セイジさん、“産業用ロボットというくくり”があること自体、私は知りませんでしたよ。
これは日経業界記事でも単元として取り扱われている、れっきとした業界なのですよ。
今回はそんな産業用ロボット業界の基本情報、主要企業と年収、動向、展望、油圧機器メーカー経験者談、就職・転職のアドバイスについてもお伝えしていきます。
業界全体図から見た試薬系化学業界
産業用ロボット業界は全体図から見るとどういう立ち位置なのです?
産業用ロボット業界は自動車・機械・造船に区分されています。
産業用ロボットは自動車、バイク、航空機、防衛、造船、鉄道車両、建設機械などのいわゆる重工業の部類に入るといっていいです。
なるほどです。
詳細は基本情報の章で解説いたしますが、産業用ロボットは自動車、電子のほか、電気、金属、機械、樹脂、化学など。あらゆる産業に向けてその用途目的に応じたものにカスタマイズされ順次“就職”しているといえます。
また産業用ロボットと横並びで覚えておくべきは工作機械(マザーマシン)です。工作機械は
・数値制御(NC)旋盤
・研削盤
・放電加工機
などです。
産業用ロボット業界の基本情報
産業用ロボットの種類
産業用ロボットには、
・電子部品実装機
・射出成型機
・アーク溶接ロボット
などがあります。
産業用ロボットの構成・仕組み
安川電機によると産業用ロボットは、
・ 動作を行い作業をする「マニピュレータ」 ・ マニピュレータを動かし、制御する「コントローラ」 ・ マニピュレータに動作を教える「プログラミングペンダント」 |
の重要コンポーネント3点で構成されているとのことです。
世界と日本の産業用ロボット稼働状況
一般社団法人日本ロボット工業会の統計、世界の産業用ロボット稼動台数推定(マニピュレーティングロボットのみ)によると2018年時点で約244万台、うち日本では約32万台近くが日本で活躍しています。
ちなみに韓国で約30万台、アメリカ地域で約36万台、ヨーロッパ地域で54万台、中国で64万台が稼働中と推定されています。
これまで『転職とキャリアアップ』では産業用ロボットは新興国市場などでさらなる成長が見込まれる旨、お伝えしてきましたが、新興国はもちろん先進国でもその市場規模は年々、拡大の一途であることを示しています。
産業用ロボット業界の市場規模
前出の統計によると、2015年からの推移は下表のとおりです。
年 | 推定稼働台数 |
2015年 | 163万1650台 |
2016年 | 183万7524台 |
2017年 | 212万5276台 |
2018年 | 243万9543台 |
ホントだ。しかも20~30万台増で、著しい成長ですよね^^
そうなのですよ。後述しますけど活躍の場が増えたことが要因ではないかと思います。
そうなのですね^^
実は国内はもとより世界でも産業用ロボット=日本と強く認識されている現実があります。
世界への出荷台数は中国に次ぎ4万9900台で世界2位。メイドインジャパンの産業用ロボットは過酷な環境下で安定稼働すると評判で、高い信頼を得ています。
ただCOVID-19に起因する経済停滞が、これまで順調だった産業用ロボットメーカー各社に影響を及ぼすのか、逆に新様式に合わせ工場の自動化に拍車をかけ吉に転じるのかも今後、注目したいところです。
産業用ロボット業界の動向
協働ロボット(協調型ロボット)
産業用ロボットの小型化、IoT化も進んだ2010年代中盤、人と隣り合って安全に作業を行えるタイプの協働ロボットが登場しました。
特に人工知能AI搭載の協働ロボットの躍進により工場だけではなく、人が往来する倉庫や大規模小売店舗、空港などでも安全を確保したうえで、活躍できる可能性が高まりました。
好例としては2つ。川崎重工業が2015年に発売した双腕スカラロボット「duAro(デュアロ)」、アメリカの6 River Systems社が開発した自律自力移動で同行者をリードできるピックカート型ロボット「Chuck(チャック)」があります。
協働ロボットについては2020年10月、京セラも参入を表明しています。
日本経済新聞 京セラ、協働ロボットに参入 AIで多品種に自動対応
産業用ロボットではないのですが「変なホテル」などフロントにロボットが常駐して接客をする時代になりました。
たしかに^^ 恐竜が出迎えるシーンをネットで観たことがあります(笑)
産業用ロボット業界の展望(予測)
ティーチングレス化の加速
産業用ロボットはもちろん、プログラムがなければ作動しません。エンジニアが産業用ロボットにプログラミング処理を施すことを、ティーチングといいます。この作業にはもちろん相当な手間暇とコストがかかっていました。
初期設定だけならいいのですが場合によっては、アップデートも必要になりますから…。
ならコストはメーカー、購入側どちらにも負担だったといえそうですね…。
前出の京セラ参入記事にもあるとおりAI搭載が可能となり、そのおかげで産業用ロボットにも自己学習機能が備わりました。すなわち最小限のティーチングで済み、あとはAIが自己分析しながら最適な動作を確立させていくようなことができるようになったわけです。
セルフティーチングですよね?
わかりやすく表現すると、そうかもしれません。
5Gによる実証
通信業界、化学業界でも展望の章でご紹介したのですが、産業用ロボットもやはりこれから5G(ファイブジー、第5世代移動通信システム)と無縁なわけがありません。
発表されたばかりのiPhone12も5G対応でしたし^^
はい。5G×産業用ロボットの取り組みもすでに始まっています。
2019年、ATR、KDDI、デンソー、九州工業大学が5Gでの産業用ロボット制御実証(試験)を始めています。5Gを活用することで、
2.ロボット移動に伴う回線敷設も不要に
3.回線敷設による工場稼働停止が最小限に
4.回線不要で工場内レイアウトが柔軟に
といったメリットがあります。
・AI搭載
・5G
など、まだ私たちが出会っていない未知の何かが出てきて、産業用ロボット(業界)はこれから先も間違いなくいい方向に進化をし続けていくことになるでしょう。
産業用ロボット業界の主要企業と年収一覧(各社有価証券報告書より抜粋)
多関節ロボットメーカー
ファナック 円
安川電機 円
川崎重工業 円
電子部品実装機メーカー
富士機械製造 円
ヤマハ発動機 円
パナソニック 円
【参考】その他の主要、産業用ロボットメーカー
ダイヘン、不二越、三菱電機、デンソーウェーブ、JUKI、KUKA(ドイツ)、ABB(スイス)
産業用ロボット業界の大手企業3社を比較
ファナック
1972年創立のファナックは業界売上高トップで、多関節ロボット国内トップシェアです。また自動車産業向け溶接ロボットに定評があり、山梨県忍野村に本社を構えています。“21世紀の工場の知能化・ロボット化・低コスト化”を掲げ
・スカラロボット
・ゲンコツロボット
・アーク溶接ロボット
・パレタイジングロボット
・塗装ロボット
などを製造しています。
平均年収が突出して高い企業として同社はとても有名です。
売上高:6234億1800万円
経常利益:2293億6100万円
社員数:6327名
平均年齢:42.9歳
平均勤続年数:16.5年
安川電機
大正4年創立の安川電機は、業界第2位で生産台数は世界No.1を誇ります。ものづくりのまちとして名高い、福岡県北九州市に本社を構えています。
安川電機ではアーク溶接、スポット溶接、ハンドリング・組立、協働ロボット、バイオメディカル、パレタイジング、プレス間ハンドリング、シーリング・切断・レーザ加工、バリ取り・研磨、塗装、液晶ガラス・パネル輸送、半導体ウエハ、有機EL、液晶・太陽電池用ガラス搬送を行うためのロボットを製造しています。
売上高:4112億6000万円
経常利益:358億3300万円
社員数:3615名(ロボット事業)
平均年齢:41.1歳
平均勤続年数:18.3年
平均年収:8,225,054円
川崎重工業
1896年創立の川崎重工業は、duAroなど産業用ロボットのほか航空機、新幹線、石油タンカー、コンテナ船、水上オートバイ(ジェットスキー®)なども手掛けており、東京と神戸に本社があります。
売上高:1兆5410億9600万円
経常利益:932億2900万円
社員数:15911名
平均年齢:38.3歳
平均勤続年数:13.4年
平均年収:7,434,572円
ファナック株式会社第47期有価証券報告書
株式会社安川電機第100期有価証券報告書
川崎重工業株式会社第193期有価証券報告書
経験者が語る油圧機器メーカーでの体験と内情
今回、ご縁があり油圧機器メーカー経験者からお話を伺えました。油圧は産業用ロボットが作動する際に必要とされることがあるため本記事でご紹介することにしました。
元メーカー社員が語る油圧機器のこと、
画像を用いて解説しますとショベルの前方に見えている銀色筒が油圧シリンダーで、油圧ポンプ、油圧バルブが作動しこの筒に油を送り込むことでショベルを動かしています。ここではシリンダーですが、圧で動く部位を私たちはアクチュエーターとも呼んでいます。
油を送り込む役割をしているのが油圧ポンプです。モーターが作動しタンクから油を吸い上げるのですが、ただ吸い上げるだけでなく方向変換や圧力調整など元の状態に戻す動作も不可欠なため、油流量を調整する油圧バルブも必要です。油圧は、
・飛行機のフラップ
もちろん産業用ロボットを制御する際に使われているほか鉄板プレス機、天文台やテーマパークのアトラクションにも利用されています。
とにかく油圧は「大きな力が必要な場所」で縁の下の力持ち的に活躍しているのです。
油圧機器メーカーへの転職のしやすさ
製造業は地味であまり目立たない、給与も高くないせいか、お世辞にも人気業界とはいえず私は中途入社組だったのですが、未経験で飛び込めました。
また油圧機器に長らく大きな技術自体のイノベーションが起きていないこともあり、景気がよければ注文は勝手に入ってきます。しかし景気がわるければ業績は急落しますので、景気によって転職のしやすさが変わる業界といえます。
メーカーには機械エンジニアもいれば、コンピュータープログラマもいる感じで、さまざまな職種が必要とされています。前職が何であれこれまでの経験を活かしやすいです。
また各人に合わせ研修(OJT)も長めに行ってくれるところも少なくないため、若い世代も実際、入社すれば「働きやすい」と感じるはずです。
油圧機器メーカーでの仕事内容
カンタンにいえば油圧機器の機械設計を行い、製造、そして販売するのがお仕事です。お客様は(ほとんどが)
・機械商社
となり企業間取引(BtoB)です。エンドユーザーに直接会うことは少なく営業はすでに契約関係にある企業を巡回するルート営業がほとんどです。
私が油圧機器メーカーで経験したお仕事
私が経験したのは海外関係4つの部署でした。まずは国内の海外営業部で海外代理店のサポート、貿易実務を。経営企画室で海外拠点の立ち上げ、物流網再構築といったプロジェクトを担当しました。
そこから海外に渡りまずは中国で、製造拠点管理部門責任者となり、そしてタイで新規販売拠点の立ち上げと管理部門責任者を経験しました。
油圧の需要は日本よりも海外が多い感じでしたから、海外で働いてみたい方向きなのかもしれません。
油圧機器メーカーの組織、役職
私がいた会社は、ごくごく普通の一般的な組織体制でした。
とステップアップしていくイメージです。私は海外駐在員だったということもあり最終的には、マネジャー(課長級)でした。
油圧機器メーカーで出世していくには
日本油圧メーカーはほぼすべて老舗といっていいレベルです。そのためFAX送受信や手書き帳票が飛び交うのが当たり前でした。前例踏襲主義も見られますので旧態依然で古い、そんな組織が苦手な方には、オススメできない業界かなとも思えます。
そのためあまりイメージはよくありませんがイエスマンになることこそが出世を目指すうえでは最善策です。
正義感、熱血漢で会社のためになることと信じて上司に正論をぶつけ、正しいことを押し通そうとするタイプの方は残念ながら上から煙たがられ、追い出される姿を見てきました。
一方で上の方から好かれていた方が、取締役にまで昇進されています。もちろん仕事もできる人でしたが、マンガに出てくるような昭和時代のサラリーマンの典型で「マージャンと飲み会で出世してきた」と豪語されていたのが印象的でした。
私個人の所感としてはガツガツとした方よりも(給与のことなど気にすることなく)ゆったりと働きたい人なら長くいられる。そんな業界だと思います。
ありがとうございました!
これより『転職とキャリアアップ』管理人である私、セイジが就職、転職のアドバイスをお伝えしていきます。
産業用ロボット業界への就職のアドバイス
産業用ロボット業界を志すのであれば、本格的な転職活動をはじめる前のウォーミングアップとして、
・ロボットセンタ
・Tokyo Robot Lab.
などを訪れてみるのもいいでしょう。きっと産業用ロボットがどのようなものか、ネットや資料で見るよりも、実際に間近で感じとるほうがはやいのでは? と思います。
Kawasaki Robostageは川崎重工業が、東京お台場に開設したもので“「人とロボットの共存・協調の実現」をコンセプトとした、新製品のロボットをいち早く見ることの出来る空間”です。もしかするとduAroが間近で見られるかもしれません。
ロボットセンタは安川電機のショールームで、本社のある九州はもちろん中部、関東にもあります。
Tokyo Robot Lab.はオリックス・レンテックが町田市に開設したショールームでファナック、ABBなど各メーカーの最新型次世代ロボットが見られるのが特長です。
まずは休館日、来場予約の可否、訪問の可否、感染症対策など足を運ぶ前に直接、連絡をして確認されることを強くオススメいたします。
安川電機の募集要項を参考にお伝えいたしますと、技術系職種に就くには理工系の学部学科で学んでいることが必須となりますが、事務系職種は学部学科不問(全学部全学科)となっています。また職種は
技術系 | 研究、開発、設計、生産技術、品質管理、営業技術、営業、フィールドエンジニアなど |
事務系 | 営業、調達、総務、人事、経営企画、経理、財務、情報企画など |
となっていました。新卒で産業用ロボット業界を志す場合、メーカーによってはさまざまなプロダクトを取り扱っており、若いうちは希望する部署に配属されないケースもあります。
どうしても産業用ロボットでないといけないとお考えなら、特化しているメーカーなどを視野に入れるといいでしょう。
産業用ロボット業界への転職のアドバイス
産業用ロボット市場規模で見たとおり稼働台数から生産体制も拡大していると推測でき、特に製造部門では人手不足も予想できます。景気の影響を受けやすいですが転職エージェントに登録することで好条件、厚待遇の非公開求人にありつける可能性も高まります。
キャリアコンサルタントから優先的に対応してもらえるよう友好な姿勢を貫き、良好な信頼関係を築いておくことが肝要です。
常に情報アンテナを張りめぐらせておくこともお忘れなく!
まとめ
私の職場にもいずれ協働ロボットが配属されてくる。そんな日がやってくるのかな?
産業用ロボットのようにみなさんも、内定を勝ち取れることを願っています!
就職と転職、共通していえることは人生の目的と就こうとしている仕事の方向性が合致していることが重要です。それがミスマッチを防ぐカギで、長続きできるかその明暗を分けます。
人生の目的についてその意味を、これまで考えたことがない方は関連記事で説明していますのでぜひ、併せてお読みいただけますと幸いです。
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