普段、手に取って読んでいる新聞や雑誌、ティッシュペーパーやダンボールなど、日常生活の中で欠かすことができない素材を作っているのが製紙業界です。
日本の製紙メーカーの技術や品質は、世界的に見てもレベルが高いと評価されています。
ただ、高い技術力はあるものの、国内では頭打ちの状態が続いているため、多くの製紙メーカーが国内から海外のフィールドに目を向けています。
ここでは、製紙業界の基本情報や今後の動向、さらには転職や就職希望者へのアドバイスをまとめてみました。
製紙業界の基本情報
製紙業界は、紙(新聞や雑誌用の紙、包装用紙、ティッシュペーパーなど)、板紙(段ボール原紙などの厚紙)を供給しています。
紙と板紙の生産量のピークは、2000年の3,200万トンで、出版物の減少やオフィスのペーパーレス化、国内経済の鈍化などの影響を受けて、徐々に生産量が減少傾向にあります。
ここ数年は、製紙業界は相次ぐチップ、パルプ、古紙といった原材料価格の乱効果に振り回され、原料価格の高騰が製品の価格転嫁に追い付かず、各社ともに減収減益が継続した時期もありました。
リーマン・ショックに端を発した2008年の国際的な金融危機の際には、内需、輸出の紙、板紙が低迷し、主要製紙会社の多くが売上高前年割れを記録しました。
2010年頃から若干の回復傾向がみられましたが、中国をはじめとする新興国の成長が鈍化した影響もあり、伸び悩み状態にあります。
2013年頃からは、景気回復による企業や消費活動の活性化に伴い、製紙業界全体の売上高が、若干ではあるものの増加に転じています。
製紙業界の市場規模は4兆7,374億円、経常利益の合計は1,792億円、平均勤続年数16.7年、平均年齢40.1歳、平均年収は554万円となっています。
製紙業界 ~今後の展望~
人口の減少に伴って市場規模が縮小していることに加え、インターネットの普及によるペーパーレス化が急激に進んできたため、紙や板紙の国内出荷量は頭打ちの状態が続いています。
国内のこうした状況ゆえに、大手の製紙各社は海外に活路を見出そうとしています。
例えば、業界首位の王子ホールディングス傘下の王子製紙は中国で工場を設立しましたし、業界2位の日本製紙はオーストラリアンペーパー&パッキングを買収するなどしています。
また、業界3位のレンゴーも、2009年にベトナムの段ボールメーカーを買収、2010年には、中国合弁企業である青島聯合包装有限公司を100%子会社化するなど、アジアへの進出を積極的に行っています。
製紙業界は生産性の向上を図るためや、規模の拡大を狙った合併などが盛んに行なわれてきた業界でもあります。
製紙大手の合併の例だけでも、1996年に新王子製紙と本州製紙が合併して王子製紙が、2001年には日本製紙、大昭和製紙が経営統合し日本ユニパックホールディングス、現在の日本製紙グループが誕生。
2006年には、王子製紙が北越製紙に対して、敵対的TOBを仕掛けるなどの動きもありました。
製紙業界各社は、中国や東南アジアなどの成長市場を開拓して規模を拡大するとともに、経営統合などによって競争力を高めることを視野に入れています。
今後は、大きな業界再編が起こる可能性も考えられます。
製紙業界の企業一覧
- 王子ホールディングス
- 日本製紙
- レンゴー
- 大王製紙
- 北越紀州製紙
- 三菱製紙
- リンテック
- トーモク
- 中越パルプ工業
- ザ・パック
製紙業界を代表する企業の基本情報
【王子ホールディングス】
製紙業界で売上高トップは、王子ホールディングスです。
紙、産業資材、機能材など、社会生活に密着した製品の製造から、資源の有効活用を目指す資源環境事業の展開まで、より豊かな社会生活の実現を目指し、さまざまな分野で事業活動しています。
基本情報
- 売上高(連結):1兆3,473億万円
- 経常利益(連結):704億円
- 主要会社:王子製紙、王子ネピア、王子マテリア、王子コンテナー、王子エフテックス、王子イメージングメディアなど
- 平均勤続年数:16.7年
- 平均年齢:43.7歳
- 平均年収:878万円
【日本製紙】
製紙業界の売上高第2位は、日本製紙です。
2001年に日本製紙と大昭和製紙が統合して、持ち株会社として発足した日本製紙は、「クリネックス」や「スコッティ」といったブランドを展開しており、王子ホールディングスと業界の覇権を争っています。
日本製紙は、紙の生産では国内首位で、世界でも有数の製紙会社のひとつとして知られています。
基本情報
- 売上高(連結):1兆524億円
- 経常利益(連結):232億円
- 関連会社:日本製紙クレシア、日本製紙パピリア、日本製紙木材、四国コカ・コーラボトリングなど約180社
- 平均勤続年数:21.2年
- 平均年齢:42.2歳
- 平均年収:681万円
【レンゴー】
製紙業界で売上高が第3位のレンゴーは、日本で初めて段ボール事業を開始した会社で、段ボール製品では業界でトップシェアを誇ります。
2007年には住友商事、日本製紙グループと事業提携し、経営基盤も強化しています。
基本情報
- 売上高(連結) 5,231億円
- 経常利益(連結) 153億円
- 事業所:中央研究所、包装技術センター、全国35工場、海外52工場、7拠点
- 平均勤続年数:14.1年
- 平均年齢:39.1歳
- 平均年収:692万円
転職・就職へのアドバイス
製紙業界は製造業ではありますが、事務系(営業、生産計画、原料調達など)、化学系(研究開発、技術開発など)、機械系(プラント設計、エネルギー管理など)、電気電子系(電気設計・保全、計装設計・保全など)と実際の業務は幅広い分野で多岐にわたります。
とはいえ、求められている作業は、製品を正確に作ること、生産が滞ることがないように管理すること、完成品の品質をチェックするなど、ひとつひとつの仕事を丁寧に行なうのが特徴です。
国内市場が縮小していく中で、多くの製紙関連の企業が海外、特にアジアへの進出を積極的に行ってきています。
今後の製紙業界のリクルーティング活動は、セルフスターターとなって、積極的に海外に出ていくことができる人材が求められるでしょう。
英語でのコミュニケーション能力や海外での就業経験があり、紙やパルプなど製紙関連の知識がある方は、転職や就職がかなり有利になります。
製紙業界No.2の日本製紙では、採用方針が少数精鋭主義で、若手の頃から与えられる仕事の権限が多く、将来の経営幹部候補として幅広い仕事を経験できます。
製紙業界で転職・就職を考えるのであれば、それぞれの採用方針などを確認しておくことも大切なポイントです。
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