将来警察官になりたいものの、厳しいことで有名な警察学校での生活に耐えられるか不安だという方も多いのかもしれません。
警察官採用試験に受かっても、警察学校の厳しさに耐えきれず、途中で辞めてしまえば正式な警察官にはなれません。
自分が警察学校を耐えられるかどうかを判断するためには、警察学校のどんなところがきついのかを知っておくことは重要だと言えます。
警察学校には自分の時間がないのがきつい
警察官を志している方なら、警察学校では常に団体行動をさせられるという話を聞いたことがあるかもしれません。
まさにその通りで、休日を除けば、自分の時間などというものはほとんどありませんでした。
また、次のパートからは、警察官になりたいという学生の質問に答える形で話を進めていきます。
分刻みのスケジュール!食事と風呂は5分!
警察学校に入校してからの2週間は「指導期間」と呼ばれており、この期間は特に忙しく、自分の時間などというものは一切ありませんでした。
警察学校には「入校式」という式典が入校の2週間後に予定されており、式に向けての練習や各種手続き、警察学校のルールの説明などで2週間のスケジュールがぎっちり占められていたのです。
朝起きたら学生全員集まっての点呼から始まり、点呼が終わったら夕方まで200人以上いる同期全員で毎日入校式の練習をしました。
この練習がまた大変だったのですが、入校式の練習の大変さについては後ほど詳しくお話しします。
入校式の練習が終わっても、手続きや警察学校のルールの説明などがあり、毎晩10時くらいまでは寮の自室に戻れませんでした。
当然、それまでの間に食事や風呂の時間もあるのですが、なんとこれらに割かれた時間はともに5分だけだったのです。
夕食の時間、私も含めた同期の警察学校生たちは全員、指導巡査に食堂に連れていかれました。
指導巡査とは指導期間の2週間の間、新入生の世話をしてくれる先輩たちで、彼らもまた現役の警察学校生でした。
そして、私たちはカウンターから順番に食事を受け取り、席につきました。
指導巡査が全員の着席を確認すると「食事の時間は5分だ」と言ったのを聞いて、私たちは絶句しました。
警察学校の食事は量も多く、とても5分で食べられるようなものに感じられませんでした。
しかし、食事の時間が5分と言われたら、それに従うしかありませんでした。
私たちは必死で目の前の夕食をかきこみ、なんとか5分で食べ終えたのです。
食事が終わると、今度は風呂の時間でした。
ここでも、指導巡査は、「風呂の時間も5分だ。5分後にはここに集合」というまさかの一言を放ってきたのです。
5分後に集合ということは、服を脱ぐ時間や着る時間も含めて5分ということです。
警察学校の風呂は広かったですが、何しろ200人近い同期がいっせいに入るため、洗い場が空くまで待たなければなりませんでした。
私も含め何人かは風呂に入るのを諦め、脱衣所のなかで5分経つのを待ちました。
入校式が終わってからは、食事や風呂ももう少し時間をとれるようになりましたが、自分の時間がとれないのは相変わらずでした。
この入校式が終わるまでの2週間の間に、私の同期では2割近い人が辞めていってしまいました。
教官たちからの暴力や罵倒については、次のパートで詳しくお話します。
警察学校では暴力や罵倒が当たり前
私が警察学校で一番辛いと感じたのが、教官たちからの暴力や罵倒でした。
個人的には、これが原因で辞めていってしまった人たちも、たくさんいると思っています。
少しでも動きを誤れば、蹴りが飛んでくる
入校式の練習では、まず軍隊式の動作を教わりました。
軍隊式の動作とは「回れ右」や「前にならえ」、「敬礼」や歩き方などです。
入校式ではこれらの動きをたびたびするほか、警察学校内でも軍隊式の動作を常にしなければなりませんでした。
敬礼時の腕の角度やお辞儀する時の角度、歩く時の腕の振りの角度などはすべて細かく決まっており、うまくできないと教官たちから容赦なく罵声を浴びせかけられました。
そして、ミスをすればするほど、教官からマークされるようになり、そのうち平手や蹴りが飛んでくるようになったのです。
体罰や罵声を受けるたび、失敗できないという思いは強くなり、余計に緊張して、さらにミスを繰り返すようになっていたのです。
警察学校では細かいミスも許されませんでしたから、おかげで今は何をするにも失敗を恐れるような性格に変わってしまったくらいです。
帽子をかぶり忘れて、歯が割れた話
警察学校でミスを繰り返し、完全に教官から目をつけられていた私は、教官から「次にミスをしたらクビだ」と言われてしまいました。
クビを恐れた私はパニックになり、その言葉の直後に早速ミスをしてしまいました。
それは、廊下で帽子を被り忘れるというミスでした。
後ほど詳しく説明しますが、警察学校では意味不明な細かいルールがたくさん存在していたのです。
そのルールを破ると、教官からは激しく叱られました。
そしてそのルールの一つが、「廊下では帽子を被ること」だったのです。
帽子を被り忘れた私は教官から怒られてビンタをくらい、奥歯が欠けてしまいました。
背もたれに背をつけて、蹴飛ばされた話
話はもどって警察学校に入校して間もないころ、夜に教官から全員が呼び出されたことがありました。
呼び出された場所は、入校式の練習をする、講堂というホールでした。
講堂の椅子は映画館のようになっていてふかふかでしたが、なぜか背もたれに背をつけてはいけないというルールがありました。
椅子がふかふかなぶん、背もたれに背をつけない座り方は腰に負担がかかり、長時間座っているのはきつかったのを覚えています。
この頃はまだ、私も不真面目だったので、椅子に座ってすぐに背もたれに背中をつけて座りました。
すると私が座っている椅子を、後ろから教官が思い切り蹴飛ばしてきたのです。
あまりの衝撃に、私は前のめりに吹っ飛んでしまいました。
思えば私が教官に目をつけられてしまったのは、この時だったかもしれません。
警察学校では無駄にルールが厳しいのが辛い
先ほどもお話ししたとおり、警察学校では一見無意味に思えるルールがたくさんありました。
一見と言うか、本当に無意味だと思いますが。
ここでは、警察学校のルールと、それを破った場合の一例についてお話ししていきます。
Tシャツをズボンに入れ忘れて腕立て2時間
警察学校では毎日体力トレーニングの時間があり、その時の服装は警察学校指定のTシャツとハーフパンツでした。
そして、この時着るTシャツの裾は、必ずハーフパンツのなかにしまわなければなりませんでした。
私は最初このルールを知らず、Tシャツの裾をハーフパンツのなかに入れずにいると、赤い腕章を付けた警察学校生に注意されました。
赤い腕章を付けた学生は「学生隊」という、言わば警察学校内の風紀委員のような存在でした。
彼らは警察学校生のなかで最も権力を持っており、逆らってはいけない存在でもありました。
その学生隊の人間から、点呼終了後に自分のところに来るようにと言われてしまったのです。
点呼は毎晩寝る前にあったので、皆が寝る時間、私が学生隊の人のもとに行くと、その場で腕立て伏せの体勢をとるように言われました。
そこから2時間ほど、学生隊の人がいいと言うまで、私はずっと腕立ての体勢をとっていました。
警察学校内を歩く時の謎のルール
警察学校の敷地内で、普通の歩き方をすることはご法度でした。
警察学校の敷地内を歩く時は、常に軍隊式の歩き方をしなければならなかったのです。
具体的な歩き方は、背筋を伸ばし、腕は45度の角度になるように交互に振るというものでした。
さらに全ての指はぴったりくっつけて、ピンとまっすぐ伸ばさなければなりません。
二人以上で歩く時は、一列に並んで、先頭を歩くほうが「一、一、一二」と大きな声で号令をかけ、それに合わせて歩いていました。
また歩いている時に、向かい側から誰かが歩いてきた時は、その場で立ち止まり、大声で「お疲れ様です!」と言いながら敬礼するのが決まりでした。
このルールを守らずに歩いていれば、教官や学生隊に見つかり次第、ひどい目にあわされることは目に見えていたため、全員がきちんと守っていました。
このように警察学校内は、かなり異常な世界でした。
警察学校では連帯責任をとらされる
ここまでお話ししてきたとおり、警察学校ではミスをしたり、ルールを破ったりすると、体罰を受けたり、罵倒されたり、罰として腕立て伏せなどの筋トレをさせられたりします。
また警察学校では、自分がミスをしなくても、こうした罰を受けることもよくあります。
それは、「連帯責任」によるものです。
警察学校では同じ教場(クラス)の誰かがミスをすると、連帯責任で全員が罰を受けることも多いのです。
授業中に寝た学生たちのため、全員が犠牲に
私が警察学校で経験した連帯責任のエピソードで、一つどうしても忘れられないものがあります。
始まりは、警備の授業を受けている時でした。
その日の警備の授業では、過去にあった重大立てこもり事件のビデオを観ていました。
しかしこのビデオの内容があまりにつまらないもので、教場の何人かが途中で寝てしまったのです。
授業が終わった後、警備の教官はそのことを私たちの担任教官に報告し、当然のように担任教官は激怒しました。
次の日の夜、私たちは全員、警察学校の校庭に集められました。
そして、これまで経験したことがないような、厳しいしごきを受けたのです。
私たちは全員、機動隊が使う大きな盾を持たされ、腕を伸ばして頭上に掲げ続けるように言われました。
機動隊が使う盾はとても重く、ずっと持ち続けていることなどできません。
案の定、途中で腕が崩れてしまう学生もたくさんいました。
私の隣にいた学生が崩れると、教官は私に対し、「なんで支えてやらねぇんだ!」と言って蹴りを入れてきました。
どうやら崩れたほうが、お得だったようです。
盾を頭上で掲げるのが終わると、教官は私たちに盾を前に構えるように言ってきました。
そして私たちが構えた盾を、鉄パイプで思い切り殴ってきたのです。
盾で守っているとはいえ、鉄パイプの衝撃はとても強く、恐ろしいものでした。
私たちはこの日、このようなしごきを2時間以上、延々と受け続けていました。
警察学校では絶対に逆らえない
ここまで読んでくださった方のなかには、そんなに理不尽な目にあっていたのに反抗しなかったのかと疑問に思った方もいるかもしれません。
しかし、私の知る限り、教官に逆らった人間は誰一人としていませんでした。
なぜなら、そこには、ある大きな理由があったからです。
警察学校で教官に逆らったらクビ?
警察官の規則が記載されている本には、「警察学校にいる期間中、適正がないと任命権者に判断されたものはその職を失う」このようなことが書かれていました。
そして、教官が言うには、この任命権者というのは各教場の教官だということでした。
つまり、教官にクビだと言われれば、私たちは警察を辞めなければならなかったのです。
私が警察学校にいた間、一番怖かったのは、殴られることでも、罵られることでもなく、警察をクビになることでした。
そのため、どんなに理不尽な目にあっても、教官に逆らえなかったのです。
しかし警察学校を卒業する時、教官から衝撃の事実を伝えられました。
「実はあの任命権者っていうのは県警の本部長のことで、俺にはお前らをクビにする権利はなかったんだ」
つまり、教官が最初に言っていたことは、警察学校生たちをおとなしく自分に従わせるための嘘だったのです。
まとめ
ここまで警察学校のきつかったところについて、私の体験をお話ししてきたことで、もしかしたら警察官になりたいという方々の夢を壊してしまったかもしれません。
しかし、もし本気で警察官になりたいのなら、警察学校の厳しい現状は知っておくべきだと言えます。
なぜなら、警察に憧れて警察官になった人ほど、理想と現実のギャップに苦しみ、警察学校で早々とやめていってしまったからです。
この記事を読んでいただければ、警察学校は厳しいところだということが分かったはずです。
しかし、厳しいということを覚悟したうえで警察官になれば、警察学校はけっして乗り越えられない壁ではありません。
コメント