近ごろはグローバル化によって高校や大学留学、海外駐在と耳にすることは珍しくなくなり、同時に外国語、特に英語の需要が急激に高まっています。社会人でも入社時点や昇進などの機会にTOEICを一定点数求められるなど、今は誰でも英語力を高めることが必須になりつつあります。
留学して英語を勉強するのが一番の近道のように思われることもありますが、実際は日本にいながら独学で学習するのが一番現実的である人の方が大多数でしょう。「英語を本格的にきちんと勉強したいけど、得意科目でもなかったし…」なんて心配する必要はありません。そして留学をしなくても十分に独学で英語力は身につきます。
今回は、英語を学び始めて間もない、初級者のみなさんにおすすめする学習方法についてご紹介していきます。
基本は「インプット→アウトプットの訓練を行う」の繰り返し
高校までの英語科目が得意だった人を除けば、いきなりスピーキングやライティングのアウトプットを求められても、何をどうやってアウトプットすれば良いかわからないと思います。発音や単語、・文法などの知識がゼロまたは少ない(=インプットがない)状態ではそもそもアウトプットはできません。
よって、初学者の皆さんがまず始めにすべきことはインプットとなります。
おすすめの学習方法
基礎となる文法力および単語力・発音を身につける【インプット学習】
ここでいう具体的なインプットとは、単語・発音・英文の順序など文章の組み立ての基礎となる文法です。「ええ〜つまらなさそう…」なんて感じる方もいるかもしれませんが、何も完璧にする必要はありません。最低限アウトプットができるレベル、おおまかに言えば中学生レベルでまずは大丈夫。極端な話をすると、中学生で使うテキストや問題集の語彙・それらの発音と文法が理解でき、身についていればOKということなのです。
まずは中学レベルの文法をさらう用のテキストを1冊で良いので準備しましょう。目標はそのテキストに書かれている文法事項がわかること、使われる語彙とその発音を覚えることです。
語彙と発音に関しては、単語帳でもない限り発音を実際に聞くことはできないので、音声機能付きの電子辞書やスマートフォン・タブレットの音声機能がついている辞書アプリを併用しましょう。特に最近どんどん便利になってきているアプリは、検索機能だけでなく、チェックを付けることができたり、そのチェックされた単語をリスト化して復習に役立てられるようになっているものもあります。スマホ・タブレットさえあればいつでも手軽に利用できるアプリについては、学習にもどんどん活用していくと良いでしょう。
余裕があれば、単語やフレーズだけを重点的に学習できる単語帳も同時に進めましょう。選ぶときに気をつけて欲しいのが、単語だけがただ羅列されているものよりも「例文で覚えられる」単語帳かどうかです。「キクタン」や、英検の例文で覚えるシリーズ、そしてもし英検2級レベル(高校卒業程度)がある場合は迷わず「Duo3.0」をお勧めします(筆者が大学受験時に相当お世話になった単語帳です)。
また、テキストには英作文も含まれていることでしょうが、ここで書いたら終わりではなく、「日本語だけを見て口で言える」かどうかもチェックしましょう。インプット学習の中にもアウトプットの訓練を入れ、スピーキングの土台を作ることができます。
リスニング・リーディング【インプット学習】
次は、リスニングとリーディングの訓練を通し、新出の単語やフレーズを蓄え、学んできた文法の知識と正しい発音を定着させる段階です。
リーディングには「精読」と「多読」があり、これを行き来することが大切です。精読とは、ひとつの文章をじっくりと突き詰めて読むこと。わからない単語や文法に焦点を当てて、それらの疑問点を潰す作業の割合が多くなります。そして多読は、知らない部分はある程度読み飛ばして読むことです。おおまかな内容を掴むことにフォーカスするため少し易しめのテキストを選ぶことがポイントとなりますが、これにより多くの英文に触れることができるのです。
英語力を伸ばすためには、「英語にたくさん触れる」ことが大切ですが、それはやみくもに読めば良いのではなく、中身がある程度理解できてはじめて効果を発揮します。この理解力を養うために精読も必要となるのです。精読→多読→精読…というようにそれぞれを繰り返すと良いでしょう。
次に、リスニングのトレーニングで気をつけるべきことは、まずは簡単なものから始めること。まずは英語の音に慣れるということが必要となります。単語を覚えるときに発音を知ることをおろそかにしているとここでつまずくことが考えられるので、やはり単語と発音はセットで覚えるべきでしょう。
英検3級(中学卒業レベル)、もしくはこれが難しければ英検4級レベルでも大丈夫です。無理にレベルの高い教材を使ってやる気を失ってしまっては勿体無いですよね。スクリプトが「読めるレベル」のリスニング教材が目安となります。ここで、先ほど説明したリーディングの訓練もここに繋がってくるのです。
スピーキングとライティング【アウトプット訓練】
ある程度のインプットをしたらアウトプットの練習も取り入れていきましょう。初めは言いたいことがなかなか言えずもどかしく思うことも多いと思います。しかし、初めのうちは「日本語で言いたいことを自分の持っているボキャブラリーを使って伝える」訓練をしているのです。この練習をある程度積むと、少しずつ自分の言いたいことが言えるようになってきます。しかしこれらは1人で行うのが難しいので、スクールに通うかもしくはオンライン英会話を利用することを勧めます。
英会話スクールだと、フリートークレッスンなどという名称の、その名の通り好きな話題で会話を楽しむ形式のレッスンがあるところもあります。しかし、気になるのはやはりお金。もちろん同じ目標を持った英語学習仲間が出来たりレッスン以外のメリットも享受できるのがスクールのメリットですが、お財布に優しいのはオンライン英会話。しかも、家で好きな時間に気軽にレッスンができるフレキシブルさも注目です。
しかも、このオンライン英会話は、ライティングの添削もお願いができたりする裏技が通用する場合もあるので(もちろん担当の講師にもよるので事前確認が必要)、様々な使い方ができる可能性を秘めているという意味ではスクールよりもおすすめできます。
→詳しくは記事「英会話レッスンの効果的な活用法」を参照
ライティングは、まずは1文から始めてみましょう。自分の思ったことを一言で表現してみたり、読んだ英文パッセージの感想・要約などは書きやすいお題です。毎日日記を英語でつけるのも良いアイデアです。
どうしても英語でなんと言えば良いかわからない部分は空白にして、あとで辞書を使い確認します。目標は先ほどのスピーキングの場合と同じく、自分の持っているボキャブラリーで説明できること。難しい英単語を使わなくても簡単な表現を使って自分を表現できれば良いからです。
またインプット(単語)に戻り、アウトプット訓練へ
ある程度の訓練を積み、インプット量が足りないなと感じるようになるころにまた初めの作業に戻ります。中級程度のレベルまで英語力が上がれば、このサイクルをそれほど気にせずどの分野もまんべんなく一緒に進める方がいいですが、初めのうちはインプットとアウトプット作業を意識して回していきましょう。
注意すること
次に、英語を学習する上で〇〇すべきだ、〇〇してはいけない論が多くありますが、それらに関して学習者の皆さんに知っておいてほしいことをいくつか紹介します。
リスニングの聞き流しは効果ゼロ
一時期話題にもなっていた(?)聞き流しリスニング教材ですが、本当に効果があるのかと疑問に思っている方は多いでしょう。これが本当に聞き流しだけであるならば、効果はかなり薄いです。しかも、聞いている英語を理解できていないようであればもはや効果は限りなくゼロに近いです。ただし、ほとんどを理解できており、かつ自分でシャドウィングやディクテーションに取り組んだり、わからない単語を調べて覚えたりという作業をしていれば効果は見込めます。要するに楽して英語力は上がらないということ。
文法がわからないままだと効果は半減
文法だけを完璧にしても話せるようにはなりませんが、かといって文法は無駄ということでは全くありません。それどころか、文法を知らなければそれこそどうアウトプットして良いかわからないでしょう。
大学入試に出るマニアックなものまで学ぶのは後回し(知らなくて良いということではありません)でも問題ありませんが、少なくとも中学レベルの文法は押さえておく必要があります。
ネイティブの発音にこだわる必要はない
英会話スクールの宣伝を見てみると、いかに講師がネイティブぞろいであるかばかり強調しているものがたまにあります。こういったことが余計「ネイティブのように喋れなければいけない」なんて思い込みを刷り込みしているのでしょうが、果たしてネイティブレベルを目標にしなければならないのでしょうか?
もちろん、目標にするのは良いことです。目標は高い方がモチベーションが上がる方もいると思いますし、趣味で「イギリス発音をマスターしたい」と特定のネイティブアクセントを目標にしているのも問題ではありません。しかし、「日本語アクセントがある英語を話す人が劣っている」などと、アクセントだけで優劣をつけることは正しくありません。世界には様々な英語アクセントがあるので、日本語アクセントも個性の1つと捉えて良いのです。もちろん最低限の発音の仕方は身につける必要がありますが、あまりネイティブ発音にこだわるあまり「発音が良いが中身のない英語」になってしまったり、他のトレーニングがおろそかになっては元も子もありません。
留学しなくても英語力は伸びる
留学が一番手っ取り早い英語を身につける方法だと思っている方もいるかもしれませんが、実際は必ずしもそうではありません。留学して英語圏に行ったとしても、結局日本人とばかりつるんで英語を使う機会がそれほど増えなければ、実はあまり効果が大きくないのです。
裏を返せば、留学をしなくても十分に英語力をつけることは可能であるということ。
モチベーションを保つためには?
最後に、どの学習者もぶつかるであろう「やる気」問題。ここでは第二言語習得論で言われていることと筆者の実体験を元にやる気の引き出し方を紹介します。
長期的・短期的目標を立てる
やはり目標もないまま勉強が続くような方は少ないでしょう。どんな小さなことでも良いので、(英語で自信を持って自己紹介ができる・お気に入りのあの本を英語で読む・好きな洋楽ミュージシャンの音楽を翻訳なしで理解するなど)目標を設定しましょう。できれば長期的な目標とセットで作るとよりやる気を持続できるでしょう。
ロールモデルが見つかるとなお良い
自分の身近な知り合い、お気に入りの俳優やミュージシャンなど、「この人のように英語を喋りたい」と思えるようなロールモデルがいるとさらに効果倍増です。ちなみに音楽好きな筆者は、日本人ですが英語で曲を書いている英語がペラペラ(+発音もニアネイティブ)のミュージシャンがロールモデルでした。帰国子女でもなく大人になってから独学で英語を身につけた人だったので、より自分に近く想像しやすいロールモデルだったためとても良い影響を与えてくれました。
日常生活に英語を取り入れる
毎日1文英語日記をつけてみたり、歌詞カードを見ながら好きな洋楽聴いたり、映画を英語音声で聞いてみたりしましょう。レベルが上がればスマホの言語設定を英語にできることを目標にもできると思います。「いかに勉強と意識せず、自然に身につけるか」を意識すると良いでしょう。
同じ目標を持つ仲間を見つける
近くに共に勉強する仲間がいればそれだけ「自分もやらなきゃ」という気分にさせてくれます。ミートアップなどのイベントに顔を出してみたり、スクールに行くのも選択肢としてあるでしょう。
余裕があればたまに海外に行ってみる
もし金銭的・時間的に余裕があれば、海外に出て英語を使う機会を日本以外でも作ってみましょう。「自分の英語が海外で通じた」経験というのは、意外にも大きなやる気アップにつながります。
まとめ
英語を学習し始めたばかりのころは、なかなか伸びが実感しにくくモチベーションを保つのに苦労することもあるでしょう。そんなときは、先ほどご紹介したアイデアを試してみてください。
それでもやる気が落ちてしまう…なんていうときは、一度お休みしてみるのも良いかもしれません。一度「勉強しなきゃ」というプレッシャーから自分を解放してみるのです。ただし、そこでも日常に英語を取り入れられそうであれば、それはぜひ無理のない範囲で続けてください。
ふとした時に観た洋画が面白くて、「分かるようになりたい!」といったように突然やる気が出ることもあります。
完全にやめてしまうと次の再開のタイミングを見失ってしまう可能性もありますが、細々とでも続けておくと良いです。無理せず、楽しく英語を勉強していきましょう。
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