・外資系企業の部門解散とは?
・早期退職制度と希望退職制度のちがい
外資系企業は
・完全実力主義
・成果が出なければ即クビ
と比較的『実力がないと生き残れない厳しい世界』というイメージがあります。
実際にそのような業界・企業もたしかにありますが、ここは海外ではなく日本ですから基本、在日外資系企業に勤務する労働者の権利などは日本の法律で守られています(詳細は後述いたします)。
アメリカなどはアットウィル雇用の国で厳しかったですよね?
はい。アメリカでは働くことに関しては労働者も企業(ボス)も対等な立場で、お互い自由に契約合意・解除できますからね…。
アメリカ並みに大胆で冷酷、ドラスティックなリストラをやってのけそうに見える外資系企業ですが、実のところよほどのことがなければ、何かきっかけになるようなできごともなければリストラ、即クビになることはありません!
きっかけってどのようなことです?
そのきっかけとはズバリ『部門解散』です。
その説明に入る前に外資系企業のイメージと実際はどうなのかをお伝えしていきます。しばらくお付き合いください。
外資系企業は暗黒で冷酷な会社だと思っていた
学生時代、私は「どこに就職するか」を友人らとよく語り合っていました。そのなかで避けたほうがよい就職先としてよく上位に「外資系企業」が挙がっていたのです。
今思えば想像の範疇にすぎませんでしたが外資系といえば、
・成果が出なければ即クビ
・残業代も退職金も出ない
という、「真の実力者以外は生き残れない」「凡人だと数年でクビにされるレベル」、今考えると大げさで、笑い話なのですが、その頃は本気で取って食われるような厳しい暗黒な世界と思っていました。
あ、暗黒って…。
さらに私が就活をしていた時分は、転職もまだまだ一般的なものではなく、今のように転職エージェントが増えてサービスも充実することなど、想像すらできない時代でした。
そのため外資系企業に入社し一度でも失敗し、リストラされたら、そこで人生は詰んで(終了して)しまう…。
そのような印象を持っていました。結果、友人らと「絶対に外資系企業にだけは行かないようにしよう」という結論に至り、共通認識として同じ考えを持っていました。
しかしあれから社会に出て数年、外資系企業の人らと知り合い、実際どうなのか話を聞いてみると、外資系企業はそこまで冷酷ではなかったようです。
れ、冷酷って…。
外資系企業勤務の方に実情を聞いた
社会人になってはじめて、外資系企業の人に「そんな(上記のような)イメージを持っていたんですよ」と打ち明けてみると、
「そんな鬼のようなことをやっていたら、外資系に残れる人などひとりもいませんよ」
と笑いながら返されました。そこでいろいろな外資系企業の人と会うたびにその話を振って、聞いてみたところ、
という厳しめのコメントもありつつ、
といわれ、外資系企業の実情を知ることができました。
また日系企業では、なかなか有給休暇が取りにくいため、外資系企業も同様に取りにくいのではと考えていたのですが、外資系企業のほうが有給休暇は普通に取得でき、取りやすい環境が整っていることもわかりました。
日系企業の多くが上司や同僚の反応を気にして、どこか遠慮してしまう傾向が強いのですが、外資系企業ではむしろ有給休暇は社員の大事な権利として大切に取り扱われているようです。
まあ外資系企業勤務で優秀な方であれば、交渉力も鍛えられているはずですから、論理的に根拠を示して、会社が認めざるを得ないように持っていくのでしょうけど…。
管理人セイジが感じた外資系企業の実情
ここからは実体験を基に少しだけ踏み込んだ話をしてみます。
具体的な実名を挙げてお伝えしますと外資系企業にもかかわらず本社とは異なる独自のカラーを作り上げ、日本に根づいた会社も実は少なくありません。
私がよく知るIT系企業のなかでは『日本ユニシス』がそうでした。今は大日本印刷(DNP)の傘下で完全なる日系企業であり、外資系企業ではありませんが当時、外資系でありながらまるで日系企業のような雰囲気を醸し出していた会社でした。
具体的には残業は多いもののそこまで切羽詰まった感じでもなく、のんびりとした雰囲気で、自分のペースで働け、動かれているような感じでした。
また個人的には知り合いが多い『日本IBM』も仕事はたしかにきついようでしたが、40歳くらいまでは問題なく在籍できます。もちろんそれ以上の年齢の方もいました。
たとえリストラ候補として名前が挙がっていても大手なら、子会社へ転籍させるというリストラ手法が可能ですから、なんとか会社員という立場は維持し、生き残れます。
ただ『SAPジャパン』『アクセンチュア』は別でしたね。5年も在籍できれば会社では長老扱いされていました。
外資系企業は実は想像しているほど厳しくはない
学生時代、私や友人は外資系企業に暗黒で冷酷なイメージを持っていましたが、一瞬で見事に覆されました(笑)
厳しいイメージをすっかり覆され普通に頑張っていればなんとかなるとわかりましたが、外資系企業に勤めることになった方は、リストラされやすいというリスクがあることだけは日頃から頭の片隅に置いておきましょう。
特に日系企業出身者で長年、同じ仕事だけを担当してきた場合、それ以外の仕事は何ひとつできない傾向が強く、新しいこと、これまでと違うことに弱く、潰しが効かないようです。
リストラ対象者になりやすいのでは?
外資系企業に転職するなら、これまで自分がやってきた仕事。実力を発揮しやすい仕事で勝負しましょう。
これより本当の恐怖。外資系企業におけるリストラ最恐例をお伝えしていきます。
こわい、こわい。セイジさん、普通にお伝えしましょうよ。
外資系企業で最も怖いのは部門解散(リストラ)
外資系企業は、日系企業とはちがい
・専門性を深められる
・人間関係がフラット
である点が本当に魅力的です。
そんな外資系企業も温情なくリストラを強行する場合があります。それが冒頭部で述べた『部門解散』なのです。
実は外資系企業は
・部門を手放すべき合理的な理由
が見つかると、当該部門を不要とみなし、まるごとリストラする傾向が強いのです。
えっ、えっ、部門ごと、なかったことにするのですか(驚)
はい。所属する部門で運命がガラっと変わり、人生を左右されます。
そんな恐ろしいことはないですよ(困)
日系企業ですと配置転換、子会社化し残そうとするところですが、外資系企業はためらうことなくバッサリと切り捨てます。
ちなみに外資系企業でリストラされやすい部門は、以下が目立ちます。
詳しく知りたいです。
順に解説していきます。
研究部門のリストラ
自社商品、サービス開発のために必要と考えられる研究(学問的考察、調査、実験、検証など)を実施し、そこで得たデータや知識、技術を駆使し、開発へとつなげるのが研究部門の役割といえます。
研究職は基本、理系学部出身者で理学(物理学部、化学部、生物学部など)、工学(機械工学部、電気工学部、電子工学部など)、医学、薬学、農学などを学んだ方が就き、優秀なブレインが数多く在籍しているものです。
もちろん外資系企業は基本、(本社のある)創業地、国籍地など主要な場所に研究部門を置きます。そして独自に研究業務を展開するのです。
それにもかかわらず日本など(支社のある)別の国に、わざわざ予算と人をかけて研究部門を置くのは戦略上の理由、その国で市場を拡大させたいからにほかなりません。そのため
・採算が合わず事業縮小を図る
場合は、その国から速やかに研究部門を解散、撤退させることとなります。そこにいる社員が全員、例外なくリストラに遭います。おそらく清算人だけ残し、事業を終えたら部門ごと消去します。
研究職は外資系企業には行くべきではない、そういうことですよね?
うーん、それはなんともいえませんね…。
外資系企業の研究職はやはり高給取りです。高みを目指すとそれなりのリスクはつきものですし、必ずしもすべての外資系企業研究部門が解散する運命にあるわけではありません。
もちろん研究部門だけが危険な目に遭うわけでもなく、研究部門だけ解散したとしても
・要事業縮小
の状態が続けば今度は、
も、解体される可能性が高くなります。
ただし研究部門が撤退しても生産ラインはしばらく稼働するはずです。また出荷前に品質も確認をしなければなりませんので、同時に解散することはまずないでしょう。
あるとすれば日本から全撤退するときですよ。いずれもアパレルですが、
・オールドネイビー(2017年)
・FOREVER21(2019年)
などがわかりやすい近年の撤退例といえます。
情報システム部門のリストラ
情報システム部門は本当にリストラに遭いやすいです。
私、サイト管理人であるセイジも社内SEで過去、2回のリストラ劇を目の前で見ていますので他人事ではありません。誰一人戦々恐々とした日々は過ごしてほしくないと願っています。
情報システム部門はいわゆる社員向けサポート部門で、収益をもたらさない利益センタ(内部管理部門)であり、部門単体で売り上げを立てられず、真っ先に解散対象となりやすいのです。
社内で情報システム部門は「お荷物」と揶揄されることも。
ひどい! 実際はそうではありませんよね?
もちろんです。お荷物と呼ばれる筋合いはまったくありません!
情シスは戦略を立て自社の日々の業務効率化などを一手に担い、社内業務システムの開発、構築、改善(バージョンアップ)などを実施、社員がビジネスを迅速に展開できるよう人知れずサポートを行っています。
いわば縁の下の力持ちですよね^^
はい。まさしくそのとおりで情シスは、目に見えない間接的売上に十分貢献している、不可欠な組織です。
しかしながら残念なことにそれでも、経営陣からは理解されにくく、その設置効果までもを疑問視され、水面下でアウトソーシングへの移行を検討されることもあったりします。
また高度で完成度の高い優秀なシステムになればなるほど開発に時間がかかります。しかし情シス以外の社員はそういった事情をなかなか汲み取ってくれません。
元情シスやパソコンに詳しい社員が他部門にいると「そこまで待てない」「カンタンなシステムで十分」とエクセルなどで勝手に、情シスに相談せず自分たちで構築し、その簡易的なシステムをとりあえず使うなど、事実上、情報システム部門の中抜きが平気で横行するようになることも考えられます。
そうなるとたちまち不要論が出て社内に広まり、部門解散へと拍車をかけることもありえるのです。
余談ですが製薬業界の外資系企業ではよく、情報システム部門を解散、リストラしていました。
そこでリストラされた人たちは別の製薬会社に移ることが多く、製薬業界内の情報システム部門をグルグルと回るのです。
そのためあちこちの製薬会社に元上司、元同僚などが在籍することになり、そこから共通のつながりや話題ができて、知り合いだらけとなります。
空きが出たら、誘われることもありそう^^
「お前もうちにこないか?」「いい職場だぞ♪」ということはあるかもしれませんね。
なお情報システム部門にかぎっては、外資系企業だけではなく同様の理由で日系企業でもリストラされてしまう傾向があります。
社内SEはデスクワークですからカラダはラクですが、頭と目を酷使します。利益センタであるがゆえにお荷物と社内で揶揄を受けたり、経営陣に理解されないときもあったりしますから実は、かなりメンタルにくる、精神的に苦しい仕事であるということだけは申し添えておきます。
日本全国の社内SEさん、頑張ってくださいね^^
営業部門のリストラ
外資系、日系(内資系)関係なく企業の営業部門は、積極的に自社商品・サービスを売り込みます。また商品ごとに部署を分け専門特化し取引先に攻勢をかける企業もあります。
そんな外資系企業の営業部門も、戦略上なんらかの問題が起こると、早々にリストラされるおそれがあるのです。
たとえば海外企業が医薬品やソフトウェアを本格的に広めようと、日本に進出して新規参入する場合は、やはり日本人を営業として雇います。
ところが日本で需要が見込めない、商圏として確立しないと判断したときは潔く撤退を決め、残念ながら一気に部門を畳み、人をリストラすることがあるのです。
ここまで見てきた部門解散ですが、何が怖いかといえば、能力に関係なくリストラされてしまうということなのですよ。
ちょ、ちょっと待ってください! 日本では基本、労働者は法律で守られているはずですから、カンタンに辞めさせることはできないはずですよ。
もちろん。いきなりポンっと斬られることはありません。
外資系企業は優秀な方が多く、もちろんそんな優秀な社員を束ねている経営陣は、もっと優秀です。
法律違反したり、あとあと厚生労働省や労働局から指摘されたりするような、間の抜けたことをやるはずがありません。
ここまで部門解散という表現をしてきましたが、これはあくまでも整理解雇のことです。
もちろん会社側はリストラ対象社員に丁寧に説明し、時間をかけて、誠意をもって対応、整理解雇を実行しているはずです。
いきなりではないのですね。
はい。
次の日からいきなり部門がなくなる、そのようなことはありませんので、安心してください。
そういえば追い出し会社というリストラ手法もあったというお話を聞いたのですが、セイジさん、ご存じでしたか?
はい。実際にそのような目に遭ったことがある方は存じませんが、参考のためにお伝えしておきます。
追い出し会社によるリストラもある
2015年にその存在が紹介されていたのですが、事例では次の流れでリストラを敢行していたようです。
2.人材会社で適性診断テストを(何度も)受けさせる
3.退職もしくは転職を決意させるような診断結果を突きつける(事実上の退職勧奨)
4.転職を決意した社員には人材会社が転職先をあっせんする
その会社、人材会社も最低ですね(怒)
あまり賛同したくない、褒められないやり方ですよね。
結果的に好条件、高給与の仕事に就け、当の本人も満足できる結果であれば、まあアリかなと思うのですが、その診断結果が虚偽、ヤラセだったとしたら、本当にひどいなと思います。
その診断結果を信じて転職先を決めた方がいたとしたら…。新天地でうまくいってほしいなと願うばかりです。
最近はSNSで個人の声も広く拡散シェアされる世の中になりました。
そのため批判、炎上されるようなアコギなまねをする企業は、かなり減ったのではないでしょうか。
当然、整理解雇の前にはどの企業も
・早期退職
・希望退職
を募ります。
セイジさん、早期退職、希望退職って同じ意味では?
実は似ているようで、まったく違うんですよね。次章で解説します。
整理解雇前の早期退職、希望退職について解説
早期退職制度とは
コトバンク
によると“退職金などを優遇する代わりに、定年前に退職を促す”ことです。
多くの会社では本来、定年は60歳もしくは65歳となっているはずです。もちろん退職金も支給されるでしょう。しかし「定年を待たずに早期退職してもいい」という社員からその申し出があったとき、会社は慰留、強烈に引き留めることはほぼなく穏便、円満に退職を認めるはずです。
早期優遇退職、早期希望退職、選択定年制ともいい、この制度を導入している企業は随時、社員からの申し出を受け付けており、その点で通常の希望退職制度とは異なるといえます。
誤解なきよう補足いたしますと早期退職は
・誰でも活用できる
・いつでも活用できる
・今後の人生の幅を広げてくれる
・退職金が上乗せされる
制度で、自ら申し出ますのでリストラにあたらないと私は考えています。
希望退職制度とは
コトバンク
によると“自ら退職する者に多めの退職金を都合することで、人員削減を図る”ことです。
早期退職制度と希望退職制度の大きな違いは、実施期間です。
早期退職の場合、制度導入後は随時、受け付けることになりますが、希望退職の場合、あらかじめ告知した期間での実施となります。
会社としてまず全社員に告知し、退職希望者を募ります。この段階ではもちろん企業側から誰かを名指しすることはありません。
あくまでも「転職や退職を考えている方は教えてくださいね」とお願いするもので、法的拘束力などありません。もちろんその気がない方は名乗り出る必要もなければ、期間中、会社から強制的に退職させられることもありません。
と希望退職を申し出、会社側もそれを認めれば円満に退職することとなります。
ちなみに希望退職=会社都合による退職と覚えておきましょう。
「自己都合退職」よりも「会社都合退職」のほうが有利ですよね?
そうですね。会社都合退職には大きなメリットがあります。
特に失業給付の世界では特定受給資格者となり、支給開始時期は3カ月前倒し、給付期間が延長されその分、給付額も増えるなど有利(詳細は下表)となります。
待機期間 | 給付期間 | |
自己都合退職 | 3カ月と7日 | 90日 |
会社都合退職※ | 7日 | 180日 |
※30歳以上45歳未満で在職(被保険者期間)5年以上10年未満の場合
https://jsite.mhlw.go.jp/hiroshima-roudoukyoku/content/contents/000549459.pdf
このようにたとえ退職時、転職先が決まっていなかったとしてもさほど失業期間中の生活の心配をする必要はなく、在職期間中であれば、平日夜、土日しか対応できない転職活動ですが、失業中はいわば四六時中、専念できますからその点、メリットです。
待機期間が7日だけなのはいいですね! 早く転職先が決まるかしら…。
正直、私は心配していません。外資系企業に採用されてバリバリ働いてきた方ですよ。優秀な人に決まっていますから、ほぼ大丈夫でしょう。
まとめ 外資系企業で鍛えられた人はリストラされてもなんとかなるのも事実
部門解散、整理解雇、リストラでたとえ職を失っても外資系企業勤務経験者なら、次の勤務先も見つけやすいのではないでしょうか。
私もいろいろな人とお仕事をご一緒させていただきましたが、外資系企業出身者はなんでもそつなくこなせる方が多いです。
外資系企業出身者は仕事上の専門性もさることながら、汎用スキル、コミュニケーション、適応力が高いです。もちろん能力が高い人は高年収、好条件を勝ち取ったうえで就職先を見つけられるはずです。
2014年当時、部門解散によりリストラされてしまった元外資系企業勤務の方と飲む機会がありましたが「のんびりと次を探している」とのことでした。
転職エージェントに登録して転職活動を始めており、実際もうすでにキャリアアドバイザーから良い求人を紹介されているらしく「それなりのところに落ち着けそう」と語ってくれました。
もし今後、部門解散という憂き目に遭っても、優秀な方ならなんとかなりそうですね!
自分の力を信じて次の転職先を探していきましょう!
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