業界全体図から見た半導体業界
セイジさん、半導体業界は全体図から見るとどういう立ち位置なのです?
ですね。日経業界地図2021年版では電気・精密・通信というカテゴリに分類されています。
そして半導体業界に属する企業は、
半導体系企業 | インテル、サムスン電子、キオクシアホールディングスほか |
半導体製造装置系企業 | 東京エレクトロン、日立ハイテク、ディスコ、ニコン |
に分けられます。そして詳しくは後述しますが、
・デジタル機器
・家電
関連メーカーが、周辺業界といえます。
半導体業界の基本情報
半導体の定義
半導体とは、ときに「導体」ときに「絶縁体」とコロコロとその性質を変えるものと私は考えています。
ちなみに日立は、半導体とは“一定の電気的性質を備えた物質です。物質には電気を通す「導体」と、電気を通さない「絶縁体」とがあり、半導体はその中間の性質を備えた物質”と解説しています。
あぁ! だから半+導体で半導体なのですね!!
そうなのですよ。導体になったり絶縁体になったり半々なのです。
導体と絶縁体のちがい
半導体をさらに理解するために必要ですから、導体と絶縁体の比較をここでしておきます。
導体 | 電気が難なく通る | 低い抵抗力 |
絶縁体 | 電気が通りにくい | 高い抵抗力 |
これで導体と絶縁体の違いが「抵抗」にあることが、おわかりいただけたと思います。そしてその抵抗が自由自在に変化することからこそ半導体が誕生したといえます。
半導体の仕組み
そしてそもそも半導体の抵抗がどうしていともカンタンに変化するのかですが、それは「温度」です。
半導体は温度が低くなると電気を通しません。温度が高くなると電気が通りやすくなる。そのような仕組みをもっています。
主な半導体製品
半導体製品には、
CPU/メモリ/ダイオード/トランジスタ/アクティブフィルタ/アンプIC/PLD
などがあります。
半導体製品搭載内蔵製品
そしてCPUはパソコン、スマートフォンに搭載されており、メモリはもちろんフラッシュメモリに内蔵されています。
CPUは「インテル、入ってる」のインテル(アメリカ・半導体系企業世界1位)が、フラッシュメモリはサムスン電子(韓国・半導体系企業世界2位)が有名です。
半導体はテレビ、デジタルカメラといったデジタル機器のほか、冷蔵庫、炊飯器、洗濯機、エアコン、LED電球など家電製品にも組み込まれています。
日本半導体メーカーは海外勢に押されがち
日経業界地図2021年版を確認いただきたいのですが、
1位インテル(アメリカ)、2位サムスン電子(韓国)、3位SKハイニックス(韓国)
1位アプライドマテリアルズ(アメリカ)、2位ASML(オランダ)、3位ラムリサーチ(アメリカ)
と残念ながら海外勢が上位を占めています。
半導体業界の市場規模の変遷
海外勢に押されている日本半導体ですが、WSTS(世界半導体市場統計)日本協議会の資料によると、下表のとおり推移しています。
2016年 | 3兆5068億円 |
2017年 | 4兆1041億円 |
2018年 | 4兆4126億円 |
2019年 | 3兆9187億円 |
4兆円前後で推移していて、順調とはいえない感じですか?
WSTSは2019年の落ち込みを米中貿易摩擦などの地政学的リスクがあったからと分析、」発表しています。
半導体業界の主要企業及び年収一覧(各社有価証券報告書より抜粋)
メモリ
・キオクシアホールディングス(東芝メモリ)
マイコン
・ソニーセミコンダクタソリューションズ(1)
・ルネサスエレクトロニクス
製造装置
・東京エレクトロン
・日立ハイテク
・ディスコ
・ニコン
半導体業界の動向
東芝からキオクシアへ
2017年版でお伝えしていたのですが、かつて半導体世界出荷額7位という実績を残した「東芝」が経営再建することとなり、東証2部に降格。半導体事業の分社化が世間をザワつかせました。そして
・日米韓連合(ベインキャピタル)
・鴻海精密工業(台湾)
・ウエスタン・デジタル(アメリカ)
が東芝半導体事業の売却をめぐり交渉していました。気になる結果は2018年、2兆円で日米韓連合の傘下入りし東芝メモリは2019年、キオクシアホールディングスに社名変更しています。同社は上場を目指しておりその動向が気になるところです。
インテルも事業売却
2020年10月、インテルの半導体メモリー事業をSKハイニックス(韓国大手)が9500億円で買収することを発表しました。NANDフラッシュメモリ業績が低迷しており、今回の措置に至ったようです。
日本経済新聞 インテル、メモリー事業売却 SKハイニックスに、9500億円
日経産業新聞 インテル、「総合」の看板下ろす 半導体メモリー売却
半導体業界大手企業3社、徹底比較
キオクシアホールディングス
売上収益:9兆1622億6400万円(国際財務報告基準)
当期利益:4690億9100万円(国際財務報告基準)
社員数:35631名
平均年齢:41.4歳
平均勤続年数:18.6年
平均年収:8,498,582円
ルネサスエレクトロニクス
車載中心でマイコン世界首位の半導体専業メーカーのルネサスエレクトロニクス。
東芝の半導体事業売却でも名前が出ていた産業革新機構の傘下で、リストラを断行し経営再建を果たしています。
デバイス、キット、プラットフォームという3つの半導体ソリューションを用意し、自動車、産業、ブロードベースド分野を集中領域としています。
売上高:4710億3100万円
経常利益:499億8600万円
社員数:3029名
平均年齢:45歳
平均勤続年数:20.5年
東京エレクトロン
半導体製造装置国内最大手の東京エレクトロンは、半導体製造装置のほかFPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置も事業として手がけています。
2015年にアメリカのアプライドマテリアルズとの経営統合を取りやめています。
売上高:7997億1900万円
経常利益:1575億4900万円
社員数:1531名
平均年齢:43.9歳
平均勤続年数:18.1年
株式会社日立製作所第148期有価証券報告書
ルネサスエレクトロニクス株式会社第15期有価証券報告書
東京エレクトロン株式会社第54期有価証券報告書
半導体・電子部品工場勤務経験者から聞いた話
半導体も製造していた電子部品大手メーカーにて今年春まで7年勤めておられた方にお話をお伺いすることができましたので、これよりご紹介していきます。
他業界から半導体・電子部品工場には転職しやすい?
半導体・電子部品工場には正直、転職しやすいです。工場作業者の離職率は高く一定数、退職していきます。体力を要する作業も多々あり、若い力が必要で新卒入社だけではなく中途入社も広く募集されているのが現状です。
私の勤めていた工場では中途採用が300人単位であっていました。そのときは応募してきた人はほとんど採用したと聞いています。また近年、この規模の採用はめずらしくなく中途入社の8割は高卒の方でした。
よって半導体・電子部品工場に入るのに学歴はあまり関係ありません。30代までの男性でかつ面接でしっかりと受け答えができれば、採用されます。なお危険物取扱い関連資格などがあれば強いです。
女性は体力勝負である工場に入るには、ハードルは少し高いのではと思います。しかし健康体で、しかも体力があり、また保有資格を示せば採用確率は上がります。
経験者が語る半導体・電子部品工場でのお仕事
一般的なお話ですが大卒でかつ新卒入社の方は、品質管理や開発など専門的知識を要する部門、部署に配属されます。工場ではライン作業に従事することが多いです。高卒で入社した方は、主に機械稼働を任されます。
私がいた工場は無塵服を着用し、クリーンルームといわれる特殊仕様の部屋のなかで常にラインの流れを停めないよう、三交替勤務で機械を稼働させ部品生産をしていました。
同時に担当する機械は複数で、
・体力
・精神力
が必要な作業内容が多かったです。決して機械を稼働させるだけのラクな仕事ではありませんでした。
大卒入社の方は数カ月、作業を体験したあと、それぞれ担当すべき部署に配属されていかれるようでした。
ちなみに私は当初、スマホ、テレビなどに搭載する積層セラミックコンデンサの製造に携わりその後、海底ケーブルや無人探査機などに搭載する特殊セラミックコンデンサ部門で3年間、リーダー、班長として管理業務にあたりました。
経験者が語る工場での職制と命令系統
私がいた工場における役職、命令系統をご紹介します。上から
事業所長→部長→次長→課長→係長→主任→班長→リーダー
の順で命令や指示が降りてきていました。生産遂行に関わることは主任以下で決めることが多く、係長以上は大きなトラブルなどがないかぎり口を出すことはなかったです。大きい工場だったからでしょうか。上の役職の方と関わる機会はあまりありませんでした。
半導体・電子部品メーカーで出世していくには?
企業は利益を出すことを目指しています。もちろん社員全員でです。利益を出すにはどうすべきか? 直属の上司から認められるには? を考え行動することで自ずと評価は上がり出世していけます。なお評価を上げるには、3つの行動を心がけましょう。
・改善する
・休まない
・コミュニケーション
作業を簡易化させることと不良完成品は必ず発生するものですが、機械を原因とする不良品を極力なくすことです。結果人件費や材料費を減らし、会社利益に貢献できます。機械の故障率を下げられる改善方法を見つけると出世しやすくなります。
生産ラインに遅れが生じる可能性があるため、たとえ体調不良でも突発的に休む、とくに有給休暇を使って休むのは、会社からあまりよく思われません。なるべく休まないよう徹底した体調管理を心がけましょう。
同じ生産ラインの人、特に社内評価の意見が反映されやすい直属上司とうまくコミュニケーションをとることで、生産性は上がり結果、会社に利益をもたらし、出世しやすくなります。
ありがとうございました!
半導体業界への就職のアドバイス
転職エージェントのキャリアアドバイザーの方にも過去、同じことを言われ受け売りのようなものですが、半導体メーカーは同じ理系出身者から見てもやりがいのありそうな職場で、興味がある方は迷わず挑戦いただきたいです。
研究開発に没頭できるイメージが強く、実は私の大学時代の先輩も多く勤めています。研究・開発が天職かもと思われている方には半導体業界をオススメしたいのです。キオクシアの新卒採用情報ページを参考にお伝えいたしますと、
採用は技術系と事務系に分かれています。技術系募集職種は、
プロセス・パッケージ技術開発
システム・ソフトウェア・回路設計技術開発
顧客技術対応・評価解析技術開発
の4つとなっています。ただし技術系職種は、理工系全学部・学科のみとなっています。事務系募集職種は営業、事業企画、調達、知財、財務、法務、ITなどで総合職となっていました。
半導体は比較的新しいプロダクト分野ではありますが、半導体技術は日々、目まぐるしく進化しています。やはりそこは競争ですから各社、他社に先を越されぬよう研究開発に注力しています。
ちなみにキオクシアの募集人員は技術系250~300名、事務系20名となっていました。
いかに技術、研究開発に力を入れているかが読み取れますね^^
だからオススメするのですよ^^
ただし優秀な研究職、開発職、エンジニアの条件は高い、
・テクニカルスキル
・コミュニケーション能力
が求められています。なぜならデスクやパソコン、プロダクトに向き合う前に私たちは、顧客と向き合わなければならないからです。
顧客の御用聞きをし、ニーズは何かを把握し、それを満たすプロダクトは何かをときに現地に足を運びながら研究、開発していくことになります。もちろん社内でも営業や他部署のエンジニアと技術、仕様などについて議論することもあるでしょう。
半導体業界への転職のアドバイス
同様にキオクシアのキャリア採用特設サイトを参考にお伝えいたしますと、
に分かれています。
もちろん転職市場で求められる人物像は、即戦力、これまでの経験を新天地で活かす力を持つ方となります。
これまでの経験やスキルを棚卸し、研究、開発の成果や実績を引っ提げ、面接でなぜ半導体業界なのか、御社なのかを明確に答えられるよう準備をしましょう。
もちろん直接応募も可能ですが、転職エージェントに登録することで求人情報とめぐり合える確率がグンと高まりますし、面接対策などを受けることで内定を得られる確率も高まります。
まとめ
海外勢に負けず日本の半導体メーカーも頑張ってほしいなと思いました。
そんな半導体業界で、内定を勝ち取っていただきたいです!
就職と転職、共通していえることは人生の目的と就こうとしている仕事の方向性が合致していることが重要です。それがミスマッチを防ぐカギで、長続きできるかその明暗を分けます。
人生の目的についてその意味を、これまで考えたことがない方は関連記事で説明していますのでぜひ、併せてお読みいただけますと幸いです。
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