長きにわたって世界をリードしてきた、日本のデジタルカメラ業界。
レンズ一体式のコンパクト型デジカメは、これまで右肩上がりで成長してきた市場でしたが、2010年以降連続して販売数を減らしてきています。
ここでは、デジタルカメラ業界の異変と業界の基本情報、今後の動向などを探っていきたいと思います。
また、デジカメ業界に転職・就職を考えている方に役立つ情報を紹介していきたいと思います。
デジタルカメラ業界の基本情報
デジタルカメラには、基本的に「デジタル一眼レフカメラ」・「コンパクトデジタルカメラ」・「ノンレフレックス一眼カメラ(ミラーレス)」の3種類があり、メーカー・機種・規格によって特徴が異なり、価格も数千円から数十万円までと幅広いのが特徴です。
業界の歴史を見ていく前に、まず商品である3種類のデジカメの特徴を簡単に説明していきたいと思います。
「デジタル一眼レフカメラ」
本格的な撮影ができるレンズ交換式のデジカメです。
最近は、初心者でも簡単に操作ができるよう機種も多く販売されています。
特徴としては、優秀なオートフォーカスセンサーが搭載されているため、ピント合わせが素早く、正確に被写体を撮影できること、そしてイメージセンサーが大きいため高画質の写真が撮れるという点があります。
「コンパクトデジタルカメラ」
「コンデジ」とも呼ばれる、レンズ一体型のデジカメです。
一眼レフのようなファインダーは基本的に搭載されていないため、液晶画面で画を確認しながら撮影する形になります。
特徴としては、小型で軽量なため持ち運びが便利という点と、おしゃれなデザインのものが多いという点があります。
「ノンレフレックス一眼カメラ(ミラーレス)」
ミラーレス一眼と呼ばれているタイプのもので、レフレックスを使わないレンズ交換式のデジカメです。
コンデジのように小型軽量でありながらも、一眼レフのようにレンズの着脱ができ、本格的な撮影をすることができる利点があります。
デジカメの中では、人気が急上昇している種類です。
デジカメの歴史は意外と古く、1981年にソニーが電子スチルカメラ(現在のデジタルカメラにあたる)の第1号機を発表した時に始まりました。
このカメラは市販されることはありませんでしたが、その後、キヤノンが他社に先駆けて、1986年に「RC-701」の市販を開始し、本格的な開発競争が行われるようになってきました。
1990年代は、コダックと富士フィルムの2社が、デジタル一眼レフ市場で強みを持っていましたが、99年にニコンが「D1」を発表、2000年にはキヤノンが「EOS D30」を発表するなど、業界内の競争が激しくなりました。
2014年度の販売数ベースでは、キヤノンがデジタル一眼レフで54.7%、コンパクトデジタルカメラで28.7%、いずれもトップシェアとなっています。
ミラーレス一眼ではソニーが34.3%のシェアを獲得しており、キヤノン・ニコン・ソニーが業界内で強さを見せています。
国内メーカーの出荷台数は、世界全体で353億台、出荷金額は8,853億円。
国内だけで見ると出荷台数が48億台、出荷金額は1,215億円となっています。
デジタルカメラ業界上位8社の平均年収は853万円、平均年齢は43.6歳、平均勤続年数は18.4年となっています。
デジタルカメラ業界 ~今後の展望~
デジタルカメラ業界は、2010年頃から連続して販売数の急激な落ち込みを見せています。
この理由は明らかで、先進国、途上国で写真を手軽に撮れるスマートフォンが急速に普及したことです。
2014年度のデータでは、デジタルカメラ総出荷台数が、前年比で約70%も減少しています。
特に、コンパクトデジタルカメラが、大幅な減少をみせています。
ただ、ミラーレス一眼は、唯一、出荷金額の伸びをみせており、高画質で撮影できるレンズ交換式カメラの需要はあることを示しています。
業界の展望としては、スマートフォンで代用が利いてしまうコンパクトカメラの需要は、この先も減少していくと考えられます。
とはいえ、より高画質で撮りたいというニーズは、まだまだ高いものがあるため、軽量で画質にも満足できるミラーレス一眼は、堅調な伸びをみせると予想されます。
今後は、スマートフォンのカメラでは撮ることができない高画素、高性能の技術で独自性を打ち出していくことが求められます。
デジタルカメラ業界の企業一覧
- キヤノン(イメージングシステム事業)
- ニコン(映像事業)
- ソニー(イメージング・プロダクツ&ソリューション)
- 富士フィルム(デジタルイメージング)
- パナソニック(映像ソリューション事業)
- オリンパス(映像事業)
- カシオ
- リコーイメージング
デジタルカメラ業界を代表する企業の基本情報
【キヤノン(イメージングシステム事業)】
レンズ交換式デジタルカメラで、13年連続での世界シェアNo.1を達成している業界の巨頭が「キヤノン」です。
今後は、スマートフォンでは写せない高画質の高級機や超望遠タイプなど、付加価値の高い機種に力を入れていく方針です。
基本情報
- 売上高:1兆2,638億円(2015年3月実績)
- 営業利益:1,171億円(2015年3月実績)
- 平均勤続年数:17.2年
- 平均年齢:42.0歳
- 平均年収:769万円
【ニコン(映像事業)】
デジタルカメラ業界でキヤノンと双璧をなすのが「ニコン」です。現在の一眼レフ市場では、キヤノンとニコンで9割近いシェアを占めています。
基本情報
- 売上高:5,860億円(2015 年3月実績)
- 経常利益:214億円(2015年3月実績)
- 平均勤続年数:18.6年
- 平均年齢:43.7歳
- 平均年収:767万円
【ソニー(イメージング・プロダクツ事業)】
キヤノンとニコンが圧倒的な強さを誇るデジカメ業界の中で、3位に入っているのがソニーです。
今後の伸びが期待されているミラーレス一眼では、トップシェアを誇っています。
基本情報
- 売上高:4,320億円(2014年3月実績)
- 営業利益:328億円(2014年3月実績)
- 平均勤続年数:18.5年
- 平均年齢:43.2歳
- 平均年収:859万円
転職・就職へのアドバイス
デジタルカメラ業界では、理系の優秀な人材を積極的に採用していこうという傾向がみられます。
この業界の面接では、基本的な要素としてカメラの要素技術・撮影技術の知識があるかどうか、システムエンジニアの場合は、比較的大きなシステムの構造設計ができるか、チームで実際にコードを書いた経験がどれぐらいあるかと、いった点が評価の対象になります。
デジカメ業界への転職・就職を本気で狙うのであれば、前提条件として、デジタルカメラについての深い知識と技術を身につけておくこと、その上で、それぞれの職種で貢献できる経験や能力を磨いておくことが大切になってきます。
営業職においては、家電量販店との折衝が多くなるので、コミュニケーション能力が高く問われます。
特に、他社との差別ポイントを店舗担当者にプレゼンし、売り場を確保できる能力が重要視されるので、面接ではこの点を意識して自己アピールするといいでしょう。
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