私が以前勤めていた会社(大手電機メーカー:日立製作所)の同僚ですが、昨日電話があり、退職したことを伝えられました。
女性なのですが、私と同じ事業部に同期入社し、社内SEとして4年半頑張ってきました。
お世辞にも、SEに向いているとはいえない子だったのですが、周りに支えられ、勉強し、毎日遅くまで残り頑張ってきたのですが、ついにギブアップしてしまったそうです。
私の同僚に限らず、女性でSEになったけれども辞めた/辞めたくなるケースは多いです。今回の記事では私の周りの事例を基になぜ辞めたくなるのかを考えました。
そもそもSEの仕事とは
SEはシステムエンジニア(System Engineer)の略です。
入社する会社によって、プログラミングなどの下流工程を担当する、要件定義や客のケアなどの上流工程を担当する、など内容は異なります。
ただ、共通して言えることは他の職種に比べると仕事が明らかにしんどいということです。
下流工程の場合はプログラミングや設計を行いますが、概して長時間労働になりがちです。
理系出身で計算事に強い女性は良いですが、文系出身であまり理論的に考えることが得意ではない女性には、プログラムコードを書いたり、設計書を作ることは苦痛な作業です。
研修や最初に配属される小規模なプロジェクトの場合は、まだ興味関心があり楽しみながらできることも多いです。ただ、いずれスケジュールがタイト/内容がむちゃくちゃなプロジェクトに放り込まれるので、遅くまで残業することになります。
これはSEよいうよりはPG(プログラマー)の作業とされる場合も多いです。
上流工程の場合は、プログラムや設計は下に丸投げできます。
実際にやることは以下のような内容です。
- 客のニーズを聞く
- ニーズをシステム要件に落とし込む
- 開発を請け負う会社に依頼する
- 進捗管理や内容のレビューを行う
これだけ聞くと楽そうに見えますが、どんなに簡単なプロジェクトであったも絶対に何か問題は起こるので、その解決に走り回ることになります。
客からは「希望と違う」と怒鳴られ、開発会社からは「このスケジュール/予算ではこんな開発は間に合いません/できません」と泣きつかれ、板ばさみにあいます。
自分が必死に手を動かす時間は減りますが、問題の対応や客への説明資料の作成などに膨大な労力がかかるので、上記3あたりからは毎日帰りが遅くなります。
少し経路の違うパターンとして、既存システムの運用の仕事があります。
これは新たにシステムを作ることではないので楽そうに見えますが、配属先によって大分変わります。
システムの数が少ない/仕組みがよく出来ている場合は割と早め(6~7時など)に帰れますが、数が多い/作りが下手な場合は毎日10時くらいまで残ることになります。
楽な現場は既に昔からいる人が居座っていることが多いので、新人である程度慣れてくると、ほぼしんどい現場に回されます。
細かく言うともっと分類・細分化ができますが、ざっくり以上のような内容がSEの仕事です。
女性にSEという仕事は向いているか?
個人的な見解も多分に含みますが、女性は上流工程には向いている、と思います。
プログラミングなどの下流工程は、処理ロジックなどを考える必要がありますが、このような論理的な部分は男性の方が向いています。
できる女性も多いですが、人によって合う/合わない の差が、男性に比べて大きく開きがちです。
よって、自分はプログラムを書くことが得意だ・好きだ、と思う女性以外は避けたほうが良いでしょう。ものすごく苦痛になります。
一方の上流工程は客へのヒアリングや取りまとめなど、人と触れるスキルが求められます。
人によって得手不得手はあると思いますが、この手の折衝事は男性と比べると女性が優れている傾向があります。また、聞いた内容を纏めることも、女性の方が整理が上手な人ガ多いので、漏れが少ないです。
昔受けた会社の人事も以下のように言っていました。
「就職活動で面接をしても、女性の方がしっかり話が出来る。これは入社後も変わらず、対人のやり取りは女性の方が即戦力となります。」
一人事担当の意見ではありますが、傾向としてはその通りです。
保守運用については、お客の業務部門の人と日々メールや電話のやり取りが発生します。
ここでも話す能力が求められますが、女性のほうが捌きが上手です。保守運用をやっている男性SE、女性SEをそれぞれ見てきましたが、男性SEは話をこじらせることも多いですが、女性はうまく人間関係を作り回せていました。
ということで、女性は上流工程・保守運用のSEは向いています。
ただ、向いている=仕事が楽にできる、とはなりません。
長時間労働・体力勝負になるので女性にSEはきつい
先に述べた通り、仕事内容自体に時間がかかるという特性がある以上、当然拘束時間は長くなります。適正があって効率的に回せたとしても、残業はそれなりに発生します。
適正があって効率的に回せたとしても、6~7時で仕事が終わることはあまりありません。
上流工程は最初の頃は、6~7時で帰れるかも知れませんが、ある程度進むと、纏めるべき内容・解決しないといけない問題が山積みになり遅くまで残ることになります。
何とか要件を纏めて開発を丸投げしても、大体は想定と違うシステムができあがり、若しくは客から違うと指摘を受け、解決のために手を尽くすことになります。この時期になると毎日終電は当たり前です。
保守運用も先述の通り当たりはずれが激しいのですが、外れの現場に当たった場合は毎日遅くまで残ることになります。
また、クレーマーが多い現場に当たると毎日メンタルにくる問い合わせを浴びせられて精神的に病みます。そして、大体の現場はクレーマーが複数人いますので、それなりにメンタルにきます。
20代のうちはやる気と体力でカバーできますが、30歳を超えてくると心身共にきつくなるので、この頃になると本気で辞めたくなってきます。
私の同期が鬱病になって辞めるまで
私の同期は退職後に電話をわざわざかけてくれ事の経緯を話してくれました。
直接の原因は、鬱病が悪化したためでした。
私がまだ会社にいた時も、過呼吸に陥ったり、食事が喉を通らなかったりと精神面で病んでしまうことが多かったです。幸い、休職などは一度もなかったのですが、仕事の忙しさ・難しさは日々増加していき、症状が悪化、退職となったようです。
元々、それほどコンピューターに詳しいわけでもなく、SEという仕事もよく分からないまま選んでしまったようです。
Javaを少しかじったことがある程度の実力で、アルゴリズムなどを考える論理的思考も弱かったため最初から大変苦労していました。入社し半年ほど経過しSEの実態を知るにつれて「止めとけばよかった」みたいなことを良く言うようになったことを覚えています。
OLとしてのアフターファイブも楽しみたかったようですが、退社は大体22時を回ります。
店が開いていないし、友達とも時間が合わないので、横浜で1人カラオケによく行っていました。
本人は事務職か何かに配置転換してほしかったようですが、私がいた会社は基本的に職種転換不可能なので、ずっとSEをやるしかありませんでした。
鬱病で退職した同僚のその後の人生
遅ればせながら、彼女は27歳にしてやっと世間一般のOLらしい生活を始めることとなりました。
次の仕事は営業支援の事務職であり、比較的単純作業が多く、早く帰れる職場で、家からも20分ほどとかなりの好条件だそうです。
まさに、アフターファイブを楽しみ放題。本人曰く、ヨガや料理、英語といった女子力アップの習い事に精を出したいそうです。
この記事を加筆している2018年の時点で、彼女は新しい職場で良い出会いに恵まれ無事に結婚しています。一方の私は独身です(笑)
個人的には、これで良かったと思っています。
素直に、「よく頑張ったね、卒業おめでとう!」と伝えました。
自分にあっていると強く思わない限りはおすすめしない
システム開発・運用が好きな人、若しくは常にバリバリ働きたい人にはSEの仕事はおすすめできます。
ただ、仕事内容を何となくだけ把握して漠然と検討している、何か面白そうだからやってみたい、という動機でしたら考え直した方が良いです。SEになる場合はそれなりの覚悟を決めないと、長く続けることは難しいです。
システムをずっとやってきた私の老婆心から言うと、二十歳を過ぎた花盛りの女の子が、モニターと向かい合い悲壮な顔で深夜までわざわざ働く必要はないと思います。
そう、若い時代は戻ってこないので、時間を使ってその時しかできない貴重な体験や楽しいことをもっとすべきです。
まとめ
否定的な内容を書いてしまいましたが、本当に覚悟をいる必要なので敢えてこのように綴っています。
これからSEになる/なるか検討されている女性は仕事の実態をよく把握された上で、決定を行ってください。
SEという仕事は面白みも当然たくさんあるので「これが天職だ」と感じられた場合は、ぜひ頑張ってみて欲しいと思います。
ちなみに、私の場合はSEの中でも少し毛色が違う社内SEというものをやっていました。この職種で何度か転職もしていますので、よろしければ併せてご覧頂けますと幸いです。
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