作家になるために今日から実践できること!10個のテクニックを紹介

作家

作家志望の方に向けて、小説家になるためにやっておいた方が良いことをわかりやすく解説します。小説を書くというのはなかなか漠然とした行為で、何をどうすれば上達するのか見当もつかない、何から始めれば良いかすらわからないという方も多いのではないかと思います。

本記事では、小説執筆能力を構成する基礎的な要素や、それぞれ関連する事項について詳しく解説していきます。小説の基本といえば「読んで」「書く」ことですが、一体どのようにして行っていけばいいのでしょうか。もしくは、他にするべきことはあるのでしょうか。一緒に考えてみましょう。

記事の信頼性としましては、筆者自身が実際にデビュー予定の小説家であり、複数の出版社との交渉経験があります。

 

読書

「卵が先か鶏が先か」という話ではありませんが、少なくとも一冊の小説も読んだことのない人が小説を書くのは、原理的に不可能であると言っても良いでしょう。

「読書」は「執筆」の前提となる重要な要素です。しかし執筆能力を高めてくれる読書とは、一体どのような読書のことを指すのでしょうか。

本をたくさん読めばいいの?

「読む(インプット)」と「書く(アウトプット)」なら、作家志望は「書く」方を優先すべきです。100冊読んでも小説家になれるとは限りませんが、100作も書けば間違いなく作家にはなれるでしょう。しかしそれにしても、読書行為が執筆作業の前提であり、基礎であることに変わりはありませんね。

「小説家たるもの多読であるべし」という読書姿勢が、作家には広く信仰されています。スティーヴン・キングもそうですし、多くの作家がこれに同意しています。もちろん、読書経験は豊富であるに越したことはありません。文章能力や作劇センス、小説を全体として構築する様々な要素の大部分は、読書から養われます。ですので、多く読むのに越したことが無いという意見には同意できます。

しかし、これはあくまで筆者の意見ですが、多読よりも重要なのは精読です。質の良い小説を何度も、深くまで読み込むことが、乱雑に数だけ読むよりも重要だと思います。特にこれは、小説を読む際に重要です。学術書などの場合、流し読んでもとりあえず知識は残ります。しかし小説の場合、きちんと読まなければ「何となく良かった」で終わってしまい、後には筋書き以外は何も残らないことが大半です。

生まれ持ったセンスで傑作を書いてしまう天才も存在しますが、多くの人はそうではありません。我々のような凡才の助けになってくれるのは、直感的な感覚(センス)よりも再現性のある理論(セオリー)です。多くの本を読むのは大切なことですが、できればより深く、精確に読み込み、その本がどのような構造を持っているのか、なぜ面白いのかを分析する姿勢があると良いですね。

毛嫌いせずに、ノーベル文学賞を分析する

ノーベル文学賞を受賞するような作家の高尚な小説というのは、とにかく小難しくて、取っつき難いという印象を持つ方もいるでしょう。そして基本的に、それは事実だと思います。しかし彼らの作品を精読してみれば、表面的にはそう見えないほど難解かつ思想的で、驚くほどの多重構造とアイロニーを形成していることがわかります。つまりは小難しいどころではなく、彼らの小説は“超”難解かつ“超”複雑なのです。

彼らの本をきちんと読んでみれば、小説という媒体が、これほど深淵な思索の迷宮を構築することが出来るのかと驚くことでしょう。作家を志す場合、そのような「小説媒体の最終到達点」、ある意味での「極致」を一度は体感しておきたいものです。それが自分で書けるかどうかはともかくとして。テクノロジーフォローから取り残され気味の「小説」という形式が、なぜ学術的に最も権威のある媒体で居続けられるのか。その辺りを肌で実感してみましょう。

そしてそのような読書体験は、単なる多読によってはなかなか得られません。一冊の小説を繰り返し読み込み、構造を分解して研究して、初めて理解できる類のものです。自分の頭だけで考えるのには限界がありますので、学術論文の助けも必要です。CiNii Articlesで日本の論文がデータベース化されていますので、そちらをあたってみましょう。文学賞作家の小説であれば、きっと日本語の論文などが見つかるはずです

分析の目的は、小説という媒体が持ちうる構造、アイロニー、ダイナミクスを、最大限まで理解することです。どのような分野でも言えることですが、その分野における超一流の仕事を知っているのと知らないのとでは、その分野への造詣に明白な差が現れます。小説はこんな高みまで到達しうるということを知らなければ、そんな高みを目指すことすら、考えに及ばないかもしれません。以下の表に近年の重要なノーベル賞作家を三名ほどピックアップしておきましたので、ぜひ世界最高峰の作品に挑戦してみてください。

受賞年作家名代表的作品特徴
2017年カズオ・イシグロ『日の名残り』「信頼できない語り手」の妙手
1982年大江健三郎『飼育』日本人二人目の受賞者
1982年ガルシア=マルケス『百年の孤独』「マジック・リアリズム」の旗手

 

学術的知識を揃えておく

文学研究という学問は、他の学問分野に比べて実際的な社会的価値を疑問視されることも少なくありません。いわゆる、「そんなことをしたところで何の役に立つの?」というやつです。文学の研究者が、我々の想像するような国語のテストの延長線、つまりは「作者の気持ちに答えなさい」的なことを延々と考えていると思っている人もいるのではないでしょうか。

文学研究という学問は、乱暴に言ってしまえば「テクストと人間の関わり」を明らかにするための学問です。彼らは生涯をかけて、「テクスト(文章)」がどのような構造を有し、どのような意味を持って、どのように「人間存在」と関わるのか、ということを学問的に研究しているわけです。別に、「作者の気持ち」が知りたいと思って研究をしているわけではありません。(極端な話、テクスト至上主義においては、「作者の気持ち」なんていうものは完全に無視される傾向にありますね)

彼らが特に「小説」という媒体について明らかにしていることは多く、日夜単一作品の構造について、広く人称が取り得る形態について、諸外国の小説史について、物語の構造について、高度な議論が交わされ続けています。

たとえばこれがプログラミングや科学技術といった分野であれば、それに携わる人たちは、最先端の研究動向を常に観察されていることでしょう。しかしそれが、殊に「小説」という形態になると、なぜ突然軽視されてしまうのかは甚だ疑問です。それは「小説」という媒体がそもそも多くのジャンルと派閥に分かれすぎて、それぞれの分野が半ば断絶状態にあることが原因でもあります。ライトノベルのような形態は純文学よりも下位の形式であるというような、暗黙の価値序列が存在するのも問題です。しかし「小説」の執筆を一生の職業としたいのならば、そういった学問的知識は一通り網羅しておきたいものですね。

 

執筆

十分に読んだら書きましょう。十分に読んでなくても、とにかく書き始めましょう。

小説を読者として読んでいるだけではわからない執筆の難しさ、創作の様々な問題というのが、自分で書くことによって始めて明らかになります。本項では執筆の際に注意しておきたいことについて、執筆とセットで考えるべき事項について解説いたします。

小説を書く

とにもかくにも書かないことには始まりませんので、小説家になりたい場合は書くことです。どれだけ小説への造詣が深く、文章能力や作劇センスが高くても、肝心の「小説」を書かなければ小説家にはなれません。

執筆の際に注意したいのは、以下の2点になります。

1つに、書き始めた小説は必ず完成させましょう途中で重大な欠陥が見つかったとしても、明らかにつまらないとわかっても、とにかく完成させることを目標としましょう。なぜなら、小説家の経験値は「書き上げた作品」からしか得られないからです。どれだけ未完の作品を書き連ねても、そこからフィードバックを得ることもできませんし、そもそも投稿することすらできませんね。

2つに、フィードバックを得ることを大切にしましょう作品を完成させたなら、作品と自分自身の欠点や反省点が山のように見つかるはずです。それを一つずつ潰していきましょう。途中で展開に困ったのなら、プロットの作り方を考え直す必要があります。文章力が低いと思ったのなら、自分の理想とする作品を模写してみても良いですね。

小説を完成させて、そこからフィードバックを得ましょう。短所と向き合って、一つずつ長所に変えていきましょう。もしも書き上げることができなかったのなら、それ自体が解決すべき問題点ですね。

他の多くの分野と同じく、少しずつ前進していく姿勢とシステム作りが肝要です。そうでなければ何が問題かもわからないまま、執筆の袋小路でずっと迷い続けることになります。

小説を投稿/公開する

書き上げた小説はファイルに仕舞っておくのではなく、どこかの賞に投稿しましょう。同時に、忌憚の無い意見を言ってくれる友人に読んでもらいましょう。自分で自分の作品を評価するのではなく、とにかく客観的な意見と評価を求めましょう。時には心血捧げた大切な作品を否定された気持ちになって、傷つくこともあるかもしれません。しかし、それでも進んでいくしかありません。職業作家になれば、そんなことはしょっちゅうです。以下、それぞれの詳細について解説します。

どの新人賞に狙いを定めるかは作品を書き始める前から決めておくべきですが、書き上げたらとにかく投稿します。新人賞によっては、審査に携わった編集者からの客観的なフィードバックが得られる場合があります。また受賞に至らなくても、編集者の目に留まれば「一緒に次作を書いてみましょう」ということにもなり得ます。とにかく、投稿は最大のフィードバックチャンスです。

忌憚の無い、有効な意見をくれる友人に自作を読んでもらうことも大切です。大切なのは、「面白かったよ」とだけ言ってくれる友人に見せるのではなく、「ここはこうだと思うよ」と具体的かつ率直な感想をくれる友人が望ましいですね。周囲にそういった人がいなくても、SNSなどで見つけることもできるでしょう。

投稿によって各審査を通過し、編集者のフィードバックを貰いましょう。さらに友人からのフィードバックも受けましょう。

村上春樹は、書いた小説は一番最初に妻に読んでもらうようです。その妻から受けた意見を参考として、せっかく書いた膨大な文章をバッサリ捨ててしまうこともあります。自分で自作を反省するだけではなく、客観的な評価も受け入れましょう。自分ではどうしようもない作品だと思っても、他の人から見れば案外面白い、なんてこともあるかもしれないですね。

 

物語を作る

純文学のような芸術性の極めて高い形式を除いて、小説には面白い筋書きというのが求められます。

あらすじを聞いただけでその本を読みたくなるような、本を読んだ後に思わず誰かに勧めたくなってしまうような「面白い物語」を作るのが、小説家に必要とされる最も重要な能力ともいえます。本項では、どうすれば面白い物語を作れるようになるのかを考えてみましょう。

物語の類型を収集する

あらゆる作品は多かれ少なかれ何かの模倣であり、完全なオリジナルというのは現代に存在しません。過去の作品から必要な要素を抽出し、その組み合わせの新規性を競い合うのが現代のオリジナリティです。

その中でも数多くの作品に採用され、模倣され続ける優秀な構造が存在します。それを俗に、物語類型と呼んだりもします。バディ物の刑事ドラマでは、両者は必ずどこかの段階で仲違いしますが、最後にはお互いを最高の相棒であると認め合います。こういったものが、物語の類型です。

これを知っているか知らないかでは、作劇の質に大きな差異が生まれてしまいます。バディ物の刑事同士がずっと仲良しで、特に問題なく事件を解決していくのでは、盛り上がりも何もありませんね。作者は強力な類型に沿って書くこともあれば、時にはそれを意図的に崩すこともあります。しかしそれは、どちらにしろ、知らなければどうしようもありません。

ここで重要になるのが、多読です。こういった物語類型は、多くの作品と触れ合うことによって収集されます。「こういうお話は、大抵こうなるよね」というアレです。そしてそれは、予想できたとしても間違いなく面白いから、もしくは受け手がその展開を求めているから採用され続けるわけです。本記事の序盤で精読の重要性を訴えましたが、多読が威力を発揮するのはこの部分です。闇雲に読めば良いということでもありませんが、少なくとも「こういうお話は大抵こうなる」ということがわかるようになるまでは、多くの作品と触れ合った方がよいでしょう。

物語の類型を学ぶ

この物語類型をさらに深掘りすると、発展して「神話類型」に行きつきます。世界各地の神話には、似たような構造やストーリーの性質が見られるというものです。大洪水や英雄譚、竜殺しといったものがそれです。

この分野の代表的な研究者はジョセフ・キャンベル氏で、彼の代表作である『千の顔を持つ英雄』はシナリオライティングに関わる業種にとって必読書であるともいえます。本書は各国の神話や英雄叙事詩の類型を纏めたもので、多くの作品がこのジョセフ・キャンベルの神話類型に従って書かれています。有名どころで言えばジョージ・ルーカス監督などは、本書の類型に沿って『スターウォーズ』を作成しました。

起承転結三幕構成といった物語の基本構造も、広く物語類型であるといえます。これら物語類型を扱う重要な著作を下の表に纏めておきますので、一度は目を通しておくことをオススメいたします。

物語類型に神話類型、起承転結といった構造の類型は、人間の本能に深く刻まれているものです。そもそもどうやって物語を作ればよいかわからない、自分の書きたい話にはどのようなフォーマットが存在するのかわからないという場合は、これらの著作にあたってみることをオススメします。誰の金言かは忘れてしまいましたが、「その分野の本を三冊も読めば、誰でも専門家になれる」というやつですね。

書名(省略有り)著者名得られる知識
『千の顔をもつ英雄』ジョセフ・キャンベル神話類型
『ハリウッド脚本術』シリーズニール・D・ヒックス各ジャンルの物語類型
『Screenplay』シド・フィールド三幕構成
『SAVE THE CATの法則』ブレイク・スナイダービートシート・メソッド

 

その他

「本を読み」、「実際に書き」、「物語の作り方を学ぶ」。これさえ徹底して実践していれば、小説家への道はいつか開けるものと思います。

ここからは、それらをサポートしてくれる事柄についてご紹介いたします。

「お金さえあれば、引きこもってずっと小説が書けるのに」「自分にもっと集中力があれば、きっと傑作が書けるのに」。執筆にまつわる悩みは尽きませんね。一つずつ解決していきましょう。

収入源の確保

ディーン・R・クーンツは『ベストセラー小説の書き方』という著作の中で、「経済的に余裕が無いのなら、半年でも一生懸命仕事をして貯金を作り、執筆に集中すべきだ(要約)」と言っています。

たしかに経済的な不安定な状態だと肝心な執筆に集中できませんし、良いアイデアも生まれ辛いでしょう。貯金が十分にある状態で執筆だけに集中できるなら、それに越したことはありませんね。

まとまった貯金を作って、執筆に集中できる環境に引きこもることが出来れば良いでしょうが、半年仕事をして、半年引きこもってという生活をいつまでも続けるわけにもいきませんね。現実的には、継続的な収入源と執筆に集中できる環境、その二つを両立する必要があります。

最終的に専業作家となる決意を固める際にも、もしも作家としてやっていけない際に潰しが効くか、収入が確保できるかというのは重要な問題となります。運よくスマッシュヒットを飛ばして、印税で1000万円ほどを手に入れたとしても、それがずっと続くとは限りません。1000万円は大金ですが、それで10年は暮らせません。

作家はとかく不安定な業種ですので、副収入源の確保と経済的な安定というのは優先して取り組むべき現実的問題です。そういった収入源を確保しておけば、出版やデビューといった一世一代のチャンスに恵まれ、執筆にフルコミットしたい時にも安心ですね。小説家におすすめの副業については他記事にて纏めておきましたので、ご参照ください。

セルフコントロール

小説は誰かに強制されて書くものではありませんし、基本的に誰も管理してくれません。職業作家であれば原稿の締め切りというものは存在しますが、それも誰かに管理されるものではなく、あくまで自分でマネジメントして間に合わせる必要があります。

とにかく執筆速度が速くて多作であれば、デビューの可能性も小説家としての生存確率も大幅に上昇します。しかしそのように自分を律して執筆に集中するためには、セルフコントロールの知識と実践が必要です。

執筆にどうしても集中できない、気が散る、公募の締切にいつも間に合わないという人は多いのではないでしょうか。そういった場合は、小説執筆の技術を磨くよりも先に、自分をいかにマネジメントするかを学んだ方が良いかもしれません。

セルフコントロールの関連書籍にあたるのも有効ですが、自己啓発書の類ではなく、あくまで心理学の学術的研究に基づいた著作を参照するようにしましょう。気合いでどうしようもないから学術的論拠をあたるわけですから、精神論や心の持ちようで何とかしようとする本には頼らない方が無難ですね。

マーケティング知識/他分野のライティング知識

職業作家である以上、小説執筆は芸術的な創作活動である以前に、売り上げが全ての商業活動です。過去には、「売る」のは出版社の仕事で、「書く」のは小説家の仕事だと大別されていた時代もありましたが、現代の小説家には鋭敏なマーケティングのセンスも要求されます。

そのために、小説家といえどもマーケティングの基礎的知識を学んでおくことは非常に有益です。売れている小説はなぜ売れているのかを分析し、出版市場を俯瞰して、自分の小説はどうすれば売れるのか、どう工夫すれば誰もが読みたいと思う作品となるのかを常に考えましょう。そのような分析眼は、作家デビューへの登竜門である新人賞を攻略する際にも、きっと役に立ってくれることだろうと思います。

また、他分野におけるライティングスキルを学ぶのも有益です。小説執筆能力は「小説を書くための」ライティングスキルですので、基本的に他分野のライティングには門外漢です。WEBライティングやシナリオライティングなど、小説以外にもライティングが用いられる領域は数多く存在し、それぞれに求められるスキルは微妙に、もしくは大幅に異なります。

どうしても公募が突破できない、どうすれば面白い小説が書けるのかわからないという人は、関連した他分野に思わぬブレイクスルーが存在するかもしれません。マーケティングの知識は「何かを売る」際に必要とされる、実際的な方法論を教えてくれます。WEBライティングの技術は、どうすれば多くの人に共感され、読まれやすい文章になるのかを教えてくれます。同じ場所で足踏みし続けているという方は、ぜひ参考になさってください。

 

まとめ

小説家が実践すべきことについて、主に「読む」「書く」「物語る」という視点から解説してきました。小説を書くというのは非常に曖昧な作業で、正解の無い仕事でもあります。創作スクールに通ったから、ハウツー本を読んだから、劇的に面白い小説が書けるようになるということはありません。

中には生まれながらに小説の天才として生まれて、純粋に自分の感性でヒット作を連発するような作家も存在します。しかし我々はそうではないわけですから、継続的に努力して、何回も失敗するしかないわけです。

大量にインプットし、それ以上にアウトプットしましょう。そうやって自分の技術を磨いていくしかありません。そこに遠回りはあっても、近道は基本的に存在しません。フィードバックを徹底して自分の弱点と向き合いながら、少しずつ前進していきましょう。

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