医療機器業界の動向・年収 2016年度大手企業の調査・比較

業界研究

社会の高齢化に伴い、医療機器業界の担う役割もますます大きくなってきます。

さらに新興国の発展に伴い、世界全体の医療機器の需要も増えることが予想されています。

ここでは、今後も安定的な成長が見込まれている医療機器業界の動向と、転職・就職活動に役立つ情報を紹介していきます。

医療機器業界の基本情報

医療機器業界は、医療施設で使われる大型の画像診断装置から家庭用血圧計、さらに手術で使われるメスや縫合糸など、50~60万あるとも言われている多種多様な品目を取り扱っています。

また、1台当たり1億円以上するCTやMRIといった検査機器から、包帯や絆創膏など100円以下の製品まで、取り扱っている価格帯もかなり幅広いものがあります。

この業界は、取扱品目が他業界に比べ圧倒的に多いため、医療機器メーカーでも得意分野の事業に絞り込んで製品を生産していたり、特定の製品は中小企業が開発・生産していたりするケースが多くあります。

そのため、医療機器売上高のグローバルランキングを見てみると、日本企業は一社もトップ10に入ることができていません。

 

現在、世界の医療機器市場は約30兆円ほどと言われており、アメリカとヨーロッパがそれぞれ約4割、日本が約1割を占めています。

市場が大きい分だけ欧米メーカーの規模も大きくなっており、世界シェアトップのジョンソン・エンド・ジョンソンに至っては、1社で日本市場規模全体よりも多い3兆4,300億円の売上高があります。

医療機器業界の市場規模は、2013年7月~14年6月の決算において2兆2,093億円、経常利益は3,308億円、平均勤続年数は13.6年、平均年齢は40.1歳、平均年収は640万円です。

売上高純利益率も前年比で5.1%の伸びを見せており、堅調に業績を伸ばしています。

医療機器業界 ~今後の展望~

医療機器業界の今後の展望を考えるうえで欠かせないのが『輸入超過』と『異業種からの参入』です。

『輸入超過』

医療機器の品目があまりにも多いため、国内メーカーだけでは病院や医療施設に十分な医療機器を供給することができず、海外メーカーからの輸入に頼っている分野もあります。

例えば、カテーテルやペースメーカーといった治療機器に関しては、国内市場の約70%を輸入に頼っていた時期もあるなど、輸入超過が著しくみられます。

もちろん、国内メーカーにも得意分野があり、X線CT装置や超音波診断装置、MRIといった「画像医療システム」の分野においては、輸入高よりも輸出高が上回っている分野もあります。

今後は、治療機器分野で輸入超過を少しずつ抑えていくというのも、日本の医療機器業界の課題となってきます。

『異業種からの参入』

医療機器業界は、景気などにはあまり左右されない業界です。

2008年にリーマン・ショックを皮切りに起きた金融危機の影響もそれほど受けずに堅調な増加を維持してきました。

今後も、先進国では高齢化が進み、新興国では医療水準の向上が見込まれますので、安定した成長を続けていくことができると予想されます。

実際に、2020年の世界の医療機器の市場規模は40兆円にまで達するという報告もあります。

世界規模での成長が見込まれている業界のため、異業種からの参入も活発化しています。

例えば、2012年に旭化成は米医療機器大手のゾール・メディカルを過去最大の額で買収しています。

また、ソニーはデジタルカメラ用の画像センサーを使った内視鏡を本格的に開発するために、2013年にオリンパスに500億円出資してソニー・オリンパスメディカルソリューションズを発足させています。

さらに、キヤノンはがんを早期に発見する診断装置の開発を進めているなど、それぞれの強みを活かせる分野に参入してきています。

医療機器業界の企業一覧

  • オリンパス(医療事業)
  • テルモ
  • ニプロ
  • シスメックス
  • 日本光電工業
  • フクダ電子
  • オムロン(ヘルスケアビジネス事業)
  • 島津製作所(医用機器)
  • ジェイ・エム・エス
  • 日機装(医療部門)

医療機器業界を代表する企業の基本情報

【オリンパス(医療事業)】

デジカメを展開していることでも有名なオリンパスですが、医療事業においては胃や大腸の検査・治療に使われる内視鏡で世界トップシェアを誇ります。

2013年には、外科手術用3D 内視鏡システム、同時に世界初となる先端湾曲機能を搭載した3D ビデオスコープも発売しており、この分野でのリーディングカンパニーとして業界を牽引しています。

基本情報

  • 売上高:4,922億円(2015年3月実績)
  • 経常利益:136億円(2015年3月実績)
  • 平均勤続年数:16.3年
  • 平均年齢:43.5歳
  • 平均年収:865万円

【テルモ】

医療機器・医療器具メーカーのテルモは、カテーテルや人工肺装置から、体温計、血圧計、尿検査試験紙まで幅広い製品を取り扱っています。

国内市場の強固なブランド力を軸に、世界160ヶ国を超える国々で製品を展開しています。

基本情報

  • 売上高:4,895億円(2015年3月実績)
  • 経常利益:707億円(2015年3月実績)
  • 平均勤続年数:17.9年
  • 平均年齢:40.9歳
  • 平均年収:713万円

【ニプロ】

ニプロは、ガラス材料から医療機器、医薬品へと事業を拡大してきた医療機器メーカーです。

1980年代から人工腎臓透析の開発・製造に着手しており、人工腎臓・透析器の医療器具の分野に強みがあります。

また、医療機器の製造だけでなく後発医薬品の受託製造分野にも乗り出しています。

基本情報

  • 売上高:3,250億円(2015年3月実績)
  • 経常利益:196億円(2015年3月実績)
  • 平均勤続年数:13.1年
  • 平均年齢:38.2歳
  • 平均年収:601万円

転職・就職へのアドバイス

医療機器業界は今後も成長が見込まれる業界です。

高齢化が進むにつれて、ますます医療機器の需要が増えてくるからです。

また、国内だけでなく新興国で医療水準が向上していくにつれて海外での需要も増えていきます。

将来性のある業界で働きたいと考えている方にとっては、魅力的な就職・転職先になりることでしょう。

医療機器メーカーへの就職・転職に向いているのは、新しい知識をどんどんと身につけていこうという意欲がある人です。

医療機器の技術は、日々進歩してきているので、医療分野の専門知識がないとしても意欲があれば採用される可能性もあります。

とはいえ、やはり医療機器の基本的な営業スキルを習得している若手の経験者などは、どこの企業も欲しがる人材になります。

ですから、自分の経験やスキルなどが、医療機器業界で価値があるものだということを伝えられるようにしてから、転職・就職活動に臨むようにしましょう。

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