これから働き方改革で転職活動が変わる?どうなっていくのか?

転職のノウハウ

働き方改革という言葉が今年になって急速に浸透してきたように思います。なんとなくですがバズワードのように感じています。

働き方改革で焦点となっているのは主に2つで、正社員と派遣社員が同じ仕事をしているのに両者の給与がまったくちがうという格差問題、そして、朝早くから出勤しているのに終電で帰らなければ仕事が間に合わない長時間労働の問題です。

精神科医の樺沢紫苑先生はご自身の著書『神・時間術』で、アメリカ人は定時で帰ることができるように仕事をしているのに残業をしている日本人よりもずっと高い成果を上げていると指摘されていました。

個人的には、いつかこの状況はおかしいという風潮になって変革が起こる瞬間がやってくるのではと思っていました。

そして、とうとう政府主導というかたちですが「働き方改革」への取り組みが始まったのです。

ちなみにですが、「働き方改革」についてランサーズで100人にアンケートをとってみたところ、

働き方改革は今現在どのような状況かご存知ですか?

  • 議論がなされているものの何も決まっていない状態…37人
  • 議論がなされており実行計画が発表された状態…16人
  • 議論もなにもされておらずメディアで話題となっているだけ…11人
  • 職場の問題であり国は会社に委ねている状態…5人
  • わからない…31人

という結果でした。

現時点では「議論がなされており実行計画が発表された状態」ですので進捗状況を知っている方は全体の16%だといえ、多くの方が実行計画の存在をまだ知らないのかもしれません。

そこで、今回は、働き方改革について、その概要、そして働き方改革によって転職活動などがどのように変わるのか?

平成29年3月28日に働き方改革実現会議で決定、公表されたばかりの働き方改革実行計画(以下、計画とする)」をもとに考察などをしていきたいと思います。

そして、この改革を推進して何を解決しようとしているのかを最初に明らかにしておきたいと思います。

 

働き方改革で何を変えようとしているのか?

働き方改革で解決したいと考えていることは次の3つです。

  • 処遇改善
  • 制約克服
  • キャリア構築

この3つをどのように変えるのか細かく見ていきます。

まずは、処遇改善です。これは主に正社員と非正規雇用社員の賃金格差問題を解決しようとする流れです。

次に制約克服です。これは長時間労働の解消、テレワークの導入によってどこででも柔軟に働けるようにする流れで、主にワーク・ライフ・バランスを確保しようとする動きです。

最後にキャリア構築です。これは今回の核心部分ですので後半で詳しく説明したいと思います。

さらにもうひとつ、この働き方改革が本格的にスタートするのはいつになるのか? という疑問も解決しておきたいと思います。

今のところ、令和元年4月からという見方が濃厚です。

産経新聞の記事によると、

“政府は4月以降、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)で法制化の議論に着手し、労働基準法改正案など関連法案の今国会提出を目指す。法案審議は秋の臨時国会以降になる見通しで、法施行は春闘などでの労使協議も考慮し、早ければ31年4月になる方向だ”

と報じられています。

引用元:産経ニュース 働き方改革実行計画を決定 平成31年4月にも関連法施行

【働き方改革】働き方改革実行計画を決定 平成31年4月にも関連法施行
政府は28日、関係閣僚と有識者による「働き方改革実現会議」の会合を首相官邸で開き、同一労働同一賃金の実現や、罰則付きの残...

つまり、早くて2年以内に法制度としてスタートすることになります。

では、次にですが、この働き方改革、労働者たる国民のためでもあるのは間違いないのですが、そのほかにも大きな目的があるようです。詳しく見ていきたいと思います。

 

働き方改革の大きな目的は日本経済再生そして一億総活躍の国創り

計画によると、

“日本経済の再生を実現するためには、投資やイノベーションの促進を通じた付加価値生産性の向上と、労働参加率の向上を図る必要がある”

としています。このように労働参加率の向上を図る働き方改革の先にある大きな目的は日本経済再生なのです。

“そのためには、誰もが生きがいを持って、その能力を最大限発揮できる社会を創ることが必要”

だと説き、家庭環境や事情がそれぞれ異なるなか、

  • 画一的な労働制度
  • 保育や介護との両立困難

こうした壁を取り除く一億総活躍の国創りを行うと明記しているのです。

この目的を達成するため取り組みを行っていくことになるのですが、計画には、その基本的な考え方が明記されていますので、併せて紹介いたします。

 

働き方改革の取り組みの基本的考え方とは?

計画によると、次のようなことが書かれています。

  • 各人の意思や能力、事情に応じた柔軟な働き方を選択できる社会を追求
  • 働く人の視点に立ち労働制度を抜本から改革し企業文化や風土までもを変える
  • 自分の未来を自ら創っていけ意欲ある方にはチャンスが与えられる
  • 世の中から「非正規」という言葉をなくす
  • 日本の単線型キャリアパスを変えていく

としています。

なかでも、最後の方針は、転職活動において重要なカギとなります。

単線型キャリアパスとは?

今、働かれている会社組織がどうなっているのかを思い出されてみてください。たとえば、

一般社員→主任→係長→課長→部長

と、多くの会社で用意されている出世のレールが管理職ひとつだけということ。

これが単線型キャリアパスです。

単線の対義語は複線となりますので、今後、働き方改革では複線型のキャリアパスへと変えていくということになるのでしょう。

複線型キャリアパスとは?

管理職以外にも、いくつもレールが用意されている人事制度のことす。

例えば、管理職ではないのですが部長と横並びとなる役職としてエキスパート・スペシャリストなどを置くもので、複線型人事制度とも呼ばれています。業績を高めるためには高度専門職の育成や社員のモチベーションが重要だと気が付いている企業はすでに導入しているそうです。

参考文献:株式会社エム・イー・エル

いまさら聞けない人事制度の基本~イキイキ風土を実現するための人事制度(1)~

いまさら聞けない人事制度の基本 | 株式会社エム・イー・エル
エム・イー・エルのコンサルタントによる情報発信です。

単線型キャリアパスの企業で出世コースから外れまいと会社にしがみつく労働者が家庭や健康を犠牲にしてきた、その実態を政府もわかっているようです。

そして、転職が不利にならない柔軟な労働市場や企業慣行を確立できればとしていますので、まちがいなく働き方改革で転職のあり方も変わっていくと考えられます。

続いて、計画の中身を見ていきます。

 

働き方改革では何がどのように実行されていくのか?

これを確認するには、首相官邸ホームページで公表されている計画の工程表を参照するとわかりやすいです。

計画で実行しようとしているテーマは次の9項目です。順に見ていきたいと思います。

  1. 非正規雇用の処遇改善
  2. 賃金引上げと労働生産性向上
  3. 長時間労働の是正
  4. 柔軟な働き方がしやすい環境整備
  5. 病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障害者就労の推進
  6. 外国人材の受け入れ

1.2が処遇改善3~6が制約克服の動きです。

4についてだけ具体的に説明させてください。これはテレワークの導入支援や副業・兼業の推進です。

テレワークとは tele=離れた場所(テレフォンのテレ)work=働く の意で、在宅勤務などを意味します。wi-fi環境が整い、パソコンがあればどこでも仕事ができる世の中ですから、これも実現不可能なことではなさそうです。

最初にお伝えしていたとおり、計画では実行テーマが9項目あるとお伝えしていました。7~9については次章で説明していきます。

 

働き方改革は転職のあり方も変えてしまう?

これより、キャリア構築を解決していくためのテーマ3項目(7~9)についてお伝えしていきます。

7.女性・若者が活躍しやすい環境整備

(主に結婚や子育てで退職した)女性のリカレント教育といった学び直しの支援、職業訓練を充実させるとのことです。また、パートで働く女性が時間を削らずに安心して働けるよう103万円の壁を改善、また、正社員女性が復職しやすい環境をつくる方向のようです。就職氷河期世代、若者が活躍できるよう支援や環境の整備が進められます。

9.高齢者の就業促進

継続雇用延長や定年延長の支援、マッチングも行っていくようです。

8と9、前後しましたが、転職活動において重要なテーマがこちらです。

8.雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の充実

転職・再就職希望者が採用されるよう、その機会の拡大に向けて指針を策定します。また、受入れ企業を支援し、職業能力・職場情報の見える化も行っていくそうです。

補足的に、格差を固定化させない教育についても説明しておきます。

キャリア格差は、教育を受ける段階から始まっているとし、家庭の経済事情(親の年収など)で差ができないよう給付型奨学金の創設などを行い、キャリア構築の門戸を広く開け平等にするようです。

ここで質問なのですが、計画にどうして転職のあり方までもが盛り込まれたのか疑問に感じませんでしたか?

それは国が今の転職のあり方に何かしらの問題があると判断したからのようです。実際に計画の工程表には現状の問題がいくつも挙げられていたのです。

次章で詳しく見ていきましょう。

 

計画の工程表からひも解く、今の転職のあり方では何が問題なのか?

計画の工程表によると、次のような問題が指摘されていました。

  • 一般労働者の転職入職率は8.5%でパートタイム労働者は17.2%…低い
  • 中高年を採用したことがない34.9%の企業は中高年採用をしないと答えた
  • 年齢が上がるにつれ、転職がむずかしくなり、転職後の賃金が減る人も多い
  • 雇用情勢は分野によって偏りがありミスマッチが生じている

これらの問題を働き方改革でどのように解決していくというのでしょうか? 詳しく見ていきます。

 

働き方改革は今の転職のあり方をどう変えていくのか?

働き方改革で転職・再就職者の採用機会を拡げていくことになるのですが、その具体的施策として、

  1. 転職・再就職者の採用機会拡大のための指針の策定
  2. 成長企業への転職支援
  3. 地方の中堅・中小企業等への人材支援、雇用吸収力の高い分野へのマッチング支援
  4. 職業能力・職場情報の見える化

が計画に盛り込まれています。

ここでは、雇用吸収力の高い分野へのマッチング支援と職業能力・職場情報の見える化にクローズアップして情報をお伝えします。

雇用吸収力の高い分野へのマッチング支援

そもそも雇用吸収力の高い分野とは何ですか? という話になるのですが、素直に解釈すると人材不足で困っている分野のことではないでしょうか。

資料を見るかぎり、今の段階では有効求人倍率の高い職業として、保安、建設・採掘、介護、サービス業が挙げられていました。

数年後、状況が変わらなければ、主にこれらの職業分野へのマッチング支援が盛んに行われることになりそうです。

続いては職業能力・職場情報の見える化についてです。

職業能力・職場情報の見える化

技能検定を雇用吸収力の高い産業分野の職種にまで拡大し、若者の受検料を減免するそうです。

また、AI(人工知能)などの成長分野も含め、さまざまな職業の仕事の内容、求められる知識・能力・技術、平均年収といった情報のあり方について、関係省庁や民間が連携して立ち上げる研究会で調査・検討を行うそうです。

そして、資格情報なども含め総合的に提供するサイト(日本版O-NET)を創設するとのことです。

O-NETとは?

O-NETだけで検索すると結婚マッチングサービスが出てきます。しかし、ここではアメリカで運用されているO-NETが正解です。

独立行政法人労働政策研究・研修機構の資料によるとアメリカにおける職業情報には、大きく分けてOOHO-NETがあるようです。幅広く使われてきたのが前者で、

「Occupational Outlook Handbook(職業展望ハンドブック、略すとOOH)」

という冊子で、これは学生と失業者向けのものなのだそうです。

 

そして、後者O-NETですが、これはアメリカ労働省がインターネット上でデータベースとして提供している就職支援の資料のことで「Occupational Information Network (O-NET)」といいます。

これは、900職種が網羅された就職支援専門家向けの詳細な情報源という取り扱いがなされているとのことです。

もし日本版が公開されると転職活動は情報戦になりそうです。現在もそうですが、情報を制することで転職活動は今よりももっと動きやすくより有利になると予想できます。

あわせて女性や若者が働きやすい企業の職場情報をワンストップで閲覧できるサイトも創設するようです。

これらが本当に実現できれば、転職市場は活性化し、転職成功者も多数、輩出されることになりそうです。
では、改革実施を待ってから転職活動を始めるべきなのでしょうか?

考察してみました。

 

転職活動は働き方改革実施を待ってから行うほうが有利?それとも…

たしかに働き方改革が実現すれば転職活動は大きく変わるかもしれません。

ただし、計画の工程表を見るかぎり日本版O-NETが運用開始となるのは2020年度以降の予定で、どのような情報データベースが公開され、どう活かせるのか? 今のところまだわかりません。

また、前出のアンケートで、こんな質問も投げかけていたのですが、次のような結果となりました。

働き方改革で転職や再就職がしやすい世の中になった場合の考えについて教えてください

今の会社や仕事に満足しているから転職も再就職もない…5人

今の会社や仕事に満足しているけどより良い条件の会社や仕事があれば転職にチャレンジしたい…14人

今の会社や仕事より良い条件の会社があれば転職にチャレンジしたい…27人

働き方改革に関係なく転職すべきときがきたら転職する…21人

働き方改革で転職や再就職がしやすい世の中になるとは信じがたい…33人

 

100人中21人の方が働き方改革に関係なく転職する、33人の方が働き方改革には期待していないことがわかりました。

そして、こんなツイートにも、私は共感してしまいました。

大切なのは今、転職すべきか悩んだときは迷わず行動を!

最後に、計画には、たしかに転職について盛り込まれていました。

しかし、あくまでも9項目ある課題テーマのひとつであり大々的な転職改革ではないのです。

今現在も採用意欲の高い企業はたくさんありますし、働き方改革を導入するまでもない優良企業もたくさんあるのです。

転職は思い立ったが吉日です。転職すべきか悩むようであればその時間がもったいないような気がします。

1日も早く行動に移されて結果を出されることをオススメいたします。

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