ゲームプランナーになりたい人の中には、「自分の考えた、面白いゲームが作りたい」と考えている方が多いのではないでしょうか。
ゲームプランナーの「ゲームの仕様作り」の上手さによって、ゲームが面白くなるかどうかが決まるといっても過言ではありません。バトルのルール設計をはじめ、どんなガチャを入れていくか、どんな武器や防具を装備させていくかなど、決めていくことは多岐にわたります。
このようなゲームの仕様作りを担当するゲームプランナーとは、どういった仕事をしているのか紹介していきます。
仕様を担当するゲームプランナーの人物像
ゲームの仕様作りを担当するゲームプランナーは、ゲーム専門学校を卒業した人が多く活躍しています。ゲームプランナーになるための勉強を積んできた人は、ゲーム作りにおいての発想方法や仕様の作り方を学んでおり、即戦力になりやすいためです。
ゲームのキャラクター作りや世界観、シナリオ作りに関しては女性ゲームプランナーが多いのに対し、ゲームの仕様作りに携わっているゲームプランナーは男性が多い傾向にありますが、実際どのような人がゲームの仕様作りの仕事をしているのか紹介していきます。
ゲームが好きで、情熱がある
仕様作りを担当するゲームプランナーは、特に「ゲームが好き」であることが求められます。
ゲームとは、テレビゲームやスマホゲームなどだけを指すのではなく、ボードゲームやトランプ、将棋、スポーツといった幅広いゲームや遊びに詳しい人が多いです。
ゲームに詳しいと、ゲームプランナーとしてはとても有利です。例えば、ゲームのキャラクターのプロフィールページを作るときには、何を載せたらよいでしょうか。キャラクターのイラスト、HP、MP、攻撃力、防御力など、載せる情報がすぐ思いつく人はきっと色々なゲームをたくさんプレイしてきたのでしょう。このように既存のゲームの作りを知っていて、頭にインプットされていれば、ゲームの仕様がとても作りやすくなります。
ゲームの仕様作りに携わっている人は、プライベートでもゲームをプレイし、どんな作りが流行っているのかをチェックしています。ただ長時間ゲームをするだけでなく、「なぜ流行っているのか」を分析し、自分の担当するゲームにも参考にできるところがないか常に考えてプレイしています。
ゲームの世界は日々、新しい技術や斬新なゲームも出てくるため、常に情報を追いかける必要があります。そのため、毎日ゲームをしていても飽きないぐらいの情熱がある人が向いています。ゲーム専門学校を卒業している人は、自身の経歴から「ゲームが好き」ということが伝わるので、やはり採用されやすい傾向にあります。
色々なアイデアを出せ、柔軟な発想力がある
ゲームに詳しいだけでなく、色々なアイデアを出すことができて、ルールのアレンジ能力があるとゲームプランナーに向いています。
ルールのアレンジ能力とは、例えば「鬼ごっこ」のルールから「かくれんぼ」を合体させて「かくれ鬼」という遊びを作るようなものです。どんな遊びでも、「新しいルールを追加して、もっと面白くならないか?」とクリエイティブに考えられる人は、ゲームプランナーに向いています。
実際のゲームの仕事でも、すでに世の中にあるゲームのバトルシステムを応用して、新しいゲームを作ることはよくあることです。既存にあるゲームを真似するだけでは、二番煎じになってしまい、ユーザーからすぐ飽きられてしまうことも多いからです。
そのため、ゲームプランナーは、ゲームが好きというのも大事ですが、頭が柔らかく、発想力のある人が活躍しています。
ただ、発想力というのはゲーム会社に入ってからでも磨くことができますし、ゲームの内容の決め方にも、会社によって個性があります。
グラフィックや技術力に自信のあるゲーム会社なら、突飛な内容にせずとも王道のゲームを描くだけでユーザーは満足できる場合もあります。その場合、旧作とは違う目新しさを加えるために「従来とはちょっとだけ違う」ぐらいのアレンジにとどめることも重要です。
中小のゲーム会社なら、SNSでお笑い目的のバズを狙うような、ぶっとんだテーマのゲームを作ることもあります。そんなゲームでは、論理的に理由を並べたものでなく、感覚的に「おもしろい!」と思ったものが採用される場合もよくあります。
ゲームプランナーの個性によっては、王道のゲームを作っているゲーム会社では採用されなくても、違うゲーム会社で歓迎されることもよくあります。ただ、色々なアイデアが思いつく人のほうが、ゲームプランナーの活躍の場は広がりやすく、重宝されます。
コミュニケーション能力が高い
ゲームプランナーにはコミュニケーション能力が求められます。ゲームデザイナー、ゲームプログラマーとの橋渡し的な存在になることも多いため、人と話すことが得意な人が向いています。口頭で話すだけでなく、内容をチャット上で文章にまとめることも多いため、文章でのコミュニケーションスキルが高い人も重宝されます。
自分の作ったゲームの仕様を説明しなければならない機会が多いため、論理的に話せることが求められますが、感覚に訴えることができることも重要です。自信がなさそうに話していたり、チーム内皆が「面白そう」と思えるような伝え方ができなかったりすれば、その仕様や企画はボツになってしまうこともあります。
そのため、ゲームプランナーの採用面接では、まずコミュニケーション能力が重要視されますが、最初から新人ゲームプランナーに完璧にコミュニケーションができることを求めているわけではありません。ゲーム作りはチームプレイですが、デザイナーが欲しがっている情報、プログラマーが欲しがっている情報はそれぞれ違うため、新人プランナーのうちは情報をまとめるのに苦労します。
仕事上でのプレゼンやコミュニケーションは、やはり何度も失敗して、うまく伝えることができるようになったというゲームプランナーも大勢いますので、あまり気負いすぎず、謙虚に学んでいく姿勢が大事です。
ターゲットユーザーのことを分析できる
ゲームプランナーは、自分の作ったゲームに自信を持つことも大事ですが、「ここが使いにくい」といったユーザーの声を聞くことも大事です。
何年もゲームを開発していると、どうしてもプロ目線でゲームを作ってしまい、ゲームを初めてプレイする初心者に分かりづらいような仕組みを作ってしまうことはよくあります。
例えば、「レイド」とは、複数のプレイヤーが協力して、強いボスを倒すことを意味します。ゲーム好きの方ならピンとくるかもしれませんが、詳しくない人には検討もつかないでしょう。
新人ゲームプランナーであっても「ゲーム内のイベント企画をしてほしい」と言われることがあります。そんなとき、ゲームを遊んでくれているユーザーはどのような人で、どんなものを求めているのかを考えることのできる人が求められています。
とあるゲームで成功している仕様を、他のゲームに同じように落とし込めるとは限りません。ゲームプランナーは、ターゲット層のことを考えて、ゲームの仕様を作っていく必要があります。
例えば、女性層などライトユーザーの多いゲームに、ゲームプランナーが「自分が面白いと思っているゲームにもあるから」といって、レイドバトルを入れてしまうと「一人でのんびり楽しめるゲームだと思っていたのに、人と協力バトルをしなければならなくなり、面倒になった」と、ユーザー離れを起こしてしまう原因になります。
ゲームプランナーは、自分とは違うターゲット層に向けてのゲームを作っていかなければならないこともたくさんあります。「自分には分からないから」といって逃げず、色々なターゲットのことを考え、分析することのできる人が、ゲームプランナーに向いています。
数学が得意で、確率を理解している
ゲームプランナーになるためには学歴はあまり関係がありませんが、ゲームの仕様を考えるゲームプランナーとして活躍していくためには、数学が得意だと非常に有利になります。
特に高校で習う確率や関数が得意だと、ゲームの難易度を左右する「レベルデザイン」方面に進むことができます。レベルデザインを学ぶと、例えばレベル1からレベル2になるときに必要な経験値はどれぐらいに設定するかといったことや、ガチャでレア度の高いキャラクターは、排出確率を何%にすれば、簡単すぎず難しすぎないゲームの進行をしてもらえるかを考えることができます。
しかし、数学が苦手であっても、ユーザー目線の仕様を提案できたり、時代にあったゲームを作り上げることができたり、デザイン面を考えるのが得意だったりと、ゲームのエモーショナルな部分に特化しているゲームプランナーもいます。
ただし新人のころは、ゲームの売上の報告書をまとめたりと、毎日数字に触れることは多くあります。ある程度の算数や数学ができないと、採用試験に受からず、点数で足切りされてしまうこともあります。新卒でゲームプランナーになりたい場合は、特にSPIの数学部分は解けるように練習しておくと、のちのちの仕事にも役立つでしょう。
ゲームの仕様作りの実際の仕事とは?
それでは、ゲームプランナーがどのようにしてゲームの仕様を作っているのでしょうか。
ゲームの仕様は、1人のゲームプランナーが全て作るのではなく、複数人で分担して作っていくことがほとんどです。たとえば、ソーシャルゲームなら「マイページ」「バトル」「ガチャ」「プロフィール」「ショップ」といった風に、たくさんのコンテンツがあります。
ベテランのゲームプランナーなら、ガチャやバトルといった主要コンテンツを担当する場合が多いです。
今回は、スマホゲームの売上と面白さを担保する重要なコンテンツ、「ガチャ」のページの作り方の一例を紹介します。
どんなガチャを作りたいのかを考える
たくさんのスマホゲームをプレイしてきた方なら、色々な「ガチャ」の種類を思い出すことができるのではないでしょうか。
単純に「1連ガチャ」「10連ガチャ」の2つボタンが並んでいる単純なガチャもあれば、「10連ガチャで★5キャラクター1人確定」といったふうに、日によってお得な条件がついているガチャなど、ゲームによって様々です。
自分が担当するゲームのガチャはどんな風な仕様にするかによって、ページの作り方は変わってきます。
常に1連ガチャと10連ガチャだけを選択させる場合もあれば、期間限定で「★5キャラクター確定ガチャ」や「ステップアップガチャ」といった変わったガチャを入れる場合もあるでしょう。仕様を考えるときは、将来的にどうしたいかを、UIデザイナーやプログラマーも同席して、一緒に考えることが多いです。
実際のところ、ゲームの売上や中毒性を意識するなら「ユーザーが何回も回したくなるガチャ」というコンセプトで作ることが多いです。
ユーザーが何回も回したくなるガチャとはどういったものでしょうか。よくあるパターンとしては、レアキャラが出る際に「確定演出」といって、ガチャを引いた時のアニメーションを虹色に光らせるといったものです。10回に1回ほど、アニメーションが虹色に光れば、ユーザーは「これからすごいことが起こるのかも!?」とワクワクします。そして実際にレアキャラを手に入れることができれば、ゲームを進める際にも有利になりますし、友達に自慢することもできます。
このように、「どんなガチャを作りたいか」を考え、次にゲーム画面を作るのに必要な情報を洗い出していきます。
必要な情報を洗い出し、デザイナーに依頼
UIデザイナーにガチャページのデザインを作ってもらうために、ゲームプランナーが提示すべき情報とは何でしょうか。
まず、ガチャの選択画面に必要なものを考えていきます。ユーザーに遊んでもらうため、「1連ガチャ」「10連ガチャ」を選択できるボタンは必須です。期間限定ガチャを入れるなら、終了日時を入れる必要もありますし、毎回新しくロゴを作った方が目新しさが増すかもしれません。
一番推したいキャラクターをピックアップして載せたキャラクターイラストがあればガチャ画面も華やかになりますし、「ユーザーがガチャを回したい」という気持ちを後押しすることができます。
そして、ページ遷移が分かるような仕様書を作成します。
ページ遷移とは、「1連・10連ガチャボタンのある、ガチャ選択画面」→「ガチャを引いた時のアニメーション」→「ガチャ結果画面」といったふうに、ユーザーが遊ぶ時に、どのような順番でページが流れていくかということです。
この次に、ユーザーが「1連ガチャ」、「10連ガチャ」のボタンを押した時に、どんなアニメーションが入るかを考えます。
アニメーションのモチーフはゲームの世界観にあったものにします。例えば学園ものなら学園内のアニメーション、サッカーのゲームならサッカーに関連したアニメーションといったふうに、世界観と関連づけていきます。ただ派手にキラキラしているだけでは、そのゲームらしさが生まれにくいからです。
次に、条件分岐を考えます。例えば、「★5キャラクターが出る時だけ、虹色のアニメーションが入る」「超激レアキャラクターが出る時には、もっとすごい演出が入る」といったふうに、ユーザーのワクワク感が増すような仕組みを考えていきます。
しかし、超激レアキャラクターが出る時に「もっとすごい演出」という依頼のまま、デザイナーに依頼してしまうことは、ざっくりしすぎて無責任に思えるかもしれません。しかし、それは一緒に仕事をする相手次第といってもいいでしょう。
自由に作らせたほうが燃えて、予想以上のものを作ってくれるタイプのデザイナーもいますし、作るものが詳細に決まってから着実に仕事を進めたいタイプのデザイナーもいます。チームに入ったばかりの新人のデザイナーには、完全に自由に考えてもらうよりも、詳細に依頼をしたほうが思い通りのものが出来上がることもあります。
ゲームプランナーは、仕様を漏れなくきっちり決める能力があることも重要ですが、一緒に仕事するメンバーの性格や技術を把握しておくと、円滑に仕事を進めていくことができます。
出来上がったゲームのデバッグをする
デザインが出来上がると、プログラマーはゲームを実装する作業に入ります。検証画面が出来上がってくると、ガチャ選択画面で「10連ガチャ」のボタンを押すと、アニメーションが入り、10連ガチャを引き、ガチャ結果画面を表示するという、ガチャを引く時の流れが再現できます。
次にゲームプランナーは、ガチャの排出確率を決めていく必要があります。
ガチャ排出確率とは、例えばレア度の高い★5は3%、★4は20%、★3は40%、といったように、どれぐらいの確率でレア度の高いものが出るのかを決めることです。この確率次第で、ゲームの進行が簡単になるか難しくなるかどうかが変わります。ガチャの確率は非常にデリケートな部分ですので、レベルデザインを専門とするゲームプランナーが担当する場合が多いです。
ガチャの排出確率を決めてしまえば、「デバッグ」という作業に入ります。デバッグを通して、ガチャがちゃんと動くかどうかや、決めた確率通りに動いているかをチェックします。チェックといっても、数回で済むわけではありません。
ガチャ初実装の場合は、10連ガチャを100回以上引いて、★5キャラクターがきちんと3%近い確率で出ているかどうか確認していきます。「仕事でガチャを引くのは面白そう」と最初は思うかもしれませんが、数十回、数百回と同じガチャをずっと引くとなると、さすがにつらいと訴える人は大勢います。
しかし、ゲームをリリースする前にバグを発見しておくことはとても重要です。もし不具合を残したままリリースしてしまい、ガチャの確率がおかしいとなれば、ユーザーに全額返金するような騒ぎになることもあります。そのため、仕様を担当するゲームプランナーには、注意深さや粘り強さが求められます。
KPIを見て今後のスケジュールを決める
デバッグが終了し、無事にガチャがゲームの中に実装されれば、ユーザーはガチャを回すことができるようになります。
しかし、ガチャを実装するだけがゲームプランナーのゴールではありません。ガチャを実装したことによって、1日の目標金額を設定し、実際どれぐらいの売上があって、何人のユーザーがお金を払ってくれたのかをチェックしていく必要があります。これを「KPI」と呼びます。
KPIは売上の分析だけではなく、そこからどうすれば、よりユーザーが楽しんでくれるかを考える指標になります。
もし、ログインしているユーザーが1日に10000人いるのに、ガチャを回した人が50人しかいないような場合、ガチャの存在や魅力がユーザーに伝わっていない可能性があります。
「お金を払うのに躊躇しているのでは?」と考えられる場合は、無料のガチャチケットを配り、ユーザーに試してもらえるような工夫をします。
「そもそもガチャの場所が分かりにくいのでは?」と考えられる場合は、マイページからガチャへすぐ飛べるような仕組みを作るように、UIデザイナーに依頼します。
「ガチャで強いキャラクターを手に入れなくても、クエストが簡単にクリアできてしまうからでは?」と考えられる場合は、ガチャで手に入る、強いキャラクターが活躍するような難しいクエストを実装する計画をします。
もちろん、最初から全ての問題を考慮してリリースできれば一番良いのですが、ユーザーの声を聞いて、問題点がハッキリすることもあります。
ゲームプランナーはコンテンツの仕様を作り、リリースするだけでなく、そこから起きた問題を解決していくために、ゲームをアップデートしていくことも重要になります。もちろん、アップデートで解決したと思っても、新たな問題が出ることは多くあります。
例えば、無料のガチャチケットを配りすぎてしまうと、有料でガチャを回す人が減ってしまい、売上がダウンしてしまうこともあります。
マイページからガチャへすぐ飛べるような仕組みを作ってしまったら、マイページのデザインがゴチャゴチャしてしまうかもしれません。特にゲーム画面にボタンがたくさんあると誤タップや誤動作も増え、ユーザーのストレスが増します。
難しいクエストを実装すれば、無課金ユーザーから「クリアできないから、ゲームをやめる」とクレームがくることもあります。
改善することで、さらなる問題点が発生することもありますが、どこを優先するかを考えて、ゲームをより良くしていくためにアップデートを計画し、スケジュールを立てていくのがゲームプランナーの役割です。とくにソーシャルゲームは、アップデートを重ねていけるぶん、ゲームプランナーの仕事には終わりがありません。ゲームの仕様を決める仕事は、問題解決の連続といってもいいでしょう。改善に改善を重ねていくことは大変でもあり、やりがいでもあります。
ゲームをアップデートしたり改善していくことで、ユーザーから「面白くなった!」という声が聞けたり、自分の作ったゲームに何年もハマり続けてくれることはゲームプランナーのモチベーションになります。
まとめ
ゲームの仕様作りの仕事は、ゲーム作りへの情熱や、発想力、コミュニケーション能力が求められます。どのようにコンテンツを作っていけば、より面白いゲームになるかを考え、デザイナーやプログラマーと協力してゲームを作り上げていきます。
ゲームの仕様作りの仕事はやりがいも多く、非常に人気のあるポジションです。ゲームが大好きで、ゲームの面白さを追求していきたいという人に向いています。
興味のある方はぜひ、ゲームプランナーを目指してみてください。
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