この記事でわかること
- 育休取得した男性の妻が見た理不尽な会社対応
- 男性育休に理解を示している人の割合
- 育児休業後の自衛策
とある化学メーカー社員の妻がTwitterで呟いたことから、たちまち拡散し炎上した育休後の会社対応問題。
「夫が育児休業明け2日で(関東から)関西への転勤を命じられた」。ツイッター上のそんな書き込みがネット上で大きな議論を呼んでいる。転勤命令をきっかけに夫が退職したことなどから勤務先の会社に批判が集中。会社が6日、見解を出す事態となった。 朝日新聞デジタル:「夫が育休明け2日で転勤」ツイート反響 カネカは反論 |
その後、1カ月もしないうちにスポーツメーカーでも、
育児休業を取得後に子会社への出向を命じられたとして、スポーツ用品メーカー「アシックス」(神戸市)に勤める男性(38)が「不当な配置転換だ」と訴えている。現在は親会社に戻ったが、会社の就業規則の英訳業務を1人でしているという。 |
しかし2年前の2017年、このような記事が出ていました。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券に勤める機関投資家営業部の特命部長、グレン・ウッド(Glen Wood)さん(47)は、自身の育児休業取得をきっかけに“仕事を干される”などのハラスメント(パタハラ)や正当な理由なく休職命令を受けたとして、10月26日東京地裁に地位の保全や賃金の仮払いを求める仮処分を申し立てた。 Yahoo!ニュース:三菱UFJモルガンの幹部が顔出しでパタハラを訴えた、その思いとは。 |
最後の事例は海外メディアのHUFFPOSTも
Japan Company Vows To End Harassment (中略) Paternity Leave
と「日本の会社がパタハラしてるぜ!」って言わんばかりのタイトルで報じていますね。なんか基本的人権の尊重とか法の下の平等とか憲法で謳っている日本の国民としては、この事態は恥ずかしくないです?
そうですね。これを機に男性の育休が当たり前に取れるだけではなく、復帰後も安心して何事もなかったかのように働ける、そんな社会に日本はなっていってほしいものです。
実は上記事例ではありませんが、知人の友人(私は面識がない)が同じ目に遭った(遠方への転勤を余儀なくされた)らしく、知人は「意外と全国各地どこでも、水面下でこのようなことが起きていて、育休復帰後、育休を取得したことを後悔している人は少なくないんじゃないのかな?」と言っていました。
そこで今回、育休を取得しその復帰後に理不尽な対応をされたことがある方がいないかどうか募集をかけてみた結果、1名の方(当事者の妻)からその体験談をいただきましたのでご紹介いたしますのと、またクラウドソーシングサイト、ランサーズで100名の方に育休についてアンケートを実施してみましたので、その結果をお伝えしていきます。
育児休業できても嫌がらせを受けるなら意味がない…【体験談】
※プライバシー保護のため文章を一部変えさせていただき編集しております。何卒ご了承くださいませ
お互い実家も遠方で頼ることができず、夫が「育児休業を取得するよ」と言ってくれて、私は甘えることにしました。夫は私の妊娠前から「育児休業を取得したい」と周囲に話しており、会社の社長からも「働きやすい会社とPRできる」と激励され、比較的スムーズに育休を取得することができました。
私が出産して、3カ月の完全休暇と、9カ月の時間短縮いわゆる時短勤務をするということでスタートした育休でした。
しかし満額給料の7割で生活していけるほど現実は甘くなく、私は子どもが生まれてから1カ月半が経ったころにパートを始め、その後正社員として就職しました。
しかしその職場環境がすこぶる悪く、私はうつ病を発症しました。朝、起き上がることすらできなくなり、数カ月でやめることになったのです。
そしてそのしわ寄せは当然、夫に…。
保育園に預けるようになってから、頻繁に熱を出すようになった子ども。病院に連れていくために急遽、仕事を休んで迎えに行ってもらうことがもともと多かったのですが、加えて私も通院しないといけなくなり、子どもだけではなく私も病院に通わせるため、さらに休まざるを得ない状況に陥りました。
突然の出向命令
夫の同僚ら(同じ部署の人たち)はみな、私たち夫婦の事情を知っており、とても気にかけてくれたようです。しかし上層部は夫の勤務態度を問題視し快く思っていなかったようです。
夫からは通常3年ごとに、異動辞令が出て部署が変わる会社と聞いていて、まだまだ先のはずが、育児休業が明けるとそれを待っていたかのように、出向を命じられました。
育休明けに配属された先は山奥
夫は部署の異動ではなく出向で、これまでとはまったく違う会社に移籍しました。しかも車で30分かかる山奥にある関連宿泊施設。
そこは以前、夫と一緒に行ったことがあり「ここに出向している人もいるけど、僕は家庭持ちだからここで働くことはないと思うよ」と説明を受けていた場所だったのです。
生活は一変、家計はカツカツ
出向先は全日24時間稼働で
・土日勤務
・夜勤
もある職場でした。夜勤は免除してもらえましたが、土日勤務免除までは認めてもらえませんでした。
その後、一日中ワンオペで家事・育児を頑張っただけで私は、3日近くも寝込んでしまうくらい体が弱っていたのを痛感します。子どもを保育園に預けられる土曜日はまだよかったのですが、保育園が休みとなる日曜日、夫が仕事に行けば療養中の身である私にとってワンオペ家事・育児は正直、ものすごくキツイものでした。
そしてもうひとつ、大きな不安がありました。それは出向するため一度、退職扱いになるというものでした。
「このまま会社に戻れなかったらどうなるんだろう…」
出向命令された日から毎日のように夫婦で、そのような暗い話をしていました。というのもその会社は給料と賞与は中の上でとてもよかったのです。案の定、出向した結果、給与が減少し、生活に響くことになりました。
これまで支給されていた住居手当はなくなり、生活はカツカツになりました。さらに毎日、山道を運転しなければならないためガソリン代が想像以上にかさみ、切り詰めた生活をせざるを得ませんでした。
夫が元同僚から聞いた話ですが会社の飲み会で、「アイツ(夫)を飛ばしてやった!」と自慢げに話していた上層部の人がいたそうです。
1年で元の会社に戻れたが…
出向して1年、まじめに働く夫の姿を見て同情してくれたのでしょうか。出向先でよくしていただいた上司の方が、夫が元の会社に戻れるようにと働きかけてくれたのです。
結果、夫は1年で元の会社に戻ることはできました。
ところが今度は、真夜中~朝に稼働する部署に配属されたのです。療養中の私は思うように起きられず、夫は夜、早々と寝て、真夜中起きて1人で身支度し仕事に出かけています。これが現在の状況で、いつまで続くのかと頭を悩ませています。
このままではパタハラはなくならない
私は夫の会社では「旦那に育休・有休を取らせてまで育児を怠けている奥さん」というレッテルを貼られているようです。
直接言われたわけではありませんが個々の事情を知らない人たちが、他人の気持ちを考えず平気でそのようなことを言い、
「母親は子どものためなら、どんなに具合が悪くても頑張るものだ」
「夫ではなく実家の両親に頼るべきではないのか」
と常識? を押しつけてくるのはいかがなものか。とても苦しくて悔しくてたまりません。
育児休業の意味がない
育休制度がどんなに法律上、整備され、いくら容易く育児休業を取得できても、そのあとに報復ともとれるような理不尽な嫌がらせを仕掛けられるようであれば、意味がありません。
職場の人、特に総務部や人事部といった人事権を掌握しているのに、育児休業を好ましく考えていない人らの意識を改革できなければ、パタハラ、育休取得後のハラスメントはなくならないと思います。
ありがとうございました。
そうですね。いくら法制度が充実しても、職場や周囲の人らが育休についてどう考えているかですよね…。快く思わないのはなぜなの?
育児休業をいただけたとして復帰後、理不尽な思いをするかもと考えると、取得しにくいなと感じます。そのほかの方は育休についてどう思い、どう感じ、実際に取得してきた方は会社からどのような対応をされてきたのでしょうか。アンケートから紐解きます。
男性の育児休業に賛成?反対?復帰後の嫌がらせは存在?【100人アンケート】
アンケート実施媒体:ランサーズ
アンケート実施日:2019年7月1日
男性の育休についてどう考えているか?
以下の結果となりました。7割弱は理解を示し、2割弱が理解を示さず、1割強が他人ごとと感じているようです。
- 積極的に推進してほしい…54人
- 法律で決まっているからありがたい…13人
- 法律で決まっているから仕方ない…14人
- 周囲の仕事の負担が増える迷惑な話だ…5人
- 廃止にしてほしい…0人
- なんとも思わない…14人
育休を取得した人の割合
今回のアンケートにかぎると、以下の結果です。
育休の経験 あり…12人 なし…88人
経験ありの男女区分 男性…1人 女性…11人
男性の育休って、本当に少ないですね!
育休復帰後の嫌がらせを経験したのはわずか
今回12人中2人だけが嫌がらせを経験しているという結果だったのですが、嫌がらせの中身を見ると、
- 解雇された
- 退職強要された
- 非正規雇用(パート・アルバイト)に変えられた
- 減給・賞与減となった
となり、決して穏やかなものではありませんでした。
育休がきっかけで解雇、退職強要、実際にあるのですね。また非正規雇用への変更、減給・賞与減ですが人によっては、不当な配置転換も伴って行われる可能性もあるでしょう。
パタハラってもっと多いと思っていました。となれば育休を目のかたきにして嫌がらせをする人たちって正直ダサいです! また私、こんな呟きを発見しました。不当な配置転換といえば追い出し部屋ですよね? 今もあるのかしら?
派遣の女性:育児休業取得社員が追い出し部屋に行かされているのをみた。#女性の活躍法
— 赤石 千衣子 Chieko AKAISHI (@nyachieko) 2014年9月29日
残念ながらここ最近も、追い出し部屋に関する記事が出ていました。
東芝が100%出資する主要子会社にこの春、新しい部署ができた。そこには希望退職に応じなかった社員らが集められ、社内外の多忙な工場や物流倉庫で単純作業を命じられている。東芝は「適切な再配置先が決まるまでの一時的措置」だと説明するが、社員からは「退職を促す追い出し部屋だ」との反発が出ている。 朝日新聞デジタル:東芝系社員、退職拒み単純作業 「追い出し部屋」と反発 |
話を戻しますが、育休経験なしと回答した半数以上の方は実は、もしこれから育休を取得し、復帰したときに会社から次のような目に遭わされるのではと、不安に感じていました(なかには同僚や部下の身を案じて回答されている方もいらっしゃるようです)。
半数以上が育休取得後の嫌がらせを不安視
このような結果です(複数回答可のため人数は延べ数)。
契約更新拒否されると思う…5人
契約更新回数上限を減らされると思う…1人
退職強要されると思う…2人
非正規雇用(パート・アルバイト)に変えられると思う…9人
自宅待機させられると思う…2人
復帰後の仕事内容や条件等の希望を無視されると思う…24人
役職を降格させられると思う…11人
昇進できないと思う…22人
減給・賞与減となると思う…14人
不当な配置転換をさせられると思う…18人
遠方への転勤を余儀なくされると思う…5人
そのような不利益を与えるような会社に勤めていない…39人(実数)
そういえば冒頭部で紹介された記事の事例はすべて有名企業、大手でしたね。中小企業も似たようなものだと思うと、いくら制度が整っていても、育児のためのお休み、取りにくいですね…。何か対策法ってないものです?
まず私は育休に理解のない会社や人のマインドを変えようとするより、自衛策を講じるのが先と考えました。会社や職場の意識を変えるのは、思想・良心の自由も謳っている日本では正直、難しく限界がありそうですから。
そこで復帰後、理不尽な目に遭った、遭いそうならどうすべきかを最後に考察し、まとめることにしました。
育児休業後の自衛策
1.復職面談時など、やりとりを録音しておく
トラブル当事者になっている場合、社内で音声を録取していたからといって、解雇されるようなことはありません。復帰後がどうしても不安と感じるようでしたら、録音をされることをオススメします。のちに訴訟を起こすことになったとき、心強い証拠となるはずです。時系列でその都度、ノートや手帳にそのやりとりを記しておくのも有効です。
社内録音はOKの理由を記した関連記事
2.労働組合、厚生労働省雇用均等・児童家庭関係に相談する
労働組合があればまずそこに相談します。しっかりと機能しておらず頼りないまたはもともと社内に存在しないときは、各都道府県労働局雇用環境・均等部(室)で、次の内容などを相談できます。
“妊娠、出産・育児休業等を理由とする不利益取扱
妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント
育児・介護休業“
参考:厚生労働省 相談窓口等一覧
ただし平日朝から夕方までとなっていますので、有給休暇をとるか、配偶者に電話してもらい、どう対応すればいいか聞くのがいいでしょう。
ちなみに労働局はハローワークではありません。ハローワークの上の機関です。多くの場合、合同庁舎という建物の中に入っていたりします。
3.弁護士に相談する
労働問題に詳しい弁護士に相談すれば、代理して会社と話し合いや交渉をしてくれる可能性があります。
まとめ
証拠を確実に録取し、早めに労働組合や行政に相談、早めに弁護士にも相談し、具体的に動いてもらうようにすると、育休復帰後のトラブルを早期解決することができるでしょう。
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