
「警察は休みがないって聞くけど、実際はどうなんだろう?」
将来警察官になりたいという方のなかには、こんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
仕事を選ぶうえで休みがちゃんと取れるかどうかは重要なことですから、警察官になりたいという方は、警察の休みの実態について事前に知っておくべきだと言えます。
知らずになってしまうと、後悔することになるかもしれないからです。

警察官の休みは3日に1回あるはずだった
私が経験した地域課(交番勤務)の仕事は3交代制で、仕事のサイクルは以下のようになっていました。
- 1日 当直
- 2日 非番
- 3日 週休
- 4日 当直
「当直」とは勤務日のことで、その日は朝に出勤し、24時間勤務をして翌日の昼ころに帰ります。
「非番」は24時間勤務を終えた日で、その日の残りの時間は原則休みとなっていました。
「週休」は休日のことで、その日1日はお休みです。
1日が勤務日だったら2日の昼まで働き、2日の勤務終了後と3日はお休みで、4日にまた24時間勤務につくというサイクルを送っていました。
この表の通りにいけば、3日に1日は完全に休めることになりますが、実際はなかなかそうなりませんでした。
なぜなら、この休日が、イベントでつぶれたり、休日出勤でつぶれたりしていたからです。
警察の休みはイベントでつぶれる
警察の休みは3日に1回と決まっていましたが、この休日に何かのイベントがあると、休日でもイベントに参加したり、警備をしなければなりませんでした。
むしろ、イベントの日が勤務日の警察官たちは通常勤務についていてイベントに参加できないため、休みの警察官たちが駆り出されていたのです。
休みの日に出勤しなければならないイベントには、警察内部のものから、外部のものまで色々ありました。

また、次のパートからは、警察官になりたいという学生の質問に答える形式から話を進めていきます。
警察の休みはマラソン大会でつぶれる


私の所属していた警察署の管轄には国道などの大きな道路が多く、定期的にマラソン大会が開催されていました。
マラソン大会の選手は車道を走るため、車やバイクが入ってこないよう道路を封鎖していました。
封鎖と言ってもバリケードなどを張るわけではなく、マラソン大会のスタッフと警察官たちがマラソンのコースとなる車道の入り口に立ち、他の道から車やバイクが入ってこられないようにしていたのです。
私たちは、マラソン大会が行われていることを知らずにコースの車道に入ろうとした車やバイクを止めて、「マラソン大会をしているので、別の道を通ってください」とお願いしていました。
マラソン大会があることは事前に告知されていましたが、コースとなる車道を通る人たち全員が把握しているわけではありませんでした。
そのためマラソン大会の警備中は、封鎖している車道を通りたいドライバーたちからずいぶん文句を言われました。
例えば、私が外国人の男性が乗っている車を止めて、マラソン大会をしていることを伝えると彼は激怒して何度もこう叫びました。
「ファッ〇ン・マラソンヌ!」
さすがにファッ〇ンとまでは思いませんでしたが、理由こそ違えど、私も彼と似たような気持ちでした。
マラソン大会があると、私たち警察官は休日でも仕事をしなければなりませんでした。

休日に仕事をしてまで市民から文句を言われるのは、なかなかの苦痛でした。
こうした理由から、私はマラソン大会の警備が好きではありませんでした
警察の休みは全国一斉飲酒検問でつぶれる




「全国一斉飲酒検問」とはその名のとおり、全国の警察が一斉に車の飲酒検問をするというものです。
飲酒検問もその日が勤務日の警察官がやるのではなく、休みの警察官たちが駆り出されました。
飲酒検問の時間自体は2時間ほどでそう長くはなかったのですが、問題は夜に行われるということでした。
飲酒運転を取り締まるのが目的ですから、夜にやるのは仕方ありませんが、検問が終わったのは深夜の12時ころでした。
その時間から帰ろうと思っても、終電はなくなってしまっていたのです。
仕事が理由で帰れなくなっても、タクシー代などは支給されませんでした。

警察では休日出勤して仕事することも多い
ここまで、警察内外のイベントにより休みがつぶれた話をしてきましたが、これらは私にとって、そこまで大きな問題ではありませんでした。
イベントはそう頻繁にあるわけではないですし、休日に駆り出されても、拘束時間は長くなかったからです。
本当の問題はイベント以外、つまり普段の仕事をするための休日出勤にありました。

警察官が休日出勤する理由とは?




警察の仕事には、おもに以下のような実績があり、それぞれ、係ごとに1か月のノルマが決められていました。
- 犯人の検挙件数
- 交通違反者検挙件数
- 少年補導件数
- 巡回連絡件数(管轄内の住民情報の取得)
このうち、特にやっかいだったのが「犯人の検挙件数」です。
地域課では刑事のように、犯人を捕まえるための捜査はしませんでした。
やることは「職質検挙」といって、道行く人に声をかけ、その人が犯罪をしていれば検挙するというものでした。
例えば、
- 声をかけた相手の所持品チェックをし、薬物や凶器などを持っていれば検挙し、検挙件数が1になります。
- 一番簡単なのは自転車に乗っている人に声をかけ、自転車が盗まれたものではないかチェックするというやり方でした。自転車の防犯登録や車体番号を警察のシステムで調べると、その自転車の持ち主が特定できるのです。
このように調べるのは簡単ですが、このやり方で窃盗犯を捕まえるのはとても難しいものでした。
なにしろ、声をかけた人が薬物や凶器を持っているかどうかや自転車に乗っている人が窃盗犯かどうかは、完全に運だったからです。
そして、この運まかせの検挙にノルマが課せられ、ノルマが達成できないと休日返上で自転車を調べなければならなかったのです。

警察ではノルマが急に増えることもある


地域課の警察官のノルマは、県下共通で決められていました。
つまり、本来なら、県で決められていたノルマを達成すれば、それで良かったのです。
しかし、私のいた署では、署長が変わってから、署独自のノルマが設定されて、より厳しいものになってしまったのです。
それは、私から見て、とても達成が可能なものには思えませんでした。
しかし署長が決めた以上は、ノルマを達成しなければなりませんでした。
私たちは勤務日、必死になって検挙活動に励みました。
しかし、それでも検挙件数は足りず、休日も出勤して検挙活動をするはめになっていたのです。
休日出勤をして検挙活動をしても成果は上がらず、休日に出勤する日はどんどん増えていきました。
私も含め、休日出勤を繰り返していた警察官たちは日に日に疲弊していきました。

働きすぎはパフォーマンスの低下につながると、強く実感した出来事でした
警察の休日出勤はサービス出勤だった


先ほどお話ししたマラソン大会の警備や全国一斉飲酒検問などのイベントには休日出勤手当が出ました。
これらのイベントによる出勤は、公務として認められていたからです。
しかし、ノルマの未達が原因の休日出勤には、手当が出ませんでした。
あくまで、ノルマを達成できなかった係の警察官たちが、自主的に出勤しているという扱いだったのです。

当時どのくらい休日出勤があったか、その正確な数は覚えていませんが、当時の給料を時給換算したら700円弱だったということは覚えています。
まとめ
地域課の警察官の仕事は3日に1回24時間勤務があり、それ以外は原則休みとなっていますが、この休日がつぶれることが多くなっています。
マラソン大会の警備や全国一斉飲酒検問などのイベントがあれば、休日でも駆り出されてしまうのです。
とはいえ、こうしたイベントによる休日出勤は拘束時間も短いうえ、休日出勤手当も出たため、まだ良いほうでした。
なにしろ実績ノルマが未達だと、休日に無給で働き続けなければならなかったのです。

しかし、これから警察官になりたいという方は、こういうケースもあるということを頭に入れておいたほうがいいかもしれません
コメント