昔は「働く」ということは「会社に勤める」ということと同義でした。良い大学を出て、良い会社に入る、それこそが人生、成功する王道とされていたのです。しかし、時代は代わり、人々の価値観が多様化するにつれてフリーランスとして働く人も増えてきています。
そこで、フリーランスはどのようなマインドを持っているのか、会社員とフリーランスではどのようにマインドが違うのかを考察してみました。これからフリーランスになってみたいという人はぜひ参考にしてみてください。
フリーランスと会社員のマインドの違いはある?
フリーランスと会社員ではマインドに割りと大きな違いがあります。簡単にまとめると、それは「自己」に対しての考え方が大きく違います。
最初に断っておきますが、一部で出てくる「会社員」はあくまで例えとして紹介しています。むしろ、フリーランスのように死ぬ気で、誇りを持って仕事をしている会社員を私はたくさん知っています。しかし、実際に会社の組織にはこれから出てくるような会社員がいるのも事実です。
●フリーランスは「自分」、会社員は「みんな」
会社員は組織に属している以上、会社を代表してさまざまな業務に当たります。これは言われてみれば当然のことなのですが、会社という組織への帰属意識がある分、なにをするにも「会社」のルールとして大丈夫か、「部」への責任にならないか、「チーム」に迷惑はかからないか、というように、周囲の人間のことを考えます。
それに対して、フリーランスが考えるのは「自分」のことだけです。ある意味、自己中心的に物事を考えても問題がありません。当然、社会的に非常識なことや、顧客に迷惑がかかるようなことはしてはいけませんが、それだけです。自分がやりたいことだけをやっても良いため、非常に気が楽ですし、精神的なしがらみもありません。
会社という枠組みにとらわれている会社員と、ほとんど縛りがないフリーランスとでは思考単位や動機がまったく異なるのです。
●「自分」が稼ぐのだという意思
会社員は組織で稼ぐ仕組みがあります。たとえ、自分が直接売上に関与していなくても、組織の一部として働くことで給料を受け取れるようになっています。また、ある日体調が悪くなって休んだとしても、収入自体は「有給」という形で保証されますし、頭痛がひどくて満足に働けない日があったとしても、そのせいで自分の給料が減ることはありません。
フリーランスは、自分の仕事がすべて「成果物」という形で報酬に換算されます。つまり、成果物を生み続けないと報酬は発生しません。頭痛がひどくて集中できず、作業が進まなければ、それは直接自分の売上に影響します。フリーランスは誰かに頼るということができない働き方でもあるのです。
ある意味、会社という組織は全員が幸せになるために最適化された仕組みになっています。ある社員の貢献度が極端に低くても、そのほかの社員が頑張って貢献していればみんなに給料が出るでしょう。フリーランスになるということは「誰にも頼れない」「誰にも頼らない」という自立のマインドを強く持つということでもあります。
●仕事に感謝する
「先輩や上司に押し付けられた仕事」や「若い人が任される雑務」など、世の中には「やらされている仕事」がたくさんあります。面白くない仕事を淡々とこなしている人もいるでしょう。日々の業務をこなしながらひたすら時計の針が進むのを待つのは苦痛以外の何物でもありません。それでも人が仕事を続けるのはそうしないと給料をもらって生活できないからです。
フリーランスになると、仕事に対する考え方が変わります。その仕事をこなさないと生活できないのは会社員と同じですが、フリーランスにとって仕事は「いただけること自体がありがたい」ことです。そうなると、仕事に対して感謝の念を持つようになります。
会社員時代は勝手に降ってきた仕事も、フリーランスは自分で探して掴まなくてはいけません。仕事への向き合い方がフリーランスと会社員とでは違うのです。
●「もっと稼ぎたい」という意欲
フリーランスと会社員の大きな違いの1つとして、「頑張ったら頑張った分収入が上がる」という点があります。会社員も頑張りはボーナスという形で還元されることもありますが、なかなか頑張りが報われない人も多いのではないでしょうか。
フリーランスは自分の頑張りが実績となり、実績がさらに高単価の仕事を呼び込むという好循環を生み出すことができます。自分の頑張りが将来の自分をさらに高めてくれるとわかっているので、仕事に張り合いがでます。
私自身、いきなりこのようなマインドを持ち合わせていたわけではありません。会社員からフリーランスになり、環境が変わることによって自然と変わっていった面も多々あります。続いては、フリーランスになってマインドの変化を実感したことについて見ていきましょう。
フリーランスになって変わったマインドは?
「人は環境の生き物」という言葉があるとおり、人は環境が変わることによって視点や思考、果ては好みまで変わっていきます。マインドも当然変わるのですが、私の場合はどのようにマインドが変わったのかを振り返ってみました。
●体調管理に100倍気を使う
なによりも、フリーランスは「個人事業主」という名前のとおり何をするにも一人です。病気になっても代わりに仕事をやってくれる人はいません。つまり、「体調が悪い」などと言っていられないのです。
私は会社員のころに比べて体調管理にはかなり気を使うようになりました。これまではサプリなんて飲んだことすらなかったですが毎日飲んでいます。養命酒も欠かせません。筋トレを日々のルーティンに組み込んでいますし、睡眠は最低でも6時間は確保するようにしています。
睡眠に関してはとくに意識しています。睡眠不足はフリーランスにとって天敵といえるでしょう。睡眠不足からはあらゆる病気が始まります。集中力が下がり、仕事の質も落ち、ストレスが溜まっていきます。睡眠不足は鬱の原因になることも挙げられるほど重大なことなのです。
私の周りのフリーランス仲間には一般的に見れば「健康オタク」な人がたくさんいます。しかし、私も含め自分のことを健康オタクだと思っている人は少ないです。「必要だからやっている」のです。
●簡単にお金が使えなくなる
フリーランスをやっていると今月はたくさん稼げても、来月は半分になってしまうなんて経験もするようになります。そのため、たくさん稼いだ月があっても無駄にお金を使うということはしません。
会社員であれば、来月も給料が入ることがわかっているので、ボーナスが入れば今月はパーッと使おう!といったことができます。フリーランスだと来月の収入減の可能性を考えると簡単にお金を使えなくなってしまうのです。
会社員時代は欲しい物があれば買うことに躊躇することはありませんでしたが、フリーランスになってからは「本当に必要か?」「今だけ欲しいのではないか?」ということを考えて吟味して買うようになりました。そういう意味では、お金の大切さを再認識した、というのもマインドの変化によるものでしょう。
●時間の使い方を考えるようになる
フリーランスになると時間の使い方は自由です。だからこそ、24時間をどのように使うかを考えるようになります。遊んでいたら1日はあっという間に過ぎてしまいますし、売上はゼロです。
会社員の場合だと、1日の時間は会社で働く時間とそれ以外のプライベート時間で完全に分けられます。フリーランスだとそれができません。いつでも働けるし、いつでも遊べる。これが意外に厄介で、メリハリのある生活リズムを作るのに手こずる人も多いです。
自分にとって1番ハイパフォーマンスで働ける時間はいつか、週末は家族で旅行に行くのであれば、それまでに終わらせないといけないタスクはなにか、スケジュールを常に確認し、効率的な時間の使い方を考えるようになります。
●税金について考えるようになる
会社員時代、税金は「勝手に引かれる嫌なもの」という印象でした。厚生年金、健康保険、住民税が勝手に引かれている給与明細を「こんなに引かれるのか!」と忌々しく思っていたものです。
会社員だと給与天引きのため、あまり「税金を払っている」という実感が湧きにくいですが、フリーランスになると納税はすべて自分で行うようになります。一度手元に入ってきたお金を税金として国に納めると、かなり税金を払っている実感があります。
さらに、フリーランスになると、これまで会社が折半で負担してくれていた年金や健康保険をすべて自分で負担しなくてはいけなくなります。その負担額を少しでも減らすために、勉強するのが「節税対策」です。
個人事業主は経費を収入から引くことで、実際に課税される「所得」を低く抑えることができます。もちろん、節税はルールの範囲内でするのが鉄則です。ルール違反をすれば脱税行為になってしまいます。
●自己投資をするようになる
フリーランスになると、良い仕事を取るのに苦労します。高い報酬の仕事を受けるには、自分自身が高い付加価値を提供できる人間にならないといけません。そして、自分の価値を高めるのが自己投資です。セミナーに行く、本を読む、人に会うなど、世の中にはさまざまな形の自己投資があります。
私の場合は、会社員時代よりも本を読むようになりましたし、セミナーにも定期的に参加するようになりました。人付き合いが減った分、自分に投資する時間が増えるのはフリーランスの利点かもしれません。
●個人の社会的信用の低さに驚く
会社という組織を離れ個人で生きていくことになると、社会的信用がガクッと下がります。とくに、クレジットカードを作ろうとしても簡単に作れなくなりました。会社で働き、定期的に収入が約束されていることが、社会的にはここまで大きなことなのだと改めて気付かされました。
私は会社員時代にあまりよく考えずに作っていたので、クレジットカードが作れないということに驚いたのを覚えています。フリーになるということは、会社という後ろ盾がなくなるということで、今まで自分が会社という存在に助けられていたのだと思い知らされました。
家を建てる、車を買うといった大きな買い物をするときにも、フリーランスというだけで障害になりやすいです。ローンを組もうにも、収入が保証されていないフリーランスでは承認されにくいのです。だからこそ、自分の信頼を作るためにも仕事を頑張らないといけませんし、収入を上げていかなくてはいけません。
フリーランスになると今まで知らなかったことに気づきますし、それが大変でもあり、楽しくもあります。では、フリーランスに向いている人のマインドはあるのでしょうか。
●「自分」というアイデンティティができる
フリーランスになると「自分は◯◯ができる人」というアイデンティティを持つようになります。フリーランスで「自分になにができるかわからない」という人はいません。そのような人に仕事は来ないからです。そして、その「自分にできること」を常にブラッシュアップしていかないと収入は上がりません。
自分の強みはなにか、自分の弱みはなにか、何が好きで、何が嫌いなのか、フリーランスになって初めてここまで自分と向き合うようになったと思います。会社員時代は、ただひたすら言われたことをこなす日々でした。元SEだった私は、顧客の要望を聞き、システムを構築することだけに追われていたのです。
気づいたらいろいろなスキルを身につけられたので、有意義な時間ではありましたが、日々仕事に忙殺されて自分と対話する時間というのはあまりなかったように思います。こうして自分と向き合うのは、自分の課題や問題点を認めるためです。
課題や問題点がわからないと成長できません。現状を把握することで、初めて必要な対策がわかります。それが読書であったり、セミナーであったり、資格の勉強だったりするわけです。
フリーランスに向いている人のマインド
フリーランスに向いている人のマインドはたしかに存在します。それは「自由」に対して人一倍強いこだわりを持っていることかもしれません。ここでは、私が考えるフリーランス向きのマインドをご紹介していきます。
●人間関係で悩みたくない
「上司との反りが合わない」「職場の派閥争いに疲れた」「気の合わない同僚がいる」など、組織の中で働いているとかならず人間関係の悩みが出てきます。求人情報メディアであるエン・ジャパンの調査によると、転職理由に「人間関係」を選んだ人は全体の25%にも上るという結果が出ています。
参考:【2019年最新版】仕事辞めたい理由トップ10をランキングで紹介 – エン・ジャパン
この理由は「結婚・家庭の事情」を上回って堂々の一位です。会社員にとって、職場の人間関係は重要であるということがわかります。
フリーランスになれば、そもそも毎日顔を突き合わせなきゃいけない人間はいません。SEなど常駐タイプの案件であれば話は別ですが、それでも決められた期間以上働く必要はないですし、合わない人とは一緒に仕事をしなくて良いのがフリーランスの特権でもあります。
私の場合、ライターの仕事をしていますが、いろいろなクライアントと会いますのでさまざまなタイプの人がいます。その中でも「ああ、この人は合わないな」と思ったら、やんわりと仕事をお断りしてしまいます。それがお互いにとってベストなのです。
お互い嫌な思いをしながら仕事をしても満足いく仕事はできません。であれば、初めから一緒に仕事をしないのが最善なのです。
このように、フリーランスでは人間関係に悩む、ということはほぼなくなります。多少はありますが、長期化はしません。人間関係で消耗したくないと考えているのであればフリーランスに向いているといえます。
●人生の主導権を握りたい
会社員を否定するつもりはまったくありませんが、会社員として生きるということは、ある意味会社に依存して生きているということです。給料をもらうためには、会社に与えられた仕事を、会社のルールに従ってこなしていく。ほとんどの人はそうやって生活しています。
フリーランスになるということは、すべてのことを自分の力で切り開いていくということです。仕事内容も、スケジュールも、休みも、すべてを自分で決めていい。人生の主導権を自分で握って生きていくということです。人生というゲームをスリリングに生きていくのは大変ですが、楽しいこともたくさんあります。
自分の人生を自分で決めて歩んでいきたいという気持ちがあるのであれば、フリーランスに向いているマインドといえるでしょう。
●プライベートを大切にしたい
もっと趣味の時間を持ちたい、友達と遊びたい、両親の介護をしたい、もっと子どもの側にいてやりたい、プライベートを大切にしたいのであればフリーランスは最適です。もちろん、仕事のバランス調整はしなくてはいけませんが、余裕ができる程度の受注量にすればプライベートを充実させることは可能です。
また、仕事をうまくやりくりすればプライベートの時間を確保できるのもフリーランスの魅力でしょう。早朝に仕事を終わらせて午後からは子どもと遊ぶ、友人と飲みに行く、ということが可能です。午前中に用事を済ませて午後から仕事を開始するなど、フレキシブルな働き方ができます。
私も、フリーランスとして働くことで、子どもとの時間を人よりは多く確保できていますし、朝夕に子どもを保育園に送迎してその間に仕事をするようにしています。実は、仕事をずっとしていれば能率がいいのかというとそうでもありません。
自分のプライベートを優先するためにも仕事はスピーディに終わらせるという習慣が身につくようになると、仕事とプライベートの両立が可能になります。もし、自分のやりたいことがある、もっと家族との時間を持ちたいと思っているのであれば、思い切ってフリーランスに転職するのも悪い選択ではないと思います。
●一人が気にならない
フリーランスというと、「孤独」なイメージを持つ人も多いですが、実際、孤独です。私はライターで自宅作業が多いですが、1日でほとんど誰とも話さないこともあるくらいです。それでも、現代ではSNSが発達しているので、昔と比べればフリーランスでも完全な孤独にはなりません。私もたくさんのフリーランス仲間とSNSでコミュニケーションを取っていますし、孤独を感じたことは正直ありません。
フリーランスでもやり方次第ではたくさんの仲間を作れますし、何かあった時に相談に乗ってくれるパートナーができるはずです。フリーランスのコミュニティもたくさんあるので、そういうところに参加してみるのも1つの手ですね。
では反対に、フリーランスに向いていない人のマインドはどういうものでしょうか。
フリーランスに向いていない人のマインド
フリーランスに向いていない人のマインドは、思ったよりもたくさんありませんでした。思いつくのは「安定志向」で「人と一緒にいたい」人でしょうか。
●安定した収入や働き方が欲しい
すでに紹介したように、フリーランスになると収入が安定しません。これは大きなデメリットです。会社員であればよほどのことがない限り会社が潰れて露頭に迷うことはないですし、最悪仕事がなくなっても雇用保険があるのでしばらくは生活できます。
わざわざフリーランスになってリスクを追うことにメリットを感じない人は、やはり会社員の方が向いているということになるでしょう。ちなみに、会社員に向いていることも立派な資質です。世の中から会社員がいなくなったら会社が立ち行かなくなりますし、経済が回りません。
●仲間と一緒に仕事がしたい
フリーランスは何かと一人です。もちろん、人と一緒に仕事をすることはありますが、常に誰かが一緒にいて作業をすることはあまりありません。そのため、誰かと話をしたい、誰かに相談したいことがあっても、すぐそばに誰かがいないことの方が多いです。
会社員であれば同僚、先輩、上司など誰かがいますし、相談することができます。そこが大きな違いといえるでしょう。問題があれば自分で考えて乗り越えなくてはいけないこともあります。頼れる人は周りにいません。
フリーランスになるのは刺激的!
フリーランスになれば、とても刺激的な人生を送れるようになります。もちろん、刺激を楽しむためにはそれ相応の努力も必要ですし、辛いこともたくさんあります。自分で仕事を取ってきて、クライアントと信頼関係を構築して、スケジュールを管理・調整するなど、会社員時代に比べるとやることは盛りだくさんです。
それでも、その1つ1つが自分の仕事に必要なスキルなのです。自分が営業して、経理をして、作業もする。すべての業務をこなしていくと見えてくる景色が変わってきます。やることはたくさんありますが、今の自分と会社員時代の自分を比べれば、会社員時代の方が大変だったと思います。
朝の通勤ラッシュにイライラし、職場で起こる理不尽な出来事にイライラし、また満員電車で帰って寝る。月曜日から週末が来るのを指折り数えて「まだ水曜日かー」などと言いながら働いていました。もちろん、職場の同僚と一緒に仕事をするのは楽しかったですし、飲み会やイベントもそれなりに楽しかったですが、どこか自分をすり減らしながら生きているのが息苦しかったのだと思います。
今では会社で働いていたときよりも自分らしく生きていると感じます。自分に必要なことを見つけ、学び、成長する。非常にシンプルですが、こうして自分が成長するのを実感するのはとても楽しいです。会社に強制されて取る資格は苦痛でしたが、自分が必要だと感じてする勉強は喜びを感じます。
それは自分が成長すれば、もっと良い未来が待っているとわかっているからでしょう。フリーランスで一番大切なマインドは「成長する自分を楽しめる」ことかもしれませんね。
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