研究職というのは文字通り研究をする職種のことであり、研究職のイメージは「理系」の職業という人が多いようですが、どのような分野でも研究する職業というのは存在します。
デジタル大辞典で「研究」を検索すると、研究という言葉の意味は「物事を詳しく調べたり、深く考えたりして、事実や真理などを明らかにすること」と記載されており、歴史や経済などを研究するという文系の研究も存在します。
しかしながら、一部を除くと、文系分野の研究を職業にすることができるのは大学や国・地方自治体の研究機関などがほとんどで、研究を職業として生活していくということを考えると、やはり、理系の分野の方が圧倒的に多くなってきます。
かく言う私も大学は工学部に入学し、大学、大学院と理系分野を学び、研究してきた人間の一人であり、研究者としての人生を長期にわたって歩んできました。
ここで、簡単に、私のプロフィールをご紹介させていただきますが、詳細は体験談として別にご紹介させていただくことになるかと思います。
著者のプロフィール
関西に位置する某国立大学の工学部でバイオ関連の学問・研究に携わり、学部だけでなく大学院まで進学し博士号を習得しております。
博士号を習得してから研究者として所属していた組織は、大企業、大学、中小企業、ベンチャー企業と多岐にわたっており、ニーズのある組織への転職を繰り返してまいりました。
企業における役職も一般社員から取締役までと多岐にわたっておりますし、大学の助手(今は助教)の時代には学生の就職相談にも応じていた経験があります。最後になったベンチャー企業においては開発担当取締役として採用面接の面接官としての経験もしてきております。
大企業、大学教官、中小企業、専門分野とは異なる異分野の研究者として様々な立場の研究者、役職、組織などの経験が、何らかの形でお役に立てばと思う次第です。
研究することに向いている人はどんな人?
現象が起きる背景には理由があり、物事は理由も無しに何となく起こっているというわけではありません。
ニュートンが落下するリンゴから引力を発見したように、「リンゴが落ちてきた!ラッキー!」で済ますのではなく、何故落ちるのだろうかと考えることが重要であるというわけです。
言い換えるならば、現象に対して何の疑問も無く現象そのものを受け入れる人は研究者には向いておらず、現象が起こる原因がこれまでに分かっている情報で説明できるのかどうかに疑問を持ち、調べても答えが見つからないときには仮説を立てて実証することが研究です。
現象が起こる理由がわかれば、それが人にとってプラスであるならばより頻繁に起こるようにするにはどうしたらよいのかを考え、それがマイナスであるならば怒らないようにするにはどうしたらよいのかを考えることが発明につながります。
問題が起こる原因を考え試行錯誤で工夫をして問題を解決できた方法を特許出願しそれを企業が買い取った形ですが、企業に就職して企業の利益を生み出すためにこの発明をすれば発明をした人は研究職ということです。
研究職としての理系の就職事情は?
大学で理系というと、医学部、歯学部、理学部、薬学部、農学部、工学部などになりますが、入学するための難易度と将来就職することを考えると、女性ならば薬学部、男性ならば工学部に進学する人の人数が圧倒的に多くなると思います。
しかも、昔の工学部と言えば、ほとんど女性がいないという男子校みたいな状態でしたが、リケジョブームのおかげで学科によっては女性の方が多くなるケースも出るようになってきているようです。
また、女子学生が最も多い理系学部としては薬学部がありましたが、薬剤師を目指す人が多い学科は女性が多く、創薬などを目指す方が行く学科は男子学生が多かったように記憶しています。
さて、男女に関係なく理系の研究者が研究職として働く場としてはその人の研究分野と合致している企業に就職するというのが一般的であり、理系の学部や大学院を卒業して就職する場合の花形的な存在というのが研究職、あるいは、研究開発職と呼ばれる職種というわけです。
大学の教官をしていた期間は学生からの就職相談を受けることも多々ありましたが、ちょうど「就職氷河期」と呼ばれるような時代でしたので、工学部でありながら20社や30社も受ける学生はたくさんいました。皆が大学に行くから、あるいは、親が大学に行けというからというような理由で大学に来ていた学生などは研究をしたくて大学に通っていたわけではありませんので、「就職できればどこでも・・・・」ということで消防官や自衛隊に入ったという者もいました。
リケジョの就職は不利なのか?
一昔前は企業に就職する場合には男性が有利で女性は圧倒的に不利な状況でしたが、男女雇用機会均等法の関係で女性の就職もマシにはなっているようです。
ただし、表向きは機会均等ということになっていますが、結婚・出産ということを考えた場合、女性の雇用を尻込みする企業が多いというのも事実です。特に、後程説明いたしますが、学士、修士、博士と大学で取得する学位のランクが上がるにしたがって年齢も上がってきますので、採用する側の企業としても結婚・出産という女性特有のイベントを意識してしまうのは否めません。
しかしながら、研究ということで言うならば、繊細な作業や分析を得意とする女性の方が有利な研究活動があり、品質管理などは最たるものです。
そういう意味では、職種を選ばなければ、研究職においては女性の就職が不利ということは少なくなっているのかもしれません。
とはいえ、男性でも女性でも、勉強したいと思って選択した学部で有ろうと無かろうと、これまで培ってきた知識や技術を活かして働きたいというのは普通でありますが、それがままならない難しいことであり、新卒でも転職でも、入社してから研究者がぶつかる壁となってきます。
大学で学んできた知識や技術を活かせる方が楽と考える人もいるかもしれませんが、自分の研究してきたことに誇りを持っているような人は研究職ということだけでなく、どんな研究をどこまで任せてもらえるのかということも重要であると考えてしまいます。
実際に企業に就職してから、「思っていたのと話が違う」、「こんなはずではなかった」といったトラブルが起こり、そのことがジレンマとなり転職への道を歩んでしまうというケースもあります。
転職を考える人の理由は人間関係やスキルアップなどいろいろありますが、研究職の転職には「こんな研究がしたい」という自分のやりたい研究をしたいという願望が転職の理由となることもあるというわけです。
ところが、農学部、薬学部、工学部などの応用研究に発展しやすい分野の理系では研究職としての企業への就職の道がありますので、研究職イコール理系、特に、薬学部、農学部、工学部というイメージが強くなります。
応用研究に発展しやすい薬学部、農学部、工学部でも差がありますか?
だから、昔から就職を考えるならば工学部と言われるのですね。
大学で学んできたことを就職してからも活かしたい!?
「研究」と一言で言っても様々な研究職が存在しており、基礎研究、応用研究、開発研究の三つに大別されると考えられます。
- 基礎研究:現象が起こる理由をどのように産業に利用するのか、あるいは、人の生活向上にどのように貢献できるのかといったこととは無関係に、新たな法則や原理、あるいは、物質や事実を特定するために行われる研究を意味します。
- 応用研究:基礎研究の成果を応用し、人の生活の向上に役立つような形にする実用化、あるいは、形態やコストも含めてより多くの人が成果を利用できるような可能性を追求する研究を意味します。また、既に実用化されている商品や技術をより高めるような方法を研究する場合も含まれます。
- 開発研究:基礎研究および応用研究の成果を装置、製品、システム、工程などに利用するための研究を意味し、消費者のニーズにマッチしたコストパフォーマンスや品質も含めた消費者が利用しやすい形にするための研究となります。
文系の研究というのは応用研究や開発研究といった形の産業化に関わる研究に発展させることは困難であり、応用研究や開発研究といった研究は理系の研究にのみ存在する研究の形態であるといっても過言ではありません。
また、基礎研究は大学や国・地方自治体の研究機関で行われるもので、応用研究や開発研究は企業で行われるように解説しているサイトも見受けられますが、必ずしもそういうわけではありません。
確かに、文系の基礎研究はその大半が大学や国・地方自治体の研究機関が行いますが、理系の場合には、大企業には数百人規模の研究員を抱える企業も多数存在し、基礎、応用、開発に至るすべての研究を自社で行うところもあります。
ただし、自社で基礎研究まで行うための人数や設備を確保することが難しい中小企業では、基礎研究の成果を装置、製品、システム、工程などに利用する応用研究や開発研究を行うことが圧倒的に多くなります。
企業は営利団体ですので、社員が生活するために必要な給料を支給し続けるために利益を産み続ける必要があります。
企業としては「売れる商品」を産み出す開発研究や生産コストを下げる技術を産み出す応用研究は最も重要になってきますが、競合他社との差別化を行うためには新しい物質や技術を見出す基礎研究も大切です。
ところが、見つかるかどうかわからない未知の成果に人件費や研究費を割くことができるのは資金が潤沢にある大企業ということになります。
簡単に言えば、基礎研究の研究者として働くことができるのは、基礎研究に力を入れている大企業に就職する必要があり、それがかなわなければ、大学に残ってより上の学位を目指すことになります。
ただし、2000年を迎える段階で推進された「産学連携」というシステムにより研究者の就職や転職事情が変化し、中小企業への研究職としての就職の幅が広がっています。
産学連携の推進で変わってきた就職事情
産学連携が推進された2,000年ごろに大学に地域共同研究センターが設立されるようになり、中小企業が近隣の大学の研究室で探索された基礎研究の成果を利用したり大学の教授、准教授、助教と共同研究をしたりすることで地場産業の活性化が図られることにより、中小企業の研究活動が活発になったことにより理系の研究職のニーズが大幅にアップされました。
中小企業にしてみれば、大学で行われている基礎研究の内容を理解できるレベルの社員の必要性がアップし、共同研究へと発展しようものなら研究そのものを実施するレベルの人材が必要になってくるというわけです。
企業が研究者に求める研究能力は企業の規模や現在存在する人材に対するニーズなどによって変わってきます。
大企業になるとかなりの人数の研究者が在籍し、一つの目的を達成するための研究を分業しているケースが多く、人数の少ない中小企業では一人が行う研究の種類が増えてきます。
時には、基礎研究から開発研究まで一人、ないしは、数名で行わなければならないということもあります。
ところで、大学には学士、修士、博士と三つの学位が存在しますが、どのような研究職にはどの学位が有利ということはあるのですか?
企業が大学に求める人材の研究能力とは?
大学に入学してから4年間で卒業して得られる学士、卒業してから大学院博士前期課程を修了して得られる修士、そこから、さらに進学して得られる博士後期課程で得られる博士という三つの学位が存在し、それぞれの学位を取得するための条件は以下のようになっています。
- 学士:学部の講義で学んできた教科書に出ている公知の事実として認められている情報や知識を利用して、教官あるいは先輩の指導・指示のもと、指示された実験や研究を確実に実行して一角の成果を卒業論文として提出・承認されている。
- 修士:研究室で教官から与えられたテーマと2年間で達成すべき目標を与えられ、研究計画や手段を自分で考えながら目標を達成し、修士論文として提出承認されている。
- 博士:研究テーマや達成目標の段階から自分で考案し、教官の承認のもと研究を進め達成された目標を博士論文として提出・承認されている。研究を進める上で学部や修士課程の学生を指導しながら共同で成果を得る場合もあります。
基本的には学部は4年、博士前期課程(修士課程)は2年、博士後期課程(博士課程)は3年が原則となっていますが、学部に関しては進学に必要な単位が取得できずに留年すれば年数が伸びるということはあります。
また、学部生が実際に研究室で研究に携わるのは4年生になってからであり、大学に居って事情は異なりますが、研究期間としては半年から1年未満となりますし、卒業して就職を機能する場合には就職活動で研究ができない期間が増えてしまいます。
博士課程は前期も後期も在籍期間が研究に携わる期間ということになり、博士後期課程では3年が経過しても目標とする研究成果が得られない場合はオーバードクターとして学生を継続することになります。
以上のことは人材を採用する企業も認識していますので、人材を採用した企業が望む研究能力は以下のようになります。
- 学士:上司から言われた研究方法や分析方法をスムースに実践し、成果を報告することができる。
- 修士:企業としての研究方針や目標を与えれば上司と相談しながら研究を進める能力があり、定められた期間内に許容範囲内と認められる程度の成果を上げて上司に報告することができる。
- 博士:企業としての研究方針・期間や目標を与えるだけで自ら実験計画を立てて、定期的に成果を報告することが可能な能力がある。
修士と博士の境界線は微妙な部分はありますが、学士は指示されたことを確実にこなす能力があれば良いというレベルであり、修士と博士は細かい指示を与えなくても自分で方法を調べて計画を立てることができるレベルであるということになります。
さらに、博士は企業方針に合致した新しい物質や技術を提案できる、あるいは、方向性の修正を提案できるレベルを要求されることになります。
企業が考える研究者の職種とは?
大学や大学院を卒業・修了してようやく企業への就職が決まると、研修期間を経て会社が指定する部署への配属が決定されます。
実際には、面接の段階でどの部署に配属するための求人であるのかを説明されていますし、博士を取得している人は長期にわたる研修を免除するケースが多くなるようです。
さて、会社が理系の研究職を採用した場合に配属される部署としては、研究所、あるいは、研究部門というのが研究職として入社した人が最も望む部署かもしれませんが、他にも工場や品質管理といった部署に配属される可能性もあります。
もっとも、会社が求人を出す時点でどの部署にどのレベルの人が必要であるのかが決まっており、先に申し上げたように、会社が考える研究者のレベルは大まかには学部、修士、博士をという学位で判断されることが多く、特殊な事情を除いては、取得する学位、あるいは、取得している学位に対する求人として公開されています。
いずれにしても、年齢が上がっている段階で給与も高くなりますので、修士や博士は研究部門で採用し、学士は工場や品質管理に配属されているケースが多くなっています。
もちろん、会社の規模によっては取得している学位と配属先の関係は異なりますし、優秀であると判断されれば学士であっても研究する部署に転属される場合もありますし、逆に、能力が低いというわけではなく、修士や博士が工場に転属されることもあります。
特に、博士の場合には、昔は「一本釣り」と呼んでいましたが、必要とする研究をしている大学の研究室の情報や学会発表などを通じて知ることができる情報をもとに、必要とする研究を行っている学生を名指しで勧誘するような求人もありました。
また、会社事情により緊急で特定の分野の博士を取得している研究者が必要になったような場合では、その分野の研究室の教官に転職を考えているような卒業生がいないかどうかを問い合わせるようなケースもありました。
博士を取得している研究者は人数が少ないので、途中入社・新卒入社に関わらず、今でも一本釣りというケースは多いのではないかと思います。
大まかには、以上のような形で研究職として就職することになりますが、入ってからは会社の事情の変化に伴って配属先が変わったり、当初行っていた研究が打ち切られたり、何年か経つと転職を考えるようになる人が出てくることもあります。
そのことについては、次回以降の記事の中で、私の体験談として徐々にご紹介させていただきたいと思います。
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