製紙業界の動向・年収・大手企業の調査・比較【2017年度】

業界研究

今回は、2017年の最新版として製紙業界の動向と転職・就職に役立つアドバイスを紹介していきたいと思います。

2016年版も併せてお読みいただくと、ここ1年での業界の変化も読み取れると思います。

製紙業界の動向・年収 2016年度大手企業の調査・比較
普段、手に取って読んでいる新聞や雑誌、ティッシュペーパーやダンボールなど、日常生活の中で欠かすことができない素材を作って...

製紙業界の基本情報

新聞、雑誌、ティッシュペーパーのほか、書籍、コピー用紙、手帳、段ボールなど日常生活やビジネスにおいて欠かせない紙。

紙は、木材から作られるパルプと古紙が原料で、比率は、

  • パルプ…4割
  • 古紙…6割

となっています。

普段、使用していて、おわかりだと思うのですが、メイドインジャパンの紙製品は、品質も良く、技術も世界的に見て高レベルであると評価されています。

高レベルでも国内市場は厳しい現状

紙の生産量のピークは、2000年の3200万トンで、2008年のリーマン・ショック以降、デジタル主流化に伴うペーパーレス化などによって需要は減少しており、国内市場だけではなくアジアなど海外市場にも目が向けられています。

現在、製紙業界は大手6社のうち4社が赤字であり厳しい状況にあるようです。

日本経済新聞の記事で、

“製紙大手6社の2017年4~6月期連結決算が10日出そろった。円安で原料や燃料の輸入コストが上昇したうえ、印刷用の洋紙などの値上げが浸透しなかった。

王子ホールディングスをはじめ4社が最終減益・赤字だった。税負担が減った日本製紙と、中国事業が好転した北越紀州製紙は最終増益を確保した。”

と報じられています。

引用:日本経済新聞 製紙6社の4~6月、4社が最終減益・赤字 値上げ浸透せず

製紙6社の4~6月、4社が最終減益・赤字 値上げ浸透せず - 日本経済新聞
製紙大手6社の2017年4~6月期連結決算が10日出そろった。円安で原料や燃料の輸入コストが上昇したうえ、印刷用の洋紙な...

製紙業界の市場規模は、平成28年経済産業省生産動態統計年報の出荷販売金額の数値合計で3兆392億8900万円※となっています。

また、製紙業界主要企業10社(後述)の社員の状況は、平均年齢41.3歳、平均勤続年数18.2年、平均年収643万円となっています。

※製品別出荷販売金額の内訳は次のとおりです。

  • 製紙パルプ 529億7300万円
  • 紙 1兆7567億8500万円
  • 板紙 7048億6600万円
  • 段ボール 1657億2800万円
  • 紙おむつ 3589億3700万円

合計 3兆392億8900万円

参考:平成28年経済産業省生産動態統計年報

http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/result/gaiyo/resourceData/06_kami/nenpo/h2dgg2016k.pdf

 

製紙業界 ~今後の展望~

製紙業界の今後の展望を語るうえで欠かせないのが『大王製紙の攻勢』と『衛生用紙』です。

『大王製紙の攻勢』

昨年、“今後は、大きな業界再編が起こる可能性も考えられます。”とお伝えしていたのですが、今年に入り「エリエール」ブランドで有名な国内大手・業界4位の大王製紙が買収による攻勢を仕掛けはじめています。

まずは、250億円で日清紡ホールディングスの紙事業(子会社の日清紡ペーパープロダクツ)

を買収しました。

さらに、東証2部上場、商業印刷などを手がける三浦印刷をTOBで買収しました。費用は80億6000万円で、議決権ベース96.4%に当たる株式と新株予約権を取得したとしています。大王製紙が、

  • 今後も買収などを仕掛けていくのか?
  • 業界再編に大きな影響を及ぼすのか?

その出方に注目をしたいところです。

 

『衛生用紙』

日本製紙連合会の2017 (平成29)年紙・板紙内需試算報告によると、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ペーパータオルといった衛生用紙が手堅くプラスの予測となっています。

生活必需品として、年々、内需量は右肩上がりを続けており、訪日外国人、商業施設、ホテルの増加に伴う需要増も見込めることから東京オリンピック開催の2020年までは安泰といえそうです。

日本製紙連合会の紙・板紙内需試算報告では、衛生用紙以外の内需試算の値も公表されています。内需予測を参考にして製紙業界において進むべき道を見極めてみるのもいいでしょう。

 

製紙業界の主要企業及び年収一覧(各社有価証券報告書より抜粋)

各社の年収一覧

  • 王子ホールディングス 879万円
  • 日本製紙 684万円
  • レンゴー 695万円
  • 大王製紙 616万円
  • 北越紀州製紙 579万円
  • 三菱製紙 636万円
  • 中越パルプ工業 555万円
  • リンテック 642万円
  • トーモク 516万円
  • ザ・パック 625万円

製紙業界主要企業10社(上記)の平均年収は、643万円でした。詳細は、下図を参照ください。

 

製紙業界を代表する企業の基本情報

【王子ホールディングス】

「ネピア」ブランドで有名な製紙業界最大手の王子ホールディングス。

新王子製紙と本州製紙が1996年に合併、2005年に森紙業を買収し勢力を拡大してきた同社は、三菱製紙と提携、中越パルプ工業と資本業務提携、岡山製紙にも出資しています。

東南アジアで事業展開スピードを速めており、2014年にはニュージーランド・オーストラリアのCarter Holt Harvey Pulp & Paper Limitedグループ(CHHPP カーターホルトハーベイ)を産業革新機構とともに買収しています。

基本情報

  • 売上高(連結):1兆4398億5500万円
  • 経常利益(連結):511億9000万円
  • 主要会社:王子製紙、王子ネピア、王子マテリア、王子コンテナー、王子エフテックス、王子イメージングメディアなど
  • 社員数:376名
  • 平均年齢:43.5歳
  • 平均勤続年数:16.4年
  • 平均年収:8,798,434円

 

【日本製紙】

「クリネックス」と「スコッティ」ブランドを提供している業界2位の日本製紙。2001年に日本製紙と大昭和製紙が統合して、持ち株会社として発足した同社。印刷用紙の生産で国内トップの座に君臨しています。

2011年の東日本大震災では生産6拠点が被災しましたが、翌日には災害対策本部を立ち上げ、翌年の夏には石巻工場を計画どおりに復興稼働へと導きました。

2013年には、タイの製紙大手企業SCGペーパーの植林・パルプ・紙事業部門に出資合意しています。

基本情報

  • 売上高:9924億2800万円
  • 経常利益:269億9400万円
  • 関連会社:日本製紙クレシア、日本製紙パピリア、日本製紙木材、リンテック株式会社など
  • 社員数:4999名
  • 平均年齢:42.1歳
  • 平均勤続年数:21.3年
  • 平均年収:6,841,208円

【レンゴー】

業界3位のレンゴーは、日本で初めて段ボール事業を開始した会社で、とくに飲料向け段ボールに強みがあります。

ゼネラル・パッケージング・インダストリーとして製紙、段ボール、紙器、軟包装、重包装、海外の6つのコア事業を中心に多くの事業を行っています。

同社は、住友商事、日本製紙グループと提携関係にありましたが、現在は解消しています。

基本情報

  • 売上高:5454億8900万円
  • 経常利益:252億1400万円
  • 事業所:中央研究所・大阪包装技術センターほか全国34直営工場、海外127工場21拠点
  • 社員数:3700名
  • 平均年齢:39.8歳
  • 平均勤続年数:14.9年
  • 平均年収:6,952,575円

 

参考文献

  • 王子ホールディングス株式会社第93期有価証券報告書
  • 日本製紙株式会社第93期有価証券報告書
  • レンゴー株式会社第149期有価証券報告書
  • 日経業界地図 2017年版 日本経済新聞出版社

 

転職・就職へのアドバイス

製紙業界を志すうえでは、紙やパルプなどの関連知識が求められますので、今のうちから学び、豊富な知識を身に着けておくと転職活動・就職に有利です。

製紙業界は紙・パルプの製造が主事業となりますが、活躍できそうなフィールドは、下記のとおり、事務系と技術系に分かれていて、文系出身者・理系出身者いずれも転職できるチャンスがあるでしょう。

  • 事務系
  • 営業
  • 営業企画
  • 管理部門
  • 技術系
  • 化学系
  • 機械系
  • 電気電子系
  • 森林科学系

また、製紙業界の商取引慣習は、メーカー自体は販売機能を有しないものとされており、代理店や地方毎に商圏を持つ卸売業者が販売事業を担っています。

そのため、製紙の販売事業に携わりたいんだという方は、メーカーよりも地元代理店・紙製品卸・販売会社を中心に探していくと転職先が見つかりやすいでしょう。もちろん、転職エージェントに登録をすることでキャリアコンサルタントから製紙業界の求人情報が自然と入ってくる可能性は高いです。

具体的な転職エージェントの選び方は以下の記事で解説しています。

昨年もお伝えしていたとおり、国内市場は縮小しており、多くの企業が海外、とくにアジアへ進出しています。

これまでビジネスでアジア圏に赴任してきた経験をお持ちの方、国内勤務でも現地企業との交渉・取引経験がある方、英語のほか中国語など第二外国語を話せる方、グローバルな視点で物事をとらえることができる方は、海外事業の要員として採用・抜擢される可能性は大いにあります。

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