バリバリの文系がSEとしてIT企業に就職するために行った5つのこと

文系SE

SE(システムエンジニア)になりたいけど、自分は文系だから厳しいかもしれない。と考えている人は少なくありません。技術系の職業=理系出身が多いというイメージを持つ人が多いのです。

私は文系出身でありながらSEとして会社に就職した経歴があります。そんな私の経験を、これから就職する方たちに向けてシェアできれば良いと思います。なぜ、SEという職業を選んだのか、文系出身の私がSEになるために何をしたのか、という部分をご紹介してきます。これからSEを目指したいと漠然とでも考えている人の参考になれば幸いです。

文系でもSEになれます

結論からいえば、文系からSEになることはそう難しいことではありません。

私は文系からSEとして就職し、1度会社は変えましたが足掛け7年働いていました。そのなかで、最終的にはプロジェクトリーダーとしてプロジェクトの管理に携わるところまで成長することができました。

ほかの職業ではわかりませんが、SEという職業においては、文系出身だからといって理系出身に劣るということはほとんどないのです。それはSEという業務が、特定分野に特化していないことに由来します。

たとえば、私はタンカーの強度計算ソフトのプロジェクトに関わったことがあります。文系出身の自分からしたら「タンカーの強度計算」という単語を聞いただけで頭が痛くなりそうな仕事でした。サイン・コサイン・タンジェントなんて計算式を見たのは高校以来でした。しかし、実際のところそこまで困ったことにはなりませんでした。

なぜかというと、SEがシステム設計でタンカーの構造計算の方法を熟知している必要はないからです。厳密にいえば「ある程度わかっていればOK」といった方が正しいでしょう。「ここに◯◯を入れたら、□□と表示させたいです。」という希望はクライアントからヒアリングしますし、途中の計算方法もクライアントから提供されます。

つまり、「自分がタンカーの強度計算をするわけではない」ということですね。SEの仕事は「◯◯が入力されたら□□と表示されるためのロジックを考えること」なので、そこで文系・理系であることはほとんど意味がないのです。

もちろん、基礎知識として理系の素養を持っていればクライアントの話を理解しやすいなどの利点はあります。でも、そこは勉強すれば追いつける部分です。SEという職業において、文系・理系であることに絶望的な壁は存在しないということです。

ちなみに今のはかなり理系寄りのプロジェクトの話です。もっと簡単な話でいえば、社員の経歴などの基本情報を社内ホームページで検索したい」などの仕事もあります。こうなってくると、もはや文系・理系である必要はありませんね。

とはいえ、私にもともと理系の素養があったからSEとして仕事ができたのでは?と考える人もいるでしょう。次は私のスペックについてご紹介してきます。

 

筆者のスペック

私は大学の専攻は経営学でした。高校時代は理系の道を選びましたが、どうやら理系科目のセンスが壊滅的だったようです。数学・物理はいつも赤点ギリギリでした。冗談抜きで本当に留年するのではないかというレベルだったのです。サイン・コサイン・タンジェントなんて本当に嫌いでしたし、物理の計算方式なんて魔法の言葉に見えるほど重症でした。

それでも、理系への憧れを持っていた私はなぜかそのまま大学受験に挑みました。一応身の程を知っていた私が受験したのは生物応用学の学部で、バリバリの理工系学部ではありませんでした。受験結果はもちろん失敗、浪人生活の道に入ります。

それまで騙し騙し「なんちゃって理系」を演じていた私はあることに気づきます。「自分は理系に向いていない」ということに。当然です。必死に勉強してきた数学よりも、ほとんど勉強しないで受けた現国・古典・英語の方が点数が良かったのですから。

そういうわけで、晴れて文転を果たした私は1年間の勉強のすえ、経営学部に入学。まったく理系とは関係のない勉強を4年間することになります。それでも理系への未練が残っていたのか、会計学の勉強をしていました。数字だけの世界に頭が発狂しそうになった私は途中で挫折します。

ここまで読めば分かっていただけたと思いますが、理系の素養が壊滅的だった人間でもSEとして働けるのです。少しは安心できたでしょうか。

ところで、このような私がSEになろうと思ったのにはある動機があったのです。

 

なぜSEになろうと思ったのか

文系で理系のセンスがない私がなぜSEになろうと思ったのか。それは、起業を夢見ていたからです。

でも、起業するには元手がかかる。そこで目をつけたのがIT業界でした。IT業界はPCひとつあればビジネスができる世界です。せいぜいかかるのはインターネットプロバイダの料金くらいでしょう。飲食店や物流の仕事をしようとすれば最低でも数百万~数千万の元手が必要になります。IT業界はそういう壁がずっと低かったというのがあります。

また、ほかの業界に比べると給料が割と良いというのも魅力でした。おそらく今でもそうでしょうけど、業界別で見ても上の方だったと記憶しています。いわゆる高収入といわれる医師、弁護士、一級建築士などは途方もない勉強をして資格を取ってなることができる職業ですが、IT業界はそういった関門がかなり低かったのです。

もちろん、SEの一社員が医師、弁護士、一級建築士のように稼げるわけではありませんが、そこでスキルを磨き、起業して成功すれば、同等以上に稼げるというのは夢がありました。仮に起業して失敗したとしても、手に職をつけておけば食いっぱぐれる事はまずありません

このように、「起業できる」「ハードルが低い」「失敗しても潰しがきく」という点でIT業界は非常に魅力的に映ったのです。

この先なにをするにしてもITスキルは必須

ちなみに、これからの時代、ITスキルはどの業界に勤めることになっても必須です。「パソコンはさっぱりなんです」なんて言っている人はあっという間に使えない人間の烙印を押される事になります。

これからは人工知能(AI)の時代になり、現存する職業の半分はなくなる、といわれています。そうした中でも生き残るためには、最先端の技術に興味を持ち、対応していくだけのスキルが必要になるでしょう。その中には最低限のITスキルが含まれているのはいうまでもありません。

では、私がSEになるために何をしたのかを記憶を頼りにご紹介していきます。

 

就活の準備でした5つのこと

私が就活で準備したのは5つ

  • 自分がやりたいことを明確にする
  • 求人サイトに登録
  • 企業選定
  • 企業訪問
  • IT知識の勉強

これだけです。1つずつ見ていきましょう。

自分がやりたいことを明確にする

まずは、自分がIT業界で何をやりたいのかを明確にする必要があります。

結構多いのが「なんとなくやってみたい」という人です。この理由でSEとして一人前になる人は稀です。みんな何かしら理由を持って就活をしていました。

私の場合はすでに紹介したように、「起業できる」「ハードルが低い」「失敗しても潰しがきく」という理由がありましたが、そのほかにも「モノづくりに携わりたい」「仕事のやりがいが欲しい」「たくさんのユーザーが使うシステムやインフラに関わりたい」「プロジェクトを任されるようなエンジニアになりたい」という理由がありました。

このように、IT業界でどのような仕事をしたいのか、どのように成長したいのかというのを明確にイメージしておくことは、今後の就活を続けるためにも大切です。これを決めておかないと、軸がブレまくってSEになりたいけど、建築関係にも興味があって、アパレルもやってみたい!みたいなことになってしまいます。

求人サイトに登録

就活というのは情報戦です。情報を制する者が就活を制します。といってもそんな大げさなことは必要ありません。就職サイトに登録しましょう。私の時代はいまほど就活サイトというものは豊富ではありませんでしたが、やはりリクナビは鉄板でしょう。私も利用していました。求人案件数も利用者数もダントツではないでしょうか。

そのほか、今ではマイナビやキャリタスなどが有名みたいですね。なぜ求人サイトに登録するのかというと、企業情報の宝庫だからです。単純に企業を眺めているだけでもどのような企業がどのような人材を求めているのかの勉強になりますし、そのほかにも、就活イベントやセミナー情報などが充実しています。

私の場合は就活イベントやセミナーをよく活用していました。就活というのは非常に「面倒くさい」です。そもそも、全国に何十万人という優秀な人材がいるのに、自分が選ばれるのだろうかという不安もありますし、エントリーや筆記試験(SPI)、面接などさまざまな関門をクリアしなくてはいけません。

私の周りにも、なかなか就活を始めずにダラダラと遊んでいた同期生もたくさんいました。彼らの多くは、これから始まる試練から目を背けて、目の前の楽しみを優先している人ばかりでした。いつかはやらなくてはいけない夏休みの宿題を先延ばしにしているのと一緒ですね。

実は私もSEになりたいなぁという漠然とした考えは持っていたものの、どうやって始めればいいのか分からず、時間だけ過ぎていた人間の一人でした。
しかし、運が良いことに友人が就活セミナーに誘ってくれたのがきっかけで、就活の一歩を踏み出すことができたのです。持つべきものは友ですね。

就活イベントやセミナーに参加すると、否応なしに就活の情報が入ってきます。そうすると、自分がこれからなにをするべきか、どうすればいいのかが分かるようになってきます。就活に漠然とした不安を持っている人ほど、イベントやセミナーに参加しましょう。見えない敵が少しずつクリアになってくれば、不安も消えていきます。そうすれば、あとは進むだけです。

企業選定

求人情報やイベント、セミナーに参加していくと、徐々に自分が入りたい企業が見えてきます。私の場合はとにかく研修制度がしっかりしている企業を中心に絞りました。やはり自分が文系ということもあって研修がしっかりしていないと不安でしたし、いきなり現場に放り込まれても何もできないからです。

とくに、プログラミングに関してはここでしっかり基礎を身につけておく必要があります。でないと、現場に出ても話についていけませんし、そこで任される仕事も変わってきます。研修が適当な企業に入ってしまうと、中途半端な教育を受けて現場に放り出されてしまい、その後のキャリアにも影響が出てしまうでしょう。

そのため、私はある程度教育のノウハウが蓄積されているであろう、10年以上の歴史のある企業を選びました。歴史の浅い企業は教える方も、何から教えれば良いのかわかっていないことが多いです。

企業訪問

目ぼしい企業が決まったら、企業訪問してみましょう。メールで採用担当の方に訪問希望を伝えれば、取り計らってくれます。もしくは企業側で訪問日を設定していることもありますので、情報を集めましょう。

企業訪問の目的はそこで働いている現役の社員さんとコミュニケーションを取ることです。実際に働いている人の雰囲気、会社の雰囲気を感じ取ることは思っている以上に大切なことです。殺伐とした雰囲気ではないか、働いているメンバーは生き生きとしているか、などでどういう会社なのかわかります。

私が企業訪問で現役社員とお会いして話したことで分かったことは「実は文系が多い」ということでした。その企業では3割以上は文系出身で、お話している社員さん自身も文系だったのです。

実際どうなのかというと、「IT人材白書」というレポートがありますので見てみましょう。

引用:「IT人材白書2017」(独立行政法人情報処理推進機構(IPA)IT人材育成本部、2017年)

上の表では最終学歴の専攻の分類が出ていますが、全体の63.9%が理系、36.1%が文系となっています。IT企業に勤めている文系は意外に多いということが分かると思います。

ほかにも分かったのが、SEは文系だからこそ活躍できる面も多いということ。SEは結構文系向きの仕事が多いのです。たとえば、設計書などのドキュメント作成や各種ミーティングなどが挙げられます。

そして、システム開発ではプログラミングが必要な工程は全体の3分の1程度しかないということ。あとは、設計や保守・運用の部分が大半です。これは私の実体験ですが、SEの業務では自分が文系であると痛感するようなことはほとんどありません

こうして、現役社員とお話することで、私でもSEとしてやっていけそうだという手応えを掴みました。就活に対するモチベーションも上がったのを覚えています。

IT知識の勉強

IT企業に就職するためにどのような勉強をしたのかというと、そこまで大変なことはしませんでした。

資格は取りましたが、初級システムアドミニストレータ試験(通称シスアド)と呼ばれるものくらいです。おそらく取らなくても受かった気はしますが、無いよりはマシでしょうといったレベルです。

本当に企業に「お!」と思わせられるのは基本情報技術者試験からでしょう。ですが、これは取るのが大変な国家資格ですし、現役のSEでもなかなか取るのが大変な資格ですので頑張る必要はありません

また、プログラミングの勉強は興味があればやってもいいですが、独学で習得するのは非常に難しいです。変に苦手意識を持つくらいならやらなくてもいいかもしれません。そこは研修でしっかり学べばいいだけのことです。

勘違いしてほしくないのは、なにもしなくても良いわけではありません。何かしら準備はしておいたほうが面接でもアピールポイントになりますし、面接官との会話もスムーズになるでしょう。

以上が準備でした5つのことです。そこまで難しいことはしていないと思います。

 

実はIT業界は超売り手市場

さて、実はIT業界は現在超売り手市場だということをご存知でしょうか。というのも、ITエンジニアを始めとする技術者がまったく足りていないのです。

2030年までにIT人材は約80万人不足する

政府の調査によれば、IT人材は2015年時点で約17万人が不足しており、今後2030年までに最大で80万人が不足するというデータが出ています。つまり、IT業界は慢性的な人手不足に陥っているということで、企業は少しでも優秀な人材がたくさん欲しいという状態になっています。

しかも、この状況は今後拡大していくわけですから、就活を優位に進めやすいということになります。

引用:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果

政府は2020年からプログラミングを必修科目にする

この状況を懸念して、政府は2020年から小学校でプログラミングの授業を必修化することをすでに決定しています。これからも、ITエンジニアの不足がどれだけ深刻な問題か分かると思います。若いうちからエンジニアを目指そうという子どもを増やそうと政府が躍起になっているわけですから、就活もどんどん売り手市場になっていくわけです。

結論:文系だから気後れする必要はまったくない!

つまり、文系・理系だと気にしている人は少なくとも企業側にはいません。むしろ、文系の方がSEに向いているという人もいるくらいです。私も理系や情報系専門学校出身の同期はいましたが、彼らが優位に立っていたのは研修の期間くらいでした。いくら専門学校で勉強してきたとしても、現場レベルでの技術や知識は、やはり現場でしか身につきませんし、下手にプライドが高い分、成長が遅い人もいたくらいです。文系だからといって気後れする必要はまったくないのです。

 

SEに向いている人

では、最後にSEに向いている人の特徴をあげていましょう。別にこれらがすべて当てはまる必要はありませんし、1つも当てはまらなくても、これから変えていく気があるのであれば問題はありません。

  • ロジカルに物事を考えられる
  • パソコン大好き
  • コミュニケーションが得意
  • 多趣味
  • 行動力がある

1つずつ見ていきましょう。

ロジカルに物事を考えられる

これはSEにとって非常に重要な素養だと思います。物事の原因と結果を筋道立てて考えられる人、それを説明するのが得意な人はSEに向いています。これは、システム設計のときやバグ(障害)が起きたときに一番役立つ能力です。

ロジカルシンキングが不得意な人は、普段から「どうしてこうなったのか」「何が原因なのか」といったことを生活レベルで実践してください。能力はあとからでも身につけられます。

パソコン大好き

パソコンをいじるのが大好きなのも大事な素養です。それこそ、これからずっとパソコンに付き合っていくわけですから、パソコンがどうやって動いているのか、設定をどうすれば快適に使えるのかといったことを普段からやっている人はSEの業務でも苦になることはないでしょう。

コミュニケーションが得意

SEはパソコンとずっと睨み合っているイメージを持っているかもしれませんが、意外に人と話している時間も長いです。クライアントとのミーティングプロジェクトメンバーとのミーティング進捗報告会メンバー間での機能連携の相談など、人とコミュニケーションを取る能力はあちこちで必要になります。

人に伝わる話し方、人に頼み事をするときの態度、問題があったときの対処能力など、コミュニケーション能力が問われる場面は非常に多いのがSEの仕事です。

多趣味

実はこれが一番大切な素養かもしれません。SEというのはストレス耐性がないと体だけでなく心を病んでしまう職業です。知り合いを見ていると、趣味を持っていてストレスがあっても発散する方法を持っている人は問題なくSEを続けていますが、ストレスを発散するのが得意じゃなさそうな人は心を病んで止めてしまった人もいます。

カラオケ、運動、音楽、映画、なんでもいいですが、趣味を持っていることは非常に大きな武器となるでしょう。お酒も悪くないですが、度が過ぎるとアルコール依存症になってしまうのであまりおすすめはしません。

私は会社のバスケットボール部に入っていましたし、同期と温泉旅行に行くこともあり、プライベートは思いっきり遊んでいましたのでとくに問題なく仕事をしていました。とんでもなく忙しいプロジェクトもありましたが、乗り越えられたのもストレス耐性があったからだと思います。

行動力がある

ITというのは毎月のように新しい技術が出てきます。そういった技術に興味を持って試してみる行動力がある人はSEに向いています。平たく言えば好奇心旺盛な人は技術者向きです。新しいものにワクワクする、子どものような感性をいつまでも持ち続けられるSEは長く活躍できるでしょう。

 

SEは楽しい

ここまで長々と私の経験も交えながら、文系でもSEになれるということをご紹介してきました。文系の方がこれを読んで少しでも勇気を持てれば幸いです。

最後になりますが、SEという仕事はとてもやりがいがあって楽しい仕事です。「デスマーチ」などという言葉が飛び交っていた時代もありましたが、今は36協定なども浸透してきていて、ある程度の規模の会社なら無茶な勤務はできないようになっています。

ぜひ、勇気を出してSEの世界に飛び込んでみてください。

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