この記事でわかること

  • 介護離職の実態
  • 介護離職の統計
  • 介護離職をしないほうがよい理由
  • 介護離職を回避するためのヒント
両親の介護のために職場を離れざるをえない「介護離職」が現在、問題となっています。
厳密にいえば介護離職自体が問題なのではなく、介護離職後の介護・看病疲れ、金銭面、再就職面が問題だといえます。親の介護を理由に今まさに離職すべきか(転職すべきか)で悩んでいる方はいないでしょうか?

福祉業界に身を置いている方をのぞき、介護経験がない方は、いくら身内の介護とはいえ、仕事をしながらうまく親の面倒を見るのは負担が大きすぎます。

よって次第に

  • 仕事と介護を両立させることはむずかしい
  • 介護に専念したほうがラクだ

という気持ちに傾いていきます。

やがて仕事を辞めて介護にどっぷりと専念できる生活にシフト。これでラクに介護ができるはずと思いがちですが現実は違います。

実態について見ていきましょう。

介護離職の実態

いざ介護離職をしてみたところ、退職前に期待していたほどの介護負担の緩和はなく、やるべきことも減るわけではありません。むしろ増えるのが実情です。

平成24年度厚生労働省委託調査「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」によると、離職後、「精神面」について64.9%、「肉体面」について56.6%、「経済面」について74.9%の方が、負担が増したもしくは非常に負担が増したと回答しています。

今まで仕事を理由に免除されていたことがドーンと自分の役割として重くのしかかってくるのです。
例えば掃除、洗濯、昼ご飯の用意、そして日々の食材の買い出しなど家事一般もおそらくこなさなければならなくなります。

そのほか

  • 通院や外出の付き添い
  • 金銭管理
  • 役所や施設職員との連絡・相談

なども行わなければなりません。

またお金の問題がいつもついて回ります。親の年金で細々とやっていくにしても、その支給はわずかなものではないでしょうか。足りない分は子世代が補填していくことになります。

最初は最終月の給与が振り込まれ退職日から最大2か月間はお金の心配はなく、介護に専念できるもののその先は、退職金やこれまで貯めてきた預金を少しずつ切り崩して、細々と生活していくことになります。

終わりの見えない日々、しかも日々悪化していく親の体調、状態、介護負担に不安を感じ、カラダもココロも消耗していくことになります。

これが介護離職の現状なのです。

ただ言葉で言い表すよりも数値で見ていただいたほうが、介護離職の深刻さが理解できると思いましたので、次章でまとめます。

統計でみる介護離職の実態

介護離職者は年間およそ10万人

総務省の平成29年「就業構造基本調査」によると、過去1年間に介護や看護のために離職した人数は99000人で、うち男性は24000人、女性は75000人とされています。

この10万人ですが、あくまでも1年間の介護離職者数です。今現在、働かずに介護に専念している方(無業者)は2813000人で働きながら介護をしている人は3463000人となっています。

介護に要する期間は実に5年

公益財団法人生命保険文化センターが行った平成30年度の調査で、どのくらいの期間、介護を行っているのか(行ったのか)を聞いた結果、平均54.5カ月(4年と7カ月)になったそうです。そして4割を超える方が4年以上、介護をしている(した)と答えています。

これは過去3年間に介護の経験がある人を対象としたアンケートであったことから、リアルに近い数値と考えてよさそうです。

介護に要するお金は?

同調査では介護費用にも触れており、公的介護保険サービスの自己負担費用を含んだ介護費用は、月額平均78,000円となっています。

ただし住宅改造や介護用ベッドの購入など、一時費用の合計平均が69万円、必要であったとのことです。

若くして介護離職した場合、退職金が一時費用ですべて飛んでいくということもあり得るわね…

 

また要介護度によって実は、月額の介護費用も変わってきます。ですから平均が78,000円だから安心、なんとか貯金で賄えそうという判断は危険です。

ちなみに要介護度別に在宅(居宅)介護にかかる費用を調べたのですが、比較すると次のとおりです。

 

内容 要介護1 要介護3 要介護5
介護サービス 13,575円 25,030円 40,151円
生活費 10万円 10万円 10万円
医療費 5,500円 5,500円 5,500円
おむつ代 0円 0円 8,000円
月額概算 119,075円 130,530円 153,651円

ベネッセスタイルケアの費用例より月額概算は転職とキャリアアップ計算

 

7万円どころじゃないじゃない!
生活費も含めて11~16万円はかかるのね。だから介護離職して負担を減らそうとしてるのですか?
要介護5でも40,151円となっている介護サービス費用の部分はもっとかかる可能性はあります。あくまでも介護サービス費は一例で、ベネッセスタイルケアのホームページでそのプラン詳細を確認できるのですが、朝から夜までスタッフが常時いてくれるわけではないんですよね…
それでも無収入になるより、働いて介護サービスを利用するように促したほうがよくないです?
私もそう思うのですが、懸念材料も。入居施設などは多額の一時金が必要ですし、近年ニュースや報道番組で取り上げられることが多いのですが、施設職員の虐待も問題となっているのです。

 

施設職員による虐待件数

厚生労働省によると平成28年度の「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果では、養介護施設従事者等による虐待判断件数は452件、相談・通報件数は1723件もありました。

 

は? なにそれ! 自分の親が被害に遭ったら私だったら絶対、許さないわ!!
介護離職するという人は普段から親思いで親孝行、やさしい方が多いのかもしれません。虐待されるおそれがあるなら自分で面倒を見たほうがいいなと…
親御さんから頼まれるケースも考えられるわね。「他人が家に上がり込むのはイヤ!」「私たちの年金で細々となんとかやっていけるはずだから」といわれたら、応じざるを得ないかも…
そのやさしさが仇となる場合もあります。悲しい統計結果も一緒にお伝えしておきますね。

 

介護疲れによる自殺件数

厚生労働省の自殺の統計:各年の状況、平成29年 付録1 年齢階級別、原因・動機別自殺者数①によると介護・看病疲れによる自殺者数は206人いました。10代から80代まですべての年代に見られ、30代で6人、40代で19人、50代で46人と老々介護による自殺だけではなく働き盛り世代による親の介護が動機であると推測できる自殺も現実に起こっています。

 

誰かに相談したり、頼ったりできなかったのかな… 悲しすぎます。
施設職員の虐待の多さにもびっくりしたのですが実は、もっと多いのが世話をしている家族、親族、同居人等による虐待です。

 

家族などによる介護での虐待件数

施設職員の虐待と同様の調査(厚生労働省平成28年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査)結果から、虐待判断件数は16384件で、相談・通報件数は27940件あったことがわかっています。

 

重苦しい統計が続きましたが、介護離職はそれだけ大変だというのがおわかりいただけたかと思います。

 

ここまで提示した統計結果から介護離職しないほうがよい理由が見えてきます。

 

介護離職をしないほうがよい理由

理由1:しばらく社会に戻れない

介護は一度はじまると、正直いつ終わるか予想できません。子の心情としては、介護の終わりは親の死を意味しますので、正直あまり考えたくない部分です。

先ほどの統計から、平均で5年近く介護期間が続きます。あどけなかった小学校1年生の子がしっかり者の高学年の上級生になるころまで続くということです。衆議院議員や県知事、市長が任期を満了するよりも長いのです。

もちろんそれだけ社会から離れれば、置いてきぼりをくらいますし、ブランクが長いという理由で再就職もままならないでしょう。

理由2:再就職を果たしにくい

プレジデントオンラインの記事、なぜ介護離職した人は”必ず後悔”するのかによると、次のとおり書かれていました。

“総務省の調査(今年6月公表)によれば、介護離職者のうち再就職できた人は43.8%で、半数以上が再就職できていません。また、明治安田生活福祉研究所らの調査(2014年発表)によれば、介護離職後に再び正社員になれた人は男性が3人に1人、女性が5人に1人で、年収は男性が556万円から341万円、女性が350万円から175万円と大幅に減っています。介護離職をすると経済的にはかなり苦しくなるのです。”

この記事からも再就職はむずかしいと読み込めます。

理由3:キャリアが停まる

キャリアは継続してこそキャリアとして成り立ちます。介護のためにいったんドロップアウトされるのであれば、次に社会復帰、再就職するときには、介護経験が活かせるような分野でないかぎり、キャリアの維持と向上はむずかしいでしょう。

理由4:介護離職で困るのは自分だけではない

会社や組織はたとえ社長が抜けてもその穴を埋めて誰かがけん引していけます。しかし会社のなかで戦力、要、ムードメーカーとして存在感があった人が辞めるとやはり、これまでついてきた部下、入社時から一緒に戦ってきた同僚、心から信頼してくれていた上層部が困り果てることには変わりなく、会社にとっても人的損失となります。

取引先ですら担当が変わるとやりにくくなるもので、関係がおかしくなって契約をどちらからともなく打ち切ることも大いにあり得ます。

介護離職は家族の問題ではありますが、周囲の人生も変える可能性があります。

理由5:介護離職を防げる制度や仕組みがある

こちらは最終章に譲りたいと思います。

 

介護離職を回避するためのヒント

ここまで介護離職をしないほうがよい理由を5つお伝えし、説明してきましたが、国や会社が介護離職を回避する制度やシステムをすでに導入、運用をはじめているといえます。

 

転職とキャリアアップが考察した介護離職回避法は、要介護・要支援制度の活用そして仕事と介護の両立支援を組み合わせ自分のキャリアを守る方法です。

詳しく見ていきましょう。

 

要介護・要支援認定を受けるよう説得する

介護離職してしまう場合、親の意見を尊重しがちで、親御さん本人が要介護・要支援認定を受けたくないと拒み、それを受け入れて自分で面倒を見てしまう方もいらっしゃるのではないかと考えます。

その背景には「まだまだ自分はしっかりしている」「他人様から介護される必要などない」というプライドがはたらいたり、ご近所の人にケアマネジャーやスタッフが家に出入りしているのを知られたくない、周囲から食事や排泄、入浴において介護の必要な高齢者とは思われたくないという世間体を気にされたりする場合も少なくありません。

何よりも「高い学費を払って育ててきたんだから、介護くらいしてくれなきゃ」と言い出し、家賃不要の実家での同居、年金だけの生活、介護離職を迫る場合も想定されます。

「離職して自分が介護に専念するにしても、客観的なレベルがわからなければ適切な介護ができないんだから」と理由を説明し「要介護・要支援認定を受けなければ、自分は介護しない」と強く明言するくらいのことはしたほうがいいのかもしれません。

介護保険制度(40歳から支払う)がスタートして久しいですし、年金支給後も介護保険料が天引きされているはずですから、要介護・要支援認定を受けて何らかのサービス提供を受けたほうが親御さんも家族にとっても本来はお得なのです。

これは福岡市の事例ですが、認定を受けることで、

  • 手すり
  • 段差解消
  • 引き戸に変更

など住宅改修にかかる費用(上限税込20万円)の9割~7割が保険から支給されるようになっています。お住まいの自治体でもそのような制度がないかまずは確認されることをオススメします。

話を戻しますが、市町村の認定調査員による調査で、客観的に判定を受けることで実は介護離職するまでの状態ではなかった(親御さん本人が要介護と思い込んでいた)ということもあり得ます。

しかし軽度と思っていたのに実は重度だったという逆のケースもあるのですが、その際はケアマネジャーにも協力を仰ぎ「自分には介護はむずかしい。プロに頼むべき」と親御さんを説得できるように動けます。

どちらに転んでも介護離職を回避できるのではと考えます。

仕事と介護の両立支援を利用する

出典:厚生労働省『仕事と介護 両立のポイント』パンフレットより

この支援を受けるための大前提となるのが、職場に「家族などの介護を行っている」ことを伝えることで、会社で実施している両立支援制度はないかを確認します。

あくまでも一例ですが、上図にもあるとおり、

  • 介護休業制度
  • 介護休暇制度
  • 在宅勤務制度

などがあります。

国としても働き方改革でテレワークを推進しているわ。
そのほかにもフレックス制度などにより就業時間を調整してもらえる場合もありますので、通院の送迎を終えたら出社するようにできれば、介護離職は防ぐことができますね。

厚生労働省は『仕事と介護 両立のポイント』というパンフレットを策定してインターネット上で公開していますので、そちらもご確認、活用されてください。

 

まとめ

ここまでお伝えしてきたとおり、国も行政もメディアも介護離職を避けるよう警鐘を鳴らしています。

転職とキャリアアップでも介護離職は再就職がむずかしいという観点からオススメしにくいという考えです。

極力、介護離職はしないという方針で、回避できる道をぜひ、模索されてください。