製薬業界の動向・年収・大手企業の調査・比較【2017年度】

業界研究

今回は、2017年の最新版として製薬業界の動向と転職・就職に役立つアドバイスを紹介していきたいと思います。

2016年版も併せてお読みいただくと、ここ1年での業界の変化も読み取れると思います。なお、サイト管理人のセイジも製薬業界に属しています。

製薬業界の動向・年収 2016年度大手企業の調査・比較
外資系企業との競争が激化している業界のひとつが製薬業界です。 国内の製薬業界の市場規模は世界第2位と極めて大きいため、国...

製薬業界の基本情報

昨年もお伝えしていたとおり、国内企業と外資系企業の競争が激化している製薬業界。

厚生労働省が法律※1に基づき、医薬品の製造から販売、市販後の安全対策まで、その有効性・安全性を確保するため一貫した規制を行っているのが、大きな特徴です。

※1 「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」

製薬会社の主業

  • 医薬品の研究・開発
  • 医薬品の製造
  • 医薬品の販売

を主な業としています。

製薬会社が取り扱っている医薬品は、大きく

  • 医療用医薬品
  • 一般用医薬品

の2つに分けられます。

そんな医薬品をめぐる周辺業界としては、医療用医薬品の主な納入先となる医療機関、一般用医薬品の主な納入先となるドラックストア、一部のコンビニエンスストア、医療機器業界が挙げられます。

製薬業界の市場規模は、6兆8204億1300万円※2となっており、今後も現状維持もしくは緩やかに伸びていくものと思われます。

※2 厚生労働省「薬事工業生産動態統計調査」2015年の医薬品生産金額

http://www.mhlw.go.jp/topics/yakuji/2015/nenpo/1.html

しかし、政府はこの状況を修正しようとする動きを見せており、2年に1度の「薬価改定」を2018年度から「毎年」行う方向で改革を進めています。

“塩崎恭久厚生労働相は20日、薬価制度の抜本改革に向けた基本方針を発表した。

市場の実勢価格を反映するため、2年に1回としてきた改定を毎年実施する。全ての薬の価格を毎年調べ、本改定でない年は実勢価格との乖離(かいり)幅が大きい薬の価格を見直す。薬剤費の膨張を抑える狙い。”

引用:日本経済新聞 薬価改定を毎年実施 厚労相が改革基本方針

薬価改定を毎年実施 厚労相が改革基本方針 - 日本経済新聞
塩崎恭久厚生労働相は20日、薬価制度の抜本改革に向けた基本方針を発表した。市場の実勢価格を反映するため、2年に1回として...

政府の薬価改定により売上・利益が決められてしまうことが、製薬業界の不安材料のひとつであることは間違いないようですが、大手企業の売上は大きく、平均年収も高いため、働く側としては非常に魅力的な業界となっています。

そんな製薬業界の主要企業10社(後述)の社員の状況は、平均年齢は42.7歳、平均勤続年数は16.2年、平均年収は980万円となっています。

 

製薬業界 ~今後の展望~

製薬業界の今後の展望のカギとなるワードですが、日経業界地図 2017年版(日本経済新聞出版社)をヒントに考察してみた結果、『バイオ医薬品』と『成長戦略』となりました。

 

バイオ医薬品

バイオ医薬品とは、“抗体医薬など遺伝子組み換えや細胞培養で製造する医薬品”(同書より引用)のことで、特定抗原に効果を発揮する点で、これまでの低分子医薬品に比べ副作用が少ないといわれ、今後、希少疾病や難病など、さまざまな病気の治療薬としての活用が期待されており、研究・開発も進んでいるそうです。

 

成長戦略

大手各社は成長戦略を打ち立てており、武田薬品工業は、がんや消化器分野の新薬開発を、アステラス製薬は、泌尿器疾患やがん分野を、大塚ホールディングスは、中枢神経分野を強化。第一三共もがん分野、エーザイは、新型認知症薬と新興国開拓に取り組んでいます。

 

製薬業界の主要企業及び年収一覧(各社有価証券報告書より抜粋)

各社の年収一覧

  • 武田薬品工業 1015万円
  • アステラス製薬 1073万円
  • 大塚ホールディングス 1078万円
  • 第一三共 1133万円
  • エーザイ 1038万円
  • 中外製薬 954万円
  • 田辺三菱製薬 901万円
  • 大日本住友製薬 852万円
  • 協和発酵キリン 832万円
  • 塩野義製薬 927万円

製薬業界主要企業10社(上記)の平均年収は、980万円でした。詳細は、下図を参照ください。

【参考】外資系(海外)製薬会社

ノバルティス、ファイザー、サノフィ、ギリアド・サイエンシズ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、メルク、バイエル、ロシュ、アストラゼネカ、グラクソ・スミスクライン、テバ・ファーマスーティカル・インダストリーズなど

 

製薬業界を代表する企業の基本情報

武田薬品工業

潰瘍性大腸炎薬などを主力とする武田薬品工業の売上高は、他社の追随を許さず、2位のアステラス製薬、3位の大塚ホールディングスを大きく引き離しており、同社は、間違いなく製薬業界首位のリーディングカンパニーです。

グローバル企業として海外への進出も果たしており、昨年度の海外売上収益は連結売上収益全体の6割超を占めています。

基本情報

  • 売上収益:1兆7320億5100万円(国際会計基準)
  • 税引前当期利益:1433億4600万円(国際会計基準)
  • 社員数:6638名
  • 平均年齢:40.4歳
  • 平均勤続年数:14.7年
  • 平均年収:10,151,000円

 

アステラス製薬

国内トップクラスの研究開発投資と体制で新薬に特化し、2位となっている同社ですが、泌尿器、移植分野に加えて、アメリカの会社を買収し、抗がん剤の分野を第3の柱として育成中です。

基本情報

  • 売上高:1兆3116億6500万円(国際会計基準)
  • 税引前利益:2817億6900万円(国際会計基準)
  • 社員数:5186名
  • 平均年齢:42.6歳
  • 平均勤続年数:17.3年
  • 平均年収:10,730,864円

 

大塚ホールディングス

大塚ホールディングスは、ポカリスエットやカロリーメイトなどで知られる大塚製薬、チオビタやソルマックなどで知られる大鵬薬品工業を傘下に擁しています。

大塚製薬は、ジェネリック薬を製造・販売せず、新分野の新薬や製品の開発に注力しているのが大きな特色です。また、大鵬薬品工業は現在、主に、がん経口剤や注射剤の開発を行っています。

基本情報

  • 売上高:1兆1955億4700万円(国際財務報告基準)
  • 税引前利益:1166億8000万円(国際財務報告基準)
  • 社員数:87名(医療関連事業18647名)
  • 平均年齢:44.5歳
  • 平均勤続年数:3.7年
  • 平均年収:10,786,489円

 

参考文献

  • 武田薬品工業株式会社第140期有価証券報告書
  • アステラス製薬株式会社第12期有価証券報告書
  • 大塚ホールディングス株式会社第9期有価証券報告書
  • 会社四季報2017年2集春号 東洋経済新報社
  • 日経業界地図 2017年版 日本経済新聞出版社

転職・就職へのアドバイス

昨年、お伝えしていたことと、ほぼ重複するのですが、製薬会社に転職・就職する場合、主な進路は、

  • MR職(メディカル リプレゼンタティブ)
  • 研究部門
  • 開発部門

になります。

MR職は、医療機関、施設などを巡回し、医師などに医薬品の有用性や安全性などの情報を提供する仕事になります。

製薬業界=主に薬科大卒=理系出身者の活躍フィールド

というイメージが強いのですが、実は文系出身者でもMR職に就くことが可能です。

しかし、担当地域にある多くの病院などを巡回するため体力が要りますし、医師や看護師など医療従事者とのコミュニケーションが必須です。

とくに外回り営業経験者や販売員として商品説明・接客に従事してきた方、体力や対人関係に自信がある方が向いている仕事だといえそうです。

医薬品は日々進歩しており、情報も更新されていきますので、情報のインプットとアウトプット、日々の研鑽が欠かせません。

 

研究部門は、自然界物質や化学合成物質をスクリーニングし、医薬品素材として使えるかどうかを調査していく仕事です。

“医薬品研究職には、部門によってそれぞれ違った役割があります。新薬となる可能性を秘めた候補化合物の合成を行う「化学部門」。

その候補化合物がより強い有効性を発揮するように検証実験を行う「生物部門」。そして、できた候補化合物をくすりのかたちにする「製剤部門」があります。

それぞれの部門が連携し、新薬の種をつくりだしています。”

引用:日本新薬株式会社 職種紹介 医薬品研究職

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開発部門は、医薬品となる可能性が認められたものについて、臨床試験や治験を通じて、人体に有効か、安全かを調査する仕事です。

“臨床開発職。その仕事は、治験計画を管理する「品目業務」と、医療機関を訪問し、治験が適切に行われているかを監視する「モニター業務」の2つに大きく分かれています。

臨床試験には第Ⅰ相から第Ⅲ相までの段階があり、7年以上の長期間にわたることもあります。その臨床試験で有効性・安全性が認められたくすりだけが、製造販売承認申請を行うことができます。”

製薬会社への転職を志す方は、社会人としての経験や実績の棚卸しをし、どのような研究や開発、仕事に携わり貢献してきたか、それをどう製薬という分野に活かせるのか、いつでもわかりやすく説明できるように準備をしておくといいでしょう。

なお、管理人セイジは社内SEという少し特殊な職種で製薬業界に転職しました。その際に使った転職サイトの話などは「転職サイトエージェント比較おすすめランキング 」の記事に纏めています。

新卒で就職を志す場合は、研究・開発は理系修士以上、その他は学士以上であることが求められるようです。まずは、各社の募集要項をよく読むことです。

大学時代の研究内容やその成果、今持っているスキルが主な採用判断材料となりえます。有用な人材であることを伝えられるよう、しっかりと自己分析・応募書類を作成していくことが必須です。

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