合成繊維業界の動向・年収 2016年度大手企業の調査・比較

業界研究

長年、日本の基幹産業として成長してきた「繊維業界」。

業界の注力分野は、天然繊維から合成繊維に、そして現在では、高付加価値繊維の生産へと、時代とともに移り変わってきました。

ここでは、炭素素材などの高付加価値繊維も取り扱っている、合成繊維業界の基本情報と今後の動向について、さらには転職・就職を考えている方に役立つ情報を紹介していきたいと思います。

合成繊維業界の基本情報

合成繊維は、人工的に作りだした繊維で、ポリエステル・アクリル・ナイロンといった代表的なものから、レーヨン・キュプラといった再生繊維、アセテート・トリアセテートなどの半合成繊維など、さまざまな種類があります。

こうした合成繊維の製造に携わっている産業が、合成繊維業界になります。

日本の合成繊維業界の歴史は、1950年に日本初の合成繊維「ビニロン」の生産が開始された時に始まりました。

ちなみに、この「ビニロン」は、ナイロンに続いて世界で2番目に作られた合成繊維でもあります。

 

1968年頃には、ナイロン・ポリエステル・アクリルという3第合成繊維を中心とした産業体制が確立され、基本構造は今まで大きく変化することなく続いてきています。

合成繊維業界は、1970年代に急成長しましたが、その後、量から質を重視する時期に突入して業績が停滞。

さらに2008年の世界的な金融危機の影響をもろに受け、生産量は1967年代の水準を割り込むまで減少してしまいました。

現在は、各社がそれぞれの強みを活かした高機能・高付加価値製品の開発・製造に力を入れています。

 

合成繊維業界は、人口の減少や海外からの衣料製品の輸入拡大などを背景に、国内市場は減少傾向にあります。

そこで、各社ともに、自動車を中心とする非衣料用へのシフトを進めていますので、今後の業績が回復は、自動車産業の活況にかかっているのが実状です。

合成繊維・天然繊維業界全体の市場規模は、2013年7月~14年6月の決算において2兆2,927億円、経常利益は4,473億円、平均勤続年数は16.5年、平均年齢は42.0歳、平均年収は533万円となっています。

合成繊維業界 ~今後の展望~

合成繊維業界の今後の動向でキーワードになるのは『海外進出』と『高付加価値繊維の開発』です。

『海外進出』

合成繊維の国内市場は縮小傾向にありますが、世界的には新興国の経済発展を受けて、市場は拡大してきています。

つまり、海外シェアの拡大が、業績回復に直結してくるという状況です。

しかし、すでに中国やインド、韓国、台湾などのメーカーが、合成繊維を積極的に海外市場に売り込んでいるため、日本企業は価格競争しても利益が確保するのは難しくなっています。

そこで、日本の合成繊維企業は、高強度・高弾性繊維である炭素繊維や高耐熱性繊維であるアラミド繊維など、高性能・高機能繊維の技術を生かした製品を提供することで勝負していくことになります。

『高付加価値繊維の開発』

高付加価値繊維の代表的なものに、炭素繊維(カーボンファイバー)があります。

強度・弾力に優れるこの繊維は、金属材料に代わる素材として需要が増していくことが予想されています。

例えば、自動車業界では高級車種を中心に炭素繊維が、多くの部分で使われるようになってきていますし、航空機業界でも、新型機に炭素素材が使われ始めています。

 

現在のところ、炭素素材分野では、日本の企業が世界シェアの7割を占める寡占状態ですが、欧米や台湾のメーカーが開発・生産能力を増強していますので、今後この分野でも激しい競争が起こってくると考えられています。

炭素素材の開発には、多額の研究費と設備投資が必要になりますが、この分野でさらなる品質向上とコスト削減を図ることができれば、世界的に影響力を強めることができるでしょう。

合成繊維業界の企業一覧

  • 東レ(繊維事業)
  • 旭化成(ケミカル・繊維)
  • 帝人(高機能繊維・複合材料)
  • クラレ(繊維)
  • 東洋紡
  • 三菱レイヨン
  • セーレン
  • ユニチカ
  • 東邦テナックス

合成繊維業界を代表する企業の基本情報

【東レ(繊維事業)】

繊維業界国内単独首位にいるのが東レです。

東レの繊維事業では、ナイロン、ポリエステル、アクリルの3大合成繊維すべてを展開しています。

また、炭素繊維において世界1位の生産高を誇っています。

基本情報

  • 売上高:8,567億円(2015年3月実績)
  • 営業利益:556億円(2015年3月実績)
  • 平均勤続年数:13.9年
  • 平均年齢:36.7歳
  • 平均年収:661万円

【旭化成(ケミカル・繊維)】

旭化成は、化学の技術をベースにケミカル・繊維・住宅・医薬品・電子材料・建材事業などを多角的に展開している持株会社です。

ケミカル・繊維事業では、地球にやさしい再生セルロース繊維「ベンベルグ」(キュプラ)や、ポリウレタン弾性繊維「ロイカ」などの高品質な製品を製造しています。

基本情報

  • 売上高:9,546億円(2015年3月実績)
  • 営業利益:421億円(2015年3月実績)
  • 平均勤続年数:15.9年
  • 平均年齢:43.3歳
  • 平均年収:902万円

【帝人(高機能繊維・複合材料)】

帝人は、産業繊維・透明樹脂・化成品・医薬品などを手がける持株会社です。

炭素繊維やアラミド繊維といった高機能製品分野では、世界的にも高い技術力が評価されています。

基本情報

  • 売上高:1,355億円(2015年3月実績)
  • 営業利益:144億円(2015年3月実績)
  • 平均勤続年数:19.1年
  • 平均年齢:42.1歳
  • 平均年収:662万円

転職・就職へのアドバイス

合成繊維業界へ転職・就職を考えている方は、まずどんな職種があるのか調べておくと良いでしょう。

ここでは、合成繊維業界特有の職種(研究職・商品開発職・生産職・営業職など)を挙げて、どんなスキルが求められるか紹介していきます。

研究職は、クライアントから要求される合成繊維を開発するために、さまざまな素材を研究し、実験、解析などを行います。

商品開発職は、自動車メーカーや電機メーカーなどとコミュニケーションを取りながら、顧客の要求を満たす商品を開発していきます。

 

生産職は、製品を生み出す機械設備の設計や改善、保守に取り組みます。

営業職は、顧客に自社製品の売り込みを行い、交渉するとともに、その際に得た情報を研究や開発チームにフィードバックします。

こうした職種に分かれていますので、どの職種が自分の経験やスキルを活かせるかよく考えて応募するようにしましょう。

基本的にどこの職種においても、コミュニケーション能力が大切になってきますので、採用試験の際には、円滑な情報交換や意思の疎通ができる人間であるということを理解してもらうことができるように、しっかり準備して臨むようにしましょう。

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