業界景気リサーチ 製薬(点眼薬)会社の動向 有名所を調査・比較

業界研究

恒例の業界リサーチ記事です。

今回は製薬業界ですが、これまた化学分野同様領域が広いので、分野を絞って、点眼薬メーカーについて掲載したいと思います。

製薬(点眼薬)業界

業界規模:3000億円程度

人々の生命に関わる医薬品業界は、日本市場で7兆円程度、世界レベルでみると北米が21兆円、欧州が10兆円程度と、大きなビジネスチャンスにあふれています。

特に、日本は皆保険制度や国の規制の後押しもあり、医薬品業界は長年安定して恵まれた産業でした。平均年収も高く、課長で1,000万は余裕と言われていました。

…ただ、近年になってその繁栄に陰りが見られてきました。国内の需要は天井をうってますし、海外に目を向けるとM&Aで巨大化した外資企業が構えているので、世界を舞台に戦うことはとても困難です。

製薬企業はいかにして新薬を生み出し、特許が切れるまでの間に利益を稼ぐかが課題です。新薬の開発は莫大な費用がかかるため、資本力が大きなポイントとなります。そのため、各社はM&Aを繰り返し合併することで生き残りを図っています。

 

医薬品分野において、点眼薬分野はややニッチですが、2000~3000億程度とそれなりの規模を持つ業界です。ただ、やはり内科薬に比べると売り上げは低く、同じ医薬品業界でもやや給与基準が下がり、福利厚生もあまり良くない印象があります。

ただ、コンタクトレンズの普及により患者が急増したドライアイなどの角膜疾患や、他の領域の医薬品と比較しても非常に成長率は高いようです。

点眼薬業界はこれまで割と安定していましたが、日本全体では需要が限られるので今後は海外シェアを伸ばすことが必要です。ただ、後述しますが点眼薬メーカーはあまり強大な会社は国内になく、外資系と戦っていくには資本力の面でかなり力不足感が否めません。

また、日本国内はすでに高い参入障壁がありますが、外資の力の入れようによっては隙が出来る可能性も十分にあります。現状に奢らずに先を見て施策を講じていく姿勢なくしては生き残りは難しくなります。

ある意味、10年後、果たしてどうなっているのかは全く読めないジャンルかも知れません。

 

有名どころの会社

この業界は、ニッチとは言いながらも意外と会社が多いです。ただ、それでも他の医療分野に比べた場合は参入している企業の数は少なめです。

内資

  • ロート製薬:ロート、アルガードシリーズ
  • 参天製薬:サンテシリーズ、大学目薬
  • 大正製薬:アイリスシリーズ
  • 千寿製薬:マイティアシリーズ
  • エスエス製薬:スマリンシリーズ
  • 佐藤製薬:ノアールシリーズ
  • 田辺三菱製薬:アスパラシリーズ、スマートアイシリーズ
  • 久光製薬:眼涼シリーズ
  • 第一三共ヘルスケア:エージーアイズ、アイルック
  • 常盤薬品工業:眼眼目薬、アイエースシリーズ
  • 池田模範堂:こどもアイスーパー
  • ライオン:スマイルシリーズ

外資

  • アルコン:トラバタンズ、デュオトラバ
  • ファイザー:キサラタン
  • ジョンソン・エンド・ジョンソン(JJ) :バイシンシリーズ
  • バイエル薬品:アイリーア
  • MSD(メルク・アンド・カンパニー):トルソプト

このように、目薬の会社はかなりひしめいています。

一般消費者向けのTOPは禁煙主義で有名なロート製薬、医療用目薬は参天製薬がTOPです。両社の売り上げ規模は1,200億円程度ですので、規模としてはあまり大きくない印象があります。医薬品一位の武田薬品工業が1兆5,000億程度ですので、その十分の一くらいでしょうか。

ただ、医薬品メーカーの特徴として、利益率は10%程度と高いです。電機メーカーなんかは10兆円とか売り上げても100億程度の利益しか出せないこともあります。利益率にしたら1%もいきません。それに比べると、規模の華やかさはありませんが、実に実直な産業であるかが分かります。

先述の通り、眼科領域は外資系が強く、特にノバルティス傘下のアルコンはリーディングカンパニーとして、各製品において世界的にも高いシェアを持っています。

点眼薬メーカーの有名どころの会社

売上高が大きい3社についてコメントしてみたいと思います。

ロート製薬

  • 一般用医薬品(OTC)眼科薬:約30% 1位
  • 肌研(ハダラボ)やOXY(オキシー)など目薬以外にも人気の商品あり
  • 医療用医薬品事業には参入しておらず専ら一般向け(MRもいない)

参天製薬

  • 選択と集中を行い、国内No.1のシェアと業界トップクラスの収益性を実現
  • 専門分野に注力し、世界で存在感のあるスペシャリティ・ファーマの実現に挑戦
  • 医療用眼科薬:約35% 1位、 一般用(OTC)眼科薬:約20% 2位
  • 医療用医薬品抗リウマチ薬:約40% 1位(現在はあゆみ製薬に承継)

千寿製薬

  • 医療用医薬品を中心に奮闘
  • 販売は武田薬品工業が実施(同じく道修町にあります)
  • 耳鼻科向けの医薬品でも有名。米国にも研究所あり

 

関西での立ち位置

関西では大阪市生野区にあるロート製薬、大阪市北区のグランフロント大阪にある(以前は東淀川区)にある参天製薬が特に有名です。いずれも良くCMで流れていますし、全国的にも有名ですね。

それぞれ一般用、医療用と住み分けて2強状態でしたが、最近ではここに色々な会社が入り乱れシェアを食い合っています。

 

今後の動向

とにかく、海外のシェアをどう取っていくかだと思います。国内の実績があれば海外でも通用する!、…と思いきや参天製薬などはかつてアメリカで独自で販路を拡大しシェアを取ろうとして大変苦戦した経験があります。やはり、世界で戦うことは一筋縄ではいかないのです。

ただ、諦めると10年~20年後には会社の存続すら危うくなります。そこで最近では、各社揃って中国・アジア・新興国へ進出を進めています。新興国は価格帯が低くなるので、いかにして低原価で製造し販売するかが課題になります。また、地元の文化に合った形の製品を提供するようにしなければ受け入れられないでしょう。

このように、まさに今が勝負のジャンルですが、成功すれば大きな利鞘を確保できるでしょう。

 

SE・社内SEとしての関わり方

主に基幹業務系システムの構築がメインになると思いますが、やはりドクターや顧客のニーズを的確に把握しサービスを提供していくかが命題の分野ですから、それを支援する営業マーケティングシステムなども担当分野となってきます。

特に、今後海外展開を進める中で、現地の営業活動をサポートし、顧客情報を収集する必要が出てきます。そういったシステム作りに参画する可能性がたかくなるため、サービスや品質関連の業務知識を習得し、システム化を進めることが多くなると思います。

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