タイヤ業界の動向・年収 2016年度大手企業の調査・比較

業界研究

自動車に限らず航空機などの乗り物が存在する限り、一定の需要があり続けるタイヤ業界。

国内の自動車保有台数と生産台数の減少に伴って成長が鈍化してきているとも言われていますが、新興国においては順調な成長が見られるため、今後とも国内のタイヤメーカーの成長は続くと考えられています。

ここでは、そんなタイヤ業界の動向と、これからタイヤ業界に転職・就職を考えている方のためのアドバイスを紹介していきます。

タイヤ業界の基本情報

タイヤ業界は、国内でも最も成熟した市場のひとつと言われています。

国内のタイヤ業界をけん引しているのは「ブリヂストン」で、2013~14年の売上高ベースでシェア率は56.4%と圧倒的なシェアを誇っています。

また、世界のタイヤメーカー別のシェアランキングでも、ブリヂストンは14.6%のシェアがあり世界最大のタイヤメーカーとなっています。

ちなみに2位のミシュラン(13.7%)、3位のグッドイヤー(9.4%)が、世界のタイヤメーカーのビッグ3と言われています。

 

2001年の時点では、ブリヂストン・ミシュラン・グッドイヤーの3社だけで、56.7%というシェアがありましたが、現在では上位3社のシェアは4割弱になっています。

上位3社のシェア率が下がった理由としては、韓国のハンコックや台湾の正新ゴムといった新興メーカーの台頭が一因として挙げられますが、同時に大手のタイヤメーカーがシェア率にこだわらなくなってきているという理由もあります。

 

タイヤ業界では、1980年代に世界的な規模で、業務提携や買収など業界の再編が続いた時期がありました。

激しいシェア争いが繰り広げられ、業界再編が進んでいくうちに、大手のタイヤメーカーは、価格競争を伴う過剰な争いは、自社の収益性を下げるだけの割に合わない競争だということに気付き、ブリヂストンなどは、いち早く「脱シェア」の方向に傾きました。

現在、大手のタイヤメーカーは、低価格競争の波にのまれるのではなく、付加価値についた高機能タイヤの開発に力を入れています。

 

タイヤ業界の市場規模は、2013年7月~14年6月の決算において6兆3,232億円、経常利益は6,371億円、平均勤続年数は16.4年、平均年齢は41.3歳、平均年収は577万円です。

タイヤ業界は、売上高純利益率が前年比+5.3%、過去5年の伸び率も+3.5%と堅調に成長を続けています。

また、他業界に比べて平均年齢・平均勤続年数が長いことから、安定して働き続けることができる業界とも言えます。

タイヤ業界 ~今後の展望~

タイヤ業界の今後の展望を語る上でポイントになるのが、『新興国市場の開拓』と『環境問題への配慮』という2つのワードがあります。

『新興国市場の開拓』

国内メーカーの海外市販用のタイヤ販売は、中国をはじめとするアジア圏、インド、中近東などの新興国で順調な成長が窺えます。

海外における日本製の家電や自動車のブランド力が非常に高いものがありのと同じように、日本のメーカーのタイヤのブランド力も高く、今でも新興国の富裕層からは支持されていますし、今後、新興国の経済が発展していくことで、日本のメーカーのタイヤの需要がより増加していくことが考えられています。

新興国では、韓国のハンコック、マキシスで有名な台湾の正新ゴムなどが低価格のタイヤを販売しシェアを拡大していますので、国内メーカーは海外メーカーとの差別化をどのように図り、どんな層をターゲットにしていくかが新興国の市場で勝負をしていくポイントになってきます。

『環境問題への配慮』

現在、大企業の責務として、二酸化炭素(CO2)の排出量削減が求められています。

それで、タイヤ工場から排出されるCO2や、タイヤを輸送する際のトラックから出るCO2を削減するための対応が必要になってきています。

世界トップシェアのブリヂストンでは、長期目標として先進国や途上国を含めたグループ全体で、グローバル目標(50%以上削減)を掲げています。

とはいえ、CO2を削減するために、トラック輸送から鉄道もしくは船舶を利用した輸送に切り替えるというのも簡単なことではありません。

今後タイヤメーカー各社が、どのようにCO2排出量削減に取り組んでいくかということも、業界の流れを動かす大切なポイントになるかもしれません。

タイヤ業界の企業一覧

【国内メーカー】

  • ブリヂストン
  • 住友ゴム工業
  • 横浜ゴム
  • 東洋ゴム工業
  • 東海ゴム工業

【海外メーカー】

  • ミシュラン
  • グッドイヤー
  • コンチネンタル
  • ピレリ
  • ハンコック

タイヤ業界を代表する企業の基本情報

【ブリヂストン】

ブリヂストンは1931年の創業以来、積極的に世界進出を果たしており、2005年にはミシュラン社を抜いてタイヤ業界で世界トップシェアを獲得しています。

売上高も国内2位の住友ゴム工業の約4倍以上と圧倒的な強さを誇っています。

基本情報

  • 売上高:3兆7,902億円(2015年12月実績)
  • 経常利益:4,870億円(2015年12月実績)
  • 平均勤続年数:13.5年
  • 平均年齢:38.8歳
  • 平均年収:661万円

住友ゴム工業

住友ゴム工業は国内第2位(世界6位)のタイヤメーカーです。

「ダンロップ」や「ファルケン」ブランドのタイヤの開発・製造・販売を行っています。

2013年には、『エナセーブ100』という、石油などの化石資源に依存しない世界初のタイヤを発表し注目を集めました。

基本情報

  • 売上高:8,486億円(2015年12月実績)
  • 経常利益:788億円(2015年12月実績)
  • 平均勤続年数:16.6年
  • 平均年齢:40.6歳
  • 平均年収:641万円

【横浜ゴム】

国内第3位(世界8位)のタイヤメーカーである横浜ゴムは、「ADVAN」「BluEarth」といったハイパフォーマンスタイヤをはじめ、環境に貢献する製品を世界中に展開しているグローバルカンパニーです。

2014年には、韓国のクムホタイヤと次世代タイヤの開発のために技術提携契約を結んでいます。

基本情報

  • 売上高:6,298億円(2015年3月実績)
  • 経常利益:493億円(2015年3月実績)
  • 平均勤続年数:15.6年
  • 平均年齢:39.1歳
  • 平均年収:616万円

転職・就職へのアドバイス

タイヤ業界の大手はグローバル化が進んでいるため、国内市場の伸びが低迷しても新興国市場の販売で一定の成長をしていくことが可能な業界です。

国内メーカーの持っているブランド力や品質は、新興国市場で韓国や台湾などのタイヤメーカーの低価格のタイヤに十分対抗することができます。

タイヤ業界は、今後も安定した成長が見込まれますので、転職・就職先としては魅力的な業界です。

同業界から転職する際には、経験や実績などが評価の対象になりますので、どんな部門でどんな業務に携わり、どんな実績を残してきたかをはっきりと伝えられるようにしておくことが大切です。

また、就職を考えている方は、採用試験を受ける会社の情報をできるだけ多く収集し、自分がその会社に入社することで、会社にどのようなメリットがあるのかを論理的に説明できるようにしておくと良いでしょう。

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