セイジさん、非鉄金属って鉄ではない金属という意味ですか?
ですね。鉄以外の
- 銅
- 亜鉛
といった金属類を非鉄金属といいます。
私たちに身近な製品などあるのかしら?
そこのところも今回、詳しく見ていきましょう!
今回はそんな非鉄金属業界の基本情報、市場規模、主要企業と年収、動向、展望、就職・転職のアドバイスを、非鉄金属メーカー人事担当者から聞いたお話も交えお伝えしていきます。
業界全体図から見た非鉄金属業界
セイジさん、非鉄金属業界は全体図から見るとどういう立ち位置なのです?
日経業界地図では「素材」に分類されています。
鉄鋼はもちろんガラスやセメントなども、ここに分類されていますよね。
ですね。
非鉄金属の種類は多岐にわたり鉄鋼同様、各方面に素材として流通していき、ありとあらゆるメーカーのプロダクトに使われています。
非鉄金属を用いている周辺業界は多いということね^^
非鉄金属業界の基本情報
総務省が出している日本標準産業分類を基に非鉄金属業界を紐解くと、
金、銀、白金(プラチナ)、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、チタン、ウラン、トリウム、すず、アンチモン、水銀、マンガン、クロム、タングステン、モリブデン、マグネシウム、ゲルマニウム、シリコン、タンタル、アルミニウム、アルミナ
- 第1次製錬・精製(非鉄金属鉱石を処理して製錬・精製を行う)
- 第2次製錬・精製[非鉄金属のくずやドロス(かす)を処理して再生する]
- 圧延、抽伸、押出(非鉄金属を押し出して板、棒、管などに変える)
貴金属/電線/ケーブル/光ファイバケーブル/通信複合ケーブル/鋳物/ダイカスト/核燃料
上記のようなことがわかります。
ちなみにですが世界には4万種の金属があるといわれています。
そして非鉄金属は、
・レアメタル(リチウム、チタン、ニッケルなど)
・ベースメタル(銅、鉛、アルミニウムなど)
の3つに分類されています。
非鉄金属業界の市場規模の変遷
日経業界地図によると次のとおり、推移しています。
日経業界地図年度(実年度) | 伸銅品生産量 経済産業省 ※日本伸銅協会 | アルミ圧延品生産量 日本アルミニウム協会 |
2017(2015) | 760324トン | 2016612トン |
2018(2016) | 793100トン | 2043899トン |
2019(2017) | 821599トン | 2052122トン |
2020(2018) | 810567トン※ | 1979711トン |
非鉄金属業界主要企業と年収一覧(各社有価証券報告書より抜粋)
- ENEOSホールディングス 11,296,553円
- 三菱マテリアル 6,543,000円
- 住友金属鉱山 8,185,000円
- 三井金属鉱業 7,217,625円
- DOWAホールディングス 7,861,000円
- 古河機械金属 7,743,285円
- 日鉄鉱業 7,060,290円
- 東邦亜鉛 5,208,000円
- UACJ 6,534,000円
- 神戸製鋼所(KOBELCO) 5,696,000円
非鉄金属業界の動向
アルミニウム圧延最大手UACJ発足
2013年、古河スカイと住友軽金属工業が合併し新会社UACJ(ユナイテッド・アルミニウム・カンパニー・オブ・ジャパン)が発足しました。当時の業界首位と2位が手を組んだ大型合併でした。
JXTGホールディングス発足
2017年には、石油元売り首位だったJXホールディングスと3位だった東燃ゼネラル石油が合併しJXTGホールディングスが発足しました。そしてJXTGホールディングスは2020年6月、ENEOSホールディングスに改称しています。
なぜENEOSが、非鉄金属業界に登場するのです?
私も最初、正直そう思いました。
ENEOSホールディングスは、
・JX石油開発
のほか非鉄金属製錬大手の、
・JX金属
を傘下に有しています。またJX金属は、東邦チタニウムとは出資関係にあります。
非鉄金属業界の展望(予測)
レアメタル
これから興隆を極めるであろう
- リチウムイオン電池
- 5G関連機器
- 電気自動車(EV)
にも使用されているのがレアメタルです。その名のとおりレア、希少で貴重な金属です。
通信業界大手のソフトバンクグループもその獲得に動いていましたが2019年、出資していたカナダのリチウム鉱山会社が破綻しています。
一方でレアメタルを、リサイクルによる手法で獲得しようとする動きも出てきています。
JX金属は、使用済電池からニッケル、コバルト、リチウムを回収する技術開発に成功しています。
三菱マテリアルもまた2019年より、日本磁力選鉱と共同で2022年度の事業化に向け、リチウムイオン電池からコバルト、ニッケルの回収試験を行っています。
希少なレアメタルの安定供給がもたらす経済効果は計り知れず、とてつもなく大きなものになると個人的には期待しています。
今後のレアメタルの動向、リサイクル技術にも着目したいところですね。
非鉄金属業界トップ、3社を比較
ENEOSホールディングス
知名度抜群のENEOSですが、非鉄金属業界に関わっていることを知っていた方はよく業界研究をされている方だと思います。
同社は
- エネルギー事業(ENEOS)
- 石油・天然ガス開発事業(JX石油開発)
- 金属事業(JX金属)
を傘下にて展開しています。JX金属は機能材料、薄膜材料、資源、金属、環境リサイクル、タンタル・ニオブという6事業を行っています。
- 売上高:10兆117億7400万円(国際会計基準)
- 営業利益:△1130億6100万円(国際会計基準)
- 社員数:40983名(連結会社)
- 平均年齢:42歳7カ月
- 平均勤続年数:16年8カ月
三菱マテリアル
岩崎弥太郎が興した三菱財閥の流れを汲んでいます。明治時代、炭鉱租借、金属鉱山事業に着手したところから現在の三菱マテリアルへとつながっていきます。
金を保有されている方のなかには三菱のロゴが刻印された金地金をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、金地金のほか銀地金、銅地金、錫地金、飲料用アルミ缶、ビスマス、三酸化アンチモンなどを同社は取り扱っています。
- 売上高:1兆5161億円
- 経常利益:496億1000万円
- 社員数:28601名(連結会社)
- 平均年齢:41.3歳
- 平均勤続年数:17.3年
住友金属鉱山
住友金属鉱山の歴史はかなり古く、さかのぼること400年超、1590年に蘇我理右衛門が銅製錬・銅細工を始めたところから今に至ります。
銅、ニッケル、コバルト、金地金、銀地金、白金のほか、ロジウム、ルテニウム、パラジウムなどを取り扱っています。
2015年シエラゴルダ銅鉱山(チリ)、2016年モレンシー銅鉱山(アメリカ)、2018年にはケブラダブランカ銅鉱山(チリ)と海外銅鉱山の生産、権益獲得にも取り組んでいます。
- 売上高:8726億1500万円(国際財務報告基準)
- 税引前当期利益:790億3500万円(国際財務報告基準)
- 社員数:6873名(連結会社)
- 平均年齢:43歳
- 平均勤続年数:19.7年
- ENEOSホールディングス株式会社第10期有価証券報告書
- 三菱マテリアル株式会社第95期有価証券報告書
- 住友金属鉱山株式会社第95期有価証券報告書
非鉄金属メーカー人事担当者から聞いたお話
今回、非鉄金属業界のメーカーで人事担当者として勤務されている方から詳しく、お話を伺うことができましたので、ご紹介していきます。
非鉄金属業界のお仕事、転職のしやすさ
まず非鉄金属業界の一般的な仕事内容は、
- 鋳造
- 押出
- 抽伸
- 検査
- 梱包
となります。
「鋳造工程」では原料を、溶解炉で溶かします。「押出工程」では鋳造工程によって作られたインゴット(金属の塊)を800℃まで熱し押し出します。トコロテンをイメージいただければわかりやすいです。「抽伸工程」では細く長くなった棒状をさらに伸ばしていきます。
総じてクレーンやフォークリフトの操作が多く、重たいものを直接、持つようなことはあまりありませんので、その点、ご安心いただければ…。
ただし労働環境は、年間を通して “暑い” この一言に尽きます。
次に非鉄金属業界へ転職をお考えの方にお伝えしたいことは、中途入社は厳しいかもです。なぜなら非鉄金属業界はここ10年ほど、新卒採用を強化しているからです。
その背景には重厚長大産業であるがゆえの設備の巨大さ、複雑さがあります。と同時に、RoHS指令※に代表されるような高品質要求と添加物質制限があり、一見同じに見える金属合金も、過去のそれとはかなり違ってきているからです。
※EUによる特定有害物質使用制限指令
要は非鉄金属業界に籍を置く者には、
- 設備を理解すること
- 品質を維持すること
- 納期を必ず守ること
が求められており、それができる人材に育てあげる責任が企業、私たちにあると考えています。
設備、品質、納期に関わる知識など持っているものをすべて体系的・戦略的に教え、伝えていくのですが、かなりのボリュームがあるため、長い年月がかかります。そういった理由で新卒採用に力を入れているわけです。
もちろん中途採用募集も皆無であるとはいいきれません。なぜなら
- 予想以上に生産量が増えた
- 退職者が相次いだ
場合など、即戦力が必要になるからです。そして非鉄金属業界に入る人材は、経験豊富であることが望ましく、また次のような人物が求められます。
- 明るい性格
- 協調性がある
- リーダーシップがある
そしてそのほか職務経歴を面接官にわかりやすく説明できること、自分の人生における仕事の位置づけ・意義を説明できること、常に問題意識を持って仕事に向き合えるかどうかも問われます。つまり非鉄金属業界に転職するためには、
《私は今までこういう意識で仕事をしてきた、過去の職歴は御社でこのように生かすことができる》
と上手く説明できるようになりましょう! ということです。
非鉄金属企業における職制
ここで非鉄金属業界、会社、工場の組織、役職についても解説しておきます。
工場を持つ会社はだいたい
- 営業
- 技術開発
- 製造
- 総務
から成り立っていると思います。工場は工場長をトップにその下に製造(鋳造、押出、抽伸、検査)、品質管理、技術、設備管理といった部署が置かれているはずです。
また役職は上から順に、部長/次長/課長/副課長(ここまでが管理職です)そして係長となります。課長以上の管理職は文鎮型組織(横並びの組織)、課長以下はピラミッド型組織となっています。
私が非鉄金属企業で担当してきたおしごと
私は人事畑を歩いてきました。新卒はもちろん中途入社組の募集、面接、採用、教育までひととおり経験してきております。
通常は本社勤務ですが、工場単位で採用を行う必要が出てきた場合は、国内に点在する各工場まで出向くこともあります。
コーポレートサイトの採用情報、募集要項の更新、メールでのエントリー受け付け、リスト作成を行うほか、実際に応募者に連絡をとり面接セッティング、面接官を務めた社長・工場長・関係取締役から応募者の印象を聞き取り、総合して採否を決定します。
また採否通知作成、送付。入社式及び入社時研修など予定の作成、社員研修のセッティング、各種技能講習の案内などを行います。
募集、入社、入社後1年以内の教育はすべて人事が責任をもって請け負う。そんな感じです。もちろん社内の人事異動についても連絡調整役として関わってきました。
非鉄金属業界で出世していくには
鉄鋼、非鉄金属に関わらず現代のありとあらゆる製造業、メーカーは、極限までコストをカットしながら操業しているといえます。
つまりそこで出世していくにはまず、コスト意識を持て! ということです。資材、時間、人員にムダはないかという意識を常に持つことが大切です。
ムダを見つけたら、どの会社にも改善提案制度があるはずですから、明確な根拠(エビデンス)を用意して、論理的に組み立てて、論破されないように提案してみるといいです。
次に広い視野を持て! ということです。仕事はラインオペレーターで機械を動かしているだけの日々かもしれません。しかし自分が作っているモノが社会のどこでどのように使われているかを知るだけでもモチベーションは変わってきます。
またこれからも必要とされていくのか、それとも時代の流れに合わせ変えていくべき局面なのかなど、常に意識して考えるようにすると5年後、10年後のビジョンが自ずと見えてくるようになるでしょう。
そしてクレーン、フォークリフトはもちろん機械保全技能士などの資格はできるだけ取得する方向で! ということです。
非鉄金属業界では再編が進んでいます。給与体系も実力主義に変わりつつありますから、50代の平社員より30代の係長の年収が高い、その差1.5倍という現象も起きており、めずらしくなくなってきています。
みなさまにはコスト、広い視野、資格取得を意識して豊かなスキル・経験を得て、長い職業人生を、歩んでいただきたいです。
ありがとうございました!
これより『転職とキャリアアップ』管理人である私、セイジが就職、転職のアドバイスを以下、記していきます。
非鉄金属業界への就職のアドバイス
JX金属の新卒採用基本情報を参考にお伝えしますと、事務系総合職と技術系総合職に分かれています。
事務系総合職は営業、経理、総務、人事、法務、購買部門に配属されることになります。
学生時代、金属・材料、化学、物理・応用物理、資源・地球環境について学んできた方は材料・プロセス、分析部門に携わることが可能です。
資源、地球環境を学んだ方のみ資源開発部門を志望できます。
機械、電気・電子、土木・建築を学んできた方はプラントエンジニアとして。数学、情報、経営工学を学んできた方は情報システム部門で活躍できる可能性があります。
また特筆すべきは海外語学教育、国外留学制度があることです。将来的に海外でグローバルに活躍したいとお考えなら英語は必須です。また第二外国語も今のうちから極めておくとより有利になるでしょう。
そしてなぜ非鉄金属業界か、なぜ御社なのかを具体的に面接官が納得できるような理由をきちんと用意したうえでエントリー、面接に挑みたいものです。
非鉄金属業界への転職のアドバイス
先般ご紹介した非鉄金属メーカー人事担当者のお話にもありましたが、中途採用がまったくないわけではありません。
転職エージェントに登録し、担当者と良好な関係を築くことで非鉄金属業界における希望に沿った求人を真っ先に紹介いただくことができるようになるはずです。
こちらも新卒入社を目指す学生と同様になぜ、非鉄金属業界なのか、なぜ御社かを明確に答えるのはもちろん、これまでの経験やスキルをこれから先、どう活かせるかを考え、面接官に提案する準備をしておくといいです。
まとめ
非鉄金属業界は鉄鋼業界と並び、さまざまなプロダクトを生み出すメーカーと私たちの豊かな生活に貢献していることがわかりました^^
そんな非鉄金属業界で、内定を勝ち取っていただきたいです!
就職と転職、共通していえることは人生の目的と就こうとしている仕事の方向性が合致していることが重要です。それがミスマッチを防ぐカギで、長続きできるかその明暗を分けます。
人生の目的についてその意味を、これまで考えたことがない方は関連記事で説明していますのでぜひ、併せてお読みいただけますと幸いです。
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