前回の記事で、返り読みを今すぐ止めるべき理由とその方法を紹介しました。
今回は、英文をスラスラ読むためにぜひ身につけておきたい「スラッシュリーディング」を紹介します。
スラッシュリーディングとは?
スラッシュ(slash)とは、/ という記号で表される斜め線のことです。
英文を読む際に一番大事なこと。
それは文中で意味のかたまりをみつけることです。スラッシュリーディングでは、英文中の意味のかたまりを意識し、スラッシュ記号 / で区切りながら、英語の語順のまま読んでいきます。
スラッシュリーディングのメリット
前回「返り読み」することのデメリットとして、1. 英文を読むのに時間がかかる。2. リスニング上達の妨げになる、の2点を挙げました。
スラッシュリーディングのメリットは、この逆です。
1.読解力が向上する
英語の語順のまま、文頭から意味を理解していくため、文章を行ったり来たりする必要がなくなり、読解スピードが上がります。
スラッシュリーディングを始めたばかりの時は、どこでスラッシュを入れるのかが分からなかったり、英語の語順のままでも日本語に訳してしまったりして時間がかかるかもしれません。
ところが、スラッシュの入れ方のルールに慣れ、頭から読めるようになると、意味を頭の中でイメージしながら読み進めるようになり日本語の介入が無くなるため、さらに読むスピードが上がるというメリットがあります。
2.リスニング力が向上する
英語を聞いて理解するためには、英語の語順のまま、日本語を介さずにどんどん情報を処理していくことが不可欠です。
スラッシュリーディングを実践することで、英語を英語の語順のまま理解し、聞いた順に理解することが出来るようになります。
しばらくスラッシュリーディング法を用いて読解訓練をした後にリスニングに入ると、これまでとの聞こえ方の違いに驚くことでしょう。
3.スピーキング、ライティング力も向上する
英語を英語の語順のまま理解出来るようになると、スピーキング、ライティングにも良い影響があります。
日本語から英語に訳すやり方では、of などを多用して後ろから付け足し、不自然な英語になってしまいがちです。
スラッシュリーディングでは、英語を“かたまり”として捉えるので、話したり書いたりする時にもこの“かたまり”を意識するようになります。
この“かたまり”への理解がなければ日本語から英語へ一字一句を当てはめ、単語単語でぶつ切りに話すことになってしまいます。
簡単なスラッシュリーディングのやり方
スラッシュリーディングは、意味のかたまりごとに / をいれていきますが、最初の頃はその“かたまり”がどこにあるかが分かりにくいかもしれません。
文章によってスラッシュの入れ方は違うのですが、ある程度具体的な目安があったほうが分かりやすいので、始める前にルールを決めておくとよいでしょう。
例を挙げてみます。
He went / to the sea / on Saturday morning.
彼は行った/ 海に/ 日曜日の午前中
と、意味のかたまりごとに分けます。
一番簡単なルールは、前置詞の前にスラッシュを入れることでしょう。
他にはコンマ、セミコロン、コロンなどの文章の切れ目、and や but などの接続詞の部分、to 不定詞の部分、関係代名詞の前で入れます。
その他のルールは英語の五文型などの文法知識に基づいたものになるので、スラッシュリーディング法を学べる参考書などを用いてルールを確認すると良いと思います。
とりあえず前置詞の前で入れる、which やwhere などの関係代名詞の前で入れる方法は、詳しい文法知識がなくても出来ますので、“いったん文法をマスターしてから”とは考えず、文法や単語を学ぶ際に例文として載っている英文にも適応してみると良いのではないでしょうか。
スラッシュリーディングを学べる参考書
スラッシュリーディングに用いる教材を選ぶ際に気をつけたいのが、易しい英文で学ぶということです。
現在の自分が理解出来る以上の複雑な構文が掲載された教材を選んでしまうと、スラッシュリーディングを学ぶというよりは文法の勉強になってしまいます。
スラッシュリーディングは、返り読みをせず、頭から語順通りに英文を読んでいくやり方ですので、最初から難しい教材にはチャレンジせず、自分が理解出来る範囲の英文が載った参考書を選ぶのがコツだと思います。
易しい英文でスラッシュリーディングのやり方に慣れた後、難しい英文にチャレンジすると良いかもしれません。
それでは実際にスラッシュリーディングを学べる参考書を紹介します。
英語長文速読トレーニングLevel 1, 2
こちらの2冊はどちらもセンター試験レベルの英文が読めるようになることを目標としています。
Level1はセンター試験よりも易しめで350語程度の英文、Level2がセンター試験レベルで、500語程度の英文が掲載されています。
「この本の学習法」、「英文の区切り方 5 rules」が掲載されていますので、最初に学習法とルールを学んでから長文問題にとりかかると良いでしょう。
五文型が詳細に説明されており、それぞれのパートの関係が図示されていますので、初心者でも分かりやすいのではないかと思います。
この本の特長は、CDが付属しており、2パターンの英文が収録されているところです。
1つめの収録パターンは、「英文をかたまりごとに区切ったフレーズ→ポーズ、部分和訳」、もう一つはナチュラルスピードで読まれた英文が収録されています。スラッシュで区切られた英文を聞くことで文章の切れ目がわかるので、音読の練習をするのに最適です。
演習はLevel1で10題、Level2が6題あり、2週間程で1冊終わらせることが出来ます。
問題集のほうを解き終えても付属のCDを活用し、音声に合わせてスラスラと読めるようになるまで練習しましょう。
英文直読TRY AGAIN
従来の解釈文法に手こずっている人、実用英語への橋渡しとなるような読解法を求めている人向けの本です。
「直読発想」として紹介されていますが、こちらで紹介されている10の英文へのスラッシュの入れ方は基本的にスラッシュリーディングの方法と同じです。
- 前置詞の前
- 関係節の前後
- 現在分詞・過去分詞の前
- that説の前
- 長い主語の後
- SV/C, SV/O
- SVO/O, SVO/C
- to 不定詞の前
- 接続詞の前後
- 文頭・文末の副詞の前後
講義のように生徒に語りかける口調となっているため読みやすいです。
英文と設問があり、その後にどこにスラッシュを入れるかという解説と対応する直訳がついています。付属のCD2枚には講義内容が収録されています。
英字新聞1分間リーディング
日経ウィークリーの記事100本の見出しと第一パラグラフのみを集めた英字新聞攻略の入門書です。
英文と日本語訳にスラッシュが入っています。見開き1ページで1トピックとなっており、左ページに英文と重要単語とその意味、右ページに日本語訳が掲載されています。
記事ごとに難易度が示されていますので、自分のレベルに合わせて記事を選ぶ事も出来ます。
この本でスラッシュリーディングの方法を学ぶというよりは、演習問題として使うと良いと思います。
リーディングスピードを意識する
スラッシュリーディングを学ぶことでリーディングのスピードも上がってきます。
みなさんは、英文を読む際に、どれくらいの速度で読んでいるか意識したことがありますか?
好きなだけ時間をかけて自分が読みたい英文だけを読めるような状況であればよいのですが、仕事で英語を使うのであれば、大量の英文メールや書類にサッと目を通す必要があり、早く英文を読むスキルが必要です。
松本道弘先生の「速読の英語」によると、平均的な英語ネイティブは1分間に200−250語/分の単語を、60−70%の理解度で読むことが出来るそうです。
日本の大学新入生の英文読解スピードは100語/分以下で、理解度も60%以下だそうですから、英語ネイティブの読解スピードとはかなりの差がありますね。
ネイティブと同じスピードとまではいかなくても、読解スピードはリスニングにも影響します。
大人の英語ネイティブが話す標準的なスピードは、170−200語/分だそうですから、それくらいの早さで英語を理解することが出来なければ、会話時の聞き取りや、ニュースのリスニングなどにも支障をきたします。
これまでに説明した返り読みをしない読み方で、英文を語順のまま頭から読む方法に慣れてきたら、読むスピードを意識して読む練習をするとよいでしょう。
今回は、現在のリーディングレベル、スピードを把握し、早く正確に読む手助けをしてくれるサイトを紹介したいと思います。
Free Reading Test
こちらはレベル別、分野別の英文のリーディングスピードを測定することが出来るサイトです。
レベル1−4が子供向け、レベル5−9が大人、レベル10−13がアドバンスドレベルとなっています。
分野は一般、アメリカの歴史、科学、有名人の4つで、各3つあります。スタートボタンを押した後、英文を読み終えたらストップボタンを押します。その後、内容について4つ質問があります。
全ての問いに答えると、リーディングスピードと、内容理解度が表示されます。実際に子供レベル・一般と、大人レベル8・科学で測定してみました。
子供レベル1は、子供が動物園に行き、ライオンを見学するストーリーです。
日本では中学英語レベルにあたるのではないかと思います。内容も簡単なので、リーディングスピードは270語/分、内容理解度は100%でした。
大人レベル8、科学分野はゴールドについてです。日本の大学受験レベルの英語程度ではないでしょうか。レベル1と比較すると、内容が難しくなっているため、リーディングスピードは194語/分、理解度は100%となりました。
こちらのテストは、レベル別、分野別になっているため、自分が普段読むレベルの英文でリーディングスピードを測定出来るのが利点です。
内容理解度も問われるので、ただ早く読むだけではなく、正確に読めているかを知ることも出来ます。
まとめ
英文を読む時に、日本語に訳しながら読む「訳読」と、「読む」ことの違いを意識する必要があります。
時には辞書をひきながら、1文1文を丁寧に訳していく読み方も必要ですが、社会人の場合、ほとんどはそこに書かれている情報が分かればよい、という読み方になるのではないでしょうか。
返り読みをせずに、頭からどんどん英文を読む方法を学んだら、時々でもよいので、読解スピードを上げることを心がけてみて下さい。
今回紹介したサイトで定期的に読解スピードを測定することで、英文を読むスピード、精度が徐々に上がってくるのが学習の励みになると思います。
最初の頃は、子供レベルでも100語/分で読むのがやっと・・という方も多いかもしれません。
大人レベルの内容を200語/分前後で読めるようになると、一日に読める量が格段に増えます。
たくさん読むことで語感が身につき、知らない単語でも文脈で分かるようになるなど良いことずくめです。
だらだらと英文を読んでいては、なかなか読解スピードは上がりません。“読解の時間のうち10分は速読の練習に使う”など、時間を確保するとよいでしょう。
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