化粧品業界の動向や魅力・大手企業の年収比較を就職・転職経験者のアドバイスを交え解説

業界研究

人をより美しく変身させてくれる化粧。化粧品といえば

・ファンデーション

・アイシャドウ

・口紅

・マニキュア

などメイクアップに関連する商品をイメージしがちですが、その製品構成比を見ると

スキンケア…46.8%

メイクアップ…20.1%

ヘアケア…27.1%

フレグランス…0.3%

などでスキンケア製品が圧倒的に多く、最もよく売れていることがわかります。

出典:図解入門業界研究最新化粧品業界の動向とカラクリがよ~くわかる本[第4版]19ページ、2015年化粧品出荷販売実績

 

洗顔・クレンジング、化粧水、乳液・クリーム、美容液は私たち女性にとってはマストだったりします^^

日本化粧品検定1級をお持ちのアキコさんも就活メイクを決める要素は4つあり、最初にスキンケアを挙げていたのを思い出しました。

関連記事

【2020年卒】就活メイク講座:有資格者が教える4つの要素と先輩女子10人が答えた眉毛アイシャドウ

 

セイジさん、いかに多くの女性が、スキンケアに力を入れているかがわかったでしょ?

ですね…。はい^^

今回はそんな化粧品業界の基本情報、市場規模、主要企業と年収、動向、展望、就職・転職のアドバイスを、元化粧品会社管理職から聞いたお話も交えお伝えしていきます。

 

業界全体図から見た化粧品業界

セイジさん、化粧品業界は全体図から見るとどういう立ち位置なのです?

意外に思えるかもしれませんが、日経業界地図では「医薬・食品」に分類されています。

「化粧品・トイレタリー」という単元でまとめられているようですね。

ですね。トイレタリーは洗剤、芳香剤、生理用品などの総称です。

周辺業界としては化粧品原料や試薬を取り扱う化学業界、医薬品を取り扱う製薬業界、百貨店、ホームセンター、ドラッグストアといった小売業界、化粧品を業務用で取り寄せる理美容関係などが挙げられます。

 

化粧品業界の基本情報

毎日、メイクアップをして外出する女性にとって化粧品は、生活必需品です。

最近の化粧品はもう、女性だけのものではありませんよね^^

そうですね(汗)

「美容男子」「肌男」といった男性の美意識を象徴するような言葉が流行りだしたのが数年前。男性のスキンケア化粧品はほぼ定着しました。

メンズメイクサロン、Matt化なども知っておくとよさそう^^

ちなみに景気がいいときは高額化粧品が、不景気時には低価格路線の化粧品が売れる傾向にあり、あまり景気に左右されることなく売上を伸ばせる業界です。

化粧品の3つの流通形態

化粧品業界はざっくりと流通チャネル(流通形態)により3分割でき、

・制度品

・一般品

・その他

があります。

制度品

制度品はメーカーと小売店が直接、取引をする流通商品です。いわゆる大手

・資生堂
・花王ソフィーナ
・コーセー

がこの流通形態を採っています。主に百貨店や化粧品専門店で扱われることが多いです。

シャネル、イブ・サンローランなどのプレステージブランドもこのカテゴリです。

一般品

一般品はメーカーから直接でなく問屋を介し、取引を行う流通商品です。一般流通と呼ぶこともあります。問屋というワンクッションを入れることで、幅広く流通させられます。

一般品はバラエティストア、ドラッグストアなどで扱われることが多いです。女性誌やインターネットで手に入れたメイク術、商品知識を参考に私たち消費者が予算の範囲内で自由に購入できる(セルフ販売)化粧品です。代表的なメーカー

・エフティ資生堂
・コーセーコスメポート
・マンダム

などがあります。

その他

このほかポーラ、メナードなどが行っている企業や自宅への訪問販売DHC、ファンケルなど通信販売美容院などに販売する業務用品(サロン流通)などがあります。

ちなみに資生堂など大手は、

制度品資生堂
一般品エフティ資生堂
業務用資生堂プロフェッショナル

流通チャネルによって分社しています。

美容部員

制度品の特徴としては美容部員が存在することです。メーカーに籍を置き、メーカーから教育を受け知識を習得した美容部員が、配属先の百貨店や専門店の化粧品コーナーにて実際にカウンセリング、商品説明を行い対面販売します。

訪問販売も同じことがいえますね…。

化粧品業界の歴史

化粧品の価格をめぐり、歴史をざっくり振り返ると

戦前~市場価格時代
戦後~定価販売時代
現在定価販売と市場価格の共存時代

といった感じになります。市場原理でいえば需要と供給に合わせ価格は変動しますが、低価格で取引され続けるとメーカーも小売も疲弊します。戦後まもなくこれ以上、価格競争が続くと業界が傾くおそれがありました。

そこに戦後、資生堂が制度品システム、チェーンストアを構築し「化粧品は定価で売るもの」「再販売価格維持契約(再販)」という常識を築き上げました。

しかしその後、1997年に再販は完全撤廃されます。ただ撤廃前後に再販をめぐる訴訟で争っていた資生堂は、相手方に勝訴し(カウンセリング販売の合理性も認められ)た経緯から新たなチェーンストア契約制度を構築します。

そのため複数の流通チャネルが今も存在しているわけです。

 

この項の参考文献

図解入門業界研究最新化粧品業界の動向とカラクリがよ~くわかる本[第4版] 秀和システム

化粧品の異業種参入

化粧品業界は、

・大塚ホールディングス「インナーシグナル」
・岡部(東証一部上場、建材メーカー)「Seaphonia(シフォニア)」
・富士フイルム「アスタリフト」
・ヤクルト「ikitel(イキテル)」
・ロート製薬「肌ラボ」

など、異業種からの参入も活発です。

 

化粧品業界の市場規模の変遷

日経業界地図によると次のとおり、好調に推移しています。

日経業界地図年度(実年度)化粧品出荷(販売)額(経済産業省)
2017(2015)1兆2918億円
2018(2016)1兆5250億円
2019(2017)1兆6300億円
2020(2018)1兆6900億円

 

化粧品業界の主要企業及び年収一覧(各社有価証券報告書より抜粋)

主要5社

資生堂7,165,467円
花王(傘下にカネボウ化粧品)8,124,000円
ポーラ・オルビスホールディングス7,835,232円
コーセー8,672,137円
マンダム8,317,297円

その他の化粧品メーカー

ノエビアホールディングス、シーズ・ホールディングス(旧ドクターシーラボ)、日本ロレアル、日本メナード化粧品、エイボン・プロダクツなど

 

化粧品業界の動向

インバウンドにしばらく支えられてきた

化粧品は女性、美意識の高い男性にとっては必需品ですが、さらなる売り上げに貢献していたのはインバウンド需要でした。

記憶に新しいと思いますが安全・安心なメイドインジャパンという付加価値で日本製の家電、化粧品を中国人観光客らが爆買いしていた時期がありました。

 

とはいっても、最近のことですよ。

そうですね。

高島屋は新宿に化粧品の品揃えを強化した空港型免税店を出すなど、百貨店やドラッグストアの売上も化粧品のインバウンド需要に支えられ伸びていました。

産経ニュース 高島屋、新宿に空港型免税店オープン “爆買い”終息で化粧品軸

新型コロナウイルス

しかし2020年に入り、COVID-19(パンデミック)によって各国、出入国に制限をかけ、観光客の需要が取り込めなくなりました。また国内も移動、営業自粛により、国内外の取引が一時的に停滞し、大きな暗い影を落としたといえます。

 

化粧品業界の展望(予測)

中国向け通信販売チャネルの強化

前章より話は続きますがインバウンド需要を取り込めなくなった各社は、中国ユーザーに向けた通販、電子商取引に取り組み始めています。

“需要を一気に失った各社は、新型コロナの影響が収束しつつある中国向けの電子商取引(EC)に活路を見いだそうとしている”

日本経済新聞 化粧品、収束後も中国頼み ネット通販に活路 コロナ危機 産業断面図

今後、各社の中国向けの取り組み、力の入れようを見守っていきたいと思いました。

 

化粧品業界を代表する大手企業3社を比較

資生堂

SHISEIDO、BENEFIQUE、IPSAといったプレステージブランド、ANESSA、ELIXIR、MAQuillAGEといったコスメティクスブランドを展開しています。

資生堂は2020年6月、原宿にミレニアル世代向け施設で、ビューティーを発見し・遊び・シェアする体験・発信型スポットをコンセプトにした「Beauty Square」をオープンさせています。

資生堂、国内外ミレニアル世代に向けた直営店「Beauty Square」6月18日原宿にオープン

 

基本情報

売上高:1兆1315億4700万円

営業利益:1138億3100万円

社員数:3961名

平均年齢:39歳

平均勤続年数:11.9年

花王(化粧品事業)

花王グループは、

・化粧品

・スキンケア・ヘアケア

・ヒューマンヘルスケア

などの事業分野を有しています。

SENSAI、モルトンブラウンといったハイプレステージブランドのほか、SUQQU、KATE、エスト、ソフィーナiP、キュレルなどのブランドを展開。

また花王は2019年、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を策定しています。

 

基本情報

売上高:1兆5022億4100万円(IFRS)

税引前利益:2106億4500万円(IFRS)

社員数:11348名(化粧品事業)

平均年齢:40.6歳

平均勤続年数:17.7年

ポーラ・オルビスホールディングス

ポーラは訪問販売、オルビスは通信販売という流通チャネルの化粧品ブランドです。鈴木忍が静岡で創業し、のちにポーラ化成工業、ポーラ化粧品本舗を法人化し、オルビスを設立しています。

ポーラ本格的なエステ、カウンセリング、化粧品販売を行う「ポーラ ザ ビューティー」を展開

オルビススキンケア商品とネット上でのコミュニケーションの強化、サービス品質の向上といった取り組みを行っています。

 

基本情報

売上高:2199億2000万円

経常利益:306億3000万円

社員数:3783名(ビューティケア事業)

平均年齢:44歳

平均勤続年数:4.6年

 

参考文献

株式会社資生堂第120期有価証券報告書

花王株式会社第114期有価証券報告書

株式会社ポーラ・オルビスホールディングス第14期有価証券報告書

 

元管理職から聞いた化粧品業界のこと

今回、化粧品会社管理職経験者の方に詳しいお話を聞けましたので、ご紹介していきます。

 

元管理職が語る化粧品業界への転職のしやすさ

化粧品業界は正直、メーカー多数です。大手にこだわらなければ転職はそれほど難しくないと思われます。また業界内で転職する人もめずらしくありません。人気順に並べると

・プレステージブランド

・制度品メーカー

・大手一般品メーカー

・低知名度一般品メーカー

でしょう。残念ながら外資系プレステージブランドは新卒、中途ともにほとんど採用案件は出回りません。また制度品メインの資生堂や花王など大手は新卒も狭き門。生え抜きが多く中途採用案件にもなかなかお目にかかれないと思います。

ただし新参メーカーなら「業界経験不問」案件もあり、他業界から転職を果たせる可能性も残されています。

化粧品=女性が多いというイメージですが、実際に女性が増えたのはここ20年くらいのことです。今も性別で有利・不利はないはずです。

化粧品メーカーにおける命令系統

化粧品メーカーは

・営業部
・マーケティング部
・人事部

などで構成されています。また化粧品業界独特の部署として薬事部美容部があるところもあります。また会社によって花形部署が異なります。

営業部が花形といわれるなか、特に外資系は(本国の意向が強く反映されるため)マーケティング部が花形となっています。

多くの会社は基本、部長、課長が率いています。規模によっては部長、次長、課長、係長、主任と役職も細分化されます。

 

私は営業部マネジャー(課長職)として働いていました。大きなメーカーではなく社長、営業本部長、課長が主な管理職でした。営業本部長が直属の上司でしたが、営業部長とマーケティング部長を兼任しており私は、実質的営業責任者として日々、営業戦略立案と実行、管理、部下のマネジメントを実施していました。

化粧品メーカーで担当してきたお仕事

私が勤務していたのは一般品メーカーで、問屋に卸し、商品を販売していました。営業部では

・問屋本部での商談(新製品や企画のご案内)
・問屋各支店での商談
・小売店本部での商談
・小売店各店への商談、訪問
・美容部員の管理

マーケティング部では

・商品開発
・商品企画
・販促物作成(商品陳列用什器、商談用企画書等)
・製造・輸入量の決定

などを経験しました。商品は化粧品問屋に卸すのですが、直接取引はない小売店のフォローも商慣習となっており、重要業務です。

化粧品メーカーで出世していく方法

結果を出す

出世するには基本、結果を出すことです。営業は売上目標の数字を達成させる、マーケティングはヒット商品を開発する、それが出世につながります。

人脈をつくる

営業は取引先の方と仲良くすべきです。そして社内では重要人物(キーマン)と認識されるよう振る舞います。すると昇進もしやすくなります。

取引先、社内の方そして取引関係のない社外たとえば競合他社の方にも顔が利くようになるのが理想です。交流関係が増えれば増えるほど幅広く情報をゲットできるからです。そして業界内でやり手と噂されるようになることです。

優秀と目されれば競合他社の方やヘッドハンターから、声をかけられ業界内で転職成功させられます。そういう方は意外と多いです。

化粧品知識の必要性

経験上、化粧品に詳しいから出世できるとはいいきれません。多くの男性はメイクをしませんし、管理職のなかにはいうほど詳しくない方もいます。仕事上のトレーニングで得られるような通常の知識で十分と思います。

ただしこれは私の所感ですが、化粧品原料や成分、効能に詳しくなると、周囲からは一目置かれると思います。

 

ここまで詳しく教えていただき感謝です!

これより『転職とキャリアアップ』管理人として就職と転職のアドバイスを行っていきます。

 

化粧品業界への就職のアドバイス

資生堂の採用情報を参考にお伝えしますと、新卒、既卒採用

・総合職

・地域限定職

があり総合職はカスタマーマーケティング/コンシューマーマーケティング/ファイナンス/Research & Innovation(R&I)/Product Engineer(Supply Chain)という区分。

地域限定職は国内工場(製造系・技術系・事務系)/ビューティーコンサルタントという区分になっていました。

 

各募集要項を細部まで読んで比較し「自分はどの道に進みたいのか」を確認し、納得したうえでエントリーを行うようにします。またインターン募集がタイミングよくあればぜひ応募し、研鑽を深めるようにしたいものです。

 

化粧品業界への転職のアドバイス

化粧品会社の元管理職の方がいわれていたように特段、大手にこだわらなければ、また一定の知識がある美容部員、営業、マーケティング経験者は転職しやすいでしょう。

未経験者も臆することなく、これまでの経験や知見をどう化粧品業界で活かせるかを具体的に、またなぜ化粧品か、御社かも伝えられるよう準備し、満を持して面接官に説明したいものです。

また応募が殺到する公開求人よりも、非公開求人に応募するほうが早期に転職活動を終わらせられる。その可能性が高いため転職エージェントに登録し、支援を受けられることをオススメします。

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まとめ

化粧品業界は流通チャネルや販売システムが独特で、業界研究でもっと深堀りしてみるとおもしろそうだなと感じました。

そんな化粧品業界で、内定を勝ち取っていただきたいです!

就職と転職、共通していえることは人生の目的と就こうとしている仕事の方向性が合致していることが重要です。それがミスマッチを防ぐカギで、長続きできるかその明暗を分けます。

人生の目的についてその意味を、これまで考えたことがない方は関連記事で説明していますのでぜひ、併せてお読みいただけますと幸いです。

 

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