出版業界・電子書籍業界の基本情報・年収や動向・大手企業の比較を経験者のアドバイスを交えて解説

業界研究

さまざまな情報をインターネットから容易く取得できる世の中になりました。

しかし現在もなお

  • 書籍
  • 雑誌

は貴重な情報源であることに変わりありません。

書店には新刊本や今週発売の雑誌が並べられ、多くの消費者が書店に足を運び、手にとって立ち読み、チェックしています。また電車、カフェ、大学などいろいろな場所で、

  • スマホ
  • タブレット
  • ノートパソコン

を使い電子書籍に目を通している人の姿を見かけます。

今回はそんな私たちの生活に密着した本、書籍を取り扱う出版業界、電子書籍業界の基本情報、市場規模、主要企業と年収、動向、展望、経験者談、就職・転職のアドバイスについてもお伝えしていきます。

業界全体図から見た出版・電子書籍業界

セイジさん、出版業界や電子書籍業界は全体図から見るとどういう立ち位置なのです?

書籍や雑誌、電子書籍ですが日経業界地図では「エンタメ・メディア・コンテンツ」に分類されています。

まず本や書籍は紙に印字する工程を経ますので印刷業界、作品がヒットするとドラマ化・映画化されますのでテレビ、ラジオ、映画業界、あと紙に印字するという共通点がある新聞、また新聞社が出版事業にも参入しているケースが少なくありませんので新聞業界も。そして電子書籍は高度なIT技術がないと消費者に提供できませんからIT業界も周辺業界といっていいです。

印刷、マスコミ、ITが周辺業界といえますね。

出版・電子書籍業界の基本情報

出版業界は主に本や雑誌を企画・編集・発行する出版社(KADOKAWA、集英社、講談社など)、出版社から発行された本や雑誌を書店に配送し卸す取次(日本出版販売、トーハン、楽天ブックスネットワークなど)、そして本や雑誌を私たちに販売する書店(紀伊國屋書店、丸善、蔦屋書店など)で成り立っています。

また電子書籍業界についても電子書籍を企画・編集・電子化する事業者、電子書籍取次(メディアドゥホールディングスなど)、電子書籍を販売する電子書店(紀伊國屋書店のKinoppy、丸善のhonto、amazonのKindleストア、Apple Books、Google playブックスなど)で成り立っています。

 

出版・電子書籍業界の市場規模(変遷)

下表のとおり出版は大幅縮小の一途、電子書籍は拡大の一途で、トータルで見るとやはり年々、落ち込んでいるのがわかります。

日経業界地図年度(実年度)出版電子書籍
2017(2015)1兆5220億円1826億円
2018(2016)1兆4709億円1909億円
2019(2017)1兆3701億円2215億円
2020(2018)1兆2921億円2479億円

 

出版・電子書籍業界の主要企業と平均年収(有価証券報告書がある会社のみ記載)

  • カドカワ 7,911,000円
  • 日本出版販売 5,980,272円
  • トーハン 5,566,974円
  • 丸善 5,762,324円
  • メディアドゥホールディングス 5,580,000円
  • 講談社
  • 集英社
  • 楽天ブックスネットワーク(旧大阪屋栗田)
  • 紀伊國屋書店
  • 蔦屋書店

 

出版・電子書籍業界の動向

ここでは出版業界の主な動き(ニュース)をお伝えしていきます。転職とキャリアアップとしてはamazonの動向に注目しました。

amazonが大手取次との取引を打ち切り

出版社が発行した本や雑誌は取次を介し、書店に並ぶ。それが日本出版業界の長きに渡る商慣習でした。ところが今ではインターネットなどで本は販売され、書店に足を運ばず自宅にいながら購入でき、届くのを待つだけでよくなりました。

もちろん通販とはいえ大手amazonも当初は取次なしに本の販売は困難でした。そんななか2015年からKADOKAWAと直接取引を始めました。2017年には日本出版販売(日販)と在庫なき書籍について取引を打ち切っています。

さらに2018年、amazonは本を印刷会社から直接、取り寄せるようにしたと発表。出版社に注文した雑誌などは印刷工場から自社倉庫に仕入れるとしたのです。

amazonの攻勢は続く

本にも人気の有無があります。売れない本ばかり入荷すると、多くの書店は倒産するでしょう。しかし倒産しないのは返本制度のおかげで本が売れ残っても書店は、出版社に本を返せます。そのためいつも出版社は返本の山に頭を抱えていました。

amazonは2019年3月、“出版社から本や雑誌を直接購入し、売れ残っても返品しない「買い切り」方式を年内にも試験導入する”と発表しました。

そして2020年2月、“書店向けに書籍などの出版物を卸販売するサービスを本格的に始める。法人向け電子商取引(EC)サイト「アマゾンビジネス」を通じて、書店に届ける仕組み。人手不足などに伴い、取次会社を通じた出版物流では本が希望通りに届かないケースも出ている”と報じられ、amazonによる(事実上の)取次への参入と、その人手不足も露呈することとなりました。

 

出版・電子書籍業界の展望(予測)

紙・電子の共存共栄が続く

市場規模の項でお伝えしたとおり、スマホなどで気軽に読める電子書籍市場が発展。しかし紙には紙、電子には電子の良さがあり、

・紙の本を好む方が多い
・紙の本のほうがその内容を記憶しやすい

というデータ情報もあります。

また書籍電子化コストは高価であり今後も、紙と電子は共存し消費者に届けられていくものと思われます。

取次も業界再編の肝

amazonの攻勢を昔ながらの取次側も黙って見ているわけではないようです。トーハンは2019年春から物流効率を高めるため人工知能(AI)を活用する取り組みを始めたほか、日本出版販売と雑誌返品で協業、トーハンの業務を日販グループの物流センターに移管すると公表していました。

また大阪屋栗田も2018年に楽天が買収、現在は楽天ブックスネットワークに社名変更しています。

amazonと取次各社が、これからどう出版業界を盛り立てていくかが注目したいポイントです。

 

出版・電子書籍業界の大手企業3社を比較

【KADOKAWA(カドカワ)】

KADOKAWAは出版総合大手のひとつです。書籍ブランドには角川書店、アスキー・メディアワークス、メディアファクトリーなどがあります。前述したとおりamazonとの直接取引を行っています。グループ会社には角川ゲームス、角川大映スタジオ、関連会社にはCS放送チャンネルを展開する日本映画放送があります。

なお出版事業をけん引する会社はKADOKAWAのほかビルディング・ブックセンター、角川アスキー総合研究所、角川メディアハウス、ブックウォーカー、Gzブレインなどがあります。

基本情報
売上高:2086億500万円
経常利益:42億500万円
社員数:1669名(出版事業)
平均年齢:42.7歳
平均勤続年数:3.9年
平均年収:7,911,000円
【日本出版販売】

全国約5000の書店と、3万を超えるコンビニに本を届けている取次最大手です。書店での読み聞かせ会「おはなしマラソン」も行っています。グループ書店も持ち、リブロ、積文館書店、オリオン書房などがあります。

基本情報
売上高:5457億6100万円
経常利益:10億8400万円
社員数:2757名(出版物等販売事業)
平均年齢:41.4歳
平均勤続年数:17.8年
平均年収:5,980,272円
【CCC カルチュア・コンビニエンス・クラブ】

出版業界の中でも、おもしろい取り組みをどんどん取り入れているのがTSUTAYA、蔦屋書店などを展開するCCC カルチュア・コンビニエンス・クラブです。

Tポイントカード、武雄市図書館、BOOK&CAFEなどの運営も手がけています。

基本情報
有価証券報告書なし

参考文献

カドカワ株式会社第5期有価証券報告書
日本出版販売株式会社第71期有価証券報告書
日経業界地図2017~2020年版 日本経済新聞出版社

出版業界経験者から聞いた話

ここでは出版社に13年勤務し広告営業、販売営業をされていた方からお話を聞けましたので、ご紹介していきます!

元営業マンが語る出版業界の特徴

出版業界は特殊な商習慣で本や雑誌などの出版物は

・出版社(メーカー)
・取次会社(物流)
・書店(小売)

綿密に連携しているため、全国同一価格で消費者にお届けできています。また売れるかどうかわからない新刊が書店に並ぶのは返品できるからです。

元営業マンが語る出版業界への懸念と期待

書店数の減少が気になっています。

文化通信社によると、

アルメディアの調査で判明している書店数は、

1999年:22296店舗
2019年:11446店舗(5月1日現在)

で、20年で半減していることがわかっています。不安を感じつつも電子書籍が好調なため衰退に歯止めをかけてくれるのではと個人的には期待しています。

元営業マンが語る出版業界への転職のしやすさ

個人的には他業界からの採用が増えていると感じています(転職しやすい)。かつて出版業界は比較的、転職しにくい業界でした。なぜなら憧れの人気業界だったからです。

私もそうだったように小説、読書、作家が好き、出版ビジネスに興味ありといった理由で、飛び込んでくる方が多かったです。出版社に入れるのはほんの一握りで各社、毎年、新卒を若干名、採用していましたから正直、本当に狭き門でした。また定年まで情熱を絶やさずに済む

・やりがい
・魅力

溢れる業界でした。終身雇用で社のカラーに染まるのがよい、外部からの侵入を許さない、そんな風潮でした。今思えばかなり温室で、私も守られていました。

しかし業界全体が低迷しはじめ、雑誌が休廃刊していくようになり、離職者も増えました。そこで新卒者を、時間をかけて育てるだけでは追いつかなくなりました。

特に編集は専門職ですから経験者採用が主流です。ただ営業、マーケティング、デジタル関連部門は他業界から招くことも少なくないようです。

これからも出版業界は変化していくでしょう。

そこで他業界での経験を出版業界の常識とかけあわせ、化学反応を起こせるような
常識にとらわれない
革新的な
人材が重宝されていくとみます。

元営業マンが語る出版業界の営業の大変さ

出版業界在籍時、私は毎月終盤になると戦々恐々としていました。なぜなら月末に向け、上司から販売命令が下るからです。ちなみに出版社の営業には

・書店営業
・取次営業

などがあります。前者は各書店や全国に展開している大手書店本部を担当、自社商品の陳列強化や(取次を通じての)一括仕入れを提案して周ります。後者は担当本の売れ行きをチェック、在庫の様子を見て重版、取次に一括仕入れを提案します。

本には売上計画があり月次に細分化され、各課に割り振られます。課長はその計画に基づき指揮、統率します。ヒット作が出れば毎月必達でラクなのですが、残念ながらそのようないい時期はあまりなく、あっても続きません。そこで部長から売上必達の命令が飛んでくるのです。

重版できそうな本を見つけては書店、取次へと提案しまくり、なんとか目標達成させようとあちこち飛び回ります。

元営業マンが語る出版業界でキャリアを積む方法

出版社で出世したいなら「顔が利く人」になりましょう。なぜなら出版業界は社内外コミュニケーションが非常に活発だからです。

特に営業は、競合他社の方々とはお互いライバルでありながら、横のつながりができやすいです。

・出版業界では定期的に業界全体会合が行われる
・営業先はどの出版社も同じ書店となる

ため、お互い顔見知りになるのです。仲良く情報交換などありえないと思えますが、単純接触の法則が働き一度、意気投合してしまうと戦友関係になり、こうなると社の垣根を超えお互い情報交換や綿密な連携で協力し合うようになるのです。

またときにその実力を認められ他社から引き抜かれることもあります。世間は狭いといいますが出版業界での人の評判や噂は、瞬く間に広がります。

優秀な営業マンは自然と知れ渡り注目され、さらなるキャリアアップが可能になるのです。

もちろん社外で優秀と噂されるような人は社内でも仕事がデキる人で通っているでしょう。社内での円滑なコミュニケーションのおかげで書店や取次へ良い提案ができ、優秀と目されるのです。

出版業界で上を目指したいのであれば、コミュニケーションが重要です。

ありがとうございました!

定期的に会合があったりするのですね!

これより転職とキャリアアップ管理人として、就職、転職のアドバイスをお伝えしていきます。

 

出版・電子書籍業界への就職のアドバイス

出版業界は出版社、出版取次会社、書店運営会社への入社を目指すことになり、電子書籍業界は出版社など本を出す事業者、電子化を担うIT企業(コンテンツ、配信、端末)のほか、電子書籍取次会社もエントリー候補先となり得ます。

出版社の職種別解説

集英社の採用情報

を元にお伝えしますと、

編集/デジタル・通販/版権/営業/管理

に分かれ、部門別採用ではなく一括採用で入社後、研修などを経て適材適所の配属となるようです。

編集(コミック誌)

作品について作家と打合せ、原稿受け取り、入稿、校了作業のほか、新人作家発掘及び育成、担当作家スケジュール管理に取材手配、読者イベント、作品のアニメ化・映像化、キャラクターグッズ監修など作品に関する多岐に渡る業務を行います。

編集(ファッション誌)

企画や交渉、取材、撮影、入稿、校了作業のほか、モデルやカメラマンの手配、スタイリストとのコーディネートチェック、誌面レイアウトをデザイナーとともに作成するなど幅広く業務を行います。

デジタル・通販

電子書籍、通販、デジタルコンテンツビジネスに関するあらゆる業務を担います。

版権

書籍、コミックが映画化、ドラマ化するときなど、作者から委託された権利をもとに契約、出資交渉などを行います。また海外で出版する際のライセンス関連業務も担います。

営業

まずはマーケティングを行い、販売計画を立て、発行部数を決めます。書店に出向き情報を提供するほか、テレビやラジオへの媒体広告出稿、読者イベント・キャンペーンなどの販促も手がけます。

管理

経理、総務、法務、人事といった企業管理部門です。

出版社が求める人材像

経営理念、社長・採用メッセージから

カドカワ変化を恐れずに挑戦し続ける心を持つ人
集英社前向きで誠実な人
講談社時代を変革していこうという気概を持ち、変化を楽しめる人
小学館人の心に良い方向を生み出す小さな種子をまく人

ではないかと思料します。エントリーシートや履歴書、面接で、求める人材像にいかに自分が合致しているか、情熱、やる気を積極的にアピールしましょう。

 

出版・電子書籍業界への転職のアドバイス

出版・電子書籍業界へ未経験で入ろうとする方は、経験・在籍業界や職種の知見を出版・電子書籍事業でどう活かせそうかを考え、転職活動を展開していきましょう。

ただひとりで悩み、時間をかけて考え抜くよりも転職エージェントに登録し、出版業界に詳しいキャリアアドバイザーの知恵を借り、二人三脚で進めていくのが早道と考えます。

まとめ

出版業界はどんどん変化、企業も生き残りのため挑戦をし続けていますよね。

そんな出版業界で、内定を勝ち取っていただきたいです!

就職と転職、共通していえることは人生の目的と就こうとしている仕事の方向性が合致していることが重要です。それがミスマッチを防ぐカギで、長続きできるかその明暗を分けます。

人生の目的についてその意味を、これまで考えたことがない方は関連記事で説明していますのでぜひ、併せてお読みいただけますと幸いです。

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