建設業界の動向や魅力・大手企業の年収比較を経験者の転職・就職アドバイスを交え解説

業界研究
・高層ビルディング
・タワーマンション
・ショッピングモール
・トンネル
・鉄橋

など、私たちの暮らしを豊かに便利にする構造物の構築に携わっているのが、いわゆるゼネコンを中心とした建設業界です。

セイジさん、ゼネコンって何よ? って思っている方もいるはずです。

ゼネコンは、General Contractor(ゼネラルコントラクター)を略したもので、総合工事業者を指します。

今回は建設業界の基本情報、市場規模、動向、課題、展望、スーパーゼネコンの売上高と年収、経験者談、就職・転職のアドバイスについてもお伝えしていきます。

 

業界全体図から見た建設業界

セイジさん、建設業界は全体図から見るとどういう立ち位置なのです?

日経業界地図では「建設・不動産関連」に分類されています。

建設業者は主に道路や橋、駅などのインフラ、百貨店やデパート、テナントビルなどの商業施設、戸建て、マンション、アパートといった住居の新築・改修に関わっています。

駅前再開発や大規模ショッピングモールなど、いわゆる大がかりな街づくりを企画しているのは不動産業界(不動産デベロッパー)で、その企画を基に必要な構造物を建てているのが建設業者です。

プレミアムアウトレットは三菱地所・サイモン、ららぽーとは三井不動産商業マネジメント、ブランチは大和リースが展開しています。

住居もまた不動産会社が分譲販売、賃貸物件として企画することもあり、完成、引き渡したあとも必要に応じて運営・管理を行います。一方、建物の改修やメンテナンスは引き続き(場合によっては別の)建設業者が、担っていきます。また建設業者は

・鉄鋼
・木材
・建材(ドア、床材など)
・住宅設備機器(サッシ、シャッター、システムキッチンなど)

といった素材、メーカーの協力なしでは建物を完成させることは不可ですから、周辺業界にかなり支えられています。

 

建設業界の基本情報

建設業はたしか、許可制でしたよね?

 

はい。

建設業者は、国土交通大臣や都道府県知事の許可(5年ごとの更新)を受けてはじめて、一定額規模以上の工事を受注できます(一定額以下の工事だけしか受注しない許可不要業者も多いです)。

 

また許可業者はCIIC一般財団法人建設業情報管理センターで、完成工事高や売上高、経常利益などが公表されていますので、企業研究で活用するといいです。

ちなみに建設業者は、

・大手ゼネコン(スーパーゼネコン)
・準大手ゼネコン
・中堅ゼネコン
・その他

と分かれていて、いわゆる資金面、技術面などでランク(上下関係)が明確にできあがっており、大手→準大手→中堅といった序列でピラミッドが形成されています。

下に行けば行くほど業者数は多くなっていきます。

また建設工事は国や地方自治体、民間、個人の施工主から依頼を直接受けた元請けから下請けに、さらに下請けから2次下請けへと仕事が割り振られ、受発注が繰り返されていきます。

場合によっては共同企業体(JV、ジョイントベンチャー)を組成し着手することもあります。

建設業者どうし、相互協力によって支えられているといえますが、残念なことにその裏で元請けは下請けにムチャぶりといえる内容(タイトな工期や安価な代金)で取引を強要することもあり、

突貫工事
廉価材料

で建物の安全性を揺るがしかねないため、その防止策に国(国土交通省)は『駆け込みホットライン』を設置するなどし、建設業法遵守、適切な工事が実施されているかを監視しています。

建設業界のトップは大手ゼネコンの5社

・鹿島建設(かじま)
・清水建設
・大成建設
・大林組
・竹中工務店

ですが、

・長谷工コーポレーション
・安藤ハザマ
・三井住友建設
・フジタ
・熊谷組
・東急建設
・戸田建設
・西松建設
・前田建設工業

準大手ゼネコンも覚えておくといいです。

そのほか五洋建設や東洋建設など海洋土木を担っているマリコン大和ハウス工業、積水ハウスなど一軒家(戸建て住宅)を建てるハウスメーカー

さらに(パワービルダーとも呼ばれている)分譲最大手の飯田グループホールディングス住設機器で建設業界を支えている三協立山、文化シャッター、TOTO建材業界のトップランカーたる大建工業なども広義の建設業界に属す企業といえます。

このように建設業界はゼネコンだけではありませんので、各方面に視野を広げ企業研究の対象候補を探してもいいのではと思います。

また昭和末期から平成初期にかけて建てられた建物の老朽化などに伴い、市場拡大してきたといえるリフォーム業にはヤマダ電機、エディオン、ニトリなど小売業からも参入しています。

建設業界はちょっとした発想の転換で、選択肢が無数に出てきますね^^

 

建設業界の市場規模の変遷

日経業界地図によると次のとおり、推移しています。

日経業界地図年度(実年度)名目建設投資(国土交通省見通し)
2017(2015)48兆4600億円
2018(2016)52兆4700億円
2019(2017)54兆9600億円
2020(2018)57兆1700億円

2020(2018) 57兆1700億円

建設業界は概ね好調といえます。

 

建設業界の動向・課題・展望

建設業界の動向

約20年に渡る建設不況を乗り超え2010年代、建設業界にはようやく明るい兆しが見えはじめました。被災地復興のほか、

リニア中央新幹線
東京オリンピック

などの各種工事のニーズが増えたのです。

しかし各社、受注、工事に追われるなか、さまざまな課題も出てきました。

建設業界の課題

課題はズバリ『若者離れ』です。

いくら安全・衛生に配慮をしていたとしても、もともと建設作業は「3K」と呼ばれる過酷な重労働。炎天下での作業、工期遵守で『長時間労働』を余儀なくされてきたことから、敬遠する人は少なくありません。

建設作業員の高齢化も目立ち、他産業と比べ労災発生件数が圧倒的に多いです。

国は若年、女性の建設作業員の雇用支援も行いつつ、建設業法改正、技能実習制度改正、さらに在留資格「特定技能」を創設するなどし、海外の人手も募ってなんとか人材確保をと対策を講じてきました。

反面、働き方改革の実施で時間外労働の上限が設けられたにもかかわらず、建設業は例外的に猶予が与えられています。つまり適用されるのはまだまだ先で2024年4月からとなっています。そのため注意が必要です。

長時間労働の課題解消には至っていないのですね…。

暗いニュースばかりではありませんよ。そんななかロボットが工事現場で活躍を始めており、建設業界の救世主となりつつあります。

建設業界の展望

ここにきてロボット技術はかなり発達し、建設現場に投入されてきています。

例えば鹿島建設は四足歩行型ロボット「Spot」を導入、三井住友建設はロボットアームを用いた鉄筋組立自動化システム「ロボタラス」を導入、竹中工務店はクラウドAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)を採用した建設用搬送ロボット制御システムを開発しています。

特にAWS採用システムは現場無人化、夜間作業に資すると期待されています。

ロボットで作業効率化、人手不足解消、危険回避できれば、最高ですね!

 

2017年に実は「今後の景況予測は良好」とお伝え済みでした。2019年まではその言葉どおり概ね良好であったといっていいです。

しかし今の雲行きはなんともいえません。新型コロナウイルスによる各方面の影響が建設業界、着工中の現場に少なからず飛び火しているからです。今後が少し心配ではあります。

 

スーパーゼネコン、売上高と平均年収比較(各社有価証券報告書より抜粋)

売上高平均年収
鹿島建設1兆9742億6900万円11,388,415円
清水建設1兆6649億6000万円10,101,000円
大成建設1兆6508億7700万円10,511,646円
大林組2兆396億8500万円10,526,558円
竹中工務店1兆3520億6400万円10,425,653円

上表のように売上高が1兆円を超えることが、大手5社が“スーパーゼネコン”とも呼ばれる所以です。

 

建設業界を代表する企業の基本情報

鹿島建設

鹿島建設は東京ガーデンテラス紀尾井町、姫路城大天守保存修理を手がけたほか現在、リニア中央新幹線の南アルプストンネル建設工事にも着工しています。

基本情報
経常利益:1629億100万円
社員数:7783名
平均年齢:44.2歳
平均勤続年数:18.5年
清水建設

清水建設は東急プラザ銀座や渋谷ソラスタ、東京オリンピック会場のひとつ、有明体操競技場も手がけています。

基本情報
経常利益:1339億5700万円
社員数:10336名
平均年齢:43歳
平均勤続年数:15.4年
大成建設

大成建設は東京オリンピックのメイン会場である国立競技場のほか、海の森水上競技場、また商業施設CHANEL GINZA NAMIKIなどを手がけています。

基本情報
経常利益:1579億3600万円
社員数:8490名
平均年齢:43歳
平均勤続年数:18.3年
大林組

大林組は東京スカイツリー、JR新宿ミライナタワー、国立国会図書館耐震補強工事などを手がけています。

基本情報
経常利益:1630億5400万円
社員数:8753名
平均年齢:42.5歳
平均勤続年数:17.2年
竹中工務店

スーパーゼネコンで唯一、非上場企業の竹中工務店は資生堂銀座ビル、あべのハルカス、金沢21世紀美術館などを手がけています。

基本情報
経常利益:895億200万円
社員数:7630名
平均年齢:44歳
平均勤続年数:19.1年
参考文献
鹿島建設株式会社第122期有価証券報告書
清水建設株式会社第117期有価証券報告書
大成建設株式会社第159期有価証券報告書
株式会社大林組第115期有価証券報告書
株式会社竹中工務店第82期有価証券報告書

 

建設業界(空調メーカー)経験者から聞いた話

今回ゼネコンや建設業者の方ではありませんが、いわゆる住設機器分野(空調メーカー)に定年まで在籍していた方から、貴重なお話を聞けましたので、お役立ていただけますと幸いです。

数年前に定年退職されたそうです。

経験者が語る空調メーカーと建設会社との関係性

空調メーカーはどちらかといえば製造業ですが、建設業界の一部でもあると私は考えています。なぜなら製造したエアコンは、構造物の一部として組み込まれるからです。

空調メーカーの主要取引先は、空調設備工事業者(一式または専門工事を行う建設業者)となります。その多くは空調を踏まえた建物の設計、施工(機器設置)、保守点検(メンテナンス)、電気工事も行います。

経験者が語る空調メーカーの要(かなめ)

空調メーカーの要は開発、設計、品質保証です。

開発ではまずエアコンの冷房性能など研究した成果を製品に反映させます。また必要に応じ新製品を製造するための生産技術も開発します。

設計では新製品を実際に生産ラインで製造できるよう、3次元CADなどを使い図面を作成します。なお企業により開発と設計をドッキングさせ、開発設計という部署を持つところもあります。

品質保証では想定環境の下で空調機器が満足のいく動作をするか、性能などが一定の基準をクリアしているかを試験し、メーカーとして世間に保証できる品質かを見ます。また流通後に発火するなど不具合(瑕疵)が発生したときには、素早くリコールするなどの対応をします。

経験者が語る空調メーカー市場

一般社団法人日本冷凍空調工業会によると2019年(会計年度)の業務用エアコンの国内出荷実績累計は950622台、ちなみに家庭用エアコンは9572999台でした。今後もビルの建て替えや、都市再開発が進むため、しばらくは安泰と思われます。

建設業界と空調メーカーへの転職しやすさ

建設業界は(特に現場は)激務で男社会のため、離職率が高く慢性的な人材不足といえ、求人は活発と聞きます。一方で空調メーカーは今、若い世代に好評で若手社員を管理職に登用するなど対人関係も風通しがいいそうです。どちらも転職しやすいです。

とある空調メーカーの役職、命令系統

あくまでも一例ですが大卒後10年ほどで主任、その後5~10年ほどで課長に。課長のなかから部長に昇進する者が出て、さらに役員クラスに昇りつめます。なお役員クラスは執行役員、取締役、監査役、代表取締役(社長)です。

かつては入社同期で出世する人はどんどん絞り込まれていくシステムでしたが、年功序列も崩れ、若い世代が先に管理職登用されていくなど、後輩が上長になることもありえます。

経験者が語る建設業界・空調メーカーでのキャリアの積み方

建設業界ではやはり資格がものをいいます。私は

・建築施工管理技士
・建築士

といった資格が、また空調メーカーで働くうえではCAD関係の資格が有効です。企業によって使用するCADは違うのですが基礎はマスターしておくといいです。そのため取得は入社してから。その企業が使用するCADで勉強し、資格を取りましょう。目指すべきは、

・CAD利用技術者試験(一般社団法人コンピュータ教育振興協会)

です。

 

ありがとうございました! 転職とキャリアアップの管理人として以下、就職、転職のアドバイスを行っていきます!

 

建設業界への就職のアドバイス

ゼネコンの職種について、実際に鹿島建設が公開している新卒採用募集要項を参考にお伝えします。

総合職200名程度のうち事務系は30名、技術系は170名の募集となっており、文系出身にとっては非常に狭き門、理系で特に建築学、工学、環境学を学んだ方には比較的、有利といえます。

事務系は現場事務、営業、経営企画、法務、総務、人事、経理、開発事業など。技術系は土木、建築施工、建築設計、建築設備、エンジニアリング、環境、機電、数理、開発といった系統に分かれています。なかには指定校推薦制で公募していない系統もあります。

特に事務系は、なぜ建設業界か? 御社か? を明確にすべきです。また技術系学生時代の経験を糧にどの系統に進みたいか? 有利か? を見極めます
そのために自己分析、人生の目的決めをある程度済ませておく必要があります。

 

建設業界への転職のアドバイス

転職はもちろん建設業界で出世を果たすには、働きながら関連資格・免許取得に向け、人一倍努力することも求められます。

・建築士
・建築施工管理技士
・土木施工管理技士

は所持しておくと責任者に抜擢されやすくなり、経験者としてのキャリアアップ転職活動時、高く評価され採用につながりやすくなるでしょう。

個人的には今後、AIやIoTに詳しいエンジニアが建設業界で、重宝されていくと感じています。

建設業界に転職したい方は、建設業界に特化した転職エージェントに登録すれば、効率よく情報入手でき、より有利な条件で内定を得られると考えています。

 

まとめ

建設業界はロボットなど新技術で、私たちの暮らしを豊かにしてくれていますね^^

そんな建設業界で、内定を勝ち取っていただきたいです!

就職と転職、共通していえることは人生の目的と就こうとしている仕事の方向性が合致していることが重要です。それがミスマッチを防ぐカギで、長続きできるかその明暗を分けます。

人生の目的についてその意味を、これまで考えたことがない方は関連記事で説明していますのでぜひ、併せてお読みいただけますと幸いです。

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