就職活動における最大の関門であり、多くの就活生が精神をすり減らすのが面接です。この面接を突破するとようやく「内定」の二文字を勝ち取ることができます。しかし、内定をもらうためには面接官からの「問い」に対して「明瞭な回答」をすることが求められます。
第一志望の企業の内定が出る前に、第二志望の内定が出てしまったら?想定外の「問い」に対してどのように振る舞えばよいでしょうか。
ここでは、文系でありながらIT企業へ就職した私の経験をもとに面接から内定までの流れと対策をご紹介していきます。
就活における面接の心構え
面接というのは就職活動の一番のハイライトです。面接官(人事担当)が就活生と直接対話をすることで、その人柄、受け答えを含めたコミュニケーション能力、考え方、バックグラウンドまで幅広い要素を判断します。
いろいろな面を見られるので怖がる人も多いですが、要するに面接官が「ウチの会社で一緒に働きたいと思えるかどうか」をチェックする場ということです。面接を通して「ユニークな考え方をする」「話していて感心させられることが多い」「やりたいことがハッキリしている」といったことを面接官に感じさせられれば勝ちです。
私は割り切ってゲームのように攻略する気持ちで臨みました。面接官を楽しませる(自分に興味を持たせる)にはどうするべきか?そのために自分はどのような武器(強み)を持っているのかを考えれば、おのずと面接の対策方法は見えてきます。
では、面接から内定までの流れをざっくり見ていきましょう。
面接から内定までの流れ
面接というのはいくつかの種類と役割があります。各面接でチェックされる要素は違うので、対策方法を考えておく必要があります。
一次面接
<特徴・目的>
一次面接は書類選考を通過して最初に行われる面接です。書類選考ではそこまで大規模なふるい落としは行わないのが通常ですが、ここで一気にふるいにかけていくところが多いです。
応募する学生が多い人気企業の場合は個別面接ではなく、集団面接やグループディスカッションという形式をとる企業もあります。
<担当面接官>
若い人事担当や各部署の社員が担当することになります。これは人件費としての側面もあります。役職・役員クラスがわざわざ全員の面接をするのはコストが高く、効率的でないと考えられているからでしょう。
<質問内容>
一次面接ではいわゆるテンプレート的な質疑応答がメインとなります。これによってコミュニケーション能力や最低限のビジネスマナーなど、表面的な要素が見られることになります。私の就活時代も自己PRや志望動機、自己分析などエントリーシートの内容をさらに詳しく聞かれた印象が強いです。
<実際に聞かれたこと>
さきほども書いたとおり、一次面接では比較的「自己紹介」の要素が多いです。聞かれたことを具体的にご紹介していきましょう。
- 「学生時代にはどのようなことを勉強されていたのですか?」(某ユーザー系SIer企業)
- 「あなたが企業に求めるものはなんですか?」(某ユーザー系SIer企業)
- 「どうしてSEという職業を希望されているのですか?」(某独立系SIer企業)
- 「来年大阪に支社ができるのですが、転勤はできますか?」(某独立系SIer企業)
- 「最近気になっているアプリやサービスはありますか?」(某Web系企業)
- 「今後、IT業界はどのように動いていくと思いますか?」(某Web系企業)
こうしてみると世間話の延長のような問答が多いですね。ただ、企業ごとに特色は出ていると思います。たとえば、ユーザー系企業は大企業のグループ会社であることが多いので、一般的な企業のテンプレどおりの質問が多かったように思います。
対して、独立系は「将来的に自社の戦力になりえるのか?」という視点の質問が多いです。また、Web系は「Webサービスにある程度アンテナを張っているのか」などマーケティング方面での適性も試された覚えがあります。
二次面接
<特徴・目的>
二次面接に進むと人間性や個性といった内面的な部分にフォーカスしていきます。当然、質問内容も突っ込んだものになっていくのでより細かい対策が必要になります。一部では集団面接を採用しているところもありますが、ほとんどが個別面接になるでしょう。
ちなみに、企業によっては二次面接が最終面接ということもあります。
<担当面接官>
一次面接と比べると、担当面接官の年齢は上がり、中堅・役職クラスが出席する傾向が強いです。たとえば人事の中堅や各部署の責任者などです。年長者の視点から「見込み」があるのかをチェックされることになります。経験豊富な百戦錬磨が相手になるので小手先の回答だけでは通用しません。しっかりと対策を練っておきたいところです。
<質問内容>
より具体的な質疑応答が増えます。たとえば、「入社できたら何をしたいか」「どういうきっかけでこの業界を選んだか」などです。企業によっては一次面接の内容が細かく共有されているので、一次面接の内容をさらに深掘りした質問が飛んでくることもあります。
<実際に聞かれたこと>
私が二次面接で聞かれたのはこのような内容でした。
- 「経営学部ということですが、その知識をどのように活かせると思いますか?」(某ユーザー系SIer)
- 「弊社事業のどのジャンルに興味がありますか?」(某独立系SIer)
- 「アルバイト経験が多いのはよくわかりましたが、知らない業務に挑戦するときにはどのように取り組みましたか?」(某Web系企業)
基本的に普段から何を考えているのか、将来的にどういった目的・目標があるのか、思考力や対応力を問われる質問が多かったように思います。とくに3つ目は結構びっくりした質問でしたが、バイト仲間と飲みながら「仕事の仕方」について愚痴り合っていた経験が活きて事なきを得ました。
ちなみに、聞かれてすぐに回答すればよいというものではありません。焦らないで大丈夫ですから、しっかりと思考して考えをまとめるようにしましょう(面接官はそういう部分も見ています)。暗記したかのようにスラスラよどみ無く回答するよりも、少し考えて即興で回答している(ように見える)ほうが面接官の印象に残りやすいためです。
最終面接
<特徴・目的>
いよいよ最終面接です。ここまで来ると人数は相当絞り込まれた状態です。最終面接では「どれだけ本気なのか」が試されることが多いです。企業としては内定を出すからには入社してほしいわけで、腹の探り合いになる傾向が強いといえるでしょう。
<担当面接官>
人事部長と一緒に役員クラスが出席することがあります。年齢層やプレッシャーはマックスレベルになります。
<質問内容>
キャリアビジョンや企業知識を問われる質問が多いです。たとえば、「10年後にはどのような人材でありたいと思いますか?」「どうして他社ではなく弊社を選ばれたのですか?」そのほか、本当に会社に入りたいのかを問われることもあります。「ほかにも最終面接まで進んでいる企業はありますか?」「もし、内定を出したら他の企業を辞退してもらえますか?」などです。
<実際に聞かれたこと>
私が実際に聞かれた内容は「内定だしたらどうする?」系の質問が多かったです。
- 「SEとして働くにあたって、不安はありませんか?」(某ユーザー系SIer)
- 「実際に内定を出したら入社するつもりはありますか?」(某独立系SIer)
- 「どの程度の期間があれば意思を固められそうですか?」(某Web系企業)
人事担当としても、役員クラスまで出席してもらって新卒に逃げられるわけにもいかないので囲い込みに入ります。ここで上手いこと回答をしないと不合格になりかねないので、かなり慎重に回答する必要があるでしょう。
もちろん、第一志望であれば「はい!入社させていただきます!」の二つ返事でいいでしょう。困るのは、この質問が第二志望、第三志望で、まだ第一志望の結果がわからない場合です。「いや、確約はできません…」などとあやふやな回答をしてしまえば不合格になってしまうリスクもあります。かといって、第一志望を簡単には諦められない。
そういう場合は、バカ正直に答えるのではなく「御社で働きたいと思います!」と答えてしまいましょう。実は内定が出ても後からキャンセルすることは可能です。気が引けるでしょうが、こちらも人生がかかっているのですから、妥協はしないようにしましょう。
中には「では、現在選考中の企業をすべて断ってください。」といわるケースもあります。この手の要求はインフラ系、鉄鋼系の業界で多いようです。IT企業ではそこまで強烈な要求はないかと思いますが、「◯月◯日までには決めてください。」みたいなことは言われるでしょう。実際、私も言われました。その場合は、「◯◯日までには決められます!」とハッキリと答えましょう。
すべての企業が同じではない
ここまで各面接の特徴をお伝えしてきましたが、すべての企業が同じように進むわけではないということを頭に入れておきましょう。
一次面接しかないところ、二次面接でいきなり役員、さらには社長まで出てくることもあります。企業によってはとりあえず採用して、試用期間で見極めるという方針を取っているところもあります。面接は各企業の人事部門が独自に考えているわけですから、企業によって異なるのは当然なのです。
しかし、IT業界でロクに学生のことを見ないでどんどん採用しているところは要注意です。ブラック企業の可能性があります。社員をどんどん雇い入れて使い捨てのようにしている企業では、向こうの話ばかりでこちらの話は聞かず、採用後の話に進んでいく傾向があります。少しでも不安に感じたら辞退も考えるようにしましょう。
続けて、面接対策では具体的にどういうことしたのか、ご紹介していきます。
面接対策で行った3つのこと
私が面接対策で行ったのは3つです。
それは「想定問答を考える」「第一印象を大事にする」「受け答えは簡潔にする」です。1つずつ見ていきましょう。
想定問答は最低10個考える
想定問答は1企業につき10個は考えておきましょう。基本的な問答は調べればいくらでも出てきますから、考えるべきはその企業特有の問答です。たとえば、Webサービスを展開している企業だったら「当社のサービスを使ったことはありますか?」「使ってみた感想はありますか?」「どのような部分が改善できそうですか?」などです。
企業ごとの想定問答を考えることは自然とそのまま企業研究にもなりますし、自分が面接官だったら何を聞くか?また、どのような回答であれば満足するかを考えることは面接の良いトレーニングになります。
要するにこれを繰り返すことで、自然と相手の意図を理解し、適切な回答を瞬時に返せるようになります。実は、面接が苦手だと思っているほとんどの人は、基本的に場数をこなしていないだけです。脳みそがそういった問答に慣れていないから頭が真っ白になってしまうのです。想定問答を考えることを繰り返すことで脳はトレーニングされますし、そうすればちゃんと頭が回るようになってきます。
第一印象で勝負!
人間の印象は第一印象でほぼ決まるとされています。これは心理学でも実証されている話で、「メラビアンの法則」とも呼ばれているものです。この法則は人間の第一印象は数秒で決まるとされていて、「視覚が55%、聴覚が38%、言語が7%」となっています。
つまり、あなたが面接室の扉をノックして、入室して、着席するまでにだいたいの印象は決まってしまっているということです。まだ何も話していないのに!?と思うかもしれませんが、百戦錬磨の人事は会って数秒でその人のことはだいたい理解するそうです。質疑応答はただの答え合わせというレベルで行われます。すべての面接官がこのような人間ではありませんが、それくらい第一印象は大切というお話です。
そのためには、スーツはビシッと着て、髪型は清潔に、背筋を伸ばして、笑顔でハッキリとした受け答えをすることが重要になります。これができている就活生とできていない就活生では印象がまったく違うのは言うまでもないでしょう。
簡潔な受け答えを意識する
エントリーシートも同じですが、面接の質疑応答では簡潔な受け答えを意識するようにしました。結論ファーストで話を進めていきます。「Aですか?Bですか?」と聞かれたら「Aです。理由は◯◯だからです。」と答えるのがセオリーとなります。
結論から入ることで面接官は「Aなんだ。ふーん」と思いながら聞くことができます。理由から話し出すと、「Aの話なの?Bの話なの?」という二択の状態で話を聞き続けることになってしまうため、印象が悪くなります。
二択、三択の質問のほかに「どう思いますか?」「どう考えていますか?」といったパターンもあります。この場合は「私は◯◯だと思います。理由は~」というように回答するようにしましょう。
この受け答えのテクニックはかなり訓練が必要です。一朝一夕でできるものではありません。そのため、私は普段の生活でも結論ファーストを心がけて会話するようにしていました。家族と話すときも、友人と話すときも、常に相手の質問がどのタイプかを判断し、返事をするようにしていました。ちなみに、友人との方がトレーニングはしやすいです。お互い就活生であれば、お互いの問答についてフィードバックをしあいながら練習もできますよ。
では、実際に面接官は面接の最中にどういう部分を見ているのでしょうか。
面接官はどこを気にしている?
「敵を知り己を知れば百戦殆うからず」という言葉にもあるとおり、面接官がどこを重視しているのかを知っておくことは非常に重要でしょう。ここで、大手転職サイトdodaが行った調査結果を見ていきましょう。
中途採用の担当者1,000人にアンケートを行った「採用担当者のホンネ-中途採用の実態調査」の記事によれば、もっとも重要視するポイントは「第一印象」であることがわかっています。
以下の画像をご覧ください。
参考:doda
中途採用だからといって人事が見るところはそこまで大きく変わりません。やはり第一印象は最重要であるということですね。技術系の職種を見てみるとスキルは2番目に来ていますが、新卒に関していえば、新卒でスキルを重視することはほぼありません。
これはこちらの記事でも詳しく紹介していますが、まったくプログラミングをやったことのない文系の私がSEとして採用されたことからもわかることです。そのほかのポイントとしてチェックしておきたいのは「論理的思考能力」「受け答えの仕方」です。これらも私がした3つの対策に含まれていますね。
ここからもわかるように、「第一印象」「質疑の受け答え」を対策しておくだけでもかなりの面接対策になることがわかると思います。そのほか、私が面接に心がけていたことがあります。
面接で心がけたポイント
面接に臨むにあたって、気をつけたいポイントがあります。それは
- 企業に合わせない
- 自分の考えを持つ
- 集団面接で周りを気にしない
- 息抜きする
ことです。
企業に合わせないこと
面接では面接官が求める回答をすることが重視されています。だからといって、自分の個性を殺してまで企業に合わせることはしないでください。自分に合わない社風であったり、人事の考え方に賛同できなかったりすれば、無理して就職しても長く務めることはできないでしょう。
大切なのは自分が働きたい企業で働くことです。就職すること自体は自分の人生の夢や目的を達成するための手段であり、目的ではありません。どうせ働くなら自分の好きなことをできる会社で働きましょう。
自分の考えを持つこと
就活では多少なりとも自分をアピールするために背伸びすることがあります。しかし、虚構の自分を演じるのは避けたほうがよいでしょう。嘘で塗り固められた実績や思考を繰り替えていると、自分が何を話したのか把握できなくなり、いずれ矛盾した内容になっていきます。
人事は人を見るプロです。嘘をついていればすぐに見抜かれてしまいます。そんなことをするよりは、軸がブレないように自分の考えをしっかりまとめて回答するようにしたほうが効果的です。
集団面接では周りを意識しすぎないこと
集団面接やグループディスカッションでは自分のライバルがすぐそばにいるので、否が応でも意識してしまいますが、「自分は自分、他人は他人」という気持ちを忘れないようにしましょう。
私も最初に受けた企業が集団面接で、周りの学生が素晴らしい受け答えをしているのを見て浮足立ってしまった経験があります。しかし、気にしすぎても自分がどうなるわけでもありません。自分のことを面接官に伝えることに集中しましょう。
張り詰めすぎないで息抜きもすること
意外に大切なのはストレス発散もしておくことです。就職活動は長いです。多い人では30~50社、それ以上受ける人もいます(数社で終わる人もいます)。そのなかで、就職活動がうまく行かないこともあるでしょう。
いわゆる「お祈りメール」と呼ばれる不採用通知を繰り返し受けていると、自分は世の中に必要とされていないのではないか?と感じてしまうこともあるでしょう。そういうときに張り詰めてしまうと、悲壮感漂う就活生になってしまいます。当然、第一印象は悪くなるでしょう。
そのためにも、しっかり息抜きもしておくことをおすすめします。
内定は3つ、その中から選んだのは…
結局私は内定を3ついただきました。ユーザー系SIer、独立系SIer、Web系企業の3つです。このなかで私は独立系SIerを選択しました。理由はいくつかあります。
まず、独立系はジャンルや業界の縛りがないというのが魅力でした。ユーザー系SIerは親会社の仕事がメインになるので、業界的な縛りができてしまいます。その点、私が選んだ独立系SIerは銀行系、組み込み系、Web系、物流系、官公庁系など幅広いプロジェクトを持っている企業でした。また、将来的に独立したかった私は、大企業よりも中堅のほうが多岐にわたるスキルを身につけられるという憶測もありました。
Web系企業に行かなかったのは、どうしてもデザイン寄りになってしまうのでは、という印象があったのと、基礎技術を学ぶならSIerだと考えていたからです。あの頃は、まだまだデスクトップアプリが強かったですし、スマホが台頭してWeb業界が盛り上がるとは思っていませんでした。
ちなみにプログラミング言語というのは、1つ基礎ができてしまえば、ほかの言語を覚えるのはそこまで難しくありません。そのため、どちらかで迷っているのであれば、行きたい方に行けば良いと思います。
これは転職の話ですが、一般的にSIerからWeb系への転職は比較的スムーズですが、Web系からSIerへの転職は難しいとされています。これは、SIerのほうがより日本企業らしいという理由があります。Web系企業は出勤時間も服装も個人の裁量に任せているような企業も少なくありません。しかし、SIerはサラリーマンとしての振る舞いを求められるため、適応が難しいようです。
自分にとっての理想的な企業を考えておこう
最終的に大切なのは自分がどういう企業で働きたいか、自分の将来の夢を叶えられる企業はどういう企業か、ということです。そのためには、自分の将来像をしっかり想像しておくことが重要になります。
将来像が決まったら、夢を実現するために必要な要素を逆算してください。そうすれば、会社に求める要素も決まってきます。
ちなみに、自分に自信がないから、売り込むポイントなんて見つからない…という人もいるでしょう。それは自分が気づいていないだけです。人というのは自分の長所を客観的に把握することができないものです。そういう場合は、友人や家族から客観的な意見をもらうと自分の強みが見えてくることもあります。
人に聞くのが恥ずかしいのであれば、就職コンサルタントに相談してみるのも良いでしょう。悩んでいても物事は動きませんし、解決しません。まずは行動することが重要です。
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