国内だけでも10兆円規模になった製薬市場。
イノベーティブ医薬品・ジェネリック医薬品・OTC医薬品・ワクチンなど、さまざまな分野に分けることができる製薬業界の中で、今回は『医療用点眼薬』に絞って、市場の現状や今後の動向を紹介していきたいと思います。
また、製薬業界の点眼薬に関わる部門に転職・就職を考えている方に役立つ情報も紹介します。
製薬(点眼薬)業界の基本情報
医療用眼科薬の市場規模は、年々拡大しており、2015年時点で市場全体の売上高は3,237億円となっており、前期比で7.4%の増加、2010年時点からは38%もの伸びを見せています。
網膜疾患治療剤、および、角結膜疾患治療剤の伸びが、全体の売上高を押し上げたものと見られています。
医療用点眼薬には、緑内障治療剤・眼科用VEGF阻害剤・角結膜疾患治療剤・抗アレルギー点眼剤・合成抗菌点眼剤などがあります。
それぞれの点眼薬について簡単に解説していきます。
【緑内障治療剤】
緑内障治療剤の売上高は1,057億円で、医療用眼科薬市場で占める割合は約33%と、最大規模になっています。
緑内障は、眼圧の上昇などによって視神経が傷つけられ、視野欠損や失明の要因となる病気です。
緑内障の治療法の第一選択肢は、点眼薬による薬物治療になります。
現在、緑内障は日本における中途失明原因の第1位に挙げられており、早期発見および早期治療が課題となっています。
疫学調査結果から、潜在的な患者さんも多いと推測されている病気であり、高齢化などによる患者さんの増加も考えられるため、市場は今後も拡大していくことが見込まれます
【眼科用VEGF阻害剤】
眼科用VEGF阻害剤は、滲出型加齢黄斑変性や糖尿病に起因する網膜症、黄斑浮腫などの「網膜疾患」に対応する点眼薬になります。
眼科用VEGF阻害剤の市場規模は、前期比43%増の616億円となっており、高齢化による網膜疾患の増加によって治療のニーズが急速に高まっています。
【角結膜疾患治療剤】
角結膜疾患治療剤は、涙の量が不足したり、涙の成分が変化したりすることによって目の表面に傷が入ってしまう、「ドライアイ」の治療に用いられる点眼薬です。
角結膜疾患治療剤の伸びは前年と同等でしたが、今後、タブレットやスマートフォンの普及、コンタクトレンズ装用者の増加に伴い、ドライアイの患者は増加していくと考えられており、市場も拡大していくと予想されます。
【抗アレルギー点眼剤】
花粉や他のアレルゲンによる、かゆみや充血などの症状を抑えるために用いられるのが、抗アレルギー点眼剤です。
抗アレルギー点眼剤の市場規模は、前期比で21.4%の339億円となっていますが、これはスギ花粉の飛散量が、例年に比べて多かったのが影響しています。
ただ、今後もアレルギー性疾患の患者の数は増加すると考えられていますので、しばらくは市場規模も拡大していきそうです。
【合成抗菌点眼剤】
合成抗菌点眼剤は、白内障などの手術後に使用する抗菌剤です。
医療用点眼薬の中では、唯一、売上高が前期比でマイナスになっています。
市場規模は前期比から8.2%減少し168億円となっています。減少の理由としては、白内障などの手術後における投与期間が短縮されたという点が挙げられます。
製薬(点眼薬)会社 ~今後の展望~
製薬(点眼薬)会社の今後の動向でキーワードになるのが、『海外事業の拡大』です。
国内医療用眼科薬市場で40.1%とトップシェアを誇る参天製薬は、欧州・アジアでの海外事業を積極的に展開しています。
すでに、欧州地域では北欧・東欧・ロシアおよびドイツを含む30カ国以上で販売・マーケティング活動を展開してきています。
また、米国のメガファーマ・メルク社から眼科製品を承継しており、欧州でのさらなるシェア拡大を目指しています。
アジア地域では、眼科医療に貢献する「アジアNo.1」を目指して、中国・韓国・ベトナムに重点をおいて事業を展開しています。
一般医薬品目薬市場でシェア30%を以上を誇るロート製薬も、海外事業にも積極的に取り組んでいます。
特にアジア地域では著しい成長がみられているため、今後もさらにグローバル展開の動きを強めていくと見られています。
製薬(点眼薬)会社の企業一覧
【内資】
- 参天製薬
- ロート製薬
- 大正製薬
- ライオン
- 千寿製薬
- エスエス製薬
- 佐藤製薬
- 田辺三菱製薬
- 久光製薬
【外資】
- ジョンソン・エンド・ジョンソン
- ファイザー
- アルコン
- バイエル薬品
製薬(点眼薬)会社を代表する企業の基本情報
【参天製薬】
参天製薬は、国内医療用眼科薬市場でトップシェア(40%)、一般医薬品目薬市場でもシェアNo.2の企業です。
- 売上高:1,618億円(2015年3月期実績)
- 経常利益:358億円(2015年3月期実績)
- 平均勤続年数:16.2年
- 平均年齢:42.0歳
- 平均年収:794万円
【ロート製薬】
ロート製薬は、一般医薬品目薬市場でトップシェア(30%以上)を誇ります。
- 売上高:1,517(2015年3月期実績)
- 経常利益:140億円(2015年3月期実績)
- 平均勤続年数:11.0年
- 平均年齢:39.0歳
- 平均年収:636万円
【大正製薬】
OTC目薬を多く供給。ワシのマークのドリンク剤で有名です。
- 売上高:1,763億円(2015年3月期実績)
- 営業利益:21億円(2015年3月期実績)
- 平均勤続年数:14.0年
- 平均年齢:45.3歳
- 平均年収:923万円
転職・就職へのアドバイス
製薬会社の中でも点眼薬をメインにしている会社への転職・就職を考えているのであれば、MR(医療情報担当者)、海外事業スタッフといった営業職か、研究、臨床開発、品質管理などの技術職の、どちらに進みたいかを決めておく必要があります。
もし、MRとして働きたいのであれば、医師や顧客のニーズを的確に把握したうえで、必要な情報を過不足なく、社内の技術部門に伝える必要があります。
また、医療関係者との面談は時間が限られていることも多いため、商品の効果や使用法などを分かりやすく、論理的に伝える能力が求められます。
海外展開している企業に転職を希望する場合は、製薬会社に勤務した経験があり、かつビジネスで通用する英語力を持っていると評価されます。
製薬会社で勤務した経験がなくても、海外企業との取引経験などがあれば、海外展開を考えている企業からすると欲しい人材になります。
研究・臨床開発といった技術職として転職・就職を考えているのであれば、大学で化学・物質工学系、薬学系を専攻し、基礎的な知識。技術を有していることが求められるでしょ う。
研究・臨床開発職も経験者は優遇されますので、面接の際には、これまでの経験をどのように活かすことができるか、しっかりと伝えることができようにしておきましょう。
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