テレビ番組や雑誌の特集などでも「地方移住」や「田舎暮らし」が取り上げられる頻度が増え、「働き方改革」というキーワードともつながり、地方の故郷に戻るUターン転職を考えている都会生活の会社員は増えてきたのではないでしょうか?
しかし、Uターン転職は都会から離れて故郷のある地方に定住することが前提であり、通常の転職とは大きく異なります。そのため、通常の転職以上に事前の情報収集や準備が必要であり、難易度も高くなります。

ここでは、まずUターン転職の概要と実態をつかみ、そのよくある理由と傾向を確認します。そして、Uターン転職の難易度を検討してやり方をアドバイスします。

 

Uターン転職の概要と実態

東京や大阪などの大都会に出て就職していたけれども、何かのきっかけで故郷に戻って働くことをUターン転職と呼びます。
故郷ではなく、別の地方に定住して働くJターンや、都会で生まれ育ち就職していたけれども転職して地方に定住するIターンという転職の仕方も生まれています。

Uターン転職には、

  • 田舎の実家に戻って農業なども含めた暮らしを前提としたもの
  • 故郷に近い地方都市に転職

の2パターンがあります。

近年は人手不足が地方にまで及んでおり、求人情報も増えていると思われることから、故郷にUターン転職が増えているのではと推定しますので、実際の数字で検証してみます。

 

Uターン移動者は増えている?

厚生労働省が5年ごとに行っている人口移動調査において、人口移動者のうちのUターン移動した割合がわかります。
2016年度のデータで確認しますと、

  1. 全移動者に対するUターン移動者はここ10年ほぼ同水準です。(2006年:19.9% →2011年:20.5%→2016年: 20.4%)意外な結果ですが、地方の求人倍率が上向いてきたのはここ数年ですので、これから増えるのではないかと推測されます。
  2. 15〜29 歳のU ターン移動者割合は減少しています。(2011年:14.4% → 2016年: 11.8%)若者の都会暮らしの願望は、マスコミやネットの影響もあり、ますます高くなっているのだと思います。
  3. 女性の30〜39 歳のU ターン移動者割合が増加しています。(2011年:19.9% → 2016年:23.4%)、これは男性に見られない傾向のため、Uターン転職ではなく、離婚で親元に戻っているのではと思われます。
  4. 60 歳以上のU ターン移動者割合が増加しています。(2006年:23.9% → 2016年: 28.2%)これは、定年後にUターンするケースが増えているのではと推定します。

数字的にはまだUターン転職が増加しているとは言えませんが、若者のUターン移動者割合が低下しているということは、逆に、これからその中からUターン転職者が増えてくるのではとも考えられます。

 

地方の求人倍率は都会よりかなり低い?

独立行政法人労働政策研究・研修機構のデータによると、2018年3月の求人倍率は全国平均1.59で、都道府県別に見ると、東京2.07(最高)、大阪1.72、愛知1.93に対し、沖縄1.12(最低)、北海道1.20、高知1.21と、やはり、都会と地方では大きな差があります。ただ、福井2.03、富山1.99、石川1.97と北陸3県は非常に求人倍率が高く、メーカーの地方工場や北陸に本社がある優良企業が多いためと考えられ、Uターン希望者には大きな追い風になっています。

 

地方の年収は都会よりかなり低い?

2016年9月~2017年8月の1年間に大手人材サービス会社が登録した約30万人のデータを元に、正社員として就業している20~59歳までの平均年収を都道府県ごとにまとめたデータを抜粋しました。

平均 男性 女性
東京都(最高) 452万円 499万円 389万円
沖縄県(最低) 356万円 385万円 301万円
北海道・東北 377万円 406万円 312万円
関東 440万円 484万円 370万円
東海 406万円 440万円 327万円
関西 395万円 435万円 329万円
中国・四国 386万円 416万円 318万円
九州 372万円 405万円 311万円

やはり、最高年収の東京都と最低の沖縄県では年収差は大きく、男性で約3割114万円の差があります

ただ、収入は下がっても、地方では住居や生活費が下がるため額面どおりのマイナスと言えません。
また、地方では、人口増を図るため新規定住者には行政がいろいろな定住支援サポートを行っており、うまく利用すれば生活水準の大きなダウンを防ぐことができる可能性があります。

 

Uターン転職の理由と傾向

Uターン転職は、生活拠点を都会から地方に移すことが前提になり、通常の転職より大きな決断が必要です。その理由は、家族に関わる理由と働き方・生き方に関わる理由の2つに大きく分類されると思います。

 

子育てのためにUターン転職

保険会社の調査によると、子供が成人するまでの養育費は、幼稚園から大学まですべて国公立の学校でも、1人3000万円かかると言われており、住居費や生活費が高い上に共稼ぎをしたくても待機児童問題がある大都市では大変です。
地方の故郷に帰れば、住居や生活費は安く、親は喜んで孫の援助をしてくれますので、子育て家庭にとってはメリットが大変多いと思います。

 

少子化で跡取りとしてUターン転職

少子化は全国的に進んでおり、地方では今でも山や土地の跡とりの問題があります。
大企業に勤めることができなくてもどこかで雇用を得ることができれば、引き継いだ資産や農作業などで充分暮らしていくことができ、親孝行にもなることから、選択肢に入ると思います。

 

妻の親元にUターン転職

一人っ子の女性と結婚し、義理の親の願いを受けて妻から実家の近くに帰りたいと相談され、妻の地元にUターン転職したという話も聴きます。

 

新卒3年目までにUターン転職

新卒で勤務地はどこでもいいとして採用され東京に赴任し、初めての都会の一人暮らしは当初楽しかったが、仕事が本格化し出した頃に辛くなり、里心もついて実家に戻るUターン転職があります。
厚生労働省の学歴別卒業後3年以内離職率の推移でみると大卒で3割、短大・専門卒や高卒では実に4割が3年目までに転職しており、その中にはこういうUターン転職も多く含まれているはずです。

 

定年退職後にUターン転職

子供は独り立ちし、親が要介護になっていることから、定年退職後に地元に戻って再就職するUターン転職があります。地方での年収は低いですが、都会での再就職でも大きく年収は下がるため、それなら親のめんどうを見ることができる地元にUターン転職という発想になります。

 

同じ職種の求人を見つけてUターン転職

東京でITエンジニアとして勤務したのち、自分の地元にもITエンジニア求人があるとわかり、応募してUターン転職するようなケースがあります。

IT企業の中には、大都市でのエンジニア採用が難しくなっていたため、地方都市に拠点を作りそこで採用を進めているところもあり、そこに転職することで職種を変えることなくUターンできる場合があります。
また、円が100円台で安定していることから、メーカーも国内工場に投資を積極的に進めており、そこで発生する雇用を利用したUターン転職もあります。

 

Uターン転職の難易度とやり方

 

Uターン転職は、生活拠点と就職先を同時に変えるという点で通常の転職より難易度は高くなりますし、その他にもいくつか難しい点があります。

 

価値観をどこに置くか

Uターン転職は、

  • 子供の養育のため
  • 跡を継ぐため
  • 親の介護をするため

など、転職以外に優先する理由の達成に価値を持てば、転職先の仕事内容や少々の年収の低さなどは気にならないと思います。

しかし、現在の職種やスキルを活かしてUターン後も相応の充実感や収入に価値観を求めた場合は、達成できなかったときに、故郷に生活拠点を戻してしまったことも含め、かなり大きなダメージを受けます。

 

転職活動する場所が離れている

現在はネットで全国の求人情報を簡単に集めることができますが、その中から有力な候補を見つけるにはその会社を現地で確認したいものです。

また、面接はTV会議という手段もありますが、地方企業では直接の面接が一般的なため、その日程を現職と調整し、現地に出向くという手間と時間とお金がかかります。

 

その地方でしか得られない求人情報がある

全国のすべての求人情報がネット上にあるわけではなく、その地方のローカル媒体にしか載らない求人情報もあります。その情報を遠く離れた場所からつかむことはむずかしいことです。

以上のように難しい点がいくつかありますので、それらを踏まえてUターン転職のやり方をアドバイスします。。

 

Uターン転職の目的を明確にする

普通に転職するのではなくUターン転職するということは、やはり、「Uターン」を最大の目的にすべきであり、その上で、暮らし方、働き方を可能な範囲で探すべきだと思います。

 

地元のネットワークを活用する

地元にしか出ない求人情報をつかむには、地元の助けを借りるしかありません。地元には、親兄弟、親戚、友人など強いネットワークがあるはずですから、遠慮せず最大限活用しましょう。

 

転居先と転職先のどちらが先か

親元に帰るなら、転居先が決まっているので、そこから通勤できる転職先を絞ることができます。

そうでなく、転居先をフリーで決めるなら、転職先とどちらを先にするか決めておく必要があります。独身ならあまり問題ありませんが、家族、特に子供が居る場合は、学校のこともあり、良く考えて決める必要があります。

 

大手の人材エージェントに複数登録する

地元の優良企業の求人であれば、大手の人材エージェントもつかんでいます。

ただ、エージェントによって強い地域・弱い地域がありますので、複数の人材エージェントに登録し、求人情報の漏れがないようにして転職活動を本格化する前にどんな求人があるかを掴んでおくべきです。

 

当面の費用を確保する

最終的に決まるまで何度も現地を往復したり、決まってからは引越しや住宅の初期費用がかかったりと、いろいろ出費がかさみます。

当面必要な費用の概算はつかんで用意しておく必要があります。

 

まとめ

普通の転職だけでも人生の大きなイベントですが、生活拠点も同時に変えるUターン転職は親兄弟や親族友人を巻き込むビックイベントであり、その分やり直しが非常にむずかしく、相当の覚悟が必要です。

ただ、難易度だけを気にして躊躇すると、せっかく故郷に戻る機会を失うことにもなります。

Uターン転職の機会が訪れたら、慎重かつ大胆に行動して、ご自分の人生をUターンさせないように取り組んでください。

 

第 8 回人口移動調査報告書 国立社会保障・人口問題研究所
http://www.ipss.go.jp/ps-idou/j/migration/m08/ido8report.pdf
(2018年5月9日)
独立行政法人 労働政策研究・研修機構 職業紹介-都道府県別有効求人倍率
http://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/shuyo/0210.html
(2018年5月9日)
転職・求人DODA 平均年収ランキング2017(47都道府県の平均年収)
https://doda.jp/guide/heikin/area/
(2018年5月9日)
子供応援便り 関連資料(AIU保険調べ)
http://kodomo-ouen.com/data/02.html
(2018年5月9日)
厚生労働省 学歴別卒業後3年以内離職率の推移
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000140596.pdf
(2018年5月9日)