SEという仕事は、システムをクライアントに納品するという性質上、締切に追われて業務がキツくなる傾向があります。あまりに長い労働時間が続くと「もう辞めたい」「自分はこの仕事に向いていない」などと考える様になるのは珍しいことではありません。
私の場合、さまざまな要因が重なってSEの仕事を辞めるという結論に至りました。今回は「なぜ私がSEを辞めたのか」という部分を回想も交えてご紹介しようと思います。
ここがSEの嫌なところ!私がSEを辞めた8つの理由
これはどの仕事においても同じですが、仕事をしていれば嫌な思いをすることはたくさんあります。SEの場合はどのようなことがあると「キツイなぁ」と感じるのかをまとめてみました。
●納期がキツすぎる
やはり納期がキツイと仕事も大変になるので厳しいです。なぜ納期がキツくなるのかというと、仕事量と予算とスケジュールが合っていないからです。仕事量と予算が問題じゃないの?と考えられた人がいれば着眼点が素晴らしいです。
そう、仕事量と予算だけの問題ではないというがポイントになります。通常であれば、仕事量と予算のバランスさえ取れていればプロジェクトは上手くいく気がします。しかし、システム開発では両者のバランスが取れているだけでは上手くいきません。
システム開発は、工程が進めば進むほど人手が必要になるという性質があります。要件定義や設計段階ではそこまでの人では必要ないのです。本当にマンパワーが必要になるのは開発段階からになります。そのため、予算がたくさんあるからたくさん人を入れれば早く終わるというわけではないのです。
さらに、仕事量と予算のバランスがとれてもスケジュールの問題が残っています。両者のバランスが取れていても、クライアントの希望納期が現実的でなければスムーズな仕事は望めません。
私の場合、大規模プロジェクトが多かったので、スケジュールの遅延による炎上は悲惨なものでした。どうしてこんな無茶なスケジュールで話を進めたのか、少し考えればわかりそうなことを毎回繰り返すのか。営業や上司を疎ましく思ったこともありました。
●見切り発車プロジェクトが多すぎる
システム開発は要件定義、基本設計、詳細設計、実装、テストというように作業工程がきっちり決まっています。しかし、ある程度優秀なメンバーが揃っていて、システムの規模が小さく、スケジュールに余裕がない場合、基本設計をしたらそのまま実装に入ってしまうこともありました。
ある程度経験があるSEであれば、基本設計さえあれば、どのように実装に落とし込めばいいかは頭の中で描けるようになります。そのため、詳細設計を飛ばすことでスケジュールの辻褄を合わせるわけです。
しかし、これは一種の博打のようなものです。メンバー間で最終的な成果物の認識合わせができていないと、ちょっとした齟齬が大きなバグの原因になることもあります。この進め方は、ほぼテスト段階で炎上します。
詳細設計をせずに見切り発車でプロジェクトを進めた結果、製品の品質に問題が生じます。意図しない非効率なコーディングをしていたため、バグの原因究明に時間がかかったり、部品を丸々作り直したり、必要以上の時間が取られてしまいます。結局、これも無理な納期に合わせようとする苦肉の策であることに変わりはないのです。
●メンバーが合わないと地獄
私は比較的良好な関係のプロジェクトメンバーに恵まれて仕事をさせていただきました。良いメンバーと楽しく仕事ができていればある程度キツイ仕事でも乗り越えることができるものです。むしろ、問題が発生するたびにヒーヒー言いながら乗り越えるのが楽しかったと思えるくらいです。
しかし、一度だけ最悪なメンバーと一緒に仕事をしたことがあり、そこでの経験が私の決断に大きな影響を与えることになりました。これは派遣時代の話ですが、そのときに派遣された会社のメンバーは本当に合いませんでした。
やる気だけあって部下に無理難題を言い続けるトップ、トップに服従して部下を守らないリーダー。怒られないように仕事をするメンバー。チームとして完全に機能不全に陥っていたプロジェクトでした。
環境に負けないで頑張ろうと思いましたが、度重なる上司からの圧力とストレスで、体調を崩した私は、結局3ヶ月間でそのプロジェクトから離れる決断をしました。そこでの仕事は正直大変ではありませんでしたが、メンバーが悪いとここまで仕事は難しくなるのかと実感したプロジェクトでもありました。
●同僚の中には心身を壊した人も
過密スケジュールで仕事をしていると、心身を壊す人も出てきます。私はこれまでに4人、そのような人を見ました。彼らに共通していえることは
優秀である
責任感が強い
という点です。優秀で責任感が強い人ほど、たくさんの期待と、期待と比例する作業量をこなします。そして、無理な仕事に応えられないことに自責の念を持ってしまいます。それが直接的でないにせよ、プロジェクトの遅延に自分が関係していると考えてしまう人はどんどん自分を追い込んでしまい、最後に倒れます。
昨日まで一緒に働いていた人が、急に精神疾患で会社に来なくなる。一見元気に見えても、ストレスは少しずつ人の体を蝕んで行っていることがあります。それを判断する手立ては自分にはありません。
仕事ですから辛いことはあるのは当然ですが、これが正しい働き方かと考えたときに、私は別の道に進んだほうが良いと考えました。
●暇なときと忙しいときの差が激しい
ここでいう「働き方」というのは仕事の忙しい時期と暇な日の差が激しすぎるという意味です。プロジェクトが炎上すれば平日は終電まで、土日は休日出勤を繰り返す日々。かと思えば、プロジェクトが終わってすぐ次の仕事が決まらない場合は一日何をするでもなく定時で帰宅する。
会社がプロジェクトを受注できなければ仕事がないのは仕方がないことです。しかし、激務の後にポッカリと仕事が空くと、人はいろいろなことを考えてしまいます。毎日、朝から晩まで頭をフル回転させて働いていた人間が、急にやることがなくなるわけです。いわゆる定年退職したサラリーマンが陥る燃え尽き症候群のような状態になりました。
これは人によって良し悪しがあると思いますが、私はこの機会に人生を考えなおす機会があったと捉えています。ある程度安定して仕事が続いてくれたほうが、何も考えずに働き続けることができたでしょう。
●営業が無能だとみんな不幸になる
システム開発における営業の仕事は、外部の企業のシステム案件を受注してくることです。営業の存在意義はどれだけの仕事を取れるかにかかっていますし、営業の成績が会社の業績に直接影響する重要な役割です。
システム開発を受注するには競合他社との入札合戦に勝たなくてはいけません。そこで、クライアントは少しでも早く、安くシステムを作ってくれる会社に頼もうとします。システム開発というのは非常に高額です。ものによっては数千万円、数億円に達する規模のものもあります。少しでも開発コストを安くしたいというのは普通のことです。
ここで、他社に勝つために必要以上に安い見積もりと納期で仕事を取ってくる営業もいます。営業にとっては仕事が取れればそれでOKのような人もいるので、そのしわ寄せはすべてSEにくるのです。
また、クライアントの要望をなんでも二つ返事で回答してしまう営業もいます。こういう営業は開発現場にとっては害にしかなりません。結果的に突貫工事で構築したシステムは機能的にイマイチで、導入先でも評判が悪く、システム会社にとっては赤字で終わる。両者にとって良い結果にはならないのです。
良い営業は正確な見積もりでクライアントと開発現場の両方が納得できる落とし所を決められる人です。また、仕事を取った後も開発現場に顔を出してメンバーのフォローをするなど、一緒に開発に携わってくれる営業は良い営業のことが多いです。
●ビジネスモデルが受け身だから振り回される
クライアントから依頼されたシステム開発は常に受け身のビジネスモデルです。SEであれば、クライアントの鶴の一声で仕様が変更になった経験は誰もがしているでしょう。頑張って作ってきたものがクライアントの意向でひっくり返る、しかも、その尻拭いは自分たちでしなくてはいけないというのはどうにも私にはアンフェアに感じました。
もちろん、よりよいシステムを作りたいという気持ちはあります。クライアントによっては非常に申し訳無さそうにお願いしてくる人もいました。厄介なのは、一度合意したことをひっくり返すということがどれほど重大なことかを理解していないクライアントです。
また、これもよくあるパターンですが、クライアントのシステム開発担当が変わってしまい、仕様が変わることがあります。前任者と後任者でシステムに関する見解が違うため、「今度からはこっちでやってください」みたいにサラッと仕様変更されちゃうのです。先方の都合で担当者が変わり、しっかりした引き継ぎもされずに後任者に振り回されるのは炎上パターンの鉄板といえるでしょう。
もちろん、ある程度の仕様変更にも耐えられる柔軟な設計にしておく、仕様変更が発生しないように十分にクライアントと一緒に検討しておくといったことは必要です。SEの力量不足で仕様変更が入ってしまうことも十分にありえます。しかし、大抵の場合はクライアント側のシステム開発に関する知識不足、経験不足でプロジェクトが炎上するパターンがほとんど、そういう印象があります。
これは外的要因であり、こちら側でコントロールできることではないため、どうしてもクライアントに振り回されるというリスクはつきまといます。
●出会いがない
これも地味に大きな問題です。忙しいプロジェクトに入ってしまうと、文字通り忙殺されてしまうため、まったく出会いがなくなります。会社と自宅を行き来するだけの生活になりますし、土日は疲れ果てて寝休日になってしまい、誰かと遊びに行くなんて気が起きなくなってしまいます。
異性と知り合う機会がまったくない、というわけではありません。会社には女性の同僚もいましたが、同僚と付き合うというのがあまり好きじゃない人もいます。そうすると外部に出会いを求めるしか無いですが、そもそも遊びに行く暇も気力もないので出会いがない。こういう悪循環に入ってしまうのです。
晩婚化が進む現代で、こうしたプライベートにも影響するような仕事の仕方は改善するべきだと思いますし、SEという職種に魅力を感じない原因の1つにもなっているかもしれません。
このようにいくつもの要因があって私はSEを辞める決断をしました。では、次はどうするべきかという話になります。選択肢はいくつかありました。
SEを辞めてどの道に進む?
SEを辞めるのであれば、もう少し時間を自由に使える仕事に就きたいと考えていました。もう、人の都合に振り回される働き方はしたくない。それが一番の希望でした。また企業に就職するのか、それともフリーランスとして独立・起業するのかの2択も悩みどころでした。候補としては以下のものです。
●Web系:先端技術を学べ、ソーホーも可能
SIerはもうこりごりなので選択肢はありませんでした。そこで、自社サービスを持つWeb系への転職を考えました。自社サービスの強みはなんといってもクライアントがいない点です。自社が必要なサービスを企画・開発するのと、必要な機能を追加していくため、無理な納期に追われることもありません。
また、自分が良いと考えるものを世に出し、それをユーザーが使ってリアクションをするというのは企業相手のシステム開発とは違った楽しみがあると思いました。スマホアプリ業界も同様の理由で興味がありました。
しかし、家庭の都合で特定企業に就職するのは難しいという理由で断念しました。
●フリーエンジニア:自宅開発か常駐か
フリーランスエンジニアとして活動するのも興味がありました。フリーランスになれば、会社員時代の2倍から3倍の年収になりますし、それならある程度大変な思いをしても我慢できるのではないかと考えました。
いまではフリーランスの案件も案内してくれる転職エージェントや、専門のサービスがありますが、当時は自分一人で営業をするのはかなり難しいのではないかと考えていました。そこが最大の難関だったと思います。
しかし、そもそもシステム開発というものに辟易してしまっていた自分はまたSEとして働くのは抵抗がありました。それと、当時はそこまでフリーランスエンジニアとして活動しやすいインフラが整っていなかったのもあります。
●アプリ制作:自宅開発で稼ぐ
自分の培ってきた技術を使い、良いと思うアプリを個人開発して販売するという方法も考えました。最近ではサブスクリプション型のサービスが増えていますが、当時はシェアウェア型を検討していました。
サブスクリプション型は月額◯円という形で毎月ユーザーから使用料を徴収するタイプです。対して、シェアウェアは最初の1週間程度は無料で使って、それから先も使いたければソフトウェアを買い取るというものです。
どちらもユーザーの支持を得られれば、個人でも十分な金額を稼ぐことができます。販売プラットフォームも窓の社やVectorなどがあるので、可能でした。しかし、個人的にもう少し別の道を探ってみたいという気持ちもありました。
●ブロガー:場所に縛られず自由に稼げる
もともとブログをやっていたこともあり、ブロガーには興味がありました。文章を書くのは好きでしたし、自分の発信したコンテンツでユーザーが楽しんでくれたり、役に立ったりすることで広告収益を得るという方法は夢がありました。
現在では「アフィリエイト」という言葉もかなり浸透してきましたが、当時はまだまだ「胡散臭い仕事」というイメージを持たれていたと思います。実際、自分自身もそれを職業として周囲の人間に公言できるかといわれれば、少しためらいがありました。
ブログに人気が出ればサラリーマン以上に稼ぐこともできる点ではかなり魅力的です。ただし、人気が出るまでは収入がゼロのままというリスクを考えると気軽に手を出せるものではありませんでした。
●ライター:文章を書くのが好きですぐに稼げる
ライティングつながりでいえば、ライターという選択肢もありました。ブロガーと違って働いたらすぐに収入になりますし、クラウドワークスやランサーズというプラットフォームも用意されていたため、すぐに活動することができるというのも魅力でした。
とはいえ、当時のWebライターは単価も非常に低い案件が多く、頑張って書いてもあまり稼げないという点がネックでした。1文字0.3円とかいう案件もザラでしたし、こんな案件をやっていても生活を成り立たせるのは不可能なのではないかとも思いました。
Webライティングの仕事は文字単価で報酬が設定されていることが多いです。つまり文字単価0.3円で5,000字書いたら1,500円ということですね。想像すればわかると思いますが、5,000字書くのってすごく大変です。それがたったの1,500円にしかならない。厳しい世界だと思いました。
最終的に選んだのは?
予想はついているかと思いますが、最終的に選んだのはライターです。あれからいろいろなクライアント様とお付き合いすることになり、知識と経験を積み重ねていく内にどうにか生活できるレベルにまで収入を上げることができています。
また、ライターをして収入を得ながらほかのことにもチャレンジすることができるのも魅力でした。ブログを書くのも良いですし、ソフト開発をするのも楽しそうです。自由になって生活基盤を安定させながら収入の柱を増やしていくのは、私にとって良い方法でした。
今の仕事を選んで良かった点と悪かった点
それでは、ライターを始めてみてよかった点と悪かった点をご紹介していきます。
●【ここが良い!】働き方が自由!
ライターを選んでよかったと思う点はいくつかありますが、何よりもありがたいのは「働く時間と場所を選ばない」ところです。自宅で仕事ができますし、気分転換にカフェに行って作業することもあります。
また、定時というものがないので、朝は子どもの世話をして保育園に連れて行って、そこから自分の仕事ができます。子どもが病気をしてしまったときは、働いている奥さんが無理に休まなくても私が面倒を見れば良いですし、生活にゆとりができました。
これが両親とも会社員だと、どちらかが会社を休まなくてはいけません。現代社会においてはこういった自由な働き方ができるというのは精神的にも大きなアドバンテージになると感じます。
●【ここが良い!】平日に休めるのは最強
ライターとして活動するようになって感じるのは、平日に休めることのメリットが想像以上に大きいということでした。通常、サラリーマンであれば土日祝日休みが一般的です。土日祝日はどこも人でいっぱいですし、出かけるのも嫌になることもあります。
しかし、フリーランスで働いていれば、平日の空いているときに商業施設や娯楽施設などに遊びに行くことができます。人気店のランチで並ぶ必要もありませんし、お店によっては平日限定割引などを利用することもできます。
また、基本的に自分は休む日を調整すればいつでも休むことができます。相手の休みに合わせて休日を設定できるので、お互いにストレスがありません。平日に人混みに疲れることなく有意義に家族や友人との時間を過ごすことができるのは大きな魅力ではないでしょうか。
●【ここが悪い!】収入が安定しない
ライターは仕事の量に比例して収入が上下動します。これはフリーランスであれば避けられない部分です。私も最初はどの程度の仕事をすればどのくらい稼げるのかがわからなかったので、取れる仕事は片っ端から取っていました。
しかし、良いクライアントもいれば相性の悪いクライアントもいます。営業活動をしながらそういったクライアントとの関係性の構築もこなしていくのはなかなか大変な作業です。
一番困るのは継続案件が途中で終了してしまうケースです。継続的に仕事が発生する案件は収入を安定させるためにも非常に重要ですが、これが突然終了してしまうと、当月、または次月の収入がガクッと落ちてしまう危険性があります。
また、仕事が決まって業務に入る直前で、クライアントの都合でキャンセルになってしまうケースもあります。こちらはリソースを確保しているのにドタキャンでぽっかり仕事がなくなってしまえば、機会損失が発生し収入は減ります。
こういった不測の事態にもしっかり対処しながら働いていく必要があります。
●【ここが悪い!】メリハリをつけるのが大変
働く時間や場所に縛られないということは、いつまでも仕事ができてしまうということも意味します。とくに、収入が安定しないフリーランスは、来月の収入がなくなるのを恐れてなるべく働こうとしてしまうのです。休日に休んでいると仕事のことばかり気になってしまいますし、ちょっと時間があれば作業をしようとしてしまう。
これは個人事業主の病気みたいなもので、いつでも仕事のことが気になってしまう、不安だから働くのです。しかし、これはあまり良い状態ではありません。休めるときには休むようにしないと、いつか体を壊してしまうことになります。
私は今では週に1日は完全休養日を作るようにしています。
転職は人生を見つめ直す機会
転職は自分のライフスタイルや、目的、目標にあった働き方を模索するチャンスでもあります。もし、転職を考えているのであれば、自分にとって何が一番大切なのかを考え、それに合わせた仕事を選ぶようにしましょう。重要なのは、自分が満足できるか、自分が納得して仕事ができるかです。
一度きりの人生ですので、自分や家族が幸せになれる道を選んでください。
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