- 転職エージェントの定義と類型
- キャリアアドバイザーなどのお仕事
- 転職活動を成功させるためのコツ
転職エージェントのキャリアアドバイザーもまた転職する
2013年当時のお話ですが、とある転職エージェントのサイトを通じて正社員の転職支援を申し込んだところ、早速お電話をいただきました。実は以前もお世話になったことがあり、その旨をお伝えしたのですがどうやら、ご担当いただいていた方は既にご退職されてしまったようでした。
私が実際に支援をいただいた際の所感ですが、転職エージェントの正社員(キャリアアドバイザー)は大変厳しいお仕事だと思います。
たとえばご自身も仕事や私生活に何かしらの不満などを抱え、メンタルヘルスにも不安があれば、他人様の支援をするのは並大抵ではなくとても複雑なご心境でしょうし、それでも誠実に支援され、内定が出たときは一緒に喜んでくださるわけですから、本当に素晴らしい方々です。
ただ業務で求人企業の経営者や人事担当者などと直接やりとりをするため、そこで培われる人脈はとてつもなく幅広いようですし、毎日デスクに届く正社員求人を見ていると目が肥え、本当にいい会社やいい求人がわかるようになり、「だったら自分が働くよ」と新天地へと飛び立つこともあるでしょう。
それゆえやはり永続的に同一の会社で正社員として勤務されている方は少ないように感じました。そしてやはり、かなり入れ替わりが激しいようです。
しかしなかにはこの道20~30年というベテランのエージェントさんもおられ、実際にお会いしたことがあります。転職支援のスキルや経験を磨き、ある程度の実績を出し続けることができればずっとこのお仕事で食べていけるのかもしれません。
そこで今回ですが、転職活動で頼るべき転職エージェントについて、その実態や支援側のお仕事についてお伝えしていきます。
でもセイジさん自身、転職業界経験者でも元キャリアアドバイザーでもなんでもないですよね?
はい。たしかに(笑) ただ前回の転職活動で転職支援側の事情も知りたいと意識していたおかげである程度知れましたし、何よりも転職とキャリアアップでは50を超える転職エージェントを1社1社調べ、ご紹介してきた実績があります。
今回はその経験や見識を総合的に踏まえたうえで、
- 転職エージェントについて
- キャリアアドバイザーなどのお仕事について
ご紹介していきます。
転職エージェントの定義と類型
転職エージェントといっても、後述しますがいくつかの類型があります。そのなかから自分に適したエージェントを見つけ、利用していくことが、よりよい転職への近道となるはずです。先に転職エージェントの定義から見ていきます。
転職エージェントとは?
転職エージェントとは有料職業紹介事業所のことで、人材紹介会社・人材バンクとも呼ばれています。
コトバンクでは “転職希望者(求職者)に対して、求人情報の提供から、面接日時等の調整、採用条件等のとりまとめ、入社日の調整など転職活動の一連を無料でサポートしてくれ”るのが一般的な転職エージェントであると解説しています。
え? 有料、無料、どっちですか?
たしかにややこしいですね。実は
求人側(求人を出している企業) → 有料 求職側(仕事を探している人) → 無料 |
なのです。もうおわかりのとおり転職エージェントは企業が支払う手数料(報酬)で運営が成立しています。
職業紹介事業所は基本、許可制
厚生労働省のサイトによると、転職エージェントは基本、許可制となっています(一部、届出制)。許可を得るためには人的、資金的、場所的などの要件があり、これらをすべてクリアしなければなりません。
また許可を受けても途中で取り消される場合があり、しっかりとした会社でなければ転職エージェントは運営できませんので、基本的には安心して転職活動の支援を受けられます。
また許可事業者のなかで、特に優秀な実績、支援体制等を構築している会社は職業紹介優良事業者として国の指定審査機関が認定を出しています。
職業紹介優良事業者とは?
下記7項目について定めた「職業紹介優良事業者行動指針」を遵守し適正な業務運営と経営改善努力を行い、一定の基準を満たしている事業者なら、職業紹介優良事業者として認定を受けることができます。
- 経営の基本姿勢
- コンプライアンス(法令遵守)
- 情報開示
- 社会貢献
- 人権・人格の尊重
- 個人情報と求人者情報の管理
- 公正競争
職業紹介優良事業者はネット上で公開されていますので、最初にどの転職エージェントに登録していいか迷ったときは、職業紹介優良事業者という視点から選ぶのもわるくはありません。
定義についてはここまでとし、次章で転職エージェントの類型について詳しく説明いたします。
転職エージェントの類型
転職とキャリアアップでは今回わかりやすく
- 全職業全職種対応型
- 職業特化型
- 職種特化型
- 地方特化型
- ハイクラス型
という区分でご紹介していきます。
その名のとおり職業、職種に関わりなくすべての求人を取り扱っている転職エージェントです。すべてですから取り扱う求人の件数も必然と多くなり、全国展開だったりしますので、業界別、地域別に専任担当者が決まっていて、専門的な支援を受けることができます。
特に未経験業界へとチャレンジしようという方やいろいろな可能性を探りつつ仕事を見つけたい方にオススメしたい類型です。
特定の職業に特化している転職エージェントです。転職とキャリアアップでご紹介させていただいているだけでも医師・看護師・薬剤師のほか、美容師、アパレル、スポーツ、広告などがあります。
職業は業界とも言い換えられますね。
特化している分、キャリアアドバイザーも経験者だったり興味を持っている方だったりし、その職業についてよく勉強され、その職業に就いている人しかわからないような専門的知識も細かく把握されていたりします。
特定の職業しか考えられない方はまず職業特化型の転職エージェントを探して登録してみられてください。
職種とは例えば営業、人事、設計、総務などで、所属している部署名がそのまま職種を指している場合が多いです。転職とキャリアアップでは法務・保険・経理・貿易などの職種に特化した転職エージェントを取り上げています。
職種は基本、仕事の種類と考えていただいて問題ありません。
職業特化型と同様に、よく勉強されている方や経験者、有資格者が支援に関わっていますので、経験・未経験関係なく手厚い支援が受けられると考えます。
基本は運営会社自体が単一のエリア限定で支援を展開している転職エージェントを指しますが、ここでは全都道府県に支援拠点を置く転職エージェントも含めます。
どちらも地域担当の法人営業スタッフなどが草の根活動的にマメに企業を訪問し社長や人事担当者、職場責任者と密に接触し、信頼関係とネットワークを構築していると想像できるため、上場、大手だけではなく地場、中小とバラエティに富んだ独自求人を保有している可能性が高いです。
東京本社と主要都市にしか支社がない転職エージェントとはちがい、キャリアアドバイザーと顔を合わせ直接会って支援を受けられます。
転職支援の在り方には、さまざまな考え方があり、新卒と中途採用、経験者と未経験者、管理職と非管理職、高所得者と低所得者など、これらを一緒くたにし同じような方式・方針で支援するのは正直、ムリが生じます。
どういうことです?
若手のキャリアアドバイザーが30代の係長・課長クラスに、非管理職のキャリアアドバイザーが50代の部長・取締役クラスを支援するのって…。
あ、たしかにムリがありますね。
ハイクラス型は管理職や高所得を目指す方の転職に特化したもので、いわゆるハイクラス転職求人を取り扱う転職エージェントです。
ハイクラスのほかエグゼクティブと呼ぶこともあります。
キャリアアドバイザーも30~50代で経験値が高く、元責任者や元管理職など支援を受ける側と同等のスキル、キャリアを持たれていることが多いです。
明確な定義はありませんが概ね年収750万円前後、部長クラスがハイクラス・エグゼクティブと考えていいのではないでしょうか。
ここまで転職エージェントの定義と類型を見てきましたが、では実際に私たちは登録後、どのような支援を受けることができるのでしょうか?
次章でキャリアアドバイザー(支援するほう)の目線に立ってご紹介していきます。
キャリアアドバイザーのお仕事
セイジさん、キャリアアドバイザーって正式名称なのですか?
エンエージェント | キャリアパートナー |
パソナキャリア リクルートエージェント マイナビエージェント | キャリアアドバイザー
|
JACリクルートメント | コンサルタント |
そのほかキャリアコンサルタント※、転職コンシェルジュなどの呼称がありますが、ここではわかりやすくキャリアアドバイザーで統一することにします。
※同名の国家資格がありますが、その意ではありません
登録した求職者に連絡・面談・希望ヒアリング
キャリアアドバイザーには日々、登録した求職者の方の情報(プロフィール)が舞い込みます。正社員として転職したいけれど右も左もわからないという方もいますので、まずは登録したばかりの方に連絡を入れ「実際にお会いしましょう」と面談によるヒアリングの場を設けます。
キャリアアドバイザーは単に求職者と企業をマッチングするだけではなく、一緒にキャリアプランを構築したり、よりよい人生を送るためのアドバイスも行ったりしたいと考えているため、学歴、職歴、仕事に関する考え方、将来的な希望などを確認していきます。なかには独自のツールを活用して、求職者の性格や適性を見ることもめずらしくありません。
転職エージェント側も登録していただいた以上は、求職者に一日も早く、希望する会社をご紹介し、正社員としての内定獲得をと考えます。また面談は数少ない接触機会であり、ここで求職者との距離をグッと縮め、信頼関係もできるかぎり築いておきたいと考えるのです。そのためヒアリングはこと細かく丁寧になりがちで長時間に及ぶこともあります。
求職者の希望に合致した求人紹介
登録情報や面談・ヒアリングの結果を見て、キャリアアドバイザーは求職者に合った求人情報をいくつか選び提示します。稀に意図をもって求職者が希望していないような求人を紹介することもあります。
意図をもってとはどういうことです?
求職者の希望が必ずしも本人にとって、ベストであるとはかぎらないケースがあり、求職者の視野を広げ、気付きを与えるために敢えて希望とは異なるものをお出しすることがあるようです。
実際に求人を見せながらディスカッションを行うことで希望や方向性が変わったり、より明確になったりすることもありますよね?
もちろん。ただ現実は「希望を無視した」と怒って利用をやめる方もいますし、「視野が広がった」「より明確になった」と感謝される方もいます。
これまで各記事の口コミ・利用体験談を読んできた感じ、そうでした。もし希望と違った求人を出されたら利用する側はキャリアアドバイザーに、どういう意図か聞くべきかも。
履歴書や職務経歴書の書き方指導・面接対策・面接同行
進むべき道が決まったら、履歴書や職務経歴書についての書き方指導や助言、添削へと駒を進めます。キャリアアドバイザーは並行して私たちの見えないところで求人を出した企業の担当者とも情報交換を重ねていて、その内容を踏まえて求職者に対し書類選考と面接がうまくいくよう、履歴書や職務経歴書をアレンジする方向へと持っていきます。
1社1社ちがう内容を書かせられるのは、そのためなのね?
またキャリアアドバイザーは、求職者の面接に同行することもあります。その目的は主に3つ考えられ、
- 求職者が面接でガチガチに緊張してしまうのを防ぐ
- 面接における振る舞いや発言を見聞きし問題や課題を分析・把握する
- 企業側の面接担当官にフォローや補足説明を入れ、直接フィードバックをいただく
ためです。
キャリアアドバイザーは面接同行後、面接担当官の評価を踏まえつつ求職者にフィードバックをし、問題点を指摘し、次の面接で失敗しないための課題を出し、具体的なアドバイスを行います。
面接後、条件交渉・入社後、定着支援
面接が終わり無事、入社の運びとなった場合、求職者本人からは言いづらいこともあるため給与などの事前交渉をキャリアアドバイザーが代行します。
キャリアアドバイザーがズバズバッと伝えるべきは伝え、折れるべきは折れて駆け引きし適切な給与設定へと持っていくでしょう。多くの場合、決定した給与から転職エージェントへの報酬額が算定されますので求職者の給与をできるだけ底上げしようと動いてくれるはずです。
そして入社ですが、もしも紹介した人材が1週間で辞めたとしたら…。
多くの場合、初期段階で人間関係につまづいた、仕事内容や条件が事前説明と違うなどの行き違いが生じることから起こるのですが、両方ともキャリアアドバイザーが仲を取り持ち、間に入ることで解決できる場合があります。
転職したらそれで終わりではなく、職場に慣れ定着するまで見届けたい。そう考える転職エージェントは軌道修正や環境改善を試み退職を阻止し、定着を支援しようとするのです。
次はスカウト・ヘッドハンターのお仕事についても、お伝えします。
スカウト・ヘッドハンターのお仕事
転職支援で忘れてはならないのがスカウト・ヘッドハントです。ここでは関連してスカウト・ヘッドハンターのお仕事も見ていきます。
スカウト・ヘッドハントのちがい
スカウトとヘッドハントは同一視されやすいのですが、まったく別物です。
スカウトは新天地を求めスカウト登録した人、スカウトを希望し待っている人のなかから、担当求人に合いそうでかつスペックの高い人材をピックアップして、連絡を入れます。
対するヘッドハントは、ある職場でエース級の働きをしている上層管理職もしくは優秀な技能を持っている人材を水面下で調査し、口説き転職を促そうとします。
それぞれ詳しく教えてもらっていいですか?
スカウトのお仕事
スカウトのお仕事は、まず担当求人に合いそうな人材をピックアップして連絡を入れたり、スカウト希望者からの相談・問い合わせに対応したりします。
スカウトから「会いたい」「話を」とお声かけして始まることもあれば、公開している求人を介して、担当スカウトへと相談・問い合わせメールが来て始まることもあります。
スカウト登録者は基本的に転職の意思がありますので、面談、面接後、企業側が内定を出し、条件の折り合いがつけばスカウト業務は完了となります。
ヘッドハンターのお仕事
対するヘッドハンターは人材と会い、説得、条件交渉し企業へとつなげるのが仕事です。
ヘッドハンターは事前に対象者のことを調べ上げたら、その人材との初接触を試みます。その人材が運良く「上昇志向がある」「転職を考えていた」のであれば、あれよあれよと契約まで一気に突き進むケースもありますが稀です。多くは「会社を辞めるつもりはない」「現状に満足している」など、まったく転職に興味がない、その気がない人材に声をかけるわけで、失敗に終わることもあります。
もちろん何度も会い、信頼関係を築きつつ丁寧に根気強く人材を説得し、転職へと心を突き動かし企業へとつなげられるのがプロのヘッドハンターです。
江口洋介さんの主演作品、ドラマBiz『ヘッドハンター』をご存知でしょうか。タイトルのとおりヘッドハントを中心に添えたドラマで、ヘッドハントとは? を理解するうえで、参考になる部分も多々あります。
・ヘッドハンターとライバルヘッドハンターとの攻防
などあくまでもドラマですので、フィクション、脚色されているのも否めませんが、paraviで配信されていますので、興味のある方はぜひ一度、ご覧になってはいかがでしょうか。
ちなみに私がもっともおもしろいと思ったのは老舗旅館「松葉楼」の後継者を探すストーリー(第4話)でした。
最後に法人営業スタッフですね!
法人営業スタッフのお仕事
企業担当者に接触「求人を出しませんか?」
転職エージェントの法人営業スタッフのお客様は主に、経営者や人事担当者となります。もちろん法人営業スタッフは担当エリアにある企業を隈なく訪問し、正社員を中心とした人材の需要がないかを聞き、あれば「求人を出しませんか」なければ「またの機会に」とあいさつ回りをし、次へとつなげます。
外回りのシーンからお伝えしましたが、企業の正社員採用活動全般を支援するのがメインです。求職者転職活動支援がキャリアアドバイザーなら、企業採用活動支援はリクルーティングアドバイザーといったところでしょうか。ここではわかりやすく法人営業スタッフで統一します。
またキャリアアドバイザーと求職者情報を社内で共有し、その求職者の希望に合うもしくは合いそうな企業を訪問し「正社員候補だと思うのですが」「求職者と会ってみませんか?」と交渉するような場面もあります。
いくら「人材を得たい」と常日頃考えていたとしても資金に余裕がなければ企業側も、手数料の部分で折り合わず断念することも多いです。それでも根気強くラウンドを継続することで少しずつ求人を獲得していくのです。
実際に会社・職場に潜入し「雰囲気や人間関係をチェック」
転職エージェントの法人営業スタッフはただ求人を獲得し採用活動を支援するのが仕事ではありません。転職エージェントに登録してくれた求職者が安心して就職できる会社・職場なのかを実際に目で見て確かめ判断してくるという大役を担っています。
具体的には会社・職場に入り込んで、現場の雰囲気やそこで働く正社員らの人間関係をこっそりと見てチェックし、ときには正々堂々と現場責任者に直接聞き出して、情報を収集していきます。チェックポイントは担当者により異なりますが、快適であるか、清潔であるか、危険がないかも見ているはずです。
転職エージェントも、正社員求人を出してくれる会社ならどこでもいいとは思っておらず、求職者が安心して安全に働けるような職場でなければ、求人を受理することはあっても、積極的な求職者紹介には至らないでしょう。
求人を獲得しヒアリング(募集要項作成のため)
企業側から正社員人材を紹介してほしいというGOサインが出れば、求人受理・募集要項作成へと進みます。法人営業スタッフはまず、ほしい人材を獲得できるような募集要項を作成しようと人事担当者に、こと細かくヒアリングを実施していきます。
極秘プロジェクトや管理職案件をゲット
最初に得られる求人は通常、若手正社員の求人でしょう。しかし内定を出せるような優秀な人材を次々と紹介することができれば、実績と信用が生まれ、重要な極秘プロジェクト関連求人や管理職に関する求人案件を任されるようになるでしょう。
実はキャリアアドバイザーが兼任することも多い
転職エージェントによってはキャリアアドバイザーが、求職者のことも求人企業のことも詳しく把握していれば転職支援はもっとスムーズに、もっとうまくいくと考えているところもあります。よって法人営業スタッフ(専任)を設けずキャリアアドバイザーが、法人営業スタッフも兼任するケースも少なくありません。
こういったケースでは、業界・地域ごとの担当ではなく、受けたい企業ごとに担当者が変わる場合もあります。
まとめ キャリアアドバイザーを味方につける
これまで各転職エージェントの口コミや利用体験談をいただいてきたなかで感じたのは、仕方がないことかもしれませんが、希望と違う求人を出してきただけで「敵意帰属バイアス」を発動させ、利用を辞めてしまうケースが少なくないということです。
キャリアアドバイザーはもしかすると、よかれと思って意図をもって提示したのかもしれません。それが不満であれば希望をもっとわかりやすく伝えようと試みるのが求職者の正解で、辞めて損するのは求職者である私たちのほうです。
転職を成功させたいなら敵意帰属バイアスを発動させないほうがよく、転職エージェントを利用する際は大人の対応でキャリアアドバイザーを味方につけるようにしたいものです。
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