経費計算の基礎と面倒な作業を10倍楽にする方法【初めての個人事業主】

副業

「働き方改革」や「副業解禁」がニュースメディアで連日のように取り上げられ、実際に個人事業主として副業を始める方が急増しています。ただ「副業」と一言でいっても、法的には「事業」という扱いになります。したがって、必然的に経費計算が必要になってくるわけです。

しかしながらいきなり経費計算と言われても、「経費…?どうやって処理すればいいの?」「どんな出費が経費になって、それをどうやって記載すればいいの?」と悩んでしまいませんか?経費計算を初めて行うのですから、最初はわからなくて当然です。

当記事では、個人事業主として7年生きてきたファイナンシャルプランナーの筆者が、副業やフリーランス(個人事業)における経費計算についてわかりやすく解説していきます。税務調査で指摘を受けやすい実例も記載しているので、よかったら参考にしてくださいね。

 

1.経費とは

まずは、事業を運営する上での非常に重要なキーワードである「経費」について理解しておく必要があります。なぜなら多くの方は、「経費って聞いたことはあるけど、具体的に説明しろと言われると自信がない…」というような状態だからです。このような状態で経費処理を行うと、重大な計上ミスにつながりかねません。

しかし実は、経費の理解はそこまで難しくないのです。ちゃんと基本さえ押さえておけば、誰にでも理解できるものになっていますよ。こちらの章で経費の基本についてわかりやすく触れていきましょう。

経費=事業を運営するために必要な支出のこと

経費を一言でいうと、「事業を運営するために必要な支出」のことです。例えば、ラーメン屋さんを営んでいるケースを想定すると、

  1. 店舗や事務所の家賃
  2. 店舗を運営するための光熱費
  3. アルバイト等の人件費
  4. 料理を提供するための食器類
  5. 宣伝のための広告費
  6. 取引先との会議、交際費用

などの支出が経費になりますよ。

これらの費用は事業を運営する上で必要不可欠な支出ですから、経費計上することで、売上から差し引くことができます。

経費にすると売上から控除され、税金が安くなる

経費にすると税金が安くなる」という言葉を聞いたことはありませんか?おそらく多くの方は詳細なカラクリが理解できていなくとも、「経費が税金に影響する」という点はご存知かもしれませんね。

なぜ経費を計上すると税金が安くなるのかというと、経費額は売上から控除されるからです。売上から経費額が控除されることで、利益に対して課税される仕組みになっています。

計算式を簡単にまとめると、下記のようになります。

<課税対象の利益額計算>
売上高-必要経費額=利益額(課税対象になる金額)

つまりわかりやすくいえば、経費額が増えれば増えるほど利益が圧縮され、結果的に税金の金額も安くなるわけです。このような事情から、事業において経費計算が非常に重要なポイントだといわれるのですね。

もちろん関連しない支出を経費にはできないので注意

「経費額が増えると売上が圧縮されて、結果的に税金が減る」と聞くと、プライベートな支出も経費に入れてしまおうと考える方も少なくありません。しかしながらお伝えしたように、経費は事業を運営するために必要な支出です。したがって、プライベート支出を経費として計上した場合、税務調査で指摘されてしまうリスクが非常に高くなってしまうのです。

税務調査とは、健全に会計処理されているかどうかを税務署から派遣された調査官が、チェックする作業のことです。税務調査の際に万が一不正会計が指摘された場合、延滞税を含めて追徴課税されてしまう可能性もあるということです。

税務調査は定期的なものではなく、ランダム的に行われます。追徴課税は税率も高く、加えて所得が上がってしまうことにより、住民税等の他の税金も追加で請求されることになります。

このような点から見ると、プライベート支出を経費計上する行為は非常にリスクが高いといえます。絶対にしないようにしてくださいね。

 

2.経費の項目は19種類が基本!経費の仕訳基礎

「経費」と一口に言ったとしても、様々な種類が存在しています。中でもこれからご説明する19種類の経費科目は代表的なものなので、これから個人事業を営むなら必ず覚えておきたい項目になっています。

経費の種類を簡単に解説した上で、「仕訳」と呼ばれる作業についても触れていきますね。

もちろん、全ての項目を覚える必要はありませんが、「この支出は〇〇費として経費計上しよう」と支出前に判断できるようになると、より効率的に経費を使うことができますよ。

19種類の経費科目一覧

個人事業で取り扱う代表的な19種類の勘定科目は、下記のとおりです。

<個人事業の勘定科目19種類の一覧>
勘定科目該当する支出勘定科目該当する支出
租税公課税金や市役所の証明書発行費用など福利厚生費従業員の慰安旅行やお祝い金など
荷造運賃発送運賃、送料、梱包資材費用など給料賃金従業員の給料
水道光熱費水道、電気、ガスなどの料金外注工賃外部に委託した業者に支払う費用
旅費交通費電車賃、タクシー代、新幹線交通費など利子割引料借入する際の利息など

(自動車ローンや金融機関への利息など)

通信費インターネット料金、サーバー代など地代家賃店舗や事務所の家賃など
広告宣伝費広告に使用した費用貸倒金回収できなくなった売上の

損金処理に使用する項目

接待交際費取引先との接待費用や

得意先との打ち合わせに支出した費用

雑費いずれの必要経費にも当てはまらない支出
損害保険料自動車保険、火災保険、賠償に関する保険など専従者給与青色専従者への給料

(多くのケースでは配偶者)

修繕費機器の修理代、車両のメンテナンス費
消耗品費オフィス用品や文房具など(10万円以内で法定耐用年数が1年以内の消耗品)
減価償却費固定資産の費用を一定期間ごとに計上するための項目(設備や車両などが対象)

上記のように、経費には様々な種類が存在しています。上記の項目は確定申告書の収支内訳書にそのまま載っているので、個人事業主には必須ともいえる代表的な科目になっていますよ。

支出した費用はレシートや領収書を保存した上で、会計処理を行うことになります。

レシートや領収書の保存義務期間は、

  1. 白色申告の場合…
    青色申告よりも簡易的な会計処理で問題ない確定申告方法。そのかわり、青色申告特別控除や専従者給与など、青色申告限定の節税制度は使うことができない。レシート等の保存期間は5年
  2. 青色申告の場合…
    複式簿記による記帳が義務付けられている確定申告方法。65万円の控除を受けられる「青色申告特別控除」や、配偶者を従業員として給与を支払うことのできる「専従者給与」などの節税制度を利用できる。レシート等の保存期間は7年

といずれもかなり長期になっているので、安易に捨てないように注意してくださいね。

青色申告と白色申告の違いは、こちらの記事で詳しく触れていますので、参考にしてください。
(①【実体験】個人事業主のなり方と注意しておくべきポイント)

該当しないものは新しい項目を設けることも可能

事業内容によっては、19種類の勘定科目に該当しない支出が発生する場合もあるかと思います。そのようなケースでは、新しい勘定項目を設けることも可能になっていますよ。

筆者が知っている例でいうと、

  • 販売促進費…販売を促進するための費用。キャンペーン費用など
  • 会議費…1人5,000円以下で会議に支出した費用など
  • 図書研究費…関連書籍の購入費用など

などの項目を新しく設けている個人事業主の方も多いですね。

もちろん、あまりにも的はずれな経費項目を設けると税務調査で否認されるリスクが高くなってしまうので、基本は19項目を活用しつつ経費計上するのが無難でしょう。

仕訳の実例

経費を計上する際は、「仕訳」という作業を行う必要があります。仕訳とは、「簿記」という記帳方式に則って行う、いわば「お金の流れを記載するための作業」です。

事業による所得では

  • 白色申告…簡易帳簿
  • 青色申告…複式簿記

による記帳が義務付けられていますので、経費計上する際は必ず仕訳を行う必要があるということです。

白色申告も青色申告も作業を簡素化するために会計ソフトを活用するケースが多いのですが、基本的には複式簿記になっているものが大半です。

複式簿記は、一方を「借方(かりかた)」もう一方を「貸方(かしかた)」と記載する記帳方式です。文章だと少しわかりにくいと思うので、下記の例を見てみてくださいね。

<仕訳の実例>
あなたはラーメン屋さんを営んでいる個人事業主です。事業で使用するセロハンテープを現金1,000円で購入しました。この取引の仕訳を記帳する場合、下記のような記載をすることになります。

<帳簿の記載例>
借方貸方
消耗品費 1,000現金 1,000

上記のように、取引の詳細を所定の方式で記載するのが仕訳という作業になっています。ただ、いちいち全ての記載方法を覚えるのも大変ですし、個人事業主になりたての方であればなおさら面倒な作業だといえます。ただでさえ事業で忙しいのに、会計作業で多大な時間を消費していては、本末転倒ですよね。

そんな場合に活用したいのが「クラウド会計ソフト」です。クラウド会計ソフトを活用すれば、簿記の詳細な知識が無かったとしても、簡単に会計を管理することができますよ。こちらも詳しく触れていきますね。

 

3.会計処理の効率化には「クラウド会計ソフト」が最適

会計処理の基本である仕訳について触れましたが、1つ1つを手作業で行った場合、多大な時間を消費することになります。当然ですが、1つのレシート=1つの取引という扱いになるため、膨大な作業量をこなすことになってしまうからです。せっかく個人事業を運営しているのに会計作業だけで消耗していては、非常にもったいないですよね。

そんなときに活用していただきたいのが、「クラウド会計ソフト」です。クラウド会計ソフトを活用すべき理由とおすすめサービスについてご説明していきます。

クラウド会計ソフトを使うことで会計処理が10倍以上楽になる

結論からいうと、クラウド会計ソフトを活用すべき理由は、「会計処理が10倍以上楽になるから」です。

クラウド会計ソフトを活用するメリットを簡単にまとめると、

  • 経費科目があらかじめ入力されているので、作業自体は選んで金額を入れるだけ
  • 会計知識がなくても簡単に仕訳を行うことができる
  • クレジットカードや銀行口座を自動同期できるので、非常に効率的
  • 入力内容をそのまま出力することで確定申告も対応可能

の4つが大きなポイントになっています。

特にクレジットカードと銀行口座を自動同期できる機能は、手作業に比べて格段に効率化を図れるので、1度使えばもう元に戻れないくらい便利ですよ。

「副業で個人事業主を始めようと思っている」という方や、「会計の知識がないので経理作業が不安…」という方は、必ず活用したほうが良いでしょう

有名3大クラウド会計ソフト

「クラウド会計ソフト」と一言でいっても、世の中には様々なクラウド会計ソフトが存在しています。いずれも少しずつ強みが異なるので、ご自身にピッタリのサービスを選ぶ必要があります。会計にあまり詳しくない方は有名なサービスを優先的に選ぶほうが、基本的な機能も揃っているので無難ですよ。

2019年6月の時点で有名なクラウド会計ソフトは、下記の3つです。
<有名3大クラウド会計ソフト>

  1. freee(フリー)…会計が初めての個人事業主でも使いやすい
  2. 弥生会計 オンライン…個人事業主は対象外。法人のみ対応
  3. MF(マネーフォワード)クラウド確定申告…経費入力の自動化に強い

それぞれの簡単な特徴は上記のとおりです。

筆者も様々なクラウド会計ソフトを使ってきましたが、freee会計知識がなく初めて経費入力を行う方に向いていて、MF(マネーフォワード)クラウド確定申告は、会計知識が少しある前提で自動化を希望する方向き、という感じのサービス内容になっています。ご自身がどちらに当てはまるのかを確認しつつ、使いやすいクラウド会計ソフトを選んでくださいね。

未経験から副業で使うなら「freee」がおすすめ

「初めて個人事業主になるから、会計が全くわからない」という方は、「freee」という会計ソフトがおすすめです。

なぜかというと、

  • 仕訳項目ごとの説明が記載されているので、会計知識が無くとも入力しやすい
  • スマホアプリでレシートを撮影すれば、内容を読み取ってAIが仕訳項目を予測してくれる
  • 口座やクレジットカードを1度同期すれば、勝手にリアルタイムで明細を取得してくれる

という3つの特徴があるからです。

筆者もfreeeを活用していますが、非常に便利かつ効率的に経費入力を行うことができるので、とても重宝していますよ。

クラウド会計ソフトを選ぶ際の参考にしてくださいね。

 

4.【実例】税務調査の恐怖!調査官に指摘されやすい4つの落とし穴

個人事業主の経費について解説してきましたが、正直に言ってしまえば、経費の記入を少しミスしたところですぐに税務署から指摘されるわけではありません。莫大な金額の記載ミスであれば話は別ですが、税務署が些細なミスを全て見張っているわけではないのです。

しかしだからといって、「どうせ見てないんだから適当でいいでしょ」とずさんな管理をしてしまうと、税務調査で多数の指摘を受けることになります。多数の指摘=高額な追徴課税なので、個人事業主にとっては恐怖そのものですよ…。

ここでは、実際に税務調査で指摘されやすい「4つの落とし穴」をご紹介しておきたいと思います。

①按分すべき経費を全額計上

個人事業主の場合、「按分(あんぶん)」という処理が必要な経費が多くなります。按分とは、事業に使用している割合のみを経費計上し、残りをプライベート支出として処理する仕訳方法のことです。

例えば、事業所と自宅を兼用している場合、事業に使用している面積から按分割合を決定する必要があります。当然ながら、全ての部屋を事業として使っているわけではないですからね。

しかしながら、「経費を高くすれば税金が安くなる!」という理由で、按分せず全額を経費計上してしまう個人事業主の方も多いのです。もちろん税務調査では、このような処理を認めてもらえるはずもありません。特に家賃の場合は費用も大きいですから、万が一経費が否認された場合、高額な追徴課税につながるのは間違いないです。

そんな悲惨な事態を避けるためにも、按分すべき費用はしっかりと按分し、正確に経費計上するようにしましょうね。

②一般的な金額よりも高額な支出を計上

税務調査では、「一般的な費用相場に沿っているかどうか」をチェックされる場合も多いです。

実際にあったのが、「ホテルの宿泊費用4万円が高額だと指摘され、経費の半額を否認された」というケース。一般的な費用相場から離れた金額の場合、このように税務調査で否認される可能性もあるということです。

経費を計上する際は「一般的な相場はどの程度か」もチェックした上で、必要があれば計上する金額を調整するようにしましょう

③プライベートな支出を経費計上

個人事業主が税務調査で指摘されるケースで1番多いのは、やはり「プライベートな支出を経費計上している」というものですね。このケースではほぼ確実に全額否認を受けることになり、高額な追徴課税を受ける可能性が非常に高いです。

筆者の知る実例としては、

  • 事業主のタバコ、飲酒費用が接待交際費に計上されていた
  • スーパーの食料品費が接待交際費に計上されていた
  • 事業主が個人で使うための高級時計が雑費に計上されていた

などですね…。全て税務調査で指摘され、高額な追徴課税に繋がっていました。

プライベートな支出は、絶対に経費計上しないように注意しましょうね。

④減価償却すべき費用を一括計上

高額な費用を「減価償却」せず、一括で費用計上しているケースも、税務調査で指摘を受けることになります。

減価償却とは、複数年にまたがって使用するような資産に対し、複数年に分けて経費を計上していく方法のことです。減価償却が必要な資産の代表例としては「自動車」ですね。新車の普通自動車であれば、法定耐用年数にしたがい6年間で費用を計上していく必要があります。

にも関わらず、「今年は利益がたくさん出たから、一括で計上しちゃえ」と減価償却を無視して費用計上した場合、税務調査でほぼ確実に指摘されます。減価償却が必要な費用は正確な計算を行った上で、指摘されないよう慎重に計上なさってくださいね。

 

5.まとめ

経費計算は、おそらくほとんどの個人事業主にとっては面倒で仕方のない作業です。しかしだからといって適当な会計をしてしまえば、税務調査で高額な追徴課税に泣くことになりますよ。

そのような事態を避けるためにも、クラウド会計ソフトを最大限活用しつつ、正確に経費計算をするようになさってくださいね。

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