旅行業界の動向・年収・大手企業の調査・比較【2017年度】

業界研究

誰もが長期休暇や大型連休、三連休などを利用して家族や恋人、友人同士で、どこか旅に行かれたことはあると思います。

その旅行を、安全でかつ魅力的なものにし、企業努力によって個人手配では実現できない価格で提供しているのが旅行会社です。

今回は、旅行会社を中心とする旅行業界の基本情報、今後の展望、主要企業、年収、転職・就職のアドバイスをお伝えいたします。

この記事でわかる旅行業界のこと

  • 旅行会社の区分と実施業務
  • キーワード①:OTA
  • キーワード②:ダイナミックパッケージ
  • 旅行業界で有利な資格 ほか

旅行業界の基本情報

旅行会社は、国内旅行・海外旅行・訪日旅行の

  1. パッケージツアー(募集型企画旅行)
  2. オーダーメイドの旅(受注型企画旅行)
  3. 宿・交通手段の手配(手配旅行)

日本の旅行会社は登録制

日本国内で旅行業を手がける場合は、旅行業法に基づき、旅行業者として登録することになっています。

一般社団法人日本旅行業協会のウェブサイトによると、旅行業者は、

  • 第1種旅行業
  • 第2種旅行業
  • 第3種旅行業
  • 地域限定旅行業

の4つに区分されており、第3種旅行業者が多勢を占めます。また、これらとは別に旅行業者代理業も存在します。各業者の業務内容は下表のとおりです。

第1種旅行業海外・国内の企画旅行の企画・実施

海外旅行・国内旅行の手配

他社の募集型企画旅行の代理販売

第2種旅行業国内の募集型企画旅行の企画・実施

海外・国内の受注型企画旅行の企画・実施

海外旅行・国内旅行の手配

他社の募集型企画旅行の代理販売

第3種旅行業国内・海外の受注型企画旅行の企画・実施

国内・海外旅行の手配

他社の募集型企画旅行の代理販売

実施する区域を限定した国内募集型企画旅行の企画・実施

地域限定旅行業実施する区域を限定した国内募集型企画旅行の企画・実施

募集型企画旅行が実施できる区域内での受注型企画旅行・手配旅行

旅行業者代理業旅行業者が委託した範囲内での旅行業務、企画旅行の実施は不可

 

旅行業者の利益はどこから生まれる?

旅行代金の内訳としては、公共交通機関、宿泊施設の費用、手数料となっており、旅行業者の収入となるのは手数料の部分です。

旅行業界は経営監視強化へ

2017年3月に、第1種旅行業者「てるみくらぶ」が経営破綻その負債総額は約151億円といわれており、9万人を超える方が被害に遭ったといわれています。

この事件で忘れてはならないことがあり、

  1. 新卒採用で58人が内定していた
  2. 入社直前(数日前)に内定取り消しとなった

ことです。

この事件を受け、観光庁は旅行業者の経営の監視を強化する方針を打ち出しています。

そんな旅行業界市場ですが、世界-159兆5070億円(世界観光機関、2015年、国際観光収入「インバウンド収入の総額」)、国内-20.8兆円(観光庁、2015年、国内旅行消費額)という規模となっています。

 

旅行業界 ~今後の展望~

旅行業界の今後の展望についてのキーワードは、『OTA』と『ダイナミックパッケージ』です。

OTA

OTAとは、Online Travel Agentの略で、インターネット上だけで取引を行う旅行会社のことです。オンライン系旅行会社ともいいます。なお、店舗で営業を行っている旅行会社が実施しているオンライン販売はOTAとは呼びません。

OTA 国内オンライン系旅行会社には、

  • 楽天(楽天トラベル)
  • リクルートホールディングス(じゃらんネット、エイビーロード)
  • ヤフー(ヤフートラベル)

などがあります。海外オンライン系旅行会社には、

  • エクスペディア(エクスペディア、トリバゴなど)
  • プライスライン・グループ(ブッキング・ドット・コム)
  • トリップアドバイザー

などのほか、民泊を世界に広めた立役者でもあり民泊仲介世界最大手の

  • エアビーアンドビー(表記はAirbnb)

があります。

旅行業界にとって、OTA、オンライン旅行取引の大きな魅力は、店舗費用などのコストカットができ、高い利益率が確保できることです。

もちろん、営業店舗を有している旅行会社、各社もOTAに対しアクションを起こしています。

 

ダイナミックパッケージ

JTB総合研究所によると、ダイナミックパッケージ(Dynamic Package)とは、旅行者が航空やレンタカー、宿泊を自由に選んで組み合わせるパッケージツアーのこと”となっています。

これは、募集型企画旅行で、旅行者はインターネット上の選択肢から希望に沿った飛行機や宿泊先を選び、予約・購入できます。

各社、より多くの顧客の希望を叶えられるような選択肢を、いかにたくさん用意できるかがカギとなっています。

 

旅行業界主要企業と年収一覧(各社有価証券報告書より抜粋)

有価証券報告書あり

  • エイチ・アイ・エス(HIS):432万円
  • KNT-CTホールディングス:568万円

有価証券報告書なし

  • JTBグループ
  • 日本旅行
  • ジェイアール東海ツアーズ
  • 阪急交通社
  • 東武トップツアーズ
  • 名鉄観光サービス
  • ANAセールス
  • ジャルパック

 

旅行業界を代表する企業の基本情報

JTBグループ

JTBグループは旅行業界最大手。旅行取扱高はグループ21社の合計値ですが1兆5851億円となっています。

また、2018年4月にJTB北海道、JTBコーポレートセールス、i.JTB、JTB国内旅行企画など15社を統合するため、株式会社ジェイティービーから株式会社JTBに社名を変更するなどのグループ再編を控えています。

基本情報

  • 売上高:1兆2965億3800万円
  • 営業利益:101億7500万円
  • ※有価証券報告書公表なし

 

エイチ・アイ・エス

エイチ・アイ・エスは、子会社107社、関連会社14社によって構成されています。

2016年11月に創業者の澤田秀雄氏が社長復帰したことや同社が手がけているロボットが接客する省力化ホテル「変なホテル」が話題となっています。

基本情報

  • 売上高:5237億500万円
  • 経常利益:86億4800万円
  • 社員数:5353名
  • 平均年齢:33.5歳
  • 平均勤続年数:7.3年
  • 平均年収:4,327,559円

 

KNT-CTホールディングス

KNT-CTホールディングスは、近畿日本ツーリスト(団体旅行中心)、近畿日本ツーリスト個人旅行(個人旅行中心)、クラブツーリズム(メディア販売型旅行会社)を傘下に有しています。

また、同社は事業構造改革を断行しており、その基本戦略として以下を挙げています。

  1. 1.グループ横断的な事業戦略の策定機能および事業推進機能の強化
  2. 2.地域密着による意思決定の迅速化、機動力の発揮
  3. 3.訪日旅行事業、インターネット販売事業など成長マーケットへの専門特化

を掲げています。

基本情報

  • 売上高:3960億400万円
  • 経常利益:30億4500万円
  • 社員数:6986名(連結会社)
  • 平均年齢:47.4歳
  • 平均勤続年数:21.6年
  • 平均年収:5,687,000円

 

参考文献

  • 株式会社ジェイティービー平成29年3月期決算概要
  • 株式会社エイチ・アイ・エス第36期有価証券報告書
  • KNT-CTホールディングス株式会社第80期有価証券報告書
  • 日経業界地図2018年版 日本経済新聞出版社
  • 会社四季報業界地図2018年版 東洋経済新報社

 

転職・就職のアドバイス

旅行会社の職種は大きく以下の3つに分かれます。

  • 営業
  • 商品企画
  • 販売

 

営業では、

  • 団体旅行:職場旅行、視察旅行など
  • 教育旅行:修学旅行、合宿など
  • イベント・コンベンション:企業の表彰式典、パーティーなど
  • 国際旅行・訪日旅行:海外視察、国際会議、学会など

を企画し、提案していきます。

 

商品企画では、パッケージツアーを構築するため、

  • 売り上げ目標の設定
  • 公共交通機関、観光施設、宿泊施設との交渉
  • 広告の制作といった広報業務

も担っていきます。

 

販売には、

  • ・店頭販売(店頭でお客様に主に旅行商品を販売)
  • ・Web販売(サイト運営、Eメールや電話によるお客様のサポートなど)
  • ・提携販売(直営店以外の旅行会社の商品販売のサポートなど)

があります。

 

旅行業界を目指すうえで有利な資格

旅行業界では以下の資格が役に立ちます。

  • ・総合旅行業務取扱管理者(国家資格)
  • ・国内旅行業務取扱管理者(国家資格)
  • ・旅程管理主任者

旅行業務取扱管理者(総合・国内)

旅行会社やその代理店は、営業所ごとに1人以上、旅行業務取扱管理者を設置しなければなりません。旅行会社は、この資格を持っている人材を必要としています。とくに旅行業界への転職を志す方にとっては、中途入社のハンデを払拭するうえで武器となりえます。

 

旅程管理主任者

企画旅行に同行する主任添乗員として活躍したいのであれば必須の資格です。

こちらは、受講し実務経験を修めれば取得できますが、現職であることが受講の条件となっています。そのため、入社後のアクションになります。

 

語学知識・IT技術も重宝される

旅行に関する知識のほか、海外に赴任する場合はもちろん、国内でも海外旅行関連施設・機関との交渉訪日外国人への対応において語学の知識は、やはり必要です。

また、ITに関する技術を持たれていると、オンライン旅行分野で専門的に携わることができるチャンスがあります。

海外に強い、IT関連に強い転職エージェントに登録しておくと、海外赴任、IT関連職に就く早道となります。

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