小説家に向いているのはどんな人か、逆に向かないのはどんな人かについて、詳しく解説します。

向いている人、向いていない人の性格や嗜好などについて多数ご紹介しますが、自分はこういう性格じゃないから駄目だ……というわけではありません。

あくまで、小説家としてやっていくのが楽だったり、逆に大変だったりするだろう事柄について纏めただけです。小説家には色んなタイプの人がいますので、こうでないと駄目である、ということは基本的にありません

記事の信頼性としましては、筆者自身が今年にデビュー予定の小説家であり、複数の出版社との交渉経験があります。

こんな性格の人は、小説家に向いている

小説家に向いている性格について、いくつかご紹介します。
要約を述べておきますと、とにかく「コツコツ継続して」「一つずつ確実に終わらせて」「良い意味で図太い」性格の人が有利です。しかし、これらは生まれ持った性質というよりは、後天的にいくらでも補うことができる部分だと思います。

何事もコツコツ継続する性格の人

基本的に、小説は一夜漬けで書き上げるようなものではありません。数週間、数か月、人によっては数年に渡って完成させるのが一つの長編作品です。稀に西尾維新氏のような極端な速筆家もいらっしゃいますが、彼にしたって本当に特筆すべき点は、あの速度で「ずっと継続して作品を発表し続けている」という点です。

ですので、自分は何事もコツコツ継続して取り組む性格だ、という人は小説家に向いていると言えるでしょう。飽きっぽい性格の人でも、本当に好きなことにはずっと取り組むことができるなら問題はありません

村上春樹氏も言う通り、長編小説を書くという作業は走り続けることと同じです。疲れたからといってどこかに座り込んで、長いこと休んでしまったりしないことが大切です。自分はどうしても物事を継続するのが苦手なんだという人は、科学的に効果のある習慣化の方法などを調べて実践してみるのもいいでしょう。

小説家といえば、その私生活は奇人変人の破天荒、破滅的というイメージが強かった時代もあります(日本では太宰治などの影響が強いような気がしますが、海外でも昔はそういったイメージが一般的だったようです)。しかし現代の小説家のインタビューを眺めてみると、毎日規則正しく生活し、小説をコツコツ継続的に書き続けるような人が多くなってきた印象です。何事も少しずつ継続する性格の人は、現代の小説家にピッタリの性格だといえますね。

一度始めたことはキチンと終わらせないと気が済まない人

小説家にとってもう一つの重要な資質は、とにかく作品を完成させるということです。傑作の構想が頭の中にあったとしても、それは完成させないと意味がありませんし、そもそも本の形になりません。

そういった意味では、とにかく一つずつキチンと終わらせていく性格の人は、小説家という職業にとって重要な資質を有していると言えるでしょう。作品を最後まで書き上げることができないということで悩む方も大勢いますが、どんな形であれ完成品を量産することができる作家は、それだけで有利になります。

小説家には移り気な人も多いですので、一つの作品を書いている途中で別のアイデアが思い浮かんで、ついついそちらの方に取り組んでしまうこともあります。良く言えば創造性豊かでクリエイティブ、悪く言えば注意力散漫という奴ですね。しかしそもそもそういった状況が気持ち悪いと思う性格、一度取り組んだ物事は一つ一つ終わらせないと気が済まないという性格の持ち主は、長編小説を書きあげるうえで有益な性格といえるでしょう。

逆に、一度始めたことを次々と放ったらかしにしてしまうという性格の人は、スケジュールを組んで作品の執筆計画を作ってみてもいいでしょう。締切が無いと小説を書きあげることができないなんて、小説家失格だと言う人もいます。しかし、それは持って生まれた性格なんですから、仕方ないですよね。大事なのは、配られたカードでどうやって上手く立ち回るかです。

良い意味でいい加減、図太い人

小説を発表すると、良い意味でも悪い意味でも読者の反応があります。時には厳しい批判や、誹謗中傷に晒されることもあるでしょう。そういった際に、精神的に動じない図太いメンタルがあれば、小説家としてやっていくうえでずいぶん楽になります。

小説を書くのが好きな人は繊細な性格の方も多いですので、せっかく書いた小説にとんでもない暴言を吐かれたりすると、それだけで筆を折ってしまうこともあります。筆を折らないまでも、精神的に不安定になってしまう人が大半です。

しかし、はじめから「そんなもんだろう」と思えるような良い意味で図太い性格の持ち主は、そういった批判などに晒されても平常運行でいられます。肯定的な感想だけでなく、否定的な感想に対してもしっかり向き合うことができれば、作品の改善にも繋がるでしょう。

また、小説家は先行き不透明な安定とは程遠い職業なので、そういった経済的・将来的な不安から病んでしまう作家も多いです。そんなときでも、「何とかなるでしょう」くらいの良い意味でいい加減なメンタルでやっていける人はずいぶん楽だと思います。実際、心配しても仕方ないことが大半ですし、多くの場合はなんとかなります。

 

これが好きな人は、小説家に向いている

小説家に適した性格を眺めてきましたが、本項では小説家にとって有利になる趣味嗜好についても解説いたします。単純に「本が好きな人」という所から、一歩踏み込んだ解説もしたいと思いますので、参考になれば幸いです。

本を読むのが好きな人

「良い小説を書くためには、小説をたくさん読む必要がある」というのは、わりと広く信じられている考え方だと思います。世界的作家であるスティーヴン・キングをはじめ、プロ・アマ問わず多くの作家が同様の意見を持っています。「小説家になりたいなら、とにかく小説を読め」というのは、多くの職業作家が口にするアドバイスの一つです。

筆者は必ずしも小説をたくさん読んでいる必要は無いとも思うわけですが、何かを作る上で、参照したサンプル数が多いほど有利になるのも事実ではあります。そして筆者自身も、少なくとも一般の人よりは多くの小説を、多様なジャンルの作品を読んできました。

しかしもちろん、その立場に批判的な作家も存在します。『魔界転生』で知られる山田風太郎氏などは、人生は短いんだから読書なんかで人生を浪費しちゃいけない、なんて語ったりもしています。小説を読むより、外に出て見識を広げて、たくさんの人と関わることが大切だと主張する作家もいます

小説は読まないけど小説を書きたい、という作家志望の方も多いと聞きます。それ自体に関して、筆者はあまり否定的ではありません。筆者はどちらかといえば、「読む」よりも「書く」方が大事だと思っていますし、たくさん小説を読むよりも、一冊の本を深く読み込んだ方が良いような気もします。それは単純に、人それぞれの意見と立場、やり方にすぎません。ただ、「小説を書く」うえで一冊でも多くの本を読んでおくのに越したことは無いのは事実です。

色々な議論はありますが、そもそも本を読むのが好きで、息を吸うように読書をする方は、その点で小説家に向いていると言えるでしょう。

映画を見るのが好きな人

小説に限らず、様々な形のストーリーを取り込んでおくことは小説家の財産になるでしょう。漫画やゲームなど、ストーリーが含まれる作品の形態は様々あります。その中でも映画は、特にコストパフォーマンスの高い作品媒体です。

一つの長編小説を読むには、かなりの時間と集中力が必要とされますね。その一方で、映画は一つの作品が通常二時間前後で、視聴にそこまでの集中力も必要ありません。漫画も同じように手軽に吸収できる作品媒体ではありますが、映画が優れている点は、基本的に「その二時間の中で一つのストーリーが完結する」という点です。他の媒体よりも比較的お手軽に、様々なタイプのストーリー・キャラクター・シナリオ展開のサンプルを吸収することができます。

ハリウッド映画ともなれば一つの作品に複数の脚本家が付くことも珍しくなく、そういった一流の脚本たちが練りに練ったストーリーを吸収することができるのは大変有意義だと言えるでしょう。筆者はどちらかといえば、シナリオの基本は小説よりも映画脚本から学んだクチです。

小説と映画は性格の異なる作品媒体ではありますが、どちらもストーリーを持った作品であるということに変わりはありません。映画が大好きで一年に何十何百と鑑賞するという人は、それだけのストーリーの類型・パターンを吸収していると言えるでしょう。そうやって溜め込んだ知識は、いざ自分がストーリーを作ろうと思ったときの莫大な財産になります。

孤独な作業が好きな人

言ってしまえば、小説家はかなり孤独な仕事です。同業者はいますが同僚はいません。担当編集は付きますが一緒に仕事をしてくれるわけではありません。小説を書いている大半の時間は、一人で部屋に閉じこもってああでもないこうでもないと悩みながら、孤独にキーボードを叩くことになります。

そういった孤独な作業が好きな人にとって、小説家はまさにうってつけの職業といえるでしょう。基本的に一人で居たいという孤独趣味な人だけでなく、人と話すのが苦手だという人にもオススメです。その気になれば編集とのやり取りも全てメールで済ませて、最初から最後まで一切誰とも会わずに一冊の本を出すことも可能です。

これは小説家のメリットであると同時に、デメリットでもあると思います。なぜなら、そういうどこまでも孤独な環境に耐えられない人もきっと居るだろうからです。筆者もどちらかといえば寂しがり屋な性質なので、ついつい夜には友人に電話してしまったりします。

しかしそれにしても、ほとんどの作業が一人で完結する仕事はとても楽です。面倒な人間関係も無ければ、会議も出社時間も存在しません。全て自分の好きなように調整して、自分がやりやすいように仕事の計画を組み立てることができます。怒る上司もいません(原稿を堕としたら編集がキレますが)。そういった孤独な生活が好きな人も、小説家に向いているといえるでしょう。

 

これができる人は、小説家に向いている

また、こういうことができる人は小説家に向いている、という項目についても紹介いたします。これらのスキルや考え方が元から備わっている人は、職業作家としてデビューし、生き残る確率が高いと思います。

日々の生活の時間管理・仕事の管理ができる人

コツコツ継続して続けるということにも関わってくる部分ではありますが、自分の生活や仕事をコントロールする能力が非常に重要です。できることなら、毎日何時に起きて、どれくらい仕事をして、どういったことに時間を費やすか、という計画を立てて実際に実行できるようにしましょう

前述しました通り、小説を書くという作業はかなりのロングランになります。場合によっては企画書を提出し、プロットを作り、毎日コツコツ書いて、毎回必ず締め切りまでに作品を完成させる。これを職業として長く続けていくためには、規則正しい生活と時間・仕事のコントロールが不可欠になります。

情熱や元気が有り余って、心身ともに充実している時期は、生活リズムが滅茶苦茶でも何とかなるでしょう。締切前日に徹夜で作品を仕上げるなんていうのは、いかにもイメージしやすい作家的な光景ですよね。しかし、そういった無茶苦茶な働き方というのは、概して長くは続きません。

小説家というのは毎年たくさんの新人が現れては、そのほとんどが人知れず退場していく厳しい業界でもあります。この業界で長年に渡ってプロとしてやっていけるのは、ひとたび『職業作家』という肩書きを付けた者たちの中でも、ほんの一握りです。そんな実力主義の厳しい世界で生き残るためには、自分が発揮できる限りの高いパフォーマンスをずっと維持する必要があります。そのためにも、生活リズムや仕事をコントロールするスキルがすでに身に着いている人は、小説家として長く活躍できる可能性が高いといえるでしょう。

クリエイターの立場から作品を見ることができる人

どんな作品を鑑賞する際も、それを作ったクリエイター側の立場で作品を楽しむ癖のついている人は、小説家になるための大事なスキルを身に着けていると言えます。この作品はどうして面白いのか、どうして失敗したのか。脚本がどのような意図で構築されているのか。そういったことを常に考えることができれば、他でもない自分が小説を執筆する際に、これを応用することができます。

筆者もそうですが、純粋に作品を楽しむことができなくなってしまった作家は多いのではないでしょうか。職業病と言いますか、どんなに感動的な作品を見ても、「ここで涙を誘うためにあの展開が……」「ここの演出はきっとこういう事情で……」ということが頭を過ってしまうため、何も考えずに感動する、笑うということがなかなか難しくなります。

それはそれでどうかとも思うわけですが、こういった視点を常に持っておくことは重要です。優れた点は積極的に作品に取り入れればいいですし、逆に失敗例は避けることができます。そういうことをずっと続けていると、制作の場で大体どのようなことが起きて、最終的に作品がどうなったかというのがわかるようになります

小説の執筆をビジネスとして考えることができる人

プロの小説家とアマチュアの小説家を分ける一つの決定的な違いは、小説の執筆をビジネスとして考えることができるかどうかです。もちろん全ての職業作家がそうであるわけではありませんが、業界で長く小説家として活動している人は多かれ少なかれ、こういった視点も持ち合わせていることでしょう、

小説家は一種の芸術家であると同時に、執筆を通じて収入を受け取るプロでもあるわけですから、こういったビジネス感覚というのが一つの武器になります。しかし人によっては、小説執筆のような創作的活動に、ビジネスや金稼ぎという不純な動機を持ち込むことを忌避する人もいます。というより、特に小説界隈にはそういう人が多いような気がします。

しかしだからこそ、小説の執筆を一つのビジネスとして捉え、明確な戦略を持って作品を作り上げることのできる人は、他の多くの人よりも商業的に成功しやすいといえるでしょう。

小説の執筆というのはただでさえ明確な答えの存在しない、極めて曖昧な作業です。どんな作品が面白いというのは個人の感覚にすぎませんし、小説の完成度という物を客観的に計る物差しは今のところ、この世界に存在していません。そんななかで、商業的視点といった客観的な判断基準を持つことは、少しでも良い小説を書こうとする上で有効な武器になりえます

小説を書くことを、人生の一番の目標にできる人

最後の資質は、小説を書くということが、人生で一番やりたいことだと言えるかどうかです。

前項で小説の執筆をビジネスライクに考えましょうと言った直後にこう言うと、やや矛盾している雰囲気もありますね。しかし、そういうことだと思います。

そもそも、小説を書くというのはかなり大変な作業です。助けてくれる上司も、仕事を手伝ってくれる同僚も存在しません。心身ともに疲れ果てますし、何度も絶望して、不安になって、疲弊して、死に物狂いでやっと一つの作品を書き上げるのが平常運行です。そんな大変なことをわざわざ仕事にしたいと思うのは、小説を書くのが何よりも大好きな変わり者だけです。

ビジネスとして考えるなら、他の分野に参入した方がずっと効率的に稼ぐことができます。こんなに不安定で、どれだけ頑張っても最後は神頼みでしかない仕事を好き好んでやる必要はありません。心血を注いだ傑作を書いても、出版社が広告を打たなければ誰にも読まれずに打ち切られるだけです。それでもビジネス感覚を持って小説を書くのは、この業界で絶対に生き残ってやるんだ、そのためには何だって利用してやるんだ、という強い情熱があるからです。書くことに憑りつかれているからです。

自分の人生は小説を書けないと失敗なんだ、これしかないんだ、という極端な情熱を持った人でもない限り、小説家として長くやっていくのは難しいのではないかと思います。実際、ヒット作を一つだけ書いて、その後一冊も書けずに終わってしまう作家は多く存在します。どれだけ大変でも、どれだけ割に合わなくても、小説を書いているだけで幸せ。そんな人でないと、小説家という仕事は難しいのかもしれません。逆に言えば、小説を書くことを人生の一番の目標にできる人なら、どれだけの苦労があっても、諦めずに長く走り続けることができるかもしれません。

 

こんな人は、ちょっと小説家に向いていないかも

最後に、こんな人が小説家になると苦労するだろう、という事柄についても紹介いたします。これに当てはまるという人は、そこから予想される苦労について覚悟しておいた方がいいかもしれませんね。ただ、どんな業界でもそこに特有の苦労というのはあるものです。

誹謗中傷に弱い人

前述しました通り、全国区で本を出版すると良くも悪くも色んな反響があります。特にライトノベル業界はそういったことが多く、人格を否定するような内容を書き込まれることもしばしばです。

そういった誹謗中傷等に弱いという自覚がある人は、小説家になった後に苦労することが多いかもしれません。せっかく情熱を捧げて書いた本にAmazonレビューで星1を付けられたら、嫌になってしまう人がほとんどですよね。

ただ、こういうのは結局は慣れだと思います。最初の方こそ辛いかもしれませんが、そもそも読者の反応というのは何も批判だけではありません。実際には、それよりもっと多くの肯定的な反応が返ってくることでしょう。

そうやって批判を受けたり、逆に褒めてもらったりすることはあるでしょうが、最終的に心に残るのは「面白かった」と言ってくれる読者の感想です。批判は最初から見ないようにしてしまっても良いですが、作品を好きになってくれた読者のためにも、勇気を出して批判と向き合い、より良い作品を書けるようになると良いですね。

メンタルが弱い人

家でゆっくり珈琲を飲みながら、創造力を自由に羽ばたかせて、優雅にキーボードをパタパタと叩いている。小説家という職業を、そんな風に気楽な仕事としてイメージする人も多いとは思いますが、実際には結構なストレスがかかる仕事です。

前述したような厳しい批判を受けることもありますし、ビジネスですので、最終的には売り上げが全てです。どれだけ大事に書いた小説でも、売れなければそれで終わりです。作家のストレスの多くは、基本的にそのような将来の不透明さから来ます

SNS上でのリスク管理ができない人

これも特にライトノベル界隈で多いことですが、SNS上の不用意な発言が仕事に悪影響を及ぼす事態が多発しています。周囲から批判されるだけではなく、事態が深刻化すると仕事そのものが無くなるケースもあります。

小説家としてデビューする際は、SNSにおける発言について十分に注意することにしましょう。作家本人としてのアカウントを作る場合、お酒に酔うなどして正常な判断を失っている時には触らないようにするのが無難です。

 

まとめ

小説家という職業に向いている性格や嗜好、能力について解説しました。

冒頭でも述べました通り、これらは小説家にとって必須であるということではありません。それに、どちらかといえば商業色の強い小説家に関するお話ですので、純文学などの分野には通用しない部分も多いかと思われます。

小説家と一口に言っても、様々な分野が存在します。その分野ごとに必要とされる能力や性質は微妙に(もしくは大幅に)異なりますので、自分に最も適した分野を探してみるのもいいでしょう。

誰にでも弱点はありますが、自分の弱点は何かを知っておけば、これを何かで補うこともできます。弱点を克服しながら、自分に何が必要かを見定めて、少しずつ前に進んでいきましょう。