- 募集要項の定義
- 募集要項の内容
- 募集要項からブラック企業・ホワイト企業を見抜くポイント
- 募集要項の裏側
- 応募条件と自分のスペックが合致しないときの対処法
転職求人の募集要項には応募条件(会社がどのような人を採用したいのか)が記載されています。
正社員として採用されたいと考えたとき、転職エージェントに登録して、求人検索しますけど、ヒットした求人の詳細ページなどに書かれている内容のことですね。
そうですね。応募条件には会社が必要とする経験やスキルが書かれているものです。表現があいまいな場合もありますが、以下のように数値でしっかりと明示されている場合もあります。
・○○の経験年数5年以上
・TOEIC800点以上
セイジさん、この場合、経験年数が3年とかTOEICのスコアが600点とかだったら、やはり応募はできないの?
実は転職活動をはじめた頃に同じような疑問を持っていましたが、これまでの私の経験からお答えすると「必須」と併記されていないかぎり申し込めますし、選考を通過できます。さらに満たしていないからという理由だけで落とされたりはしません。
そうなんですね…。
私は過去、満たすことのない経験年数5年以上の案件に応募していましたし、特定の知識が要求される案件に対しても、ほぼゼロの知識で採用されています。
ちなみに私は3社目、製薬会社に入社しましたが、この際も応募条件をすべて満たしていたわけではありませんでした。
でも国家機密に値するようなその会社の弱みを握っていたとか、バックに大物政治家がいたとかではないんですよね^^
まさか、そんなことは絶対ないです!(笑)
私のあとに入社してきた中途採用の方のなかにも、応募条件を満たしていなかったけど採用されたケースが、散見されました。
新卒入社後まじめに仕事に取り組んで、スキルや経験を積んできた方なら誰にでも、これは当てはまります。
何か深い理由などがありそう。
もちろん。私のこれまでの経験や客観的事実を分析した結果、みなさんも合点がいくだろうなと思える理由や根拠がありましたので、今回は募集要項の定義などを解説しながら、転職しようとする私たちのスペックが応募条件に完全合致していなくても正社員採用に至る、転職可能となる理由をお伝えしていきます。
まずは募集要項について解説させてください。
募集要項の定義、内容、基本項目や構成
そもそも募集要項とは?
募集要項についてコトバンクでひも解くと、まず募集とは以下のようになっていました。
“広く呼びかけて必要な人や物を集めること。希望する人を、募って集めること。”
要項とは
“大切な事柄。必要な事項。また、それを記した文書。”
つまり募集要項は、人を集めるために大切なことを記した紙やネット文書。具体的には求人票のことです。
次に募集要項に書かれている内容を見ていきます。
募集要項の内容、基本項目や構成
募集要項は
- 求人募集内容
- 条件内容
- 会社情報
という構成で、
職種や業種、応募条件などの<求人募集内容>、勤務地や給与、入社後の待遇などの<条件内容>、会社概要などの<会社情報>の3つに分かれています。また整合性がとれていない求人をこの3つに分けて整理しながら見ていくと、情報を整理でき、理解しやすくなります。
それでは3構成を掘り下げながら一緒に見ていきます。もちろん各構成、項目の名称や記載の言い回しは企業や掲載サイトによって異なります。
求人募集内容
募集職種・応募条件・採用予定数・応募方法・応募締切・選考方法などが書かれています。
もちろん募集職種だけではなく業種、役職、具体的な業務内容も掲載されています。
企業によっては使うソフトや入社後の流れ、任される業務や携わる部署・事柄について詳しく掲載しているところもあります。
応募条件は、
- 取得している免許や資格
- 必要な学歴
- 今までの経験
- 能力
についてがほとんどですが、プラス求める人物像を、掲載しているところもあります。
あとでこの応募条件に合致していないときの対処も、教えてくれるんですよね?
条件内容
勤務地・雇用形態・給与・賞与・昇給・休日休暇・入社予定日・入社後の待遇(福利厚生)などが書かれています。
どの項目を記すか企業やサイトによって変わりますが、
- 諸手当
- インセンティブ
- 時間外労働時間
- 育児休暇・介護休暇・時短勤務
なども掲載しているところがあります。福利厚生には各種保険のほか施設利用、研修制度・資格取得制度など入社後に加入または利用できるさまざまな制度が記されています。
会社情報
会社概要などです。会社概要には設立年月日・事業内容・資本金・売上高・拠点数・従業員数などが主に掲載されています。
大企業の場合、発行済株式総数や株主、グループ会社なども明示しているところがあります。募集要項に掲載されていない場合ですが、どうしても知りたいと思われたら、コーポレートサイト(企業ホームページ)や、有価証券報告書で確認できます。
有価証券報告書とはコトバンクによると、
のことで、基本的に上場企業など法律で義務付けられた会社は毎年、発行しています。
以上は、募集要項で読み取ることができるものです。
- どのような会社か(規模・事業内容・状況)
- 求めている人材
- 仕事内容
- 職場環境
- 労働条件
- 福利厚生
- 待遇
このように募集要項は情報の宝庫であり、この会社に入ったら、この仕事に就いたら、自分がどのようなキャリアを積め、スキルを取得でき、生活を送れるのかだけではなく、自分と会社の価値観は合うのかどうかも読み取れるでしょう。
ところでセイジさん、募集要項からブラック企業って見抜けたりします?
はい。実はそのヒントもたくさん隠されているんですよ。
募集要項から見抜くブラック企業とホワイト企業
ブラック企業の募集要項、ありがちな記載内容
ブラック企業とは、厚生労働省は明確に定義していませんが一般的な特徴として、
① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す ② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い ③ このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う |
などがあると指摘しています。
ここでは多くのブラック企業に共通する特徴を引き合いに出しつつ、募集要項に記載されがちな内容を挙げながら、考察していきます。
給料が極端に高い
カラクリとしては総支給額に「みなし残業」分が含まれている場合があり高額に見えます。残業代を差し引いた実際の基本給は驚くほど低いことがあります。
労働条件・昇給・賞与・評価制度が明確でない
これらがあいまいな場合はブラック企業に当てはまるおそれがあります。労働組合があるかどうかも確認するようにしましょう。
休日・休暇が少なすぎる
でもセイジさん私、月に10日、そんなに休めないわよ。今の仕事。
1カ月換算だとそうなりますけど、祝日や年末年始、長期休暇もカウントしますので、120日よりも少ないのは個人的にはどうかと思います。
あ、たしかに。夏休みとかカウントしてなかった。働き方改革のご時世ですからね。
休日が少ないのはもちろんですが、注意すべきは週休表記です。世間一般では
- 月に1回以上、2日休める週がある→週休2日
- 毎週2日休める→完全週休2日
で、私たちが欲しいのは完全週休2日ですから。完全と書かれていない場合は要確認です。
採用プロセスが少ない・選考ハードルが低い
誰でもいい、スグに働ける人材がほしい、そんな考えの企業かもしれません。
私の知人で、業界大手企業にたった一度の面接で、正社員採用になった方がいました。よくよく話を聞くとオープニングスタッフで大量採用だったそうです。しかし実情は連日深夜までの残業を強いるブラック企業で、過労ぎみの方、退職する方が後を絶たなかったそうです。
このような会社は人材が定着しないため、慢性的に忙しく、早急に人手不足を解消しようと採用プロセスを省略したり、選考ハードルもあってないようなものだったりします。
だったら常に採用活動を行っている企業も要注意ですよね。でも待ってください。ここ最近、全体的に人手不足で悩んでいる企業は多いと思うんです。どう見分けたらいいんですか?
そんなときは次のチェックポイントもよく確認するといいです。
- 3年後の離職率(高くないか)
- 新入社員の採用実績(多すぎないか)
- 平均勤続年数(短すぎないか)
- 有給取得状況(良好か)
- 平均残業時間(適切か)
- 平均年収(合点がいくものか)
もちろんこれだけでブラック企業と決めつけるのは早計です。今はネット上にさまざまな書き込みや口コミが溢れていますから、気になる会社の噂や評判も検索してみたうえで、応募すべきかどうかを判断するようにしましょう。
次はホワイト企業ですね?
ホワイト企業の募集要項、見逃せない内容
ホワイト企業とはコトバンクによると、
のことを指しています。
若手社員や女性社員の満足度が高く、離職率が低い会社でもあります。
厚生労働省は平成27年より「安全衛生優良企業公表制度」を開始しています。これもひとつの指標になるでしょう。
ではホワイト企業を見抜くポイントを一緒に見ていきます。基本的にはブラック企業の真逆と考えていいです。
- 労働条件・昇給・賞与・評価制度が明確
- 平均残業時間が少ない
- 休日・休暇が取得しやすい
- 離職率が低い
- 平均勤続年数が長い
- 社員の年齢層に偏りがない
- 福利厚生が充実している(保養所や施設利用制度、住宅手当や育児支援)
- 教育・研修制度が手厚い
- 働き方に配慮(フレックス制や時短勤務の導入などライフステージに合った働き方)
- 女性が働きやすい環境が整っている(産休・育休、ハラスメント対策)
ホワイト企業はさまざまな情報を包み隠さずに「これはこうです」と募集要項で公開しており、逆にブラック企業は情報を最低限の記載にするか、記載を要する場合は繕い、あいまいな言葉や甘い言葉でごまかすことがあります。
上場企業なら「有価証券報告書」を提出しなければなりませんし、その内容は「就職四季報」などにも反映されていますよね。
はい。上場・非上場、大手・中小関係なく公明正大なホワイト企業であれば、さまざまな場を借りて、情報を公開しているはずです。
- ホワイト企業→すべてにおいて明確
- ブラック企業→記載事項が最低限、あいまいな記載も目立つ
傾向があります(一概にそうとはいいきれないのもたしかです)。
要するに募集要項は最後まですべて目をとおして、しっかりと吟味してほしいということですよね?
はい。そんな募集要項ですが、どのようにして作成されているのか、その裏側を知りたいと思いませんか?
え? 裏側って? 何だろう…。
募集要項の裏側
ご存知の方も多いかもしれませんが、あれほど貴重な情報が詰まった募集要項なのに、外部の方が作成していることも少なくないのです。
それってどういうことですか? 詳しく教えてほしいです…。
募集要項は外部で作成している場合がある
企業が採用活動を行う場合、
- コーポレートサイト(企業ホームページ)
- ハローワーク
- イベント出展(転職フェアなど)
- 求人広告
- 転職エージェント
を活用するという方法があり、通常なら募集要項は採用活動を行う企業が作成するものですが、とくに後半の求人広告、転職エージェントで募集する場合、外部の人間が作成している可能性があります。
具体的には広告代理店や人材紹介会社の人間が、企業に募集内容をヒアリングし、募集要項を作成します。
実際に手がけるのは、
- 営業担当者
- キャリアコンサルタント
- 社内ライター
- デザイン制作スタッフ
- コピーライター
のほか、さらに外注し、
- フリーランスのライター
などが作成しているケースもあります。
クラウドソーシングサイトでは「求人広告制作」案件が結構見られるんです。
私も調べてみたのですがホントですね! 3000文字とかで発注されていて。そういえば最近の求人ってかなりボリュームがありますけど、そういうことだったんですね…。
なぜ企業が大切と考えている採用活動の一端を外注するのかといえば、彼らはどうやったら求職者の目につくのか、応募が集まるのか、そのノウハウや傾向を熟知しているからです。
餅は餅屋的な…。
関連して転職における餅屋といえる人材紹介会社についても、お伝えしておきます。
人材紹介会社は求人・募集要項作成のプロ
人材紹介会社はWeblio辞書によると
と記されています。
いわゆる転職のスペシャリスト集団ということですよね。
はい。また企業が人材紹介会社を利用するメリットは次のとおりです。
- 応募が集まりやすいノウハウや傾向を熟知している
- 求人募集から採用までの一連の流れを担ってくれる
- 幅広い利用者からマッチングしてくれる
そのため企業独自の採用手法で欲しい人材が集まらない場合には、転職エージェントを利用するのです。
素人同然の企業採用担当者ではなく日々、作成しているプロが募集要項を手がけるため、求職者が見たくなる・応募したくなるようなキャッチコピーの設定、写真チョイス、文章を生み出し魅力的なものを完成させることができるのです。ただしその場合、注意しなくてはならないことが、実はあります。
採用活動企業から直接ヒアリングをしたにもかかわらず、その場にいた営業担当者がとったメモは別の人の手に渡り、その人がメモを見て募集要項を作成していきますので、その内容は人を介したものですからニュアンスが変わる可能性もあります。
まるで伝言ゲームですね!
以上を踏まえ、募集要項の応募条件については次の可能性が考察できるのです。
そのため
・TOEIC800点以上
という条件を記載した可能性が十分あるのです。
募集要項と自分のスペックが合致しなくても転職可能
入社したい会社なら諦めずに進め!
もうおわかりのとおり、どうしても受けたい! 入社したい! と思う企業であれば諦めずに挑戦して大丈夫です。せっかく入社したい企業を見つけたのに募集要項の応募条件を満たしていないくらいで諦めるのは正直、もったいないです。
応募条件に合致しなくても採用される4つの理由
会社及び企業採用担当者は本来、なるべく多くの人材から選考して正社員採用をしたいと考えているはずです。
だからといって募集要項に応募条件を付さなかった場合、求める人材からの応募がなく、求めるレベルから程遠い応募ばかりが殺到することになります。そこである程度の条件提示は必要と悟ります。
しかしある程度の条件提示をしたとしても、応募が殺到する場合があり、しかも求めるレベルから程遠い応募も後を絶たなかったりするのです。書類選考だけでも相当な労力になるため、最終的にやはり厳しめの条件を意図的に提示し、応募者を絞るほうがいいだろうという結論が出るのです。
これに関しては求人を非公開にするという手法もありますけどね…。
厳しめの応募条件を課す背景には
- 求めるスキルを持っていない人に応募してほしくない
- 会社が求めるレベルでかつ仕事ができる人を採用したい
- 他社も大体、提示しているからなんとなく
の3つの思惑があるでしょう。
採用側はできるだけ経験・スキルの高い人が欲しいのも間違いないのですが、あくまでも採用活動の簡素化、効率化を図るための応募条件でもありますから、実際のハードルは低いかもしれません。
採用担当者は内心「これらの条件を完全に満たす人はまず来ないだろうな」などと思っているはずです。
また広告代理店や人材紹介会社から「他社はこのような条件を付していますよ」と提案されると、拒む理由もなく、そのまま掲載することも少なくはありません。よって条件にあと一歩というような方でも、そのまま次の採用選考に進める可能性があるのです。
応募書類を見て、面接で実際に会って、採用担当者の勘や面接官の眼力、ようするに裁量で次の選考へと進める可能性があります。
履歴書に光るものがあったとか、応募条件以外に魅力があったということですよね^^
採用担当者も人ですから、機械のようにバサッとはじけないこともあります。
同じ面接会場に集められた採用候補者(ライバル)たち、しかしフタを開けてみると、全員が全員、条件を満たしていなかったという状況もまったくないとはいいきれません。
とくに次の人材募集の場合、採用期限が設けられており、可及的速やかにまたは指定日までに人材を確保しなければなりません。
・増員募集(新規事業・オープニングスタッフ)
・助成金の受給を目指した採用
助成金は一般的に、厚生労働省の対企業施策で、高齢者や障害者など特定の求職者を雇い入れることでもらえる返還不要のお金です。ただし申請期限や予算がなくなり次第、募集終了となるものがあります。
企業側も欲しい人物像がありつつも、期限があるためいつまでも待てません。そこで全員が条件を満たしていなかった場合、そのなかから優秀と判断された人材が採用される可能性が、あるのです。
採用したいと思わせる優秀な人材を目指す
もちろん経験やスキルも大事なことですが、転職活動で大切なのは企業に採用したいと思わせることです。
経験・スキルを省き、企業が求める人物像について訊ねられたら私は、
- 多才な人
- 専門的な人
- 多才かつ専門的な人
で
と答えます。
要するに能力や人間性が高い人なら採用されやすいと言いたいのですか?
詳しくは関連記事でチェックいただきたいのですが、能力がなくても伸びしろがある人材、幅広いリテラシーを身につけた人材にも採用側は惹かれるはずです。
あれ? 最後はもう応募条件を満たしていなくてもいいということになりません?
いえいえ、応募条件を満たしているほうがやはり有利であるということに変わりはなく採用合格率もグンと上がります。
つまるところこれまでセイジさんが解説してくれた、採用される4つの理由が水面下で生じていなければ厳しいということですか?
そうなんですよ。転職成功率を高めたいのならやはりそこで必要なのがキャリアの構築です。経験年数5年なら、5年になるまで働く、TOEIC800点なら勉強してそれ以上の点数へと更新する努力も必要です。しかし条件を満たした頃には、その企業がまったく採用活動をする気配がなかったという状況も想定できます。
たしかに…。
ですから転職成功の可否には運やタイミングの要素があることも私は否定しません。募集要項の応募条件を満たしていなくても諦めず果敢に挑戦してほしいとお伝えしたのは、そのためです。
冒頭部でお話ししたとおり、応募条件を満たしていなかった私自身が転職成功した事実がありますので、みなさんも同じような経験を得られるといいなと。そう心から願っています!
転職に関するノウハウは以下のページでも解説していますので、併せてご覧頂けますと幸いです。
コメント