昨今、働き方改革がテレビでも取り沙汰され、実際に副業や個人事業を始める方が急増しています。もちろん、最も大切なポイントは「事業が上手くいくかどうか」なのですが、事業を始めるにあたっての「手続き」も非常に重要なものです。

しかしながら、個人事業は会社員と違ってご自身で各手続きを行わなければならないため、

  • 何から手を付ければ良いのかわからない
  • 副業で個人事業主になりたいけど、どんな手続きがあるのか知っておきたい
  • お小遣い稼ぎで始めたけど売上が大きくなってきたので、ちゃんとしておきたい

というような不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

かくいう私も、個人事業主を約8年経験している1人です。だからこそ、「わからない…!」という方の気持ちも非常によくわかります。

当記事では、個人事業主を経験した筆者が、個人事業主になるための手続きや重要な注意点をわかりやすくまとめています。順を追ってご説明していますので、よろしければ参考になさってくださいね。

個人事業を始めるなら「開業届」の提出から!だけど提出しなくても事業は始められる

「個人事業を始めたいけど、手続きがわからなくて不安…」という人も多いのではないでしょうか。実は、かつての筆者も同様の不安を感じた経験があるので、その気持ちを痛いほど理解できます。
しかしながら個人事業に関わる手続きは、会社のように「誰かが教えてくれる」というものではありません。つまり、わからないところはご自身で調べつつ手続きを進める必要があるということです。

筆者が個人事業を始める際に行った手続きの流れを簡単にまとめると、下記のようなイメージになります。
個人事業を始める際に行った手続きの流れ

  1. 取り組む事業内容を決める
  2. 「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を税務署に提出
  3. 日々の経費を計算する
  4. 個人事業主として収入を得た翌年に前年分の確定申告を行う

まずは、個人事業を始めたときに最初の壁となる、「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」の手続きからご説明していきましょう。

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)とは

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)とは、個人事業を始めた際に、「事業を始めたよ!」と税務署に通知するための手続きです。開業届の提出方法には、

  1. インターネット上で書類をダウンロードし、記載の上e-tax(インターネット申請)、郵送、窓口のいずれかで提出
  2. 税務署の窓口で雛形を受け取り、その場で記載して提出

の2種類があります。

書き方については国税庁のHPに記載例があるので、下記のリンクを参考にしつつ都合の良い方法で提出を検討してみましょう。

【ダウンロードページ】

参考:個人事業の開業・廃業等届出書(国税庁HPより)

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm

ただ実は、開業届を提出しなくとも個人事業主になることは可能なんです。

 

開業届を提出してないからといって罰則はない

「開業届を提出しなくとも、個人事業主になることは可能」とお伝えしましたが、なぜかというと、開業届未提出による罰則規定はないからです。国税庁のHPには「新たに事業を開始した事実があった日から1月以内に提出してください」と記載されており、手続きの対象者は「事業所得、不動産所得または山林所得を生ずべき事業の開始をした方」となっています。

しかしながらハッキリいってしまえば、これから事業を開始しようとした時点で所得の種類が確定している方は非常に少ないのです。場合によっては、「一時所得」や「雑所得」に該当する方も多いでしょう。つまり、未来に得られる所得の種類が事業所得だと確定していない以上、そもそも開業届を出す必要があるかどうかも判断できない場合もあるということです。

まとめると、開業届の取扱いとしては、「出したほうがベターだけど、出さないからといってペナルティはない」というイメージで捉えてもらえればと思います。

ただ、「そうは言っても、開業届を出すメリット・デメリットが気になる…」という人もいらっしゃると思うので、開業届提出のメリット・デメリットにも触れておきますね。

 

開業届を提出するメリットとデメリット

開業届を提出するメリットとデメリットをまとめると、下記のような点が挙げられます。

開業届を提出するメリット・デメリット

【メリット】

  • 「青色申告」の条件を満たせる
  • 経費の妥当性を証明しやすくなる
  • 事業名義(屋号)の口座を作ることができるようになる
  • 確定申告の案内が来る

【デメリット】

  • 失業保険の受給要件から外れてしまう可能性がある

このように、開業届提出によるデメリットは非常に少ないです。逆に、「青色申告ができる」「経費の妥当性を証明しやすくなる」というようなメリットがあるので、特段の事情がない限り、提出しておくほうが無難でしょう。
特に、「これから事業を続けていきたい」という方の場合、青色申告で得られる65万円の控除は非常に重要なメリットになります。青色申告の詳細は次章で詳しく触れていきますね。

 

「確定申告」とは?白色申告と青色申告の違い

個人事業を始めたときに、多くの方が不安に感じる難関、それが「確定申告」です。確定申告は、1/1~12/31に得た所得を計算し、翌年2~3月の期限までに税務署へ提出するものです。

しかしながらハッキリ言ってしまうと、これまで経費計算をしたことのない方にとって、確定申告はかなり理解しづらい作業になります。したがって、「経費計算とか全くわからない…」という場合は、クラウド系の会計ソフトを上手く活用するようにしましょう。そうすることで、経費の知識がない方でも、スムーズに確定申告することができますよ。クラウド系会計ソフトについても次章で後述しますので、よろしければそちらも参考になさってくださいね。

この章では、確定申告が必要な人や、青色申告と白色申告の違いについてご説明していきますね。

 

確定申告が必要な人

確定申告が必要な人を簡単にまとめると、

  1. 所得(売上から経費を差し引いた金額)が年間38万円以上の方
  2. 給与の収入とは別に、年間20万円以上の副業収入がある方
  3. 2ヶ所以上の会社から収入を得ていて、年末調整されていない所得が20万円超の方

というケースに該当する場合、確定申告が必要です。特に、個人事業主に関わるケースとしては1と2ですね。これから個人事業主になる方は必ずチェックしておきましょう。

※その他、給与所得2,000万円以上の方や、不動産所得があった方なども確定申告が必要になりますが、当記事の主旨とは関係ないので割愛しています。

 

確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類がある

次に、確定申告の基本知識についてご説明します。

確定申告には

  1. 白色申告
  2. 青色申告

の2種類があり、それぞれ取扱いが異なります。

白色申告とは、青色申告に比べ、比較的簡単な経費計算で問題のない申告方式です。青色申告は「複式簿記」という帳簿をつける必要があるのに対し、白色申告は簡易な簿記でも問題ありません。帳簿とは、事業に関わる取引やお金の流れを記載しておくためのいわば「記録簿」です。わかりやすくいえば、「白色申告のほうが厳格な帳簿管理は求められない」というイメージで捉えておけば問題ないでしょう。何も手続きをしていないまま確定申告を迎えた方は、白色申告で確定申告を行うことになります。

対して「青色申告」は、青色申告書による申告を予定している年度の3月15日までに、「所得税の青色申告承認申請書」を提出することで、はじめて適用される申告方式です。白色申告とは異なり、「複式簿記」という帳簿の管理方法が必須となります。わかりやすくいえば、白色申告よりも厳格な帳簿管理が必要になるわけですね。

ただその分、白色申告よりも青色申告のほうが、事業にとっては大きなメリットがあります。

 

青色申告は節税面のメリットが非常に大きいので活用すべき

結論からいえば、「個人事業をこれからも継続していきたい」という方は、青色申告を選択したほうが良いでしょう。なぜかというと、青色申告には事業を運営する上で様々なメリットがあるからです。青色申告のメリットを簡単にまとめてみますね。

青色申告のメリット

  • 「青色申告特別控除」として65万円の控除を受けられる
  • 赤字を3年間繰り越せる
  • 「青色事業専従者給与」として家族への給料を経費にできる
  • 30万円未満の償却資産を「少額減価償却資産の特例」で一括経費計上できる

青色申告で得られるメリットは主に、「節税効果」です。青色申告特別控除が65万円あるのに加え、青色事業専従者給与として、家族への給料も経費計上することができます。さらに、30万円未満の少額資産を一括経費計上できるので、売上が大きいときにまとまった経費額を確保しやすくなるというメリットもあります。つまり、青色申告は白色申告に比べると、節税面で非常に大きなメリットがあるということです。

また節税面以外のメリットとして、「赤字を3年間繰り越せる」という重要なポイントがあります。個人で事業を行う以上、売上の良い年度もあれば良くない年度も当然ながらあります。白色申告では赤字を複数年にまたいで繰り越すことができないので、たとえ売上が悪い年があったとしても、翌年度には通常通りの納税をしなければなりません。対して青色申告であれば、赤字を翌年に繰り越して、翌年の納税額を減額することもできるわけですね。

このように、青色申告は節税面とリスク管理面の両方に大きな恩恵があるのです。事業を真剣に取り組みたい方は、できる限り青色申告の適用を検討するようにしましょう。

 

個人事業の経費計算と会計ソフトの必要性

個人事業主をご説明する上で、切って離せないのが「経費計算」です。ここでは、個人事業における経費計算と会計ソフトの必要性について触れていきますね。

 

個人事業を開業したら「経費計算」が必要になる

経費とは、事業を運営する上で必要になった資金のことを指します。例えば、IT系のお仕事であればインターネット通信費もパソコン代も必要経費になります。このように、「事業の売上を作るために必要になった資金」を経費として計算し、売上から差し引くことで、所得税のもとになる利益額を算出します。その算出した金額を申告するのが、先述した確定申告なのです。

ただ、おそらくほとんどの方は「経費計算なんてやったことがない…」という状況なのではないでしょうか。ハッキリ言ってしまうと、未経験のまま手作業で経費計算をして、帳簿の記載をして…という作業はかなりハードルが高いです。なぜかというと、お金の動きが頻繁にあればあるほど、作業がどんどん煩雑になってしまうからです。

 

経理作業はクラウド系会計ソフトか、税理士への委託がベター

経費計算を行う上で、個人事業主には下記の3つの選択肢があります。

個人事業主が経理作業を行う上での選択肢

  1. ご自身で全ての経費計算を手作業で行う
  2. クラウド系会計ソフトを活用する
  3. 税理士へ委託する

どの選択肢で経理作業を行うかはご自身の自由ではあるのですが、筆者の経験上、②と③のどちらかで行うのがベターだと思います。なぜかというと、手作業で経理作業を行うのは想定よりも非常にハードだからです。特に、事業が上手く回りだすまでの間は、経理作業以外にも営業や販路開拓といった重要なタスクがあるため、多忙になるケースが非常に多いです。このような状況を踏まえると、やはり事業の売上に関連性の薄い経理作業は、できるかぎり効率化するのがベストだといえるでしょう。

おすすめでいえば、売上が伸びるまでは②、売上が一定のラインを超えたら③というように、事業状況に応じて経理処理の方法を変化させていくのもアリだと思います。クラウド系会計ソフトと税理士委託のメリット・デメリットを簡単にまとめてみますね。

 

クラウド系会計ソフトのメリット・デメリット

クラウド系会計ソフトの中でも知名度が高いのは、「弥生会計」「freee」「マネーフォワード」といったサービスです。クラウド系会計ソフトのメリット・デメリットをまとめてみます。

クラウド系会計ソフトのメリット・デメリット

【メリット】

  • クレジットカードや銀行口座を自動同期できるので、経理作業を効率化できる
  • レシート入力アプリで撮影入力も可能
  • コストが安い(月額2,000円程度)

【デメリット】

  • ご自身で経費の入力作業を行う必要がある
  • サポートが最小限、かつ節税の提案もない
  • 完全無知識だとミスにつながりやすい

クラウド系会計ソフトのメリットでいうと、やはり「コストの安さ」と「自動同期」でしょう。クラウド系会計ソフトの料金は月額制で、2,000円程度のコストで活用することができます。このようなコストの安さは、事業を行う上で非常に助かるといえますね。
また、クラウド系だからこそ得られるメリットとして、クレジットカードや銀行口座の自動同期があります。自動同期があれば、クレジットカードや銀行口座を1度同期するだけで、勝手に明細を取り込んでくれます。明細の取り込みは手作業でやるとかなり大変なので、この点も大きなメリットでしょう。

逆に、クラウド系会計ソフトのデメリットとしては、「サポート面」や「経費の入力作業を自分でやる必要がある」という点ですね。クラウド系のメリットはやはりオンラインで作業を進められるところなのですが、その反面、サポートもオンラインで完結させているサービスが多いです。しかしながら、経理作業は個々の事業内容によって取扱いが異なるため、オンラインだと少し心もとないかもしれません。

加えて、クラウド系の会計ソフトの場合は、経費の入力作業を全てご自身で行う必要がありますから、「初めて個人事業主になる」という方にとっては、疑問点が頻出する可能性が非常に高いです。したがって、このようなサポート面の手薄さは、クラウド系会計ソフトのデメリットだといえるでしょう。

 

税理士委託のメリット・デメリット

経費計算は税額に直結する作業なので、税理士の専門分野です。個人事業主だったとしても正確に経費計算をしなければならないので、「全ての作業を税理士に丸投げしよう」という選択でも全く問題ありません。ただし、税理士委託にもメリット・デメリットがあります。簡単にまとめてみますね。

経理作業を税理士に委託するメリット・デメリット

【メリット】

  • 事業に専念できる
  • 必要な税務手続きも税理士に委託できる
  • プロからの節税提案で賢く支出を抑えられる

【デメリット】

  • コストが高い
  • 信頼できる税理士を見つけるのが大変
  • 税理士によって判断が異なる部分も多い

税理士に経理作業を委託する最大のメリットは、やはり「事業に専念できる」という点ですね。ハッキリ言ってしまうと、経理作業や税務に関わる手続き等は非常に面倒です。「これから事業を頑張って行こう」という方にとっては、負担に感じてしまうケースがほとんどでしょう。税理士と顧問契約を締結すれば、このような申請作業や経費の入力作業は全て丸投げすることができます。このような負担の少なさは、税理士委託の大きなメリットですね。

ただその反面、クラウド系会計ソフトと比べようもないほど、コストは高いです。税理士の顧問料は契約先によって異なりますが、安くても年間10~20万円、高いところになると50~60万円程度のコストがかかってきます。立ち上げ初期の個人事業主にとっては、かなり痛い固定出費になるでしょう。このようなコストの高さは、事業を行う上で無視できないデメリットだといえます。

 

事業状況に合わせて経理作業の処理方法を変えよう

ここまで個人事業主の経理処理方法についてご説明してきましたが、筆者自身の経験でいうと、「事業状況に合わせて変えていく」のが1番良いと考えています。なぜかというと、個人事業の立ち上げ初期は経理入力の件数も少ないので、クラウド系会計ソフトで処理したとしても、大した負担にならないケースが多いからです。

したがって、
立ち上げ当初~事業の売上が拡大するまで:クラウド系会計ソフトを活用
事業の売上が大きくなり経理作業が煩雑になってきた時から:税理士に委託
というように変化させていけば、よりスマートかつ負担も少なく事業を続けることができますよ。

ご自身にとって、都合の良い方法で経理処理を進めていってくださいね。

 

まとめ

初めて個人事業を始める場合、「自分なんかで大丈夫かな?」「知識もないから確定申告が不安…」というような悩みをお持ちだと思います。かつての筆者もそうでした。

個人事業は良い所も悪い所もありますが、多少なりともお金の知識が身につきます。お金の知識は生きる上で必要不可欠なものですから、非常に良い経験になると思います。
立ち上げ当初は不安や悩みもつきないかと思いますが、それも成長のための試練です。

当記事が皆さんの参考になりますように。