警察官になりたいという人のなかには、警察学校がどんなところなのか知りたいという人は多いはずです。
厳しいという噂はあるものの、警察学校がどういうところなのかはベールに包まれています。
警察官になりたいという気持ちはあるものの、警察学校は厳しいところだと聞いて、警察官になるのを躊躇しているという人もいるかもしれません。
しかし、警察学校でどういうことを習うのかを知れば、これから警察官になるかどうかを決める判断基準になるはずです。

警察学校では座学やテストがある
警察学校と言えば、警察学校生をしごいたり、とにかく厳しい訓練をさせたりするところだとイメージしている人もいるかもしれません。
そのイメージ自体は、まったく間違っていませんし、私も教官には散々しごかれました。
しかし、警察学校も学校だからなのか、日々の生活の中心は勉強でした。

また、次のパートからは、警察官になりたいという学生の質問に答える形式から話を進めていきます。
座学では、警察の職務内容について勉強する


警察学校では通常の学校のように時間割が決められていて、そのうち半分以上は座学が占めていました。
座学で習う科目には、おもに以下のものがありました。
- 地域
- 交通
- 犯罪捜査(刑事)
- 生活安全
- 警備
これらの科目はいずれも警察署にある各課の仕事となっており、警察学校時代の私は各課の仕事について学んでいたのです。
このなかでも面白かったのが犯罪捜査でした。
犯罪捜査の授業では、教官や警察学校生たちが事件の被害者や警察官の役をして、実際の事件を想定して行う「ロールプレイング」をよくやったのです。
事件の模擬現場では、実際に事件があった時に書く「被害届」や「実況見分調書」という書類の作成を学びました。

だらだらやっていると、教官から蹴りが飛んでくるので、常に緊張はしていました。
また、警察学校では、各課の仕事の他に以下のような法律についても勉強しました。
- 刑法
- 刑事訴訟法
- 警察法
各課の授業は教官が担当しますが、法律の授業を担当するのは課長という役職の方々でした。
ちなみに、警察学校での各階級と役職は以下のようになっていて、課長は教官よりも上の階級でした。
警察学校の階級と役職 | |
階級 | 役職 |
警視総監 | |
警視監 | |
警視長 | |
警視正 | |
警視 | |
警部 | 課長 |
警部補 | 教官 |
巡査部長 | |
巡査 | 警察学校生 |
教官たちは怖い方ばかりでしたが、課長たちは穏やかな方ばかりだったので、授業中多少だらけても怒られなかったのが救いです。

なぜなら訓練や武道では頻繁に飛んできた教官のビンタや蹴りや怒声が、座学中は飛んでこないからです。
テストの内容はほぼ暗記!赤点はクビ?


警察学校にいる間、座学で習った各科目のテストが2回行われました。
とは言え、出題範囲は教官たちから教えてもらえますし、出る問題は教科書にある長い文章を丸暗記するというものでした。
警察学校の普段の消灯時間は夜の10時30分でしたが、試験の1週間前だけは深夜1時まで勉強していいことになっていました。
私も含め、警察学校の生徒たちはみなしっかり勉強していたと思います。
なぜなら、このテストで赤点をとると追試を受けねばならず、さらに、追試も落ちると警察学校をクビにすると教官たちから言われていたからです。

同じ教場(警察学校でのクラスのこと)で赤点をとった人も何人かいましたが、全員無事追試をパスし、誰もクビにならずに済みました。
定期的に漢字の試験もある



警察学校では、定期的に漢字テストもありました。
警察学校で配られる教材のなかに専用の漢字ドリルがあり、毎回決まった範囲から問題が出題されました。
漢字テストをやる理由は、警察官は実務のなかで漢字を書く機会が多いからです。
警察学校を卒業して現場に出ると、事件や事故があるたびに書類を書かなければなりません。
書類はパソコンで書く時もありますが、被害届などは事件の現場で書くことが多いため、手書きしなければなりません。
その際、漢字が書けなければ困るからという理由で、警察では漢字が重視されているのです。
とはいえ、先ほどお話しした座学のテストと違い、漢字のテストで悪い点をとってもクビにはなりません。
ただし悪い点を取り続けると、漢字の書き取りを延々やらされるという罰もありました。
幸い私は漢字が得意だったので、良い点が取れていましたが、漢字が苦手な同期たちは夏休みなどのまとまった休日中、漢字ドリルに出てくる全ての漢字を何回も書き取るよう命じられていました。
警察学校では武道を習う
警察学校の授業では、座学と同じくらい武道が重視されていました。
武道では警察学校生が「柔道」か「剣道」、2つのうち好きなほうを選択でき、私は柔道を選びました。
さらに、警察学校では、剣道か柔道の他に「逮捕術」という警察独自の武道を習いました。

犯人を取り押さえるための柔道


警察学校生のほとんどは、柔道の初心者でした。
いくら警察学校が厳しいところだとは言え、そんな初心者たちを相手に、柔道の先生たちが厳しくしごくということはなく、柔道自体は優しく教えてもらえました。
柔道の授業で習ったのは「受け身」、技の「打ち込み」、試合形式で相手と組み合う「乱取り」などベーシックなものが多かったです。
ただし、夏場の柔道は大変でした。
警察学校には2週間ほどの夏休みがあり、夏休みが終わると私たちは「暑中稽古」に入りました。
暑中稽古では1週間の間、1~5限までぶっ通しで、炎天下のなか柔道をしたのです。

ただし、暑中稽古を乗り越えれば、卒業まで残りの柔道の時間はだいぶ楽になりました。
警察独自の武道「逮捕術」とは?


試合では剣道の防具を着けて戦ったりもしましたね。
私は、この逮捕術が大の苦手でした。
逮捕術では、最初、空手の型のようなものを習うのですが、この動きがうまくできなかったのです。
逮捕術の型の動きがうまくできないことで、教官から「警察に向いてないから辞めろ」と言われることもしょっちゅうでした。
なんとか型を習得した後も、次に習ったのは犯人を取り押さえるための固め技です。
この固め技も「約束稽古」といって二人一組になり、お互いに決められた動作を取り合いながら相手を押さえつけるのです。

落ちるとクビになるかどうかは忘れましたが、柔道と逮捕術にも検定試験がありました。
警察学校ではとにかく走る
警察学校にいる間は、休日の日曜日を除いて、毎日とにかく走りました。
毎日1~5限までの授業が終わると、その後は教場の全員で走ったり、筋トレしたりしていたのです。
走り方も色々で、長距離をゆっくり走ったり、中距離を全力で走ったり、速度を上げたり落としたりして走る「インターバル走」なるものもやりました。
なかでも、特に重視されていたのが「1500m走」と「ジャパット」という体力テストでした。

1500mを6分台で走れないとクビ?


警察学校では、定期的に全員の1500m走のタイムを計測していました。
ちなみに、私のタイムは確か5分22秒くらいで、同期の警察学校生のなかのちょうど平均でした。
卒業前最後の1500m走の計測で7分をオーバーしていた人は、警察学校をクビにすると教官からは言われていました。
しかし、実際は、7分をオーバーしていた人には、7分を切るまで何度も走らせてもらっていました。
それはそれで酷な話ですが、7分が切れていなかった私の教場の友人も、なんとか7分を切ることができ、クビにならずに済んだのです。
ジャパットとは?



ジャパットとは「Japan Police Physical Ability Test」の略で、警察官の体力を測定するテストです。
その内容は、サーキットトレーニングとランニングを組み合わせたものです。
ジャパットは、4つのコーンが長方形になるように配置され、真ん中には2つのパイプ椅子が少し間を開けた状態で設置され、椅子と椅子の間に「警杖」という杖が置かれた状態で行います。
ジャパットの手順は、以下のとおりです。
- スタート地点から折り返し地点まで、途中で警杖を飛び越えながら2往復する
- スタート地点に戻ったら、4つのコーンの外側を、途中で警杖を飛び越えながら8の字に走るのを2往復する
- 8の字走が終わったら、スタート地点から真ん中の警杖を飛び越え、その場で床に胸を付け、さらに起き上がって背中を付ける
- 胸と背中を付けたら、警杖を飛び越えて反対側に行き、その場で腕立てを2回する
- 胸付けと背付け、警杖を飛び越えての腕立て2回を1セットとして、これを3回繰り返す
- 3回繰り返したら起き上がって、ゴールまでダッシュする
以上が、ジャパットのやり方です。
実際にやってみないと分かりませんが、思っていたよりもずっと体力を使います。
警察学校にいる間、ジャパットは定期的に行いましたが、卒業間近にテストがありました。
テストの合格基準は60秒以内にゴールするというもので、不合格者は居残ってクリアするまで続け、できなかったらクビということでした。
私はテスト当日まで、一度も60秒を切ったことはありませんでしたが、当日はなんとか59秒台で無事クリアできました。
私の教場でクリアできなかったのは、二人だけでした。
その日の夜は教場での飲み会がありましたが、不合格だった二人は飲み会の直前までずっとテストを受け続けて、なんとか合格できたようでした。
警察学校では射撃の訓練をする
警察学校では、射撃の訓練もずいぶんしました。
当時は警察学校から皆で犯人護送用の車に乗り、県警の射撃場に行って射撃の練習をしていたものです。
射撃場では一人ひとりに点数がふられた的が用意されていて、的の中心に近いほど高得点でした。
私たちは的の中心を狙って銃を撃ち続け、射撃の腕を磨いていたのです。

射撃訓練の検定に落ちるとクビ!?


射撃訓練では、おもに3種類の撃ち方で銃を打ち、数十m先にある的に弾を当てる練習をしていました。
不器用な私は射撃でも、うまく弾を的に当てられませんでした。
当然教官からも怒られるのですが、もっと厄介だったのが、射撃訓練には検定があり、これに落ちるとクビにすると言われていたことです。
テストと言い、1500m走と言い、射撃検定と言い、警察学校にはクビになるチャンスがたくさん転がっているということがわかるでしょう。
とはいえ、実際には検定に落ちても、受かるまでやらせてもらえるため、少なくとも私の期ではクビになる人はいませんでした。
射撃検定も他の試験や検定同様、受かるまで撃ち続けさせてはもらえるのですが、合格した人から射撃場を出ていくので、周りにどんどん人がいなくなっていくのが嫌でした。

射撃には検定の他に筆記試験もある



座学同様、拳銃にも筆記試験がありました。
出題される内容は決まっていて、拳銃を扱ううえでの心得10個を丸暗記して、答案に書くというものでした。
一つひとつの心得がかなり長かったため、覚えるのには苦労しました。
しかも覚える際は、教官に命じられて全ての文章を50回ずつ書き取りしていました。
拳銃の検定は、先ほどお話しした実技と、この筆記試験がセットになっています。
そのため筆記試験に落ちれば受かるまでテストを受け続けなければならず、だめならクビでした。
ちなみに先ほどお話しした、拳銃検定に受からず警察を辞めた同期は、拳銃の筆記試験にも落ちていたようでした。
まとめ
ここまで警察学校でやる主な内容について説明してきましたが、案外まともだという風に感じた人もいるのではないでしょうか?
警察学校で学ぶことは多岐に渡りますが、中心となるのはこの記事で紹介した「座学」「武道」「走ること」「射撃訓練」でした。
いずれも検定があり、パスしないとクビになるものも多かったですが、この記事を読んでいただければ分かるとおり、最後まで諦めない人に関しては教官たちも見捨てることはありませんでした。
警察学校も教官たちも確かに厳しいですが、やる気のある人に対しては優しい一面も持っていると言えるのです。

コメント
こんにちは。
2019年12月5日づけで警視庁警察官申し込みました。
警察学校ではどんな教育が行われるのかわかって安心しました。
この記事を書いていただきありがとうございました。