これから警察官になりたいという人は、まず警察官採用試験を受けて合格しなければなりません。
警察官採用試験の試験内容はおもに以下の5つで、それぞれの総合点で合否が決まります。
- 筆記試験
- 論文試験
- 適正試験
- 体力試験
- 面接試験
しかし、どのように対策すればいいのか分からないという人も多いことでしょう。
そこで今回は、元警察官である私が体験した警察官採用試験の内容や対策についてお話していきます。
筆記試験の内容と対策方法
私が受験した地元の県警の採用試験では、試験が一次と二次に分かれていました。
一次試験では筆記試験と論文試験が行われ、その結果によって二次試験に進む人が決められました。
筆記試験対策はやっておいたほうがいい理由
先ほども説明したとおり、警察官採用試験は一次と二次があります。
二次試験に進めるかどうかは、筆記試験の結果のみで決まります。
ただしこれは、あくまで二次試験に進む人を減らすための足切りでしかありません。
警察官採用試験の最終結果は、筆記試験も含めた総合評価で決まります。
そのため二次試験に進めても、一次の筆記試験の結果が良くなければ、合格点に達せず不合格になることもあるのです。
現に私は一度、警察官採用試験の二次試験で落ちています。
この時は、筆記試験の対策を一切やらずに臨んだため、試験の問題も全く分かりませんでした。
二次試験には進めたものの、この時点で、最終的に不合格になることを覚悟しました。
私の受けた県警では試験が年に2回あったため、2回目の試験までの約5ヶ月間、毎日5~6時間ほど猛勉強しました。
その結果、予想通り1回目の採用試験は落ちましたが、2回目の試験で最終合格することができたのです。
筆記試験の科目と対策
警察官採用試験の筆記試験で出題される問題は、高校や大学で学ぶものとは全く異なります。
今は少し違う点もあるようですが、私が受験した年の警察官採用試験の科目は以下のものでした。
- 数的処理→判断推理・数的推理・資料解釈
- 文章理解→現代文・英文・古文
- 社会科学→政治・法律・経済・社会
- 自然科学→数学・物理・科学・生物・地学
- 人文科学→日本史・世界史・地理・思想・文学芸術
筆記試験の対策にあたって、私はAmazonで市販されている「警察官採用試験過去問350」という本を買って勉強しました。
この本では、警察官採用試験の筆記試験の過去問が試験科目ごとに載っています。
色々な科目を広く浅く勉強するぶんには、ベストな参考書だと言っていいでしょう。
筆記試験の効率的な勉強方法
私が受験した時と科目名が変わっている部分もありますが、平成29年度の警察官採用試験の筆記試験の科目数の内訳は、だいたい以下のようになっているようです。
科目 | 出題数 |
社会科学 | 9 |
人文科学 | 9 |
一般科目 | 1 |
自然科学 | 6 |
文章理解 | 9 |
数的処理 | 16 |
これはあくまで目安ですが、だいたいの割合は変わりません。
表を見れば分かるとおり、全体の問題数50問に対し、「数的処理」が圧倒的な割合を占めています。
そのため筆記試験の対策をするなら、数的処理を重点的に勉強するべきです。
私は当時、数的処理のほかに、点数配分の大きい「文章理解」「社会科学」「人文科学」も専用の参考書を買って勉強しました。
「自然科学」は「科学」「生物」「地学」「物理」といった理科系の科目で、私は昔から理科が苦手なうえ、点数配分も少ないため、全く勉強しませんでした。
全ての科目を勉強することは不可能に近いですから、このように重点的に勉強する科目を取捨選択することが、筆記試験で良い点をとるうえで重要です。
警視庁は漢字試験もある
地元の県警ではありませんでしたが、警視庁では漢字の試験もありました。
漢字の試験も市販されている参考書を使えば充分対策可能で、私は「警察官採用試験漢字力7日間トレーニング」という参考書を使っていました。
これは、警視庁の漢字試験でよく出題されるという問題がたくさん載っている問題集でした。
警視庁の漢字試験では、難しい問題も出てきたのでしっかり勉強しておいてよかったと思いました。
論文試験の内容と対策方法
警察官採用試験では、一次試験と同じ日程で論文の試験もありました。
論文試験は出されたテーマについて、800字程度の論文を書くという形式のものでした。
論文試験も事前にやることが分かっていたので、市販の参考書を買って勉強しました。
大卒向けになりますが、私が使っていたのは「大卒警察官 合格論文はこう書く!」という本です。
参考書には過去に実際の試験で出された問題と模範回答の論文が載っていたので、どういう問題が出るのか、どんな論文を書けばいいのかがイメージできました。
警察官採用試験二次試験の対策方法
勉強したかいあって、私は無事警察官採用試験の一次試験を通過し、二次試験に進みました。
二次試験では、「適正試験」「体力試験」「面接試験」と3つの試験が実施されました。
適正試験の内容と対策方法
警察官採用試験の適正検査で出てくる問題は一見意味がなさそうなものも多かったので、問題の内容はほとんど覚えていません。
しかし、たった一問だけ、私が今でも覚えている問題があります。
そして、その一問を「Yes」にするか「No」にするかでずいぶん迷ったものです。
何故ならその問題こそ、まさに警察官としての資質を問われるような問題だと感じたからです。
それは「女性の下着に興味がある」という問題で、私はこの問題にかなり悩みました。
なぜなら、その当時から警察官による痴漢や盗撮などの不祥事はよく起こっていたからです。
ここで「Yes」と答えれば、「この男は性犯罪をする」と思われて不合格になるかもしれません。
しかし「No」と答えれば、「女の下着に興味がない男がいるか」と嘘をついていると思われて不合格になる可能性もあります。
しばらく悩みましたが、私は正直に回答することに決めたのです。
私は女性の「下着」そのものには興味がないため、「No」と回答しました。
しかし、私の同期にはこの質問に「Yes」と答えたという人も多かったので、合否にはあまり関係なかったのかもしれません。
適性検査では、クレペリン検査もある
警察官採用試験の適性検査では、「クレペリン検査」なるものもやりました。
クレペリン検査では、例えば以下のように、一列に並んだ数字を隣り合ったもの同士でひたすら足していきます。
「1 3 4 2 8 9 5 6 7」
隣り合った数字同士を足した答えの下一桁は、以下のようにその下の行に記入していきます。
「1 3 4 2 8 9 5 6 7」
「 4 7 6 0 7 4 1 3 」
クレペリン検査は、このような計算を時間内にできるだけ多く解くというものでした。
私は暗算が得意だったので、かなり多くの問題が解けました。
しかし、これはあくまで性格診断の一種であり、どれだけ多くの問題を解けたかは、試験の結果には関係ないと試験官に言われた記憶もあります。
そのため、クレペリン検査の対策は特に必要ないかもしれません。
もし不安なら、検査に備えて、暗算の練習をしておくといいでしょう。
体力試験の内容と対策方法
警察官採用試験の体力試験では、試験会場の体育館に移動して行いました。
格好は上半身裸にハーフパンツで、数十人のグループ単位で数列に並んで、列ごとに試験官が付いて受験者たちの動きをチェックしていました。
種目は腕立て伏せ、腹筋、「バーピー」などで、バーピーとは立った状態からその場にしゃがみ込み、両手を床について両足を後ろに伸ばし、また両足を両手の近くに戻してジャンプするという運動です。
どの種目も、試験官が「1、2」と数を数えるのに合わせて回数をこなしていきました。
腕立て伏せや腹筋の回数は30回ほどでしたが、意外にも周りの受験者たちは耐えられず、途中で脱落する人がほとんどでした。
私は当時スポーツをやっていたので、体力試験に関しては特に対策はしませんでした。
ちなみに、私が試験を受けた当時、警察官採用試験ではピアスの痕は減点になるとネットで見たことがあります。
私は両耳にピアスの痕があって、そのことを試験官から指摘され、チェックを受けました。
面接試験の内容と対策方法
警察官採用試験の面接では、おもに以下のようなことを質問されました。
- 警察官になろうと思った理由
- 学生時代に力を入れたこと
- 警察学校は集団で寮に暮らすが、集団生活の経験はあるか
- 警察は厳しいが、やっていける自信はあるか
- 危険な仕事だが、両親はどう思っているのか
民間企業の面接で聞かれるような、「あなたを動物に例えるとなんですか?」というような意味不明な質問をされることはありませんでした。
ちなみに、私が合格した県警の面接は、かなり圧迫的な雰囲気のなかで行われました。
広い教室の真ん中に怖い顔をした試験官が二人並んで座っていて、こちらが質問に答えても顔色一つ変えないでいるのです。
面接中は笑顔で受け答えしたほうがいいのかとも考えていましたが、間違っても笑えるような雰囲気ではありませんでした。
また警視庁の試験も受けましたが、こちらは終始和やかなムードで進められました。
面接官が笑いながら質問してきたので、私も笑顔で受け答えをしました。
このように、受ける自治体や面接官によって、態度は異なります。
そのため相手の態度を見て、こちらもどのように対応するか決めましょう。
面接が圧迫的なら真面目な顔で、面接が和やかなムードで行われれば笑顔で受け答えするといいでしょう。
制服採寸と身体検査
2回目の警察官採用試験を終えてからしばらく経って、試験を受けた地元の県警から一通の封筒が届きました。
中には、「制服採寸」の案内が入っていました。
私が合格した県警では、合否の発表の前に、制服採寸があります。
制服採寸は、実際に自分が着る警察官の制服をオーダーするために行われるため、呼ばれた時点で合格はほぼ確実と言われています。
制服採寸の際、同時に身体検査も行われました。
ここでは、血液検査やレントゲン検査などをやったように記憶しています。
検査の内容自体はあまり覚えていませんが、試験官が言うには、検査の内容によってはここで落ちることもあるということでした。
この検査で落ちた場合、たとえ後日、病院などで同じ検査をして異常が見つからなくても、不合格の裁定は覆らないとも言っていました。
そのため制服採寸の前は、できるだけ体調を整えておいたほうがいいかもしれません。
制服採寸からしばらくして、私のもとには合格通知が届きました。
同時にこの翌春から、警察官になることが決まったのです。
まとめ
ここまで警察官採用試験の内容と対策について、私の体験をお話してきました。
ここまで読んでくれた方なら、案外、警察官採用試験に受かりそうだという気がしてきたのではないでしょうか?
あくまで私の体験から感じたことですが、警察官採用試験はきちんと対策すれば、そんなに難しいものではありません。
しかし、かつての私がそうだったように、何の対策もしていなければ不合格になってしまう可能性も充分あるでしょう。
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