製薬業界の動向・年収 2016年度大手企業の調査・比較

業界研究

外資系企業との競争が激化している業界のひとつが製薬業界です。

国内の製薬業界の市場規模は世界第2位と極めて大きいため、国内外の製薬会社による競争が常に激化しています。

そのため、経営統合や合併、買収などの動きがかなり活発な業界でもあります。

ここでは、そんな製薬業界の基本情報と動向、この業界に転職・就職する際のアドバイスを紹介しています。

製薬業界の基本情報

製薬会社は、医薬品の研究開発、製造、販売などを主な事業としています。

製薬会社が取り扱っている医薬品には、「医療用医薬品」と「一般用医薬品」の2つに大別されますが、近年では医療用医薬品の生産比率が年々増加しており、2013年の厚生労働省の「薬事工業生産動態統計調査」によると、医薬品のうち89.8%を医療用医薬品が占めているというデータがあります。

国内の医薬品生産金額は、2013年度版の厚生労働省の「薬事工業生産動態統計調査」によると、6兆8,490億円となっており、これはアメリカに次ぐ世界第2位の市場規模となっています。

高齢化による医療費の拡大などで今後も市場規模は拡大していくことが見込まれています。

ただし、政府は増え続ける医療費を抑えるために、2年に1度行われる「薬価改定」においてマイナス改定を連続して行っています

医療用医薬品において収益を確保できないこともあり、国内での製薬業界全体の成長は頭打ちの様相を呈しています。

製薬業界の市場規模は、2013年7月~14年6月の決算において10兆2,509億円、経常利益は1兆3,636億円、平均勤続年数は11.7年、平均年齢は41.0歳、平均年収は710万円となっています。

製薬業界 ~今後の展望~

製薬業界の今後の展望のキーワードとなるのが、『業界再編』と『グローバル化』です。

『業界再編』

国内の製薬会社は合併、経営統合、買収などを繰り返してきました。2005年4月には、山之内製薬と藤沢薬品工業が合併し、アステラス製薬が、同年10月には、大日本製薬と住友製薬が合併し大日本住友製薬が誕生しています。

また、2007年4月には三共と第一製薬が経営統合し、持ち株会社の第一三共が発足、同年10月には、田辺製薬と三菱ウェルファーマが合併し、田辺三菱製薬が誕生しています。

国内最大手の武田薬品工業は、2008年5月に米国バイオ医薬品会社ミレニアム・ファーマシューティカルズを、2011年9月にはスイスの医薬品会社ナイコメッドを、さらに2012年6月に米URLファーマ及びその子会社19社をそれぞれ買収しています。

 

このように、製薬業界では活発に業界再編が行われてきました。

合併、統合によって確実に国内の製薬会社の規模は大きくはなってきていますが、売上高が3兆円を超える海外のメガファーマに比べると、まだ世界で戦える企業が少ないのが現実です。

国内首位の武田薬品工業でさえ世界の製薬企業売上高のトップ10に入ることができていません。

そんな中で、アメリカのファイザーやスイスのノバルティスといったメガファーマが、日本における投資を強化してきています。

今後、国内での競争がさらに激しくなるとともに、グローバル化が進んでいくことを考えると、国内外の製薬会社が絡んだ業界再編が行われていく可能性は十分にあります。

『グローバル化』

製薬会社の主力製品である医療用医薬品の価格は、2年に1度の「薬価改定」で決まりますが、ここ数年はマイナス改定が続いており、2016年に行われた改定でも、マイナス1.33%となっています。

多くの製薬会社は、国内市場だけでは収益を確保するのが厳しくなっていると判断して、グローバル化の動きを急ピッチで進めています。

すでに、武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共、エーザイの国内大手4社は、海外での販売事業に力を入れており、いずれの企業も海外での売上比率が40%を超えている状況になっています。

 

また、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)の規定によって、新薬の承認審査の基準が国際的に統一されたため、国際共同治験も可能になりました。

そのため、今後はさらに海外の製薬企業と共同開発を行ったり、治験コストの安い地域で研究・製造するなどが可能になります。

この変化は、グローバル化がさらに推進される要素のひとつとなりますので、国内の製薬会社が新興国を含む海外の企業と提携したり、買収したりするということが考えられます。

製薬業界の企業一覧

  • 武田薬品工業
  • アステラス製薬
  • 第一三共
  • 大塚HD(医療関連事業)
  • エーザイ
  • 中外製薬
  • 田辺三菱製薬
  • 大日本住友製薬
  • 興和
  • 協和発酵キリン

製薬業界を代表する企業の基本情報

【武田薬品工業】

業界売上高トップで、国内のリーディングカンパニーである武田薬品工業は、医薬品などの研究・開発・販売・輸入事業を展開しています。

医療分野で世界に貢献するため、グローバル企業としての歩みも始めており、リュープロレリン、ランソプラゾール、カンデサルタン、ピオグリタゾンといった国際戦略4製品を核にさらなる躍進を目指しています。

基本情報

  • 売上高:1兆7,778億円(2015年3月実績)
  • 経常利益:-1,454億円(2015年3月実績)
  • 平均勤続年数:14.3年
  • 平均年齢:39.4歳
  • 平均年収:945万円

【アステラス製薬】

国内売上高2位、日本初の研究開発型グローバル製薬企業であるアステラス製薬は、2005年4月に山内製薬と藤沢薬品工業が統合して誕生しました。

グローバル市場において価値ある医薬品を生み出していくために、国内トップクラスの研究開発投資と体制で新薬の開発に取り組んでいます。

基本情報

  • 売上高:1兆2,472億円(2015年3月実績)
  • 経常利益:1,896億円(2015年3月実績)
  • 平均勤続年数:16.6年
  • 平均年齢:41.8歳
  • 平均年収:1,055万円

【第一三共】

第一三共は、2007年4月に第一製薬と三共が統合して誕生した持ち株会社です。第一三共は、「ルル」や「ロキソニンS」といった、一般用医薬品を販売している会社というイメージが強いかもしれません。

しかし、実際には、医療用医薬品事業を中核に、ジェネリック医薬品事業、ワクチン事業、OTC医薬品事業など様々なチャンネルで事業を展開している国内外にグループ会社を持つグローバルカンパニーです。

基本情報

  • 売上高:9,193億円(2015年3月実績)
  • 経常利益:799億円(2015年3月実績)
  • 平均勤続年数:18.1年
  • 平均年齢:42.5歳
  • 平均年収:1,111万円

転職・就職へのアドバイス

製薬会社に転職・就職すると、主にMR職(メディカル レプレゼンタティブ)、研究部門、開発部門のいずれかに属することになります。

MR職は、医師や医療施設などに医薬品の有用性や安全性などの情報を提供する仕事になります。

研究部門は、自然界の物質や化学合成した物質をスクリーニングして医薬品の素材として使えるかどうかを調べていく仕事です。

開発部門は、医薬品となる可能性が認められたものを、臨床試験や治験で人体へ有効性があるか、安全性があるかを調べるといった業務内容です。

製薬会社へ転職する際のポイントとなるのは、以前の会社で携わっていた研究や開発内容、そしてどんな実績があるかということです。

新卒で就職するのであれば、大学時代にどんな研究を行って、どんな成果を得られたか、どんなスキルがあるのかが採用の判断基準になります。

いずれにしても、会社にとって有用な人材だとアピールすることが大切で、それをしっかりと伝えることができれば採用される可能性は高まります。

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