値向上を図るために、電力会社として唯一、ホールディングスカンパニー制(持株会社)に移行しています。

燃料・火力発電事業は「東京電力フュエル&パワー」に、送配電事業は「東京電力パワーグリッド」に、小売電気事業は「東京電力エナジーパートナー」にそれぞれ承継しています。

現在は、ホールディングス含む上記4つの体制で首都圏・関東エリアの顧客に電力サービスを提供しています。

基本情報

  • 売上高:5兆3577億3400万円
  • 経常利益:2276億2400万円
  • 社員数:7743名
  • 平均年齢:44.7歳
  • 平均勤続年数:23.2年
  • 平均年収:8,221,552円

 

関西電力

業界2位の売上高を誇る関西電力は、京都府、大阪府、滋賀県、兵庫県※、奈良県、和歌山県、福井県※、三重県※、岐阜県※に電気を供給しています。※一部エリアを除く

関西電力は総合エネルギー・送配電事業(電気事業+ガス・その他エネルギー事業)のほか、情報通信事業、不動産・暮らし事業を展開しています。

基本情報

  • 売上高:3兆113億3700万円
  • 経常利益:1961億2500万円
  • 社員数:19533名
  • 平均年齢:42.7歳
  • 平均勤続年数:22年
  • 平均年収:6,815,642円

 

中部電力

業界第3位の中部電力。愛知県、三重県、岐阜県、静岡県(富士川以西)、そして、国内で唯一50Hz・60Hzの送電周波数が混在している長野県を電気供給エリアに持っています。

現在、同社はカンパニー制を採用しており、火力及び再生可能エネルギーによる電力の供給を行う「発電」、電力ネットワークサービスの提供を行う「電力ネットワーク」、総合エネルギーサービスを展開する「販売」の3セグメント体制で事業を運営しています。

基本情報

  • 売上高:2兆6035億3700万円
  • 経常利益:1214億8300万円
  • 社員数:16632名
  • 平均年齢:42.3歳
  • 平均勤続年数:21.9年
  • 平均年収:7,651,016円

 

参考文献

  • 東京電力ホールディングス株式会社第93期有価証券報告書
  • 関西電力株式会社第93期有価証券報告書
  • 中部電力株式会社第93期有価証券報告書
  • 日経業界地図 2017年版 日本経済新聞出版社

 

転職・就職へのアドバイス

電力業界に転職・就職を考えている方は、機械系、電気・電子系、情報工学系などの知識、経験を持っていると評価対象になるでしょう。

電力会社の要は、やはり、発電、送電、変電、配電といった技術分野であり、発電設備や流通設備を機能させるための土木・建築部門も自社で擁しています。そのため理系出身者や技術職経験者が存分に活躍できるフィールドがあります。

もちろん、営業、カスタマーサービス、広報、総務・法務といった文系出身者の活躍できるフィールドも魅力的です。

 

各社、国内供給エリアは限られていますが、海外事業、国際業務にも取り組んでおり、グローバルな活躍の場も用意されているようです。

電力会社は多数の子会社、関連会社を保有しており、電力業界に転職・就職できるチャンスはたくさんあると考えます。

しかしながら、日本有数のインフラ事業領域ですから、どの会社の求人も堅く人気であり、公募としてしまうと応募者は殺到するでしょう。

そのため、多くの求人は非公開もしくは限定公開とし、転職エージェントを通じての募集案内にとどめている可能性があります。

転職エージェントのキャリアコンサルタントと良好な関係を保ちつつ、希望エリアの会社が求めている人材やその職種について、できるかぎり多くの情報を収集していくように努めましょう。

また、自分のスキルや経験、大学時代の研究内容が電力会社にとって役立つものであることを、実際の企業活動に照らし合わせ、人事担当者や面接官にわかりやすく伝えられるように今のうちから準備をしておきたいものです。