今年に入り
- チャーター便
- クルーズ船
- 休校要請
- パンデミック(世界的流行)
- コロナショック(株価急落)
と感染症、新型コロナウイルスに関連するニュースが続々と報じられるようになりました。観光、飲食など各業界に大きな影響が出てきていることを耳にしていましたが3月13日、
・内定取り消し
に関する情報が入ってきました。
またさかのぼって調べると3月6日には厚生労働省は早々に経団連などに要請を行っていました。
まず多大な影響を受けている業界企業内定者はある程度、覚悟だけはしておく必要がありますが、通知も連絡もないのに不安になるのはナンセンスです。
個人的には1日も早く新型コロナウイルスが収束し、内定取り消しなどなく、不安が取り越し苦労、杞憂に終わることを願うばかりです。
内定取り消しとは?
内定取り消しは文字どおり就職活動で学生に内定を出していた企業が、その決定を取り消すことです。もちろん転職活動を通じて内定を得た方も例外ではありません。
まずは内定者の立ち位置、内定が法律上どのような性質かを見ていくことにします。
内定者(学生)の法律上の立場
内定通知をいただき承諾をした時点で実は、お互い労働契約関係は始まっています。もうすでに会社の一員となっている、そういう認識でいいと考えます。
たとえどんな契約でも(公序良俗に反しないかぎり)一度、結んだらお互いカンタンに破棄することはできないというのは理解されていると思います。内定も同じで、契約が成立している以上、企業は理由なく一方的に契約解除を行うことはできません。
また内定取り消しは前途ある若者の人生に大きな失望と経済的機会損失を与えますので、厚生労働省は採用取り消しについて以下の基本的な方向性を掲げています。
内定取り消しの基本方針(厚労省)
要は正当な理由がないと内定取り消しはできないということなのですが、何をもって正当というのか、次章で説明します。
内定取り消し、正当な理由例
通常時どのような理由で内定取り消しが行われているか、わかりやすい説明が以下です。
2.病気や怪我等により、正常な勤務ができなくなった場合
3.経歴等に虚偽があった場合や、犯罪歴が発覚した場合
4.内定時には予測しえなかった経営不振等で、既存社員の整理解雇等も発生しているような場合
5.内定通知書や誓約書等に記載されている内定取消事由に該当する場合(合理的なものに限る)
つまり会社側の事情で内定を取り消せるのは、
・経営不振である
・既存社員がリストラされている
上記事由が発生していることが大前提といえそうです。
経営不振であること
今イベント自粛、休校要請、不要不急の外出を控えているのが現状ですから、たしかに多くの業界が影響を受けています。具体的には前年(1年前)もしくは前月と比べ売り上げが落ちているとそれは経営不振に陥った状態といえるでしょう。
しかし会社には内部留保があります。なかに設備投資も含まれますが家庭でいう預貯金のようなものです。潤沢な内部留保があるのに売り上げが落ちただけで経営不振に陥ったとは言い難いのではないでしょうか。
昨年、実は従業員の給料は上がらないのに、日本企業の内部留保は増加していることが話題となっていました。日本企業にはなんと460兆円以上の内部留保金が存在していると報じた記事もあります。一寸先は闇ですからこれまで好調だった企業は倒産回避のために備蓄しているはずです。
リストラが行われていること
リストラには、
・整理解雇
があり、新型コロナウイルスの影響下で急激に深刻な経営不振に陥っているのであれば、すでに現場では整理解雇が行われている可能性があります。
ただし整理解雇もカンタンに行うことはできません。以下、関連記事で整理解雇について解説している箇所を抜粋します。
“整理解雇は下記項目と照らし合わせ有効か否か判断します。
以下4点は整理解雇の4要件ともいわれています。
・解雇回避の努力
・人選の合理性
・解雇手続の妥当性
不況・経営不振などによるか、会社側が配置転換や希望退職者募集などで解雇を避けようとしたか、整理解雇の対象選定は公正(客観的・合理的)か、労働組合や労働者に納得のいく説明を行ったかなどを厳しく見るのです“
ちなみに上記要件は4つすべてを満たさなければなりません。よってリストラ、整理解雇はある程度、手順を踏んで行うことになるわけですから相当な時間がかかるのです。
新型コロナウイルスのニュースが報じられるようになった、日本で感染者が出た、影響が出はじめたのは少なくとも今年に入ってからで、あまり時間は経っていません。
したがって少なくとも今は、解雇回避の努力をしている時期だと考えます。具体的には配置転換、希望退職者の募集段階と思慮します。
それなのに、いきなり学生に内定取り消しを通知してくるというのは極端にいえば、
・倒産不可避
・勝手な会社
どちらかではないかと思われます。
昨年も実は23事業所35人(うち大学生16人)に内定取り消し事案が発生しています。これでも昨年は少ないほうだったといいます。しかしうち1事業所は事業活動縮小の必要性を認められず、取消対象者の就職先確保支援も行っていなかったとして厚労省が実名を公表しています(労働新聞社)。
通常時でさえ実名公表を受けるような会社が、平気で内定取り消しを行っていますので、不安定な時期に乗じて内定取り消しを強行する会社が多数、出てきてもおかしくはありません。
そのためまずは会社の言い分を鵜呑みにせず「その内定取り消し理由は本当なの?」と一度、勘ぐる必要があります。
またリテラシーがある、かしこい会社の多くは、
・アコギなことをすると厚生労働省が会社実名を公表する
・泣き寝入りしなかった内定取消者から損害賠償請求されると敗訴する
可能性を重々承知していますから、内定取り消しを濫用することはしないでしょう。そこで注意が必要なのは「内定辞退要請」です。
内定辞退要請とは?
客観的・合理的理由がなく厚生労働省などから内定取り消しの正当性が認められそうもない企業が、内定者に「自主的に内定を辞退してくれませんか」と要請することです。
解雇したい社員をうまく自己都合退職に持っていく退職勧奨と同じようなやり方といえます。
内定辞退は、あくまでも内定者側が自主的に「辞めたい」と申し出てきたという既成事実が必要となってくるため、巧妙に仕掛けてくる可能性が高いです。
内定取り消し、内定辞退要請の流れ
おそらく内定取り消し、内定辞退要請は同じ手順で、行われるでしょう。
1.通知、連絡
内定取り消しの場合はメールなど文面で通知が送られてくると思われます。
内定辞退要請の場合、まず考えられるのが電話連絡です。口頭で「お話したいことがありますので来社してほしい」と個別に呼び出すでしょう(極力、証拠を残さないため)。
2.説明
会社を訪問すると担当者は、もっともらしいことを言って「内定取り消しを受け入れなければならない」「自主的に内定を辞退しなければならない」という空気へと持っていくことが予想されます。
3.サイン
そして担当者から、「内定取り消し承諾」「内定辞退」と書類に一筆書くよう、印鑑を押すよう促されます。
決して書類にはサインせず「急なことで今決められません」「考えさせてください」「家族と相談します」と伝え、とりあえず帰る、その場から去るのがベストでしょう。その理由は4つあります。
内定取り消し、内定辞退要請を受けるべきではない理由4つ
・経済的影響
・支援を受けられない
・採用活動慎重化
で、順に解説していきます。
1.既卒になる
まだ1月くらいであれば正直、就職できなければもう1年、大学に残って就職活動からやり直すという選択もできるのですが、3月、後期試験も終え、卒業も決まり、ほとんどの大学で在籍を残すことは難しいのではないかと考えます(ここはあきらめず大学や教授とご相談いただければ)。
既卒とは大学を卒業して以降、就職を一度もしていない若者を指します。せっかく大学在籍中に内定まで得たのにまた既卒(無職)という立場で就職活動をしなければなりません。
2.経済的影響
内定取り消しを言い渡され、その補償を要求すれば会社は応じる可能性があります。ただし可能性にすぎません。
またいくら要請があったからといって自ら内定を辞退してしまうと、自己都合扱いとなりますから会社は1円も出さないでしょう。
辞退しなければ4月から働け、給料も得られますが、辞退すると無職になります。
3.支援を受けられない
厚生労働省は内定取り消しを行う場合、会社に“就職先の確保について最大限の努力を行う”よう求めています(新規学校卒業者の採用に関する指針)。しかし内定を辞退してしまうと自己都合扱いとなりますから会社は支援を行わないでしょう。
4.採用活動慎重化
ここ数年、売り手市場(学生有利)といわれてきましたが、その状況が一変しています。
帝国データバンクは2月、企業意識調査を実施し1万社中、正社員採用予定企業は59.2%で、新型コロナウイルスへの懸念で採用に慎重になりつつあると分析しています。
一瞬のはやまった判断でこれからまた就職活動を余儀なくされます。また今年は説明会がなくなり、オンライン面接が急遽、導入されるなど昨年と勝手が違います。そのため苦戦を強いられるかもしれません。
内定取り消し、内定辞退要請を受けたらやるべきこと
万が一ですが内定取り消し、内定辞退要請を受けたときは、どちらもやるべきことは一緒です。
理由を明らかにしておく
内定取り消しの当事者となった場合は、その理由が正当かどうかを、明らかにしておくべきです。
多くは書面(メールなど)で通知が来ると思われますので、そこに理由が書かれているはずです。しかし口頭で連絡が来た場合は注意が必要です。
できれば「理由も含め書面でいただけますか?」と求め、応じてくれそうになければ忘れないうちに連絡日時、担当者の名前、理由をメモするようにしましょう。またその際、補償について、就職先確保の支援についても確認できればベストです。
またいきなり何も告げず会社に呼び出された場合は、内定辞退要請かもしれませんので心積もりだけはしておきましょう。そして何を言われてもその場で内定辞退をしてはいけません。
ただ内定辞退はしなくても就職先の現状は把握しておくべきです。担当者が理由を説明するときにはしっかりと耳を傾け、メモをとるようにしましょう。
くどいようですが、たとえどのような理由を聞いても書類にはサインしないようにします。
家族に報告する
特に一人暮らしの方は親に心配かけまいと、ひとりで抱え込みがちです。誰かに話すことで気は紛れ、ストレスも発散できます。
普段離れて暮らしているからこそ、今まさに置かれている状況を正しく伝えておくことは大切です。
そして家族は「大学には言ったのか?」と訊くでしょう。
大学就職課、キャリアセンターに相談する
内定取り消し、内定辞退要請後、書類にサインしないまま必ず大学就職課、キャリアセンターに相談をします。そこで担当者の助言、アドバイスに従うようにしましょう。
大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は、内定取り消しについて次のステップで対応すべきと記されていましたのでご紹介しておきます。
ステップ2:内定先企業から書類にサインを求められても断る
ステップ3:新卒応援ハローワークなどに相談
ステップ4:弁護士等に連絡
ステップ5:新卒応援ハローワークや新卒向け就活ナビで企業探し
まとめ、内定取り消し、内定辞退要請、書類サインに応じる義務はない
内定取り消し、内定辞退要請、これに応じる法的義務などありません。とりあえず書類にサインはNG行動です。本来、義務のないことを求められるわけですから、担当者が
(拒んでいて義務もないのに)書類にサインするようしつこく求めてくる(強要)、書類にサインをしないと「大変なことになる」など害悪を加える旨ほのめかし恐れさせる(脅迫)、書類にサインするまで帰さない(軟禁・監禁)場合、訴えることも可能になります。
決して穏やかなことではなく、そのようなことが起こるのは稀ですが、新社会人として覚えておかれるといいです。
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